教授の戯言

手品のお話とかね。

帰ってきたジョシュア様が見てる

■ Joshua Jay 「Talk about Tricks Disc2」


The Tricks

・Open Perception (Raj Madhok)
利き手や好きな色などを観客に聞いた後、演者は紙片に何かを書き込み観客に渡します。その後、デックも渡し、一枚ずつ表向きに配っていってもらいますが、好きなところで一枚裏向きにしてもらいます。先に渡した紙片を見ると8Hと書かれており、デックのどこにも8Hが無いことを示した後裏向きのカードを表にすると8H、という予言。

マドック氏の小さな工夫の複合が実に素晴らしい。ただ、ぶっちゃけてしまうと、「観客が一枚を裏向きにした瞬間に紙片を読ませ、即座にカードも表返して当っている事を示す」のが道理なわけですが、そうして無い辺りが若干演者の都合っぽいといいますか。勿体つけてるよ、ということでは良いのですが、流れとしては少し溜め過ぎかという感もあります。とにもかくにも視覚的な部分での説得力は相当に高いとは思います。



・Any Card at Any Page Number (Joshua Jay)
一瞬失敗したかと思いきやのアニーカードアットエニーナンバー。お客さんの指定した枚数目からはお客さんのカードは出てこず、最初から出していた厚手の本をめくると、その指定枚数目のページに、お客さんの選んだカードが一枚、予言として挟まっている。

エニエニ部分に関しては「うわ、きったねえ!」と、(もちろん誉め言葉ですけど)その解法にびっくり。ただ、その後解説を聞いていくと、お客さんの言った枚数目からお客さんのカードが出てこない部分のディスプレイ、その部分の方に感激しました。原理としては「ザ・ラストカード」のような説得力の持たせ方といいますか。解説見るまでその可能性を全く考慮していませんでした。
難点として大きめ・厚めの本でないと出来ないというのがあります。この辺りを考慮するとラストカードの方がコストパフォーマンスに優れていると思います。職場や学校等で厚手の本がその辺に転がっているというところでやるのであれば良いのですが、そうでないならわざわざ重たい本を持ち歩くよりラストカードかな、と思いました。



・Ninja Coin (Joe Givens)
カラテコインをゆっくりと行うバージョン。

レギュラーとスイッチしているのかと思ったら若干違っておりました。



・Riding the Wave (Rick Maue)
大きな封筒を取り出したあと、演者は観客に1から10の間で好きな数字を言ってもらい、封筒を開けるとその数字が予言されている。

解説ではかなり細かなことまで解説しているのですが、そもそも私にはそんなに不思議に思えませんでした。10分の1ってのは結構難しい確率っぽく見えなくも無いのですが、「うわ、スゲエ、何で!?」と思うにはちょっと難しいかなと思います。これやるならメンタルマジックで3桁4桁の数字を予言するタイプのマジックの方が不思議なのではないでしょうか…。。



・Llasser Open Prediction (Manuel Llasser)
あなたは10Hを選ぶと思いますよ、と言って、カードを表向きに配っていく。観客がストップといったカードは裏向きのまま少しパケットの上にずらしておき、何枚か表向きに配った後でずっと見えているカードを表にすると10Hである。

非常に不思議。いやはやどうなってんだろうなあと。ただ、コレも先述のジェイのエニエニ同様、「何でストップって言った瞬間に見せないんだろう」という疑問はありました。予言内容をあらかじめオープンにしておくのを"オープンプレディクション"と言いますが(そのまんまや)、不可能性が高い分、裏側での仕事は若干乱暴になりがちといいますか、これもその例外ではないかなと言うのが率直なところ。
なお、何度か自分でやってみましたが、視覚的説得力は結構高い技法です。残った部分の後処理を考えなければいけませんが…。



・Mates Prediction (William Eston)
オープンプレディクションのバリエーション。

コレはちょっとスピードというか、技法の滑らかさが問われるトリックですね。ラブアダブダブを片手でカバー無しで行う感じというか。ギャンブルで使うチート技法っぽい感じを受けました。



・Tap a Lack (Paul Cummins, performance only)
観客が一枚カードを選び、デックに戻す。続いて演者も一枚カードを選んだあと、そのままデックごと観客に渡す。演者が選んだと思うカードを一枚卓上に伏せて出してもらう。演者は戻してもらったデックから一枚を選択、演者が観客のカードを、観客が演者のカードをそれぞれ当てる。

凄く不思議。いや、2度見たら観客のカードを当てる方法は大体推測できたのですが、問題は観客が演者のカードを当てる方法。AさんのカードをBさんに当ててもらう際に、赤カードの中に一枚ぽつんとAさんの黒カードをコントロールしてBさんにフェイスを見せて…という方式はありますがそれなのか…?
なお「私だったらこうやるな」という方法は、あほらしくて書くのも憚られるのですが「一枚手触り的ないしは視覚的に目立つカードを入れておき、そこに手書きで"←私の選んだカードはこのカードの左隣、7Cです"とか書いておく」なんですけど、どうでしょうか、カミンス先生。

あとその風体に加えて、観客が露出の多いおねーさん方ばかりだと、なんだかシチリアンマフィアの休暇風景みたいで怖いです、カミンス先生。葉巻とコニャックもいかがですか。



・Across Coins (Joel Givens)
コインズアクロス。ラスト、左手の一枚も右手に飛行するかと思いきや、全部が左手に戻る。

部分部分非常に良く考えられているなあというのはあります。ありますが、それを差っぴいても手つきがもにゅもにゅし過ぎ。起こっている現象は不思議ですが、明らかに"何かやってる感"が多いのは気になりました。ラストのバックファイア的な現象は綺麗だと思います。



・Kickback (Ryan Swigert)
3段からなるキックバック現象。

非常に面白いです。ただ、ギミックの扱いが怖くて、私にはちょっと演じきれないかも…。これまたラストのチェンジはものすんごいインパクトですが、衆人環視の中やるには私はまだ若すぎるかなあ…。



・Switch (John Lovick) / Illegally Yours (Gregory Wilson)
白い紙片が、折っていく度にうっすらと模様が濃くなり、最終的には本物のお札になってしまう。

初見のときは面白かったのですが、二度目見たときはイマイチ。"手でカバーするたびに"濃くなっていく方が面白そうです。なんか冷静に見ると、折った面が濃くなってるのはそういう印刷なんじゃないの、と言われたらそれまでといいますか。そんなコト言わないと思いますけども、なんとなく。
なお解説時に、「まずビルスイッチはこの本…えーと誰が書いたんだっけなあ、…ああ、私だw」というギャグで不覚にも「お前かよ!」と突っ込んでしまいました。なおこの本というのは「SWITCH」という、ビルチェンジばかり300ページ以上にわたって解説されている、鈍器になりうる本です。うちにありますが、先述のジェイのエニエニにも使えそうですね。この本、図柄が多いので観客の前では迂闊に開けない感じがしますがw



・I Dream of Mindreading (John Lovick)
観客の心に思ってもらったカードをマジシャンが口に出して見事当てる…のですが、最後に演者が出したカードは表にするとブランク、デックの中身も全てブランクカードになっている。

驚愕した!なんか想像も出来ないオチで驚愕した!
必要最小限のキーインフォメーションで、観客のカードを見事看破するその悪魔的な手法に久々に感激しました。かなりデリケートではありますけれども。



・Beard Book (Rune Klan)
色々なヒゲの描かれたスケッチブックを見せ、そのうち一つのヒゲを選ばせる。スケッチブックを下げると演者の顔には…。

こういうの大好きw 宴会向きです。なんか前のが非常にクレバーだっただけに、腰砕け具合も尚更です。いやしかしすごくイイ。ここから入れば大体のルーティーンは許してもらえそう。



・Coins through Floor (Rune Klan)
床に見立てたクロースアップマットを3枚のコインが次々に貫通。

中々に見事。とてもこれの前にヒゲマジックをやっていた人とは思えませんw コインの貫通の際に使う注意の逸らし方と、実際にコインをマット下に運ぶ段の技法が素晴らしい。完全に幻惑されました。



・My Lady’s Other Ring (John Lovick)
サポート役の観客Aさんを舞台に上げ、「雑誌に載ってるトリックをやってみるので、このページの手順を読んでいって欲しい」とお願いする。Aが手順書を読んでいく。
「別の観客Bから指輪を借り」
「はい借りましたー」
「それを紐に通し」
「紐。えーと誰も持ってないと思うので、私のを使います。じゃーん。はい通しましたー」
「真ん中あたりで指輪を結び、指輪を握り、手の上で紐の両端を交差させ」
「えーと…ハイハイ」
「紐の両端を観客Cにもってもらい」
「お願いします。はいオッケ」
「指輪を消してください」
「はいは…って、ええ!?消す?まじで?」
「消してください」
「ちょwおまwww方法とか書いてあるでしょ」
「ないです」
「…おけ、やってみます」
で、指輪が消失。

「あ、でもこの指輪を貸してくれたBさん困っちゃいますね。続きはあるよね?」
「あるわ」
「なんて?」
「リングボックスを出して…」
「実は私のジャケット右ポケットにはリングボックスがあるんですねえ…、じゃーん。それで?」
「Bさんのところに、持っていって開き、こう聞きます。"これはあなたの指輪じゃないよね?"」
「オーケイ。Bさん、"これはあなたの指輪じゃないよね?"」
「…ええ、…違いますけど」
一同爆笑

今度は"失敗したときの手順"に沿ってはAさんに指輪を借り、Bさんに渡して
「これあなたのじゃないですか?」
「!?あれ?私のです」の後に、
「え、って事はアレですか、Aさんはスニーキービッチってコトですか、おいおい(スラングが訳せませんけどビッチって言ってるし、泥棒ヤロウってコトでいいのかな。いや、女だから女郎か)オーケー、これでBさんもめでたく指輪が戻ったね!」
「あの…じゃああたしの指輪は?」
「アッハッハ、見事しゅうりょー!と言いたいんだけど…まずいよねえ、Aさんの指輪がないもんねえ。おけ、もう一度手順を読み直してみよう。…ふんふん、あーそうか、ここで指輪を借りる人を間違っちゃったから現象がずれちゃったんだね。つまり、Bさんの指輪をあなたがしてたってコトは、その前のリングボックスの指輪ってのは…」
と先ほどのリングボックスを取り出し
「"これはあなたの指輪ではありませんよね?"」
「ええ、違う」
「取り出してみて?」
「!あっれ?あたしのです!マイガッ」



複雑な現象です。しかし面白い。若干リスニングが怪しいのですがそれでも面白かった。上のばか長い文章を要約すると
@Aを助手として舞台に上げ、指輪マジックの手順を読ませる。
@指示通りにBの指輪を消す。
@リングボックスを出す。その中に移動してるのか…?と思いきや全然違うリングが入っている。
@"失敗したときはもう一人から指輪を借りよ"とあるので、助手役のAから借りる。
@それをBさんの前に持って行くと、なぜかBさんは自分の指輪だという。
@となるとAの指輪は今度どこに消えたのか。
@手順をさらい直してみるとリングボックスが怪しい。
@あけて見せるとAのリングがしっかりとはまっている。
というマジック(エッセンスだけだと8行足らずに圧縮できてしまってちょいとがっくり)。

ただでさえお客さんの選定に気を遣う指輪マジックで、しかも借りる相手が二人という、この時点で結構ドキドキなマジックではあるのですが、是非とも演じてみたい作品。パーラーでやるにしても、指輪の真贋は本人以外には分かり難いので、持ち主の反応から他の方々に「あれ?なんかおかしくね?」という感覚を与えないといけない、…演出的にも非常に高度ですなあ。あと一般ピープルのワタクシには、演じる場面を確保するのが難しそうかな。




The Interview

The Moves

・Ace Location Routine
以下4つを繋げてAオープナーにしている。

・Eerie Spinout Subtlety (Salvador Sufrate)
デックの真中あたりから、表向きのAが一枚、ぬるりと回転しつつ出てくる。

若干ぎこちなさがあるか。


・Dribblocation (Joshua Jay)
ドリブルしているカードの中からAを一瞬でつかみ出す。

これは視覚的説得力抜群。普通にお客さんのカードを一枚当てるときの演出としても使い勝手が良さそう。


・Finger Flip (Patrick Stenberg)
右手で持ったパケットから左手に向かってカードを飛ばす。

最初に見たとき、ほんとにどこから飛ばしているのか全く分かりませんでした(まあ上か下かしかないんですが)。やってみると意外にきちんと飛びますし、キャッチの難度もグリーンのトップショットより断然簡単な気がしました。あれほど速くないからでしょうか。


・Benzais Spinout Subtlety (Julius Chan)
最後のAはxxとxxの間にある、と言ってAを前方に弾き飛ばし、その際に二つに分けたパケットのトップとボトム(要はAの前後)を見ると、宣言どおりの2枚である。

「一瞬見ただけでカードの配列を記憶できるんですよ」という演出で、上記のドリブルからのキャッチ→これ という流れは面白かったですが、Aの前後のカードを宣言するのは果たして不思議なのかどうなのか。


・Breakless Aces (Patrick Stenberg)
観客が分けた4つの山のトップからAが出てくる。

フレンチドロップのコメントにもありますが、かなり大胆なことをしています。原理的には昔からあるものですし、若干ディスプレイが違う程度ですかね。



・Cutting Off Colors (David Jade)
4つに分けた山のトップからAが出てきますが、分かりやすい目印があると演者は告げ、Aを再度裏向きにするとAだけバックの色が青である。

現象としては面白いが、やってることは相当直截的なのであまり好きではありません。何よりあの枚数もってたら絶対怪しいと思います(彼は手がでかいので、完全にカードを包み込んでしまえるので、あまり枚数を感じさせないんですけどね)。



・No Use Aces (David Jade / Damien Vapereau)
お客さんの分けた4つの山のトップからAが出てくる。

いや、確かに演技映像見る限り全く分かりませんでしたけど、これはどうなんですかねえ。手伝ってもらってる人からは技法丸見えだと思いますし、どちらかといえば映像トリックに近い印象を受けました。



・Hindu Control (Martin Gardner)
タイトル通りヒンズーシャッフルを用いたコントロール

セレクテッドカードをトップないしボトムへコントロールできますが、利点としてはそのどちらも全く同じ動きに見えること。



・Breeze Coins (Gaston Quieto)
マトリクスポジションに置いた4隅のコインが一枚ずつ消失。ラストの一枚が消えるかと思いきや元の位置に戻る。

ゆっくりゆっくり見せるには検めがききませんので、言ってしまえばテンポ勝負。滑らかにやればそれは不思議なんですが、私にはやる自信もやる気も無いです。



・And the Other Two Follow (Rune Klan)
銀貨2枚とチャイニーズコイン1枚をパースから出し、銀貨2枚をパースの中に投げ込む。振って確かに中に複数枚入っていることを示した後でパースを卓上に置き、その上にチャイニーズコインを置く。一瞬で左右の手から銀貨が1枚ずつ現れる。

これはとても賢い上に、音をうまく使っていて好きです。オチと呼べるほど現象的には強く無いのでどう組み込むかが難しそうではありますが。



・Rub a Dub Subtlety (Bruce Kinsey)
ラブアダブダブバニッシュと思いきや、右手からちょっとはみ出ていたコーナー部分以外は消えている。

これは意表をつかれました。紙片をいかに巧くドロップするかというのがポイントだと思います。



・Prediction Wand (Eric Buss)
ウォンドと思っていた棒が予言になっている。

丸めた時と広げた時で、色合いの持つ意味がまるで違うのはパズルライクで、こういうの好きですね。
「プログラム(パンフレット)をこういう風に使ってみせるといいね」的な例を挙げる際に使われた、実際のジェイの写真入りのプログラムを見てクラン氏が「Oh, cool!」とか言ってたり、しげしげ写真を見て「いい筋肉してるねー」とか言いつつ、何度も見ようとしてはジェイにハタかれるというシーンの方が面白かったですけどw

Behind the Scenes

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最近はアニメ観たり運動したり(ちょっと本業もしたり)HDDのバックアップ構成を根本から見直したり、したい勉強をしている内、手品についての熱は下がりっぱなし。アニメ見ている時間にちょいとデック触ってる程度で満足なんだなあという状況。フォールスシャッフルだけしてると、自分が何してんのかよく分からなくなるというか、トリップしてまいりますな。


「手品は奥深いといっておきながらろくに練習もせず、適当に見始めたエウレカセブンで号泣している。何故だ」
「…その方がラクやから…」
「お前はいつも、同じ手品しかしない。何故だ」
「…その方がラクやから…」
「ロープやエッグバッグなど、やりたくて買ったものを放置する一方、折角の週末に密閉型ヘッドフォンで"おおきく振りかぶって"のサントラを聴きながら延々3時間フォールスシャッフルをしている。何故だ」
「…えーと、それは私がアホ…やからですか」

久々に観たアルジュナの6話はやはりステキでした。つかアレか、エウレカでもそうですが私は藤原さんの声と演技に弱いのか。クレヨンしんちゃんの劇場版、まだ見てないけど見たら確実に泣かされそうだ。…そういやなんでクレヨンなんですか。

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ゲーム音楽のオーケストラコンサート「PRESS START 2007」にいってきまして、「TaT」の備忘が済んだらそっちもアップしますが、やはり音楽はいいです。比べるのもナンセンスと承知の上で言えば、やはり合唱も交えたあの"音"の迫力と比べると、選んだカードが当たろうが誕生日が予言されてようが、余り大層な事でも無いなあなんて思ってしまったり(元々そんなところ自体に意味は無いとは思いますがw)。

手品熱に関しては今までもずっと燃え上がったり冷めたりを繰り返しているのですが、ハッとする生手品に再び出会うまでは大幅トーンダウンかなあ…。