教授の戯言

手品のお話とかね。

リー・アッシャーレクチャー 前後

▼アッシャーレクチャーの前に、宝町のVELOCEにて高校の後輩と、そしてついにネットアイドル・とひさんと会う。

彼からの挑戦状として「雌雄を決したく候」と言うことだったので、「私、17歳女子高校生探偵なんでそれでいいです」という妄言とか、とりあえず(きょうじゅだけに)恭順の意を表そうかなと思い、これまたとりあえず長門ミニフィギュアを持参・差し上げてみたりしました(昔ミクルを入手する時にゲットした代物)。しかしあれです、手品は譲れても八反丸さんは譲れねえ。
きょうじゅは実はバーチャルネット手品ブロガーで、これも文章自動生成テクノロジってことにしようかなと思ったのですが、会ってしまったからなあ。…とひさんの電脳に侵入して見せた幻ということにしよう。「め、眼を盗まれたッ!」 あ、正面にいた高校生の子の方が手品担当ですよ多分。

タイトルを存じませんが、セレクテッドの4枚カードを輪ゴムでとめて、一瞬で"覚えやすい"カードにするもの、4枚ずつの銀貨・チャイニーズコイン・カードで行うアセンブリ、4種類のコインでやるアセンブリ、\50トリックなどを見せて頂きました。私が言うのも偉そうなんですけど、"拍"というか"間"のとり方がうまい。想定通りに驚かされている模様。特に4種のコインでやるやつが好き。
後日追記
とひさんのブログによると、上記は以下のような名称・来歴とのこと。ありがとうございました。
順に"elastica"(もしかしたら某誌に載るかも知れない。)、"Octrix"(昔、編集人の方とお知り合いになる機会があり、TOY BOX誌に載せていただいた。)、"USD Matrix"(未発表。USDとは藤子F先生の短編のアレである。)、"\150 Trick"(奇術探求四号に発表)という名前を付けていたりする。

なお小品トリックとしてはやはり「\50トリック」が秀逸なのですが、ひねりなく素直に賞賛してしまったことは少し後悔しています。驚いてみたあと海原雄山ばりに「むっ、この私に50円玉などと言うチープなもので手品を見せるとは!甘く見られたものだ!帰るぞ、中川!」とか言ってみたり、車内では「フフ、とひのやつめ…」とかいいながら黒塗りセダンで去ってみたりとかすれば良かった。はい、最近妄想成分多目なことは少し反省しております。少しだけね。

あ、そうそう、あと二川さんの傑作パケットトリック「ミルクとクルミ」の改案を見せていただきました。"悪いまほうつかい"が出たりしたのですが、世の中面白いことを考える人がいるんだなあと思いました。あと、紳士の皮をかぶっているけど、やっぱり変態だこの方、とか思いました。私も負けじとM.V.P.(Mikuru Versatile Production)ギミックの開発を急ごう。彼は遥か西方の地より出張のついでに来た、と言うことだったのですが、ポケットリングやカップアンドボールを持ち歩く出張者は初めて見ました。やっぱり変(以下略)。



▼レクチャー前、サークルの方に荒井さんの「サークルアンドスクエア」を実演してみる。私の演技でも成立していると言うことで良かった。

レクチャー中とひさんは積極的に質問をされていた。私のような備忘録アウトラインではなく、元となる技法とか書籍の名称もアッシャーに聞いてメモされていたりして、今日お会いした人が日本屈指の手品マニアであることを再認識。

なお9年前のアッシャーさんは"小柄なベビーフェイス"でしたが、今回はヒゲがプラスされ、アーロン・フィッシャー的なお腹周りになっておられた。2000年のレクチャーノートにも書いていた"サワークリームとコーンを使った料理"の食べ過ぎかも知れませぬな。手品的には観客のコントロール力がかなり増していた気も。



▼レクチャー後は懇親会に。といってもさくら水産ですけどw 久々に夜に行きましたが、やはり驚愕の安さ。ちなみにアッシャーさんは日本酒も好きだし刺身もうにも食えるという健啖ぶり。ジェイさんは刺身とかそういうのまるでダメだったのでその差が印象的。

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★リー・アッシャー氏の御言葉
きょうじゅ、「その醤油はアッシャーがつけたものだ」、とおっしゃればよいのです。  Lee Asher(1976-)
出典:「A Professor always says silly things about XXX」(2009)



☆きょうじゅの蛇足☆
リー・アッシャーは若くして多くの賞を獲得し、相当なテクニックを持ったカーディシャンです。若い頃からリマーカブルなステキマジックを見せていました。後にはヴェガスのレストランやホテル、上流社会のプライベート・パーティに招かれ、大変成功したマジシャンの一人になりました。マジシャンとしての腕も一級で、アッシャー・ツイストなど、彼の名を冠する技法までありますが、それ以上に興味深い言動や逸話が数多く残っています。

上で紹介したセリフは、さくら水産で彼が得意にしているマジックのひとつを演じたときのものです。 ざっと説明しますと、4Aをデックに入れてひとなでするとトップに上がってくると言うマジックでした。

その際、マジックの途中でアッシャーが操作を誤り、きょうじゅから借りたタリホーをテーブルにばら撒いてしまったのです。きょうじゅは驚くと同時に怒りました。アッシャーがばら撒いたカードは、きょうじゅの祖父の形見ともいうべき、大変貴重なものであるという、いわゆるそんな脳内設定だったからです。その事をアッシャーに告げ、文句を言いました。「なんということを!罰として生Thunderbird、もう一回お願いします!」 抗議されたアッシャーは微笑みながら平然と「きょうじゅ、"その醤油はアッシャーがつけたものだ"、とおっしゃればよいのです。」と言ったのです。
「アッシャーが付けた醤油痕がある」ということで、将来、なお一層このデックは価値のあるものになると言い切れる自信。こんなセリフは一介の手品師では言えません。実際、アッシャーはこう言い切ってしまうことで、マジシャンとしての自分の値打ちも同時に上げることを知っていたのです。
それにしても、市販のタリホーデックに醤油痕を付けて、平然とこう言いきれる自信を持った芸人が現代に何人いるでしょうか。多分5,000人くらいでしょうか。

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パロディ文章は楽しいなー(元ネタ:マジェイアさんのマリニページ)。本当は凄く丁寧に謝ってくださり、私も全く気にしていなかったのですが、横からとひさんが「これは…いわゆるマリニのあれだよね」と仰り一同爆笑(含・アッシャー)。ちなみにうまい具合にAやKといったカードは無事でしたが、これは彼のコントロールの一種でしょうか。醤油皿へのダイブは4枚程度だったんですけどね。
アッシャーさんは「近いうちに結婚するんだ」と、同行の女性を紹介していましたが、台詞が戦争映画の死亡フラグっぽくて不覚にも笑ってしまいました。いわゆる「俺、このマジックレクチャーツアーが終わったら、結婚するんだ」です。胸ポケットにはデックを入れておくとドラマチックになりますよきっと。銃弾がサインドカードの部分で止まってて命拾いとか。
とひさんも8枚コインのマトリックス他をアッシャーさんに見せたりして、和やかに会は終了しました。



▼帰り道はとひ夫妻と一緒だったのですが、「自分たちはニフラムかけられると消えるよね」「ひかりのかなたですね」とか「サンドリヨンは八反丸さんが断然ヒロインだよね」「美少女は正義と言うことでファイナルアンサー。というかリストカッター女子よりもやはり偏愛演劇美少女ですよ。あと飯倉さんは私の嫁」などで盛り上がりました。
「酉乃初はチキンハートなガールだからトリのハツなのか」という旨を伝えたところ「え?"ニュートリノ"からじゃないんですか」と言われる。「もっとも量子論とか欠片も出ないけど」「ナルホド。…まあこちらも焼き肉とか出ないですけど…」 
「人は(変態)紳士に騙されたいものなのだったね!」「ええ、(変態)紳士にね!」(ロベール・ウーダンの名言に関する自分たちなりの解釈)などと。



▼23時半頃永田町に着き、赤坂見附は上口龍生さんのマジックバー「サプライズ」へ。ちょいと一杯のつもりで飲んで、気付いたら朝6時だったでござるの巻。お店自体は10月に出来たと知ってはいたのですが、行ったのは初めてでした。
結論から言うと、とひさんも上口さんもやっぱり変態。変態と言うかどマニアというか。上口さんと言えば、例の海原雄山的なイメージだった和妻の大家の系統の方だし、その弟子だった人ともなれば、連載のはやい頃くらいのちょっと尖った山岡さんを想像していたのですが、そんなことはありませんでした。「…コインとボールには旅させちゃいけない。それだけですよ…」とか「このカードマジックは出来損ないだ。みちゃいらんないよ」とか仰るかと思ってました。勿論仰いませんでした。

で、まず何から変態かと言うと、上口さんととひさんは昨日も一昨日も夜通し同様のことをやっていたということ。上口さんの言葉をお借りすれば「(人によっては、)ここはお客様が金を払って手品をやるという、変な店なのです」という、ここはまさに都心のエアポケット、百鬼夜行のアナザーディメンジョンなのであります(CV:古舘)。マニア同士のカードマジック・コインマジックの応酬はよく見ますが、カップアンドボールの応酬とか、今の僕には理解できないアンインストール。多分そういうのやってしまうお客様はごくごく一部のはずですけれどw まあその辺も十二分に変態ですが、特筆すべきはご両名の博覧強記ぶり。技術もさることながら、過去文献の勉強量の膨大さを尊敬します。多分私がサントラその他に浮気している時間と金を突っ込んでいたとしても、あそこまでは手品を愛せない気がしました。実にまじめです。

とひさんは当然のようにカップアンドボールを出してやっておられました。生でカップアンドボール見るの久し振り。アマーのレクチャー以来だろうか。個人的には序盤はもう少しくどい方が好きですかね。"演者自身も混乱してきて〜"と言うパターンは誰の手順だったか…。ファイナルロード用のものも含めて持ち歩いているというのもある種の不思議。

上口さんのトライアンフ(ヴァーノンの原案ママらしいですが)は物凄く不思議だった。多分酔っ払っていたとかは差っぴいても追えてません。あとTフォーメーションのAアセンブリ、これまた凄く不思議。…いやしかしやはりトライアンフですね。久々に突っ込みのしようがないくらい不思議さでした。「今デックをハーフパスしたわね!」とか手首をつかむ余裕も無しw …いや本当に不思議だった。どうなってるんだろう、上口さんの手とかこの世界とか。

ともかくあの5時間ですっかり上口さんのファンになりました。ご本人は「マニアとは付き合いたくないんだよね」と仰っていましたが、理由が「マニアと遊ぶと、自分のマニア部分が疼いちゃうのよ」ということでマティーニ噴いた。見せて頂いたのはディーリング系やポーカーデモ系のマジックが多かったので、今度はチェンジとかをリクエストしてみたい。

サークルの先輩に昔習ったカードトリックがあります。この間教えてくれた先輩に実演したら「そんなのあったっけ?」と忘れられていましたけど。"リセットのあとにやるカードの移動現象のマジック"なのですが、これが誰の作品なのか分からなかったので、丁度いい機会だと目の前にたまたまいた博覧狂気強記のお二人に聞いてみたのですが、「んー、見たこと無いね」と言うことに。あの二人で分からないとなると、誰に聞けばいいのだろう…。

なおターベルコースを持っていないことについては、流れ的に予想通りがっかりされました。「きょうじゅ、それはだめだよ」「2冊ずつ買うでしょ、普通!」 いやいやいやいやw 

朝焼けの中、久し振りに徹夜をしたことを実感しつつ帰宅→即寝。私の長い一日は終わりました。とひさん・上口さんに感謝。