教授の戯言

手品のお話とかね。

コインマジック。

ハーフダラーとワンペニー出して、さてもう一枚は・・・とチャイニーズコインが出てくる、というのはよくある状況。一般世界ではともかく手品の場では。(同義:フレーム部分しかない小銭入(右上)など)

手品っ子「これはハーフダラー、つまり50セントでして、アメリカのお金です」
あー手品する人がいつも当然のように出すよね。アメリカ本国でも殆ど流通していないらしいコインを。こともなげに。
手品っ子「これはワンペニー、イギリスの銅貨です」
女王陛下が描いてあるんだっけ。持つと銅くさくなるやつだよね。
手品っ子「で、この穴の開いているのが中国のお金です」
フーン、ちゅ・・・、・・・今なんと?


いつもここで疑問が。日本人でこのチャイニーズコイン使う人は、なぜだか知りませんがステレオタイプに「中国のお金」という説明をします。手品で使われているのはぱっと見でも「寛永通宝」などの日本の古銭レプリカなんですよね。確かに1000年以上前には、日本は中国の銭を持ち込んで、自国通貨として利用していたという事実はあります。が、その銭ならばそもそも青銅を多く含むので色調が…あ、いや日本史話になるのでそれはともかく、寛永通宝なんて明らかに江戸期なワケです。


Chinese CoinのChineseとは中国の、では無く「Chinese Character」すなわち「漢字」のことを指すものなんじゃないのだろうかと、ずーっと思っていたりするのです。
確かに、世界的…というか西欧の人間から見たら、「ジャッキー・チェンブルース・リーも日本人ではないのか?」のような括りで「これは中国のお金なんじゃん?」という認識かも知れません。つまり世界的にあれは中国のお金(のような気がする)というイメージが出来ていて、私の考えはただの妄想という説が一つ。もしくは、日本人でこの中国のお金ですという説明を使う人が、自分の口上についてきちんと考えていない説が一つ。
上記どちらなのかは長きに亘る謎です。多分後者と思っていますが、どっちが正しいのかしら…。チャイニーズコインという名称はともかく「これは日本の古銭で寛永通宝ってヤツです」でいいと思うんですけど。


ついでにコインマジックについて。
私としては「コインマジックはいまいち労力に見合わないマジック」な気がしています。コインマジックは要求される最低技術レベルがカードなどに比べて高いので、なかなか良い演技にめぐり合えないだけかもしれませんが。ぶつかる壁が序盤に来る上に高く険しいのがコインマジックの特徴と思います。また、コイン愛好家は例外なくマジックマニアが多い割に、演技を見せて頂いてあまり感激した思い出がありません。「きょうじゅクン、キミは俺の演技を見てないからだよ」とかそういう男らしいご意見もあるとは思うのですが、それは後日拝見させて頂くとして(笑)、これは相手の技量もさることながら、根本的に私の感性が合わないのかもしれません。とにもかくにもレベル差が激しい分野だと思います。

とまあ、コインマジック酷評状態ですが、デビット・ストーンのコインマジック見たときは大変感激しましたし、ダン・シルベスターのシルベスターピッチも相当興味深いものでした。二川さんに目の前でやって頂くコインマジックの錯覚ぶり(特にリテンションバニッシュの確かに握った感)ときたらないし、ジェフ・ラタのシャトルパスにいたっては、笑いながら「あー、えーと、まだ見たいの?」といわれるくらい、飲み屋で何度もリクエストして見せて頂いたお気に入り体験です。いや、めちゃくちゃ不思議じゃよー?

そんなステキコインマジック体験の一方で、その昔、某好事家の方ご自慢の「スタンディングワンコインルーティーン」を披露して頂いた事があります。その方のお書きになるコラムからの先入観で、「これはもう、超絶的に美しいハンドリングを拝めるのかな」と必要以上に期待していたのもいけないのですが、それ以前のレベルといいますか、パーム漏れが激しくて、見ていてちょっと痛々しかったです。これを"普通の人にやって大好評"と言うならば、ちょっとどういうことなのか分かりかねます。きっと普段はもっと丁寧にやってるのでしょうけど。見終わって「いやーすごいですねー」とかすんなり出てきたときに、私もオトナになったなあとか思いました。やはりコインって扱いが難しいのでしょうね・・・。


「コイン使う手品見るの好き?」と姉に聞いてみたところ、「左手に渡したコインが突然右手から出てくる、みたいなやつは”あれれ?”という感じで面白い」そうなのですが「連続して見せられるともうどっちでも良くなる」という感想でした。多分それが一般的な感想なんじゃないでしょうか。コインマジックは動作と残像(反射)による「確かに持ってる感・渡した感」という錯覚を利用したものが主体なので、「あれっ?」というのが、あって2・3回くらいが一番綺麗そうです。「な、なんでなんで?どうなってんの?」くらいまでやっちゃうのはやり過ぎなのかもしれませんね。

それはともかく、「コインマジックっていうかさ、コインマジックの愛好家ってマジックに限らずいろんな場所やイベントで必ずコイン持ち込んで弄るじゃん。パームしたりチャラチャラ音をさせてて、たまにチャリーンと派手な音を立てて落っことすから、俺としても鬱陶しいと思うことは多いな。て言うかオマエはそこが気に入らないのではないだろうか」という突っ込みを知人に受けました。そうか、公の場所で騒音を立てるところがキライだったのか…! 文章長い割に結論があんまりだ・・・!