教授の戯言

手品のお話とかね。

ジョシュア・ジェイ レクチャー

3月31日、ジョシュア・ジェイのレクチャーに参加してまいりました。目立って変態なことはしていないのですが、硬軟織り交ぜたレクチャーで楽しめました。あと彼、結構シャイな気がする。気のせいかもしれませんけど(単純に英語圏じゃないので話を切り出しづらかっただけかも)。

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1.A Charming Chinese Challenge
チャイニーズコイン3枚が1枚ずつ紐抜けするルーティーン。

Troy Hooserの手順を元に、ジェイなりのアクセントを加えたものとのこと。「後ろの方にも見えやすい」「テーブル不要」「いかにもなコインマジックっぽくない」、というのが好きな理由だそうです。これはお客様の手の中で現象が起きたりしますし、先述の通り現象が分かりやすい。
最後の1枚についてはスペルバウンドを用いて処理する方法と、難度は上がるが空中で再キャッチする手法(ストライキングバニッシュの要領)があり、個人的には難度の高い後者がかっこ良かった。私に出来るかどうかは別。



2.Holy Blank
最初に1枚のカードを卓上に伏せて置く。観客にJOKER以外の1枚のカードを言ってもらう。言ってもらったカード以外が全部消えてしまうということを言ったあとでフェイスを見せていくと全てブランクに、JOKERを2枚取り出し、それを使って卓上のカードを表にすると…。

今アメリカではこの現象がちょっと流行っていて、幾つもこの手のルーティーンが見られるそうです。ちなみにこれは売り物として出したばっかりとのこと。他の物と比べて「当てられるカードはJOKER以外の制限がない」「面倒な計算不要」「一部しか見せられないなども無い」といった特徴があるそうです。

現象的に物凄く綺麗。ヒンズーシャッフルをしながらバックを見せる手法がありますが、彼の手順だと、左手でパケットを持ったまま右手のカードのフェイスを指差す動作でナチュラルにバックを見せていました。こういう気遣いみたいのがスマートでグーですね。



3.Cornered
観客に財布(というか札)を借り、財布を返す。札の端を破りとって観客に戻す。ハンカチで演者の手元の札を隠すと消失。先ほど返した観客自身の財布から折り畳まれた札が登場、切れ端とあわせるとぴったり一致。

観客が、自分の財布から折り畳まれた札が出てきたときの衝撃ときたらw 巧妙なんですが演者の負担も準備も少なく、かなりコストパフォーマンス良さそう。問題はやる度に破れた札が増えていくことなのですが…w



4.Vegas Visit
石田天海の「6 Cards Repeat」と、Bill Maloneの「Sam the Bellhop」を基にしたおはなしマジック。ラスベガス旅行の話をしながら、手元の5枚のカードが次々と別のカードになっていく。

最終的には20枚近く出るのですが、動きのある中だと本当に枚数って分からないものだなと痛感(勿論たくさんありそうだなってのは分かるのですが、あんなにあるとは思いませんでした)。材質の問題もありますが、彼の場合、カウントのたび最後の1枚がホントに1枚なので説得力がありました。ただ、タロットカードやポーカーの役などの話があるので、西欧文化圏なら観客はもっと笑うんだろうなという感じがします。
全然関係無いですがニコ動で、アイマスのお話で「Sam the Bellhop」やってる人がいらっしゃいました。コメントもあったかくてなんか良かった、というかよくぞこれで作ったなと。おそらく"765"から発展させていったと見ましたが真実やいかにw



5.Totally Triumph
トライアンフ現象と4Aプロダクションの複合。
ベベルの手法によるカードのディスプレイの説得力が素敵。解説だと簡単に聞こえるのですが、実際やると難しいんですな、これが。



<休憩>



6.時間の予言(タイトル不明)
腕時計の竜頭を示し、回すと時間が色々変わることを説明。「あなたの行動に影響を与える」旨をお伝えし、観客に裏向きのまま竜頭を好きなだけ回してもらう。裏向きのまま演者はビビっと感じた時間を伝えると見事当たっている。その後影響が無くなるとどうなるかという事を言って時計を再度見ると…。

友人と話してて思いついた、とのことですがこれは凄かった。なにが凄いって、図々しさがw 解説聞いて、あまりの図々しさにびっくりしましたよ。いや、解説だけ聞いたら間違いなく「いやいや、それはねーですw」とか思うんですが、あれホントにそう見えるんですよ。なに書いてんのかよく分からないと思いますけど、彼の演技見て、解説聞けばご納得いただけるはず。
あと今気づきましたが「〜ねーです」という荒っぽいんだか丁寧なんだか分からない、最近なぜか普段の会話でも出しがちなこの語尾は、変態人形師の第3ドールの物言いじゃねーですか!驚きです。癖になる前にやめたいのですが、治癒する気配がねーです。



7.A.C.A.A.P.N(Any Card at Any Page Number)
観客Aに一枚カードを選んでもらいデックに戻す。観客Bには1〜52の中で好きな数字を言ってもらう。デックを言ってもらった枚数分配り、そこのカードを取り出すが選んでもらったカードではない。最初から置いてあったハードカバーの手品本を取り上げ、その数字のページを開くとカードが1枚、表にすると観客が選んだカードが予言されている。

以前彼のDVD「Talk about Tricks」を取り上げた際にちょこっとだけ書いているので内容は割愛(読み返すと全くもって大したこと書いてないことが判明するのですが、そこはまあスルーで)。今回はお客さんの指定した数字が40後半ということで、たくさん配っていましたw 原理知っててなお、あのデックはレギュラーに思えるくらい公明正大に色々なカードが見えますね。生で見るとやはり不思議きわまりねえです。

ちなみに彼がこれに使っていたハードカバーの本は、Simon Lovellの「The Son of Simon Says! More of the Close-up Magic of Simon Lovell」( L&L Publishing刊 197頁)です。誰も興味ないと思いますが、私は興味あったので一応。休憩時間中に本のタイトルをじーっと見ていたらジョシュが不思議な顔をしていましたw どう見ても不審者です、本当にスミマセンでした。



8.Collector
表向きのA4枚を取り出す。そのあと観客3人に1枚ずつカードを選んでもらい、デックから突き出させた形で見せる。そのあと、突き出したカードを1枚ずつとっていくが、取り終わった時には表向きのA4枚の間に選ばれたカードが挟まれている。

"DISCRETE DISPLACEMENT"というテクニックを使ったコレクター。あんなに速く集まるコレクター初めて見たかもしれません。極めて明快かつ単純な解決法なので、解説を聞くとその速さにも頷けます。最近この技法を練習しているのですが、"どこまでばれてないのか"がよく分からない。ちなみにこれについては本当に目と鼻の先でやってもらったのですが、全然わかりませんでした。むしろこのあとどういう手品になるのかと思っておりましたよ。



9.THREE COIN VANISH
3枚のコインを取り出し、1枚ずつ消していく。で、全部無くなる。

やっぱコインマジックはギミックコインですな!使うのはESとFCだけ。その昔Schoolcraftで先述のギミックコインを買ったときに、真っ先に考えたコイン消失法そのままでしたw もっとも、ラスト1枚まで完全に消えてしまった時は素で驚きましたけれども。
彼はTango社の製品を使っており、レクチャー現場でも売っていました。多分ライセンシング契約というか、「Coinman Walking」でワトキンソンがSchoolcraft製のコインばっかり使ってたように、なんかメーカーとのやり取りがあるんだろうなあ、と手品とは関係無いところで考えたりしていました。私もなんかこう、グッズ供与を受けたり提灯記事を書けるようになりたい(「むしろオマエが実演した上で観客に購買意欲を湧かせろ」という話ですか。それは無理!)。

ギミックコインというと「高いが、精度を求めるならやはりLassenだろ」「古いな、いまはSchoolcraftだって」「ブランド厨乙。Johnsonだろjk」と、Magic cafeでは"コイン馬鹿一代"的な人たちが日夜舌戦を繰り広げているという、果ての無いメーカー論議イメージが(私には)ありますが、Tangoは安価でいいですよね。
ギミックコイン(の特に機構の部分は)見せるものでもないし、そもそもあまり精度とか関係無い気がします。しっかしFCが3千円で買えるんだものなあ。私の買ったSchoolcraftのやつは100ドルくらいしましたよ。Tangoのやつは若干ロック機構つきっぽいというか、厳密にはロックではないんですが振らないと開かないのでちょっと欲しかった(逆にSchoolcraftのはグラビティーFCと言うらしく重力だけで開くのです。どっちがいいかとかは演技内容によるんですけど)。
なお、その後お会いした高校生に「普通は振らないと開きませんよ」と諭されてショック。そうだったのか…。振らないで済む分、同じ演技内で増やしたり減らしたりも出来て、確かにこっちの方が応用範囲が広そうではありますね。ふむふむ。

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その後は彼の宿泊先近くの居酒屋にて。色々見せて頂きました。多分にゆっくり話してくれているせいもあって、彼の英語は非常にわかりやすいのですが、イマイチ初対面の人と英語で会話を盛り上げるのが難しかった。
レッドクリフ見た?」「ああ、見ましたよ」「僕まだ見てないんだけど、どうだった?」「あ、かなり面白かったですよ、劇場で見ました」「へえ、DVDで見ようと思ってるんだけど日本ではもう出てるの?」「いや、まだだと思うけど・・・」という、手品とは全く関係の無い話の方が続きました。いやいや、だって、あんな世界屈指のマジックマニア相手になに話すんですかw 
「正しくはジョシュアですか?ヨシュアですか」「ジョシュアって呼ぶ人が多いけど、ヨシュアでも別にOKだね」 …私はなにが聞きたかったんだw
「カード以外はなにやるんですか?」「コインかなあ。他はあんまりやらないよ」 まあ彼の「あんまりやらないは」あんまり信用できませんけど。並のマニア以上にはやってそう。
「好きなマジックのプロットはなんですか?コレクターですか?そういやさっきのも不思議でした (飲み会の場でもちょっと見せてくれたので)」「ありがとう。コレクターはまあ好きだけど、やっぱエースアセンブリかな」 といいながらやってくれたエースアセンブリもまた不思議で。ラストにまたAが集まるのかと思ったらロイヤルストレートフラッシュになるのですねえ。キイイ。
ちなみにLとRの発音の差(主にCollectorという時の"レ"部分)に自分なりに気を遣ってみたのですが、多分私、あんまり差が作れてません。更に言えば、気を抜いてそのあたりを意識しないで適当に発音していたときも普通に理解はして貰えていたので、まるで意識する意味がありませんでした。うう。まあネイティブがたどたどしく喋る日本人の発音に突っ込むことは無いか…。「ノーノー!その発音だと"校正担当者"だぜ、ジャパニーズストレンジガイ!HAHAHA!」とかw

飲み会終了後、店の前にてオープンテラスにいた無関係の方に写真を撮っていただいたのですが、終わったあとジョシュは彼らにカードマジックを見せていて、ああ、こういう風にさらりと演技モードに入れるってのは凄いなあと思ったり。撮影してくださった男性を含む男女4人組、女性は英語も堪能で、反応がまんまストリートマジックの外人反応でした。くっ、私もそういうイカス反応がしたいです。