教授の戯言

手品のお話とかね。

菅原茂レクチャー

▼本日13時半より東陽町江東区文化センターにて。菅原さんは元々テンヨーの社員の方で、テンヨーマジックグッズの開発部にいらっしゃったそうです。イベント直前に主催の方にお誘い頂いたので遊びに行ってまいりました。・・・まあ有り体に申し上げれば、本日開催の梶浦由記ライブに行けなかったんです、チケット取り損ねまして。だからこっちに行けたわけですが。
しかし"マジックレクチャー"というより、"製品を取り上げつつの開発秘話"を聞きにいくとか、どんだけマニア向けなんだよとか苦笑いですね、もう。でも楽しかった。開発秘話も歴史秘話の一つってことで、梶浦さんのstoriaを聴きながら向かいました(せめて参加したふり)。
菅原さん、と聞いてもなんとなくピンと来なかったのですが、「アートバンク」(入れたお金が消える貯金箱)もこの方の作品だったのですね。帰宅してテンヨーのページを見たら、まあ多くの作品を手がけてらっしゃった方で。
商業作品の成り立ちを聞くなどというのは初めての経験でしたが、予想通り一朝一夕に成るものではないのですね。技術論が来るのかと思いきや、「道具で完結するようには作ってはいるが、演じる時の自分を客観視しないとただの作業になってしまう」「道具をもっと大事に考えてください。あとなにより、お客様にどう見えているかを常に考えてください」「基礎が無い人はうまくなっても観客の反応を見ながらの柔軟な対応が出来なかったりするので、基礎は大切に」など、含蓄あるお言葉満載でした。「知恵の輪って、真ん中の作業部分をすっ飛ばしたら手品みたいですよね」ってのも納得でしたね。

ちなみに私はテンヨー製品に物凄く疎く、大抵のものに引っかかる自信があります!というかパスとかマルチプルリフトとか、そういうテクニック系などは分かりやすいですけど、テンヨー製品のようにギミックが堂々と使われるものって、知らないと疑いようも無くて素敵ですよね。前も書いた気がしますが、テンヨー製品をみかめとかそういうクラフト系のメーカーが再販したら絶対買うんですけど。過去の名作をリニューアル、のような。…こういう流れ、ナシですかねえ…。

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1.シースルーカード
私はてっきりPipsがテープかなんかで、取り外し&再接着が可能な感じなのかと思っておりました。勿論全然違いましたw


2.菅原 茂のリングエスケープ
シルクの真ん中に小さなボールを置き、四隅を上で束ねる。束ねたところからリングを通すと、径が小さいのでボールが閉じ込められた状態に。それをコップの中に入れ、リングを外さないとボールが出てこない旨を説明。出たシルクを輪ゴムでコップの外周に沿って固定し、暫く振っていると「ちりん」とリングの外れた音が。シルクを下向きに絞ると見事ボールが上がってくる。

ちなみに同名のこれとは違います。天海賞のレクチャーブックにはあるそうです。凄く不思議でした。実演の方が仰ってましたが、確かに「読んでもやる気がしない」類っぽいけれど、実演を見るとやってみたくなりますね。これも日常の本当に些細なことをきっかけに原理に気付かれたそうです。タネを知ってしまったから色々言えますが、あの小さなポイントが現象の実現に必須なのかどうか、解説を聞いてなかったら物を渡されても全く判らない気がします。
これの解説で出た、「シルクを検めたりコップを検めたりと、手品愛好家は現象とか種を知っているからそういうことをやりがちだが、本来そんなものは検めるものではない」というのは目から鱗でした。確かに、
演者「普通のトランプです」 観客「じゃあ普通じゃないトランプって何だよw」 ですしね。


3.エイトペネトレーション
デックからカードを取り出し、黒い窓付きの封筒の中に入れる。真ん中に鉛筆を通し貫通していることを示した後、鉛筆を抜いて中のカードを取り出すが、穴が開いていない。

驚愕でした。作ってみたい。見せ方の細かなポイントも非常に興味深かった。実演の方が"本当はやっちゃいけない見せ方"をしていたそうで、それは聞くとごもっともと言いますか、逆に貫通現象に慣れているマジシャンだからこそ、ぞんざいに扱ってしまいがちな観点だと思いました。そうですよね、尖ってるものでなかったら、バイシクルに穴開けるのって、かなり無理がありますよね。尖ってても難しいと思いますけど。これの解説であった「貫通しているシーンを検めたくなるのは分かりますが、鉛筆でトランプの真ん中ぐりぐりしたら穴が開いて通るのは当然であって、全く不思議でも何でもない、検めるべきポイントでは無い」と言うのはご指摘どおり。後ろめたさを常に抱えている人種なので、なんか言い訳したくなるんですよね、手品っ子は…。


4.(名称忘れ)
両端を観客が持ち、真ん中にプラスチックのわっかが通ってる針金に、ハンカチのカバーの下、外から輪ゴムを通すもの。

実演でハンカチが何度もずり落ちるなど、かなり手間取っていたようなのですがそれでもなお不思議でした。あとで菅原さんが見せてくださった時には非常にすんなりでしたのでこれは場数の差か。理屈屋なのであの真ん中のプラスチックリング(幅広のわっかの直径部分に穴が開いてて、そこに針金を通す形)は特に意味は無いんだろうなと勝手に納得していたのですが、逆にアレがあることでやりやすく出来ているのですね。むう…。


5.輪ゴムマジック2種
a. 左手の人差し指・中指に輪ゴムをかけ、その上から親指以外にジグザグに輪ゴムをかける。握って開くと先の輪ゴムが薬指と小指にジャンプしているアレ。
b. 何も無い左手中指を観客につまんでもらい、輪ゴムを丸めて指の付け根あたりでぐりぐりすると、中指に輪ゴムが通ってしまう。

いや、不思議ですね、輪ゴム。そろそろピナクルを忘れている予感です。


6.デックスルーカード
縦方向にスリットの入ったデックケースを見せ、1枚のカードを通して見せる。そこに残りのデックを全て入れて蓋を閉じたあとで同じようにカードが貫通する。貫通したあとフラップを開けてデックを見せ、カードを抜いて完了。

不思議です。が、予想通りだったのが残念。残念と言うか私の中ではこれはナシです。理由としてはこれこそ「殆どの人が考える解決策だから」です。観客は必ず「デックを手に取らせて欲しい」と思うに違いない気がします。
勿論これを実現するための作業の膨大さと緻密さ、そして工夫は素晴らしく、会場全員唸るくらいなんですけど。さすがにこれは作らないだろうなあ…。これならマッチボックスを糸が貫通するブロックの大き目のやつがデックケースに入っていたほうが不思議な気がする。かといって、演技の前後に今まで使ってたレギュラーデックと摩り替えたりするのも何かが違う気がします。


予告.リングとリボン パフォーマンス
明らかに通り抜けるはずが無いリボンがリングを貫通する現象が3段。

鮮やかすぎる!現象があまりに一瞬で起きて言葉を失ったくらい鮮やかでした。秋口に第二回があるらしいので、そこで解説されるらしい。きわめてキモイ現象(褒め言葉)でした。



上記の他に、話題なり何なりで出た製品
「アルファトンネル」 「スクイズプレー」 「Wブロックミステリー」 「ミラージュカード」 「ピタゴラスの輪」 「フラワーウオンド」 「ノット・ファンタジー」 「謎の壁」 



「インビジブルゾーン」
いや、今まで現象だけ見て凄く不思議で気になってたんですけど。テンヨーページ見てたら欲しくなってきました。買ってみます、絶版になる前に!「Wブロックミステリー」も買ってしまおうかしら。