教授の戯言

手品のお話とかね。

あいとゆうきのおとぎばなし

▼ 知人に薦められてやった「Fate/Stay night」「Fate/Hollow ataraxia」が面白かったので、私も自発的に「マブラヴ」 「マブラヴオルタネイティブ」をやってみようと決めて、ここしばらくプレイしておりました。これらをやろうと思った理由は「マブラヴ」発売時、話の後半部への"これ、「ガンパレ(ードマーチ)」じゃねーか"という評をどこかで見たこと(ガンパレは私もかなりハマった)と、ニコ動のMADが熱過ぎて、内容知らないにも拘らずワクワクしたからでした。オルタに至っては選択肢すら殆ど無く、ゲームとしてどうなのかという気もしますが、ストーリーはもうぶっちぎりの傑作でした。やって良かった。私も"17歳女子高生"と称してその実"いい歳した大人"であるはずなのですが、オルタ後半はプレイ中毎晩泣いておりました。"末期戦" "死を覚悟した努力" "真情の吐露" "ループする世界" 等々、私の弱点属性がずらり。歳ィとると涙腺が緩(以下略)。え?既に届いた大量の手品グッズですか?何も見てないですし練習していません。だって人類の未来がかかっているんだもの。DSiラブプラスは注文しましたけど、ハワイ行きの飛行機まではやらない気がします。なお18禁はちょっとと言うなら全年齢版もあるしやるがいいさ。

ガンダムのせいでalternativeアルターネイティヴと一瞬憶えておりましたが(これは作中の架空社名なので、分かっててもじっている気がしますが)、その後のお勉強により「この単語は日本語発音なら明らかにオルタナティヴだよな」と憶えたのです。が、この作品タイトルは「マブラヴオルタナティヴ」ではなく、「マブラヴオルタネイティヴ」であることにググった時に初めて気付きました。そういえば計画の名前も"オルタネイティヴ計画"だった…。何かこだわりがあるのか、これ。単なる読み方ミスだったら笑いますが。…しかし4クールで、一切媚びない形でアニメ化してくれないかしら。BD絶対買うのに。そういや冥夜は芝村の末姫というよりラフィール殿下のような気がした。…星界シリーズは完結するんでしょうか森岡先生。
敵BETAの設定も「ガンパレの幻獣っぽくね?」というのも分かりますが、ファフナーフェストゥムに近いのかな。珪素生命体だし。ブルージェンダー(いちゃいちゃするとそのキャラは高確率で死ぬアニメ)とかも思い出しましたが。

以下一応ネタばれ勧告。










▼ 正直なところ、「マブラヴ」の中のいわゆる学園日常編であるExtra編は、よく出来てはいるなと思ったのですが、そこまで凄くも無いかなあと思っていたのです。イニDのパロディとか、画面上に出てくる"ざわ・・・"をわざわざ福本フォントで再現してたりとか、そういう小ネタは面白かったんですが、別にストーリー自体に感銘は受けなかったのですね。つまらなくはないのですが割とありがちだなあと。

▼それが異種生物BETAと人類との戦争を描くUnlimited編では状況が一変。平和ボケした日本人高校生がそのぬるい認識を否応無く叩き直されていくわけですが、イヤボーン的な話ではなく、実地訓練をきちんと重ねて強くなるというのは良かった。主人公はゲーセンの操縦式のロボットゲーム(バーチャロンそのまんまな感じでしたが)が得意であるがゆえに、戦術機の扱いに関しては若干の慣れがある上、その世界の常識とは根本から違う機動概念を持っている、というのも面白かった。そういえばバーチャロンはジャンプキャンセルでの射線・方向確保は基本動作だったなあ、と懐かしんでみる(私は非常に下手でしたが)。 こういう世界に叩き込まれれば、私だって否応無く努力するかなと思ったのですが、武君より更にチャラい私は多分すぐ死ぬと思います。彼は何だかんだ言っていい体格してるし、ガッツあるしなー。…私はExtra編のモブがお似合いです。10kmとか走れませんし。
Unlimited のEDも全員見ましたが、ぐっと来るのですよ。戦争でも何でも、極限状態における人の生き様は、老若男女問わずたまりません。ヒロインに「地球脱出チケットを無理やり使わせる」か「チケットを捨て、共に地球に残って戦うか」のくだりはどちらも選べますが、やっぱり無理やりにでもチケットを譲渡する方が個人的な感覚としては納得できる。私は利己的ではありますが、あの立場で一緒に残ろうとは絶対言えない(というか思わない)です。コンプのために全員どっちも選択はしましたけど。

▼で、いよいよ本丸の「オルタ」。なんというか、「マブラヴ」をコンプした上で、とにもかくにもやってみてくれとしか言いようが無いです。やっている途中、色々な箇所で以前の些細なことが、きちんと伏線回収として活きてくるという素晴らしさ。そしてなによりアツい。傑作の評は伊達じゃなかった。
なお18禁指定はえろ方向ではなく残酷なシーンに対してだなというくらい、ネットでもグロシーンの話題が多かったです。「あまりにショックでゲーム進められない」とか言う声がユーザーから上がったためメーカーが緩和パッチを出したそうですが、プレイヤーが主人公と一緒にPTSDになるくらいの残酷さでいいんですよ。私は別にグロ大丈夫じゃないんですが、作品上・演出上必要なことだったらグロがあろうがエロがあろうがいいんじゃないですかね。この作品のグロでダメなら、もう実際の写真とか見られないですよ。大体にして、まんがとかアニメのキャラって死に方綺麗すぎですよ、特に最近。海外の戦争博物館の写真とか、もうなんといいますかミンチですよ。いや、ミンチ状態が見たいわけでも好きなわけでも全く無いのですけれど。"目"というパーツが写真フレーム内にあると衝撃度が増すと思うのですが、とにかく万人が事故や戦争でそんな綺麗に死ぬと思うなよ、というお話。ちなみに、本作の話題のシーンは以下のような。

"主人公は調子に乗っていたのに初めての実戦で取り乱してしまい、戦い終わった後、地べたで膝を抱え泣きながら自己嫌悪タイムしていたら、色々と昔話をして慰めてくれるかつての教官、その彼女への問いかけに返事が無くて、「もう行ってしまったのかな?」と振り向くと、そこにはその元教官が残存していた敵生物に後ろから羽交い絞めにされ、頭の上半分噛み砕かれて目玉とかでろりんになっちゃってる"状況という。間近で目撃したらそりゃ錯乱もします。「マブラヴ オルタ」でGoogle画像検索とかしちゃだめだぞ。

なお私はどちらかというとそこより、平行世界(元いたぬるい世界)に戻ってきた時にその彼女の「死の因果」を持ってきてしまって、同位体たる先生が突然同じような状態で殺されちゃったり、自分に関わりが深い人ほど自分という存在を忘れていってしまう"流れ"とかの方が怖かった(しかも記憶を新たに作ろうにもどんどん忘れられてしまう)。もうなんてひどい仕打ちを考えるんだ、この脚本、とか思ったものです。そして、そういえば「君が望む永遠」の会社だったな、ここ、とか思い出し納得。あれも恐ろしく八方塞なゲームだった。詳しくは記憶の彼方ですが私は水月派。孝之の行動は今ならそこそこ理解はできるかなあ。だってどうしようもないものなあ、あの状況は。で、 wikiでEDルートについてを見る。「水月犬エンド:孝之と一緒にいるために水月はペット(犬)として押し入れで飼われる事になり、孝之はそれを隠して遙と交際を続ける。」…か。…そういやあったな、そんなED。…。…孝之、やっぱりおめーはダメだ!w 

あ、そうだ、オルタの話だった。強力若本ことラダビノッド司令の出撃時演説は、事前に見ていたにも拘らず、そのシーンになったら普通に泣いた。あの挿入歌のタイミングは反則だと思います。とにもかくにも八方塞の中から立ち直って行く武君は本当にヒーローでした。語弊があるけれど、全員生還エンドが欲しかった…。と思ったら作ってる人がいたw 



▼ 「カレイドスター」を観終ったときに、「ああ、人が死ななくても感動する作品はできるんだな」と思ったものですが、人が死ぬは死ぬでやはり凄いドラマツルギー前提になることを痛感。「撤退におけるしんがりとか、末期戦とか、散華前の最後の輝きとか、死の直前の澄みきった心とかはさ。…日本人ならしょうがないんだよ、入れ込んじゃうのは」とは知人の弁ですが、激しく同意。
甘いExtra編に浸ったぬるい武君の弱さ(同時にプレイヤーの甘さ)を Unlimited→Alternativで徹底的に糾弾し、勘違いからの増長→トラウマ経験、更には世界からの逃亡までさせて絶望という崖に叩き落としたあと、(大部分は状況に影響されてですが)そこから初めて自分の意志で前を向いて強くなっていくこと、本当の意味での仲間・先達との信頼関係の構築、最後には己の最も大切な人と共に戦う流れや構造、いずれも描写が秀逸でした。そしてそれらを全て俯瞰しつつ、その双肩に全人類を背負った夕呼先生の強さにも乾杯。



▼エピローグの"鑑純夏の望んだ世界"は、一見してExtra延長上の単なる"タケルちゃんハーレム"っぽいが、彼女も自分に都合のいいだけの世界には再構築せず、その実は他の女性陣にも平等にチャンスがあるという状態でした。それが、Unlimited編における他の皆と武とのある意味とても幸せな結末を、自分が事象のループを発生させたことで"全て無かったこと"にしてしまったことへの贖罪も兼ねていたとか泣けます。オルタ世界では決して添い遂げられない二人ですが、こっちの世界ではいわゆる"楽園"の住人として生きられたらいいなと思うのです。とにもかくにも凄い作品でした。ストーリーだて他、これ以上は出ない気がする。しかしこんな美味な料理を知ってしまったら、今後の味の基準がめちゃくちゃ上がってしまいそうで怖い。とにもかくにも本作を世に出してくれたageとその関係者の皆様に感謝です。