教授の戯言

手品のお話とかね。

リー・アッシャー レクチャー

9年ぶりの来日。やはりカード主体なのですが、レクチャーと言う形式に慣れているのが感じられる催しでした。生アッシャーツイストはやはり非常に美しかったです。なお彼のコインバニッシュで、カードを使ったやつがあるのですが、それが無かったのは少し残念でした。休憩時間中にやる予定あるのかを聞いてみたところ、「やらないんだよごめん。最近刃物持込が厳しくてさー」ということでして(準備に刃物を使うのです)。…あれ、来日後にコンビニでカッター買えばいいような気もしますが。加工済みのを持っていけば良かったw 目の前でコインが消失するこの手法は実に見事なのです。コインマトリックスの流れだと本当に自然なんですよ、それ。

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1. The Ripper
Scott Alexander/Alain Nuの原案で、Eddie Hughlettのアイディアが入っているという、4 of a kindのオープナー。ダブルバックカードかと思いきや、カードの短辺をおしつけるように指で挟んでいくと2枚に。更に分割して4枚のカードが出る。

すっかり忘れていました。昔やってました、これ。カードがどうしてもたわむので使い古したデックのカードを使っておりましたけれど。彼がレストランアクトを始めた頃に観客に自分をウェイターではなくマジシャンだと認識してもらうため、人目を惹くために始めたトリックだそうな。



2. Ambicious Card
アンビシャスカードのうち、コントロールのTIPSを。「Making Ripples (&Ridding the Ripple)」

そのいち:DLからのデック上半分を残りに叩きつける形でのチェンジ。あまり早くやらないこと、3秒は待つこと。
そのに:ボトム付近に入れたカードが上がっていく様子が、側面から見える形でのアップムーブ。これは以前かなり練習しました。実演に使ったこと、無いですけれどね(面白いのですが私のは実演に堪えないので+失敗すると即致命傷なので)。



3. Joking Around
観客に1枚カードを選んでもらう(DK)。ジャンボカードを1枚出してきて、これが予言であると言って表向きにするが全然違うカード。その後折ったり切ったりしてマーク(D)と数字(K)を作って当てる。

トレインマジシャンだったアッシャーの父親との作品。ちなみにばらばらに作るバージョンと、立体でまとめて示すバージョンの2種を解説。個人的にはばらした方が好きです(立体は揺れのひどい列車内で)散らばらないようにする工夫とのことなので部屋でやる場合はばらす方で何の問題も無い)。



4. The Magic Finger Box of Death
カードを1枚破って互い違いに組み合わせ、ボックスと言うか筒を作る。それを左手で持ち、穴に右手の中指を入れるが、ありえない方向に指が曲がる。

「これはカードを破くので、安いのを使います」と言って彼が取り出したカードを見て会場がざわめく。「…ジェリーナゲット!?」(観客の心の声) むにむに 「折った…ッ!」(観客の心の声) ぴりっ 「や、破っただと…!ああああ」(観客の心の声) 
ジェリーナゲットを初めて生で見ました。あと、ジェリーナゲット破る人も。いや、まあ別にジェリーナゲットが凄くイイカードだとも思わないのですが、なんだろう、とてもどきどきしましたよ。アッシャーのビデオで彼が使っていたのと、あすぱらさんのサイトでしか見たこと無いデックですしねえ。触ったことも無いです。
ジェリナゲについてはあすぱらさんのサイトに細かな説明があるので、勝手にリンク。アッシャーさんも楽しそうに「このカードを出して破ると、マニアの集いだと空気が変わるよね」とか言っていた。そりゃあそうでございましょうよw

現象自体は、ちょっとコメディタッチと言うか悪くいえば馬鹿馬鹿しいタイプのものなので、普通の人は使い古しのデックとかでやればいいと思います。間違いなくジェリーナゲットを使う方がどうかしていますw ちなみに「これあげるよ」と実演後の破けたカードを渡されていた自分の後輩さんは、ちぎったそれぞれの破片にサインをもらっていました。ある意味凄い記念。



5. Three Stylin'
ポーカーチップでやるスリーフライ。「銀色コインはやや視覚要素として弱い」と言うことで、赤青緑のチップで行う、移動に説得力のある手順。

凄く好きなんですが、やはり1枚を消すと言うラストシークエンスが最大の問題ですね。ここでのコンセプトとして、演者が驚いたり、観客の想定とは逆に状況が戻ったりと、コメディタッチの演出なので見ていて気持ち良かったです。もう本当に、最後の1枚が綺麗に無くなれば言うこと無いのですが…。



6. The Thunderbird / New Addition to The Thunderbird
空の手からの4Aプロダクション。

9年ぶりに生で見た。やはり本人の3枚目の出し方は綺麗。あと私はここで見るまで、横向きで無く縦向きに出していた。当時は横向きでやっていたはずなのですが、これの難度から久しくやらなくなっていましたしねえ…。Criff Greenの「Phoenix Aces」が元になっているとか。なおバージョン違いの方は3枚目が裏向きで出てきて、それを表向きに直す瞬間に4枚目が出てくるというもの。印象としてはさして変わりません。



7. カードコントロール
「Asheresque」「The losing Control」

リバースファンを使うやつは面白い。見た目だけ説明しますと、1枚カードを選んで戻してもらい、念のため観客にもう一度見せて、右手のパケットと揃えつつファンを閉じるとトップにあるのですね。恐ろしく直接的で大胆なことをしているのですが、流れだとあまり気にならないというか、私は普通に幻惑。…もしかしなくても私の注意力が散漫なだけなのか。



8. Catch33(3カードモンテ)
3カードモンテ。最後は当たりカードのインデックスを破ってお客さんに持っていてもらうが、観客が指定したカードはハズれ、別のカードが当たりカードに。手の中のインデックスもハズレカードになっている。

今回のレクチャーノートの青い方(2009 Vol.2)にえらい詳細な解説があります。昔ハイプ含めたヴァーノンのモンテは練習していた時期があったのですが、ギミック物になり、またメキシカンターンオーバーの練習になりと言う変遷の中、感覚をすっかり忘れました。モンテトリックは非常にお客様受けが良かった類のマジックであった気がしますが、時々自分でも当たりカードの位置がわからなくなったりもしますよね。…よね?
技術的にあまりに難しい箇所は解説聞いたり読んだりする限りは無いのですが、カードを破るので、フォーシングデックを活用するといいのかも。



9. Asher Twist
余計な動作の一切無い、ツイスティングエーセス現象。

説明の必要が無いくらい分かりやすい例のあれです。しかし…ナンですね、これほど簡単そうなのに、彼以外に同レベルに出来る人を見たことが無いという不思議さ。ヴァーノンのツイスティングジエーセスと一緒に演じたりもするそうです。
なお以前もそうでしたが、基本的に少人数に対して、かつ観客の目の位置を調整したうえで演じていました(ささっと位置を直すなどする感じにしか見えないのですけれど)。
同様のことを、演者の前でカードを縦方向にしてやる「マクリントックエーセス」については「動きの中で大人数に見せる、というその手法は面白いと思うけれど、自分はやはり接近戦の妙というものが好きなのだよ(意訳)」というコメント。こだわりの無い私から言わせると、ぶっちゃけ滑らかにやられたらどっちでもキモイですけどね。



10. Witness
観客にカードを選んでもらった後、演者はジップロックを取り出し、中にJOKERが入っていることを確かめさせます。カードを返してもらい、ジップロックはそのまま、観客の両手で覆い隠してもらう。観客が手を開くとジップロックの中のカードはJOKERではなく観客に選ばれたカードになっている。

「昔のレクチャーノートにあるよ」と言われて、え、これ単品商品でしょうとか思ったのですが、今9年前のノートを見返したら確かにありました。「Deucebag」と言うタイトルでしたけど忘れていました(本編より、このマジックを見せてあまりの驚きから過呼吸になったやつには、これの袋をそのまま口に当てて落ち着かせろ、的な小ネタがあり、その写真の方がインパクトがあったせいです、きっと)。「WITNESS」DVDは昔買いました。何度か実演しましたがコストパフォーマンスといいますか、労力と効果のバランスがいい手品だと思います。

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参考:
「Lee Asher Lecture Notes 2000」 「Lee Asher Expanded Lecture Notes」  「Five Card Stud」