教授の戯言

手品のお話とかね。

Yannick Chretien

■ Yannick Chretien 「Yannick Chretien」

David Stoneの「The Real Secrets Of Magic」のつくりがスタイリッシュで気に入っており、ヤニックさんをよく知らない割に即買いしておりました。中でも書いてはいますが、Joshua Jayの「Talk about Tricks」の中で見ているものもあったりしましたが。
あと、このDVD見ていて思ったのですが、1時間くらい同一人物の作品見ていると、演者の好きな技法と言うか解決方法って段々分かってきますね。分かってきてもどうということはありません(ミスターマジシャン風)。

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・MISHAND
観客の掌に一枚カードを裏向きに置いて、後で見る事を言う。別の観客にスプレッドしたカードから一枚とって、戻してもらう(9D)。表向きになると言って広げていくが、違うカードが裏返っている(2H)。手元のカードを見てみるように言うと2H、演者の手元を見ると表向きのカードは9Dに変わっている。

手元のデックでのカードの処理がうまいと思った。が、観客の手のひらに視線を誘導するのはともかく、他の観客の立場からすると演者の手元に注目され続けそうな気もして、そこは微妙に不安な気が。全体的には安定的な動作だけで完結する上、準備もお手軽。個人的に大好きな「Club Sandwich」はギミックを使うが、これは使わないのも魅力か(そのかわりに使うものもありますが)。



・OPENPREDICTION
観客に好きなカードを言わせ(AC)、シャッフルしたデックを渡し、一枚ずつ表向きにして置いていってもらう。"ティンときた!"タイミングで止めてもらい、手元に残ったカードのトップを裏向きのまま重ね、残りのデックもすべて表向きにしてその上に重ねる。いまデックの真ん中あたりからは裏向きのカードが一枚、半分ほど横に飛び出している状況。スプレッドし、すべてのカードが違うことを示して裏向きの一枚を表にするとAC。

あー好き。こういうの。唯一の不安はお客様がデックを持って配る辺りなのですが、まあコンニチワしちゃうことは無さそうではあるんですけどね。。。しかしこの手の現象って、後に何も続けないほうが良さそうな気もします。手品はみんなそうかもしれませんけど。ノーマルデック・準備無しでできるのもポイント高し。このカードの秘匿方法は紀良さんのDVDで初めて見たんですが(実際にはちょっと違いますが理屈はほぼ同じ)、面白いですね。



・REFLiPPED
発売前から話題沸騰のハイパーウルトラビジュアルトランスポジション。一瞬にしてAとKが入れ替わります。

フレンチドロップのアオリは面白いなあ(上記原文ママ)。ジョシュアジェイのDVDで見たけどパクリじゃねえのか、とか思ったら元々ヤニックさんの作品でしたw とはいえ詰まるところ、リセットの4枚同時バージョンみたいな感じで、ゆうきさんのDVDにあったリセットの2段目と交換原理自体は同様。しかし4枚いっぺんというのはなんとなく説得力が無い気がしなくも無いです。手品愛好家としては「おお!」とか思うのですが、非手品人が見たとき、現象がさくっと起こりすぎて「え?なに?なに?」とかなってしまうイメージ。ああ、このもやもや感が伝えづらい。



・RED/BLACK/ACE
4エースプロダクション。Aを取り除いた後のデックはオーダー順通り。

なんかもにゅもにゅしてるー!と言う感じで、Aプロダクションはパタンパタンと出て参りますが、私はどちらかと言うと、その後で順序が揃っている方にハァハァしました。



・COiNTROL
最高にクリーンに消えたコインがデックの中程から出現、観客が選んだカードを見つけ出します。

と、フレンチさんが仰っておられる!なんだろう、「カードあての部分は正直どうでもいいんです」。多分解説見た人の8割はそう言うであろう自信があります。この作品のキモは、"コイン1枚を消す手法"にあるのですが、…これホントに営業とかでやってるのかなあ。ストローリングとかでは、失敗の可能性が高めなこういう技法は普通入れないと思うんですが…。私なら断然スリービングです。ふじいあきらさんクラスなら、ひょいっとやれそうな感じですが、私には無理。あと解説、わざわざ中から撮るなw なんか盗撮みたい。



・WHOOPER
二人の観客のカードで行うキックバック現象。

…こっちは詰まるところ、ワタクシの大好きな「Club Sandwich」であります!差が無いことも無いのですが、ディスプレイくらいで基本は同様のものです。



・HCDS HiRO SAKAi
ヒロ・サカイやポール・ハリスの素敵なテクニックを使ってのハイビジュアルな連続チェンジです。エースがビジュアルかつスピーディーに変化。めまぐるしく変わるスートが素敵です。

だそうです。
「カラーチェンジなどはジャグリング的なものだから、手品として不思議かどうかはこの際言うまい。だが、明らかに演技映像上ですら複数枚と分かるカードを取り上げ、放り投げたらフェイスが変わったところでそれは手品ではない!」と、(脳内)海原先生が。綺麗なんですが、3回もやる必要性は感じません。と言うか危険。



・AUTO CHANGE
ハーフダラーが消えては出て消え、最後には紙幣へと変わります。

このマジックもキモはコイン一枚をどう処理するか、に尽きます。そしてその手法は先の"COiNTROL"と同様なのですが、いやしかし綺麗に処理はしているけども。本当に普段やってるのだろうか、これを!フランスは凄いや。あと中から撮るのはや(略)。



・TWO BACK
選ばれたカードを探し出すと言って、一瞬にしてそれ以外のカードを表向きに。もちろん、裏向きのカードは選ばれたカード。しかし、表返ったカードを裏に返すと・・・最初とは、別の裏色へと変化しています。視覚的効果の高いスピーディーな手順です。

完全に幻惑されました。カラーチェンジングデックなのですが、ギミックが実に適切に使われている作品。大胆さと繊細さの同居するいいトリックだと思いました。デックの扱いには若干の注意が必要そうですが、あの効果が(ぱっと見)技法抜きで起こせるならいいかなと思えます。紀良さんのショップで扱っているトライアンフと原理が同じだった気がします。が、曖昧な状態の虎眼先生くらい記憶があやふやなので違ってたらごめんなさい。



・BETCHA
任意に選んでもらったフォー・オブ・カインドが瞬時にポケットへ。

難度高し。観客配置によっては相当厳しいと思います。カードトゥポケットなのですが、4つのポケットからではなく2箇所から交互に出しており、ちょっとずるくね、とか思ってしまいました。ここを気にする観客はマニアだけだろと言う突っ込みはともかく、個人的には4つのポケットから出して欲しかったかなあ。ガイ・ホリングワースのみたいな。なお同様の現象をやるのならデュプリケートなどを使ってもう少し楽をしたいです。1枚をポケットから出す間に、ボトムにコントロールした4枚をどこかに回収、4箇所から出し終わった後にデックを渡してほかに同じカードが無いことを示したり。…本当に私の代案は夢が無いですね。



・RUBBER RETRO
リセット。Kを輪ゴムで縛ったにもかかわらずAと入れ替わる。

映像で見る限りは不思議。ただし、本当の意味で"クロースアップ"の場合はおそらく怪しい。理由は枚数。手品的目線になっているせいもありますが、デック上の2枚を1枚に見せるのと、パケットの中の2・3枚を1枚に見せるのは根本的に次元が違うと思います(前者の方が簡単)。DVDで見ると本当に不思議なんですが、目の前でとなると複数枚を本当に綺麗に扱えるベナタークラスの人じゃないとダメです多分。手品をしない人がマジシャンの扱うカードを素直に1枚だと思っているなどと過信すべきではないと思いました。



・OPEN TRAVELERS
The Real Secrets Of Magic」でDavid Stoneが演じていた「Open Traveler」じゃねえのかと思ったら、もともとこの人の作品w

Stoneの時も書きましたが、これは本当に秀逸だと思います。確かにずーっとKが出てきているわけですし、その流れでKが4枚飛行すると思わせて、最後に来るどんでん返しがたまりません。多分昔からこの手のオープントラベラーバリエーションはあったと思うのですが、初めて見たのがStoneのだったので非常に好きな作品です。
あとヤニックさんは複数枚のカードをひょいひょい抛るのですが、脱力してていいなあと思う反面、レストランなんかでやる場合はコンディション的に危ないのではないかと感じました。多分観客は突っ込まないけど、複数枚数に対しては絶対怪しいと思っている気がする。…なんかさっきから「お前は複数枚のカードの扱いのせいで官公庁へ出入り禁止とかになったのか」的なトラウマガイの発言っぽくなってますけど、私は別にダブルカードを指摘されたことはありませんよ。もちろん気付いても黙っててくれる観客相手にしかやってないからだと思いますし(なんという幸い)。…でも他人の演技ではいつも気になっていますw そのくらい複数枚カードと言うのは難しいと思っております。



ALLERGY
アレルギーだというストーリー仕立てのトーン・アンド・レストアードとカード・トゥ・ポケット。

トリネタで持ってきている割には、と言う感じがしました。面白いのですが、現象が散漫な気が。ただこの作品に限らず、私は卓上のカードにさりげなくアディションするという手法自体が大好きなので、その点でもうOKです。



■■■ BONUS ■■■

・YANTRiX(解説なし)。
信じられねーかもしれねーが、今起こったことをありのまま話すぜ。俺は普通のチンカチンク現象かと思っていたんだが、気がついたら一瞬にしてハーフダラーが全部チャイニーズコインに変わっていた。手品とか超能力とか、そういうちゃちなもん…だとは思うんですけど、なんかきっとトリシェルとかとんでもないグッズを駆使しているに決まってますよ。そう信じたい。


・The MUSCLE Vanishを使った手順「DOLLAR to CHINA」を解説
銀貨が穴あきコインにチェンジ、な現象。で、処理にはまたあの技法ですよw 


・"French Championship of Magic"で第一位に輝いた手順
2枚のQ(片方は表向き)が一瞬でAに、デック上で更に1枚ずつQを見せるもそれぞれAに(4Aオープナー)→OPEN TRAVELERS→AとQ4枚ずつ使って、Aでのツイスト現象+Qへの変化、裏向きのそれらとよけて置いたAを表向きにしたものを重ねると、AとQが表裏交互に並ぶ(ヨーキムのAces Intermezzoのような現象)→YANTRiX→エンドカード(XAN'Sってどういう意味なんだろう。フランス語はよく分かりません。thanks?) 


・David Stone演技の「OPEN TRAVELLERS」
REAL SECRETSでもやっていましたが、カードが出てくる瞬間の手の動き(くいっと手の甲が上に上がる感じ)が、原案よりカードが出現した感を際立たせていると思いました。