教授の戯言

手品のお話とかね。

TopitとSleevingとウエイビーな髪型と

■ DVD Carl Cloutier「Lapping it Up」

カール・クロティエ氏はトピットとスリービングにおいて、もはや神の領域のマジシャンです。私が最初に彼の演技を見たのは、大学時代に部室においてあったビデオででした。映りの悪い映像ではありましたが、部室ビデオシリーズでは5指に入るお気に入りです(他にも某先輩のある意味動きの真似できないステージコインのビデオや、Filip Eldos(綴り合ってるかな?)というフランス人と思われるマジシャンの異様にマニアックなクロースアップカードなどですが(笑))。
あ、さて、トピットはともかくとして、スリービングという技法は非手品人でも「袖・糸・磁石」と思い浮かべてしまうテクニックの一つではあります。にもかかわらず、彼の手にかかると非常に有用性の高い技法であるということが感じられます。映りのそんなに良くなかったということと、ビデオという単一アングルの映像であるということもありますが非常に不思議です。「非常に不思議です」、と一言で書いていますが、正直裏で何が起こってるのかよく分からないほどの衝撃映像でした。生で見たらため息ものだと思います。まるで魔法です。「…これは何が起きてるわけ?」と、風呂上りの姉はぽかんと口を開けたままペディキュアを塗っていた手が止まっていました。「ハッハ、フレンチドロップ」と、クロティエのギャグへの観客の笑い声が流れる前で口を開けっ放しで。ちなみに最近DVDで買いまして、クリアな映像で見ました。さすがに綺麗な映像で見れば種も分かり…。…。わからないよ!ママ!…気持ち悪さが増した気がします(笑)


で。内容タイトルはこんな感じです。
・Ballissimo*
・Liquid Asset
・Traveller's Advisory*
・Carl's Coin Production*
・Sleeving the Matrix
・Tete a Tete (*は彼がFISMで賞を獲得した時にやったもの)

はい、サブタイだけ見ても一体何してんのか分かりませんね。
彼がそのビデオで最初にしていた演技・Ballissimoがボールルーティーンです。四つ玉くらいの青いボールが、彼の手の中で赤くなったり黄色くなったり分裂したり、最終的には××になったりする、というのが大まかな現象であり、ぶっちゃけた話裏側ではレクチャーの表題の通り、トピットとスリービングのあわせ技によって様々な処理が行われているのですが、これがまた綺麗なのです。当然ボールのパスやトスといったものもいいのですが、何よりトピッター(勝手に命名・トピット使いの人)にありがちなトスの際の妙な動きがほとんど発生しないのが驚嘆に値します。
そういえば、トピットという人のあまりやっていなかったものを重点的に活用して有名になったマジシャンにかのマイケル・アマー氏があげられます。年配の方の中にはマジックレクチャラーとしてのアマー氏よりも、トピット使い・スレッド使いの新進気鋭若手マジシャンとして記憶していらっしゃる方も多いと聞きます。レクチャラーとして非常に親切で分かりやすいアマー氏は、トピット分野の第一人者といわれていますが、彼のトピットDVDも一度見てみたいものです。


アマー氏の傑作レクチャー「Easy to Master Card Miracles」シリーズは、素晴らしい作品チョイスと分かりやすい解説が揃った、入門者に優しくて中級上級者にとっても見るたびの示唆に富んだ作品集だと思います。がしかし。私見を述べさせて頂ければ、アマー氏のカードは、彼のそのほかのトリックからしたらイマイチではないかともいます。彼はカップアンドボールのようなゼネラルマジック系、そういったものの方が断然美しいです。最近のFISMでのカップアンドボールのスピード感と滑らかさ、ウォンドスピンバニッシュの綺麗さなど、やはり彼の持ち味は指先単体よりも、全身の動きによってかもし出されるものだと思いました。…何の話でしたっけ。あー、クロティエさんです。


クロティエのFISM…だったかのルーティーンは、観客の一人がお札にサイン→小さく折りたたんで「さあ右と左、どっちの手にあるか」→消失→cards(4A) to pockets →果物によるボールルーティーン→使っていたキゥイの中からサイン入りのお札 と言ったものでした。途中デックバニッシュをトピットで行ったりと、各種変態神業を披露してくれるのですが、先日サークルの先輩が「クロティエな、彼はキゥイを3つ用意するんだよ」と仰ってました。一つは「ネタ用(お読みになっている方はお分かりでしょうから詳細は割愛いたしますが)」、一つは「観客に渡す用」、ここまでは普通です。もう一つは何か。日本人の発想からするとありえない感じなのですが、最後の一つは、「観客がかじっちゃった時用」だそうです。実際渡したら突然食べちゃった人がツアーでいたとかいないとか。ともかくそれで3つ準備、だそうです。あんな毛むくじゃらの果物、かぶりつく人っているんですね…。


なおクロティエ氏のライブ映像(私家版?)を持っておりますが、やはりトピットとスリービングを巧みに使い、飲み物いりのショットグラスプロダクションですとか、ボールルーティーンの果物版、またデックバニッシュやカードインレモン等を行っています(普通にカードスタッブもしていた気がしますがよく覚えていません)。トピットはスパイスというか、”あまり多用しないのが鉄則”のような気がしてはしているのですが、彼は「パケットトリックにおけるエルムズリーカウント」並にスリービングとトピットを使っています。…しかしまあ、不思議ですので、彼に関しては自説を枉げてもいい事にします(笑)。

ところで、彼はカードをスリービングする際に髪をかきあげます。先輩いわく「あいつの髪型は、このムーブでかきあげるためにあのウエーブがかかってるんだぜ」…それ、本当ですか?