教授の戯言

手品のお話とかね。

■David Forrest 「2WO FACED DVD」


演技に必要なギャフカードも20枚付属。エスコリアルモンテを買うときに、「なんかもう一つくらい買っとくか」ということで何となく購入。結果的にはアタリと思われます。


通底して言えるコト

<良>
・現象がビジュアル&クリーン
・演者に技法面での負担がそんなにかからない
・ギャフカード付属なので取り敢えず始められる
・内容の割に安い
・レパートリー増やすのに適している


<悪>
・手順がほとんど追える(新鮮な感激はあまり無かった)
・ギャフを使う性質上しょうがないが、フォースが極端に多く、観客を完全に型にはめて誘導というばかりな気がする(その分安全ではある)


<謎>
・なぜボクシングリングで演技しているのか
・演技が終わった直後の止め絵&微妙なギターミニフレーズが間抜けで面白い
・デビットたまに演技中に舌打ち(多分クセ)


以下詳細。

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JACKASS:4枚のジャックを示す。デックから1枚を選んでもらい、覚え戻してもらう。4枚のジャックを開くと1枚だけが裏返っている。見ると先ほどデックから選ばれたカード。ではデックに戻したカードは…デックをスプレッドすると1枚だけ裏。観客に表向きにしてもらうと予想に反して(ジャックだと思っている)、デックに戻したはずのカード。手元の4枚はまたすべてジャックに。



各スートのセット4枚組(J)を脇によけておいて、その後観客がデックよりカードを選択(4D)&返却→よけておいた4枚のJの内、観客の選んだダイヤスートがいつのまにか裏返っていて「お客様のカードのマークは今表向きになっていない、なるほど、選ばれたのはダイヤですか」というマジシャン→デックを表向きにスプレッドすると一枚裏向きのカードが→表にしてみると脇によけてさっき裏返ったはずのJD→よけておいた方の裏向きカードをめくると4D という、いわゆる「ホフジンサープロブレム」のイチ解決案を大学時代に先輩から習いましたが、これは更に一歩進んで、それを見せた後で更に脇によけておいた方を見るとJDに、デックから抜き出した方は4Dに戻っているというもの。当時やろうとしていたが、この解決法は思いつかなかった。フリーチョイスでやるにはちょっと負担も大きい現象ですが、これならすっきりとした解決策だなあと感心。

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・QUANTUM LEAP:デックから1枚のカードを選んでもらう。マジシャンは4枚のエースを取り出し、2枚を脇においておく。残りのエース2枚で選ばれたカードをサンドイッチ。その3枚を振ると一瞬で真ん中の選ばれたカードだけが消失。お客さんのカードは別にしておいた2枚のエースの間に一瞬で出現。



現象が物凄くクリーン。クリーンだし見た目にも鮮やか。プロセスに無駄の入る余地がありません。反面、現象が完全すぎるので、疑念を抱かせる余地が生まれてしまいそうな気がします。私はそうでした。いかに自然に卓上のカードを回収して次のにうつるか、ですかねえ…。とにもかくにもやってみたい鮮やかさです。

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・50/50:2枚のカードを見せ演者が背中に回して1枚を裏向きで前に。背中に残ったカードがどちらかのカードかを観客に当ててもらうゲーム。しかし50%の確率にも関わらず、観客は絶対に当てることができない。



これは3回4回繰り返す割にどうかなと思いました。観客が宣言してからマジシャンが出す、というパターンだとこれで使うギャフでもいいし、エキストラを1枚用意しておいてもいいし、と解法が多々出てきます。更にオチと呼べるものが無いため、観客になんとなくすっきりしない感覚を残してしまいそうです。ちなみに最初に2枚ディスプレイする時点で、なんというか、「私わかっちゃったんですけど」的な状態になっておりました。小品トリックとしてはいいですが、バイプレイの域を出ない感じです。どうせ後ろ手に持つなら、いっそラストはどちらもブランクカードにしてしまえばよろしいのに。

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・ELMSLEY SMELMSLEY:2人のお客さんに1枚ずつカードを選んでもらう。演者はデックから4枚のエースを抜き出す。選んでもらったカードをデックに戻してもらう。演者は先ほど抜き出した4枚のエースを裏向きに持ちますが、一瞬で1枚だけが表向きに。しかもそれは1人目のお客さんが選んだカード。さらにもう1枚が一瞬で表向きになるが、それは2人目のお客さんが選んだカード。さらにその表向きになった2枚がまた裏返しになるが、再度見ると4枚のエースに戻っている。選ばれた2枚のカードはデックから表向きで再度出現!



2回の入れ替わりですが、ちょっとコストパフォーマンスは良くないかと。現象そのものは2枚のカードの移動・消失・移動という3つに集約されるのですが、なぜだろう、ちょっとごてごてしすぎな感じがしました。

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・PREDICAMENT:サインドカードを2枚のダブルブランクカードでサンドイッチ。一瞬で選ばれたカードまでも真っ白になるが、また一瞬で元に戻る。最初に出しておいた予言のカードと一致。



この辺りまで見て、この人は複数回の現象が入ったトリックが好きなのかなという印象を抱き始めました。これはちょっと微妙ですかね。少なくとも私は好きではありません。少ない枚数のせいか、ちょっと手さばきがもたついている印象を受けました。

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・THE WAGER:バラバラの4枚のカードが1枚ずつエースに変化します。その4枚のエースがまた一瞬で元のバラバラなカードに戻る。



マジシャン対ギャンブラーのギャンブリングデモンストレーションで、マジシャンが負けるの初めて見ました(笑) マジシャン側のが一枚ずつAに変わっていくのは手さばきの怪しさ(アスカニオスプレッドですけど)を除けばかなり素敵。ギャンブラーのやるラストのカードチェンジはよくあるやり方ですがかなり鮮やか。マジシャンの手札が元のダメカードに戻っているという二重落ちが効いてました。ヌルいマジシャン風情が、プロのギャンブラーとガチンコ勝負で勝てるわけが無い、という寓意を読み取りました。キバヤシばりの深読み(笑)。

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・CON-FUSED:観客に1枚のカードを選んでもらい、手に挟んで保持してもらう。さらにもう1枚選んでもらうが、そのカードと手の中のカードが一瞬で入れ替わる。さらに今度はその2枚にサインして片方をケースに入れるが、やはり入れ替わる。最後はその2枚がサインが入ったまま1枚のカードになってしまう。



現象よりも解説を見たときのギャフの使い方の妙に感激しました。ギャフによって非常に公明正大に見えます。実に美しい利用方法だなあと。ショップ的な物言いをすれば「このトリックだけで、このDVDの値段分の価値があります」(笑)。 カップルでのお客さんに是非とも見せたい手順。お土産を用意できて、かつ現象も非常にインパクトがあるのですが、現象は少し時間がかかるので、途中よりかは最後が適していると思います。…今年の秋はこれでいくか…。

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・BLURRED DECK:青デックからカードを、表向きの状態で自由に選んでもらう。そのカードにサインをしてデックに戻す。演者がデックを軽く振ると一瞬でデック全体が赤に。スプレッドすると確かに全部赤になっているが1枚だけが青のまま。それがサインドカード。しかし指を鳴らすとそのサインドカードも赤に。青いカードは1枚もなくなってしまう。



畳み掛けるような現象なのですが、私はすでに心が汚れてしまっているので、冒頭の表向きスタートのヒンズーシャッフルで、何となく「最後はカラーチェンジだな」というお寒い思考から離れられず。最終的には全部の色が変わるので不思議なのは間違いないのですが。手品の裏側をご存知ない観客の方には2転3転のインパクトを与えられると思います。昔からあるカラーチェンジプロットですが、(フォローするわけではないですけど)現象はスッキリ&スピーディー。



余談。人によるんですが、デビットはこのタイプの手品でありがちな"あの裏側をちらちら見せる動作"がちょっと鼻につきます。"左手に取っていったカードが徐々に乱れていってしまったので、それを後ろからトントンと揃える。その動作でチラッとバックが見える"ならともかく、綺麗に取れてるのに右手のパケットを何度もクイクイ返すのは私から見ると怪しすぎなんですが、皆さん如何でしょう…。同様にフラストレーションカウントで毎回裏見せる人とかも結構いますよね。そうそう、こんな台詞がありました。「追われていないのに逃げてはいけない」

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・WEE WEE MENATLIST:1枚のカードを選んでもらい表にサインもしてもらう。デックに戻してもらったあと、演者は別のところから1枚のカードを出して見せます。想像吹き出しの描いてある人の絵が描いてあります。想像の中身は空っぽ。しかし演者がその吹き出し部分を撫でると、そこにお客さんが選んだカード(6Dとか文字で)が現れる。さらにそのカードをひっくり返すと、それは先ほど観客が選んだカードで、サインもしてある。



これは多分に受けそう。いや絶対受けると思います。カードトゥーンぽい要因で、というとちょっと違うんですが。「CON-FUSED」と違い、サインするのが一人のときはこちらの方がいいかも。あと子供が観客のときは断然こっちですかね。なんと言うか現象が可愛い。お土産に渡して終われそうなのもディ・モールト・ベネ。

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・SUPERFLY:デックの中から1枚だけを見て覚えてもらう。演者は予言のカードを見せますが、見事に外れ。その外れてしまった予言カードに演者はマークを付けるが、カードを弾くとマークだけ消失。デックをスプレッドすると1枚だけ先ほど書いて消えたマークが付いているカードが。それはなんとお客さんが目で見て覚えたカード。さらにそのカードの裏を見るとそのカードだけ色が違う。



…あんまり感銘受けませんでした。トワイライトチェンジ…だったか、あの技法のキレが今一つだったので、マークが消失する瞬間がちょっと微妙だったのが影響しているのかも。これをするくらいなら、ここまでに出た違うトリックをしたいと思いますが、如何に。

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・THEY WILL CRY! WHERE'S MY CARD?:デックの中から1枚のカードを見て覚えてもらいます。演者はデックを表向きにスプレッドし、観客が見て覚えたカードを言ってもらうがどこにもない。覚えたカードが出てくるのは意外なことに…。



いつ見てもこのギミックはいい。トリビュート・トゥ・バローネの際に使うアレなのですが、完全にスプレッドしてなお消失してしまう公明正大さが素敵。ラストはお客さんの座っているイスの下(むしろお尻の下?)でも演者の背中に貼り付けてあったりしてもいいし、勿論デックケースの中に移動していても面白い。非常に応用力の高いギミックです。

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追記:
久々に家で…というか会社以外で書いた気がします…(笑)