教授の戯言

手品のお話とかね。

CREATOR WORKS


■ ながおゆう「CREATOR WORKS」

すいません、ぶっちゃけ何かを期待してから見たわけでもないうえ、最初に映ったグラサンの長尾氏を見て「わ、ちょっと怖い」とか思ってしまいました。しかし中身は非常に面白かったのです。長尾さんご本人の解説もやけに腰が低かったし、いい作品集だと思います。ちょいとお気に入りです。なぜだろう、「スミレ16歳」のスミレを操る"オヤジ"を思い出すのは。

その辺の雑感はさておき、コストパフォーマンスがいいだけでなく、実用的な演目が揃っているという印象です。ただ、ほぼ全編カードマジック、ひとつだけコインも使った奴もあるよ、という構成なのでそういう意味ではカードマジック好きな人にお勧めです。コインのマジックは個人的に大ヒットだったのでマスターに向けて頑張ります。

昨今買った「ロミオ×ジュリエット」サントラのあまりの出来の良さと、コードギアスの最終回の感涙っぷりさえなければすぐ書いていたところですよ!(要約:DVDは凄い面白かったんだけど、手品以外の趣味の方にハァハァしていた) ロミジュリサントラとコードギアスについては、需要はないですが個人的に書きたくて仕方ないので今度書きます。特にギアス、スタッフの皆様、2年間の楽しみをありがとうございました。

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<収録内容>

・Goes and Comes
選ばれたカードがデックに戻されます。デックから4枚のカード(勿論選ばれたカードではなく全部ばらばら)を抜き出して、ケースに入れます。選ばれたカードはデックからケースの中のパケットに移動。そして次の瞬間観客のカードは消失、デックのなかから登場。

「いや、ほら、そこが怪しいですってば」とか思ったところをちゃんと最後に見せてくれるところが憎いw カウントでやられると疑念を持つところでしたが、そうではない解決をチョイスしており、あれ、どこで処理したんだろうとか素でだまされていました。あとで思うと5枚から4枚になっている部分を先に検めたほうが流れとしてすっきりするとは思いましたが。 


・Coin Thre Cardcase
コインがカードケースの底を貫通する現象。普通に使っていた開封済みカードケースを使ったり、底に明らかに貫通できない程度の穴があるケースを使ったり、未開封ケースを使ったりするバリエーションあり。

これ、面白いです。即席テイストあり、練習しがいがあり、かつそこまで変態的難度でもなく(1時間程度でかなり成功率は上がった)、バリエーションがあるのがステキ。個人的には未開封のケースに貫通しちゃうやつがたまりませんでした(観客の注意を他に向けるという意味では、小さな穴が開けてあるバージョンが一番かと思います)。また貫通の瞬間にするかしゅっという音も、なんか本当に通り抜けちゃったかも、的な音で自分でやってて面白いです。演技で貫通したという直後「え、パームしてんじゃないの?」とか思ったんですが、にこやかに両手を検める長尾さんが素敵すぎでした。
割と誰でも考えそうなことなのに、少なくとも私は他で見たことがなく、非常にステキなトリックだと思います。


・Easy Estimation
観客の指定した回数目のカットで、観客の選んだカードが現れる。

他にいくらでも代替がきく技法やギミックはあると思いますが、この方法は確かにイージー。先述の通り、他にカットをしたりとか色々な手法はあると思うのですが、ここでやっている"観客に選ばせると同時に準備を済ませる"というのは、解説を見てかなり驚きました。いや、実際本当に単純なことなんですが、賢いなあと。


・Coarse Triumph:
テーブル不要のトライアンフ。

スロップシャッフルを使うタイプのトライアンフです。手順そのものは特段目新しくなく、敢えて言えばスタンドザローが難しいかな、というところでしょうか。しょわーっていう音があるとより"混ぜた感じ"が出るのですが、私は例のグレイシャッフルもまだまだマスターできず。テーブルがない状態で出来る手品ってやっぱりいいんですけどね。


・Rising Card 2007
ライジングカード。ギミック使用。

実は同じような仕掛けを作ったことがあったのですが、こちらは段違いに手が込んでいました。何と言いますか、手品の現象より、工作過程に愛を感じました。この作品はデックを触った状態でのライジングなのですが、お客さんから見た時にノンギミックの小指でのライジングとあまり印象は変わらないのではないかというのがふと思ったことです。簡便さでは上記のノンギミックで即席でやるタイプ、そうでなければグラスに入れて演者は一切触らない感じのほうが不思議に思える気がします。色々不可能性を追求したライジングは多いですが、今まで見たやつで言うと都々さんの一度に二枚がスコンと出てくる奴はテッパンだろうなあ…。
これのギミックは、工作プロセスが好きな方なら、おそらく工作の解説見るだけでも楽しめるレベルだと思います。長尾さんいわく雑に扱っても大丈夫なように、というコンセプトだそうですが、よく出来てます、本当に。


・F.T.C. Control(Harapan)
カードコントロール。正式名称:Fan Twirl Closer Control。デックの真ん中あたりに返してもらったカードをワンアクションでトップに持ってきたり出来ます。

解説を見たとき何だか挫折感を思い浮かべたのですが、理由を思い出せました。Flicking Fingers「The Movie」のなかで、Manuel Muerteがやっていた「Semi-Automatic」という手品(というかテク)があって、まさにそれだったのです。もっともそっちは左手トップに返してもらったカードをワンアクションで左手にパームすると言う、個人的にはかなり絶望感漂う使い方でして、練習始めて数時間、小指が痛くて痛くてやめた覚えが。また練習すれば…今度こそ出来るようになるでしょうか。


Air Control
カードコントロール。左手パケットトップに返してもらったカードの上に、右手に持っていた残りのパケットをくるんと回転させて投げ落とすが、その時点ですでにパケットトップへのコントロール完了。

上記と原理は同様だが見え方はかなり異なる。個人的な理想とする「静謐さ」とは縁遠いですが、あれでトップコントロールされたと思う人はまずいないはず。そういう"観客の想像の埒外"という意味で、非常に怖いテクニックだなあと思いました。え、私の演技は静謐なのか?私は静謐さを理想としてはいますが、基本的にへらへら笑っての演技スタイルなので、そわそわしまくりです。いや、実はホントにこれでトップコントロールできたら、かなり自分の演技スタイルに合うんですよ。ということで、今夜もまた、ベッドの上で練習、カードをぶちまけるのです。できないよう。


・Top Cover Pass 2007
名前のとおりカバーパス。

左側からの撮影でも見えづらかったのでかなりカバー度合いが強いと言えましょう。動作の中に混ぜられたら確実に見えない手合いだと思います。私もカバーパスはたまにやるのですが、トップ面が全く動かないことを意識しすぎて右手の下から結構漏れている(気がする)程度でして。みんななんであんなに動かないんだろうなあ。世の中変態ばっかりですなあ。



あ、ミスターマジシャンでも扱ってますね。

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トンプソンが来ると知っちゃあ、行かないわけには参りません。なんか今回逃したら、生きてるトンプソンには二度と会えない気がしますし。ということで19日、憧れのマジシャン、グレート・トムソーニに会ってまいります。くっはー楽しみ!マイベスト手品映像シリーズ「Commercial Classics of Magic」の演者に会えるだけで望外の喜び。あ、ちなみに同じショーにルセロも登場らしいのでそちらも楽しみです。ショーの場合は私の愛する変態メキシカンターンオーバーはやって頂けない気もしますが。

なお予約の際「この間読んだ石田(隆信)さんのコラムが面白くてー」的なことを雑談で喋っていたらママさんに「石田さんこれに来るわよ。ファンですって言ってみれば」とかいわれてしまいました。「いやあ、顔存じ上げませんし」といったら昔のレクチャーノートを引っ張り出してきて、そこの似顔絵を見せ、「これ、ホントにそっくりだから!」とかやられました。楽しいなあ、マジックランドw 
あれ、一人参加?カップルでのお申し込みでもなく?一緒に行く友達いないの?とかは思っても言わない約束だろおまいさん。いやしかし負け惜しみでもなんでもなく、憧れのトンプソンに会うのに知人がいるのは邪魔な気もしなくもない。観客としてデイブを超えることは難しそうですがチャレンジはしたい。そのためにはボールとネットをやってくれることを祈るばかりです。
「ハイ、デイブ、いまこっちの手にはいくつボールがある?」「2つだ」「ノーノーノー、デイブ、3つだよ」「!(例の顔)」「もう一回やるぞ、はい、今度はいくつ」「…3つ…いや、2つか?」「いやいやいや、デイブ、残念。全部消えちゃってるんだ」「!(例の顔)」 …頑張ります!(デイブ的演技を)