教授の戯言

手品のお話とかね。

新・箱根クロースアップ祭 第18回 2/3

▼21:00 ナイトレクチャー(ルイス)
Undivided(シガレットペーペーの復活) →Technicolor Pocket Prediction →(メモに一言、"カードの予言・全部カードは17枚"とか何とか。何かありましたっけ?自分で書いていて覚えていないとは…) →Egg Bag →Cardiographic →Businesscardiographic →Whispering Joker →Sidewalk Shuffle →The Mcabee Ring

シガレットペーパーの復活は以前ビデオで見ておりまして、「この地味さ、歪みねえな」とか思っていたのですが、パーラーできちんと見せて頂くと実に趣深い。なにより怪しさゼロ。バンブーとかいうメーカーのシガレットペーパーのダブルサイズ版を使っているとか既に製造中止なうとか何とか仰っていました。前から思っているのですが、シガレットペーパーって「あぶらとり紙」で代用できないものかな。京都のお店に行ったときに思った次第。思ったからにはやってみますか。
テクニカラープレディクションはもう、天地無用!TVシリーズの予告風に言うなら「問答無用の、面白さ♪」です(何で今更天地無用なのかは不明)。ポケットテクニカラーの方はあのボードというか予言用ギミックを全部封筒に内包しているので、携帯性が格段にアップしています。つい先日レバレッジのDVDを見たせいかすんなり同じような発想に入れますが、それにしてもよくできた作品です。サロンマジックの鉄板ネタな気がする。
エッグバッグはマルドーのタータンチェックのでやるやつ。やはりエッグバッグは不思議だ。ちなみにルイスのは結構短い時間でのルーティーン。Tipsでやっていた、観客に借りた腕時計を袋に入れる過程で落っことして後ろ側に蹴り飛ばすのは物凄く笑えました。あれ、えらい人の腕時計でやりたいw
カーディオグラフィック。彼がスケッチブック出してきた途端にまた会場が「おお…」とかなったのには笑った。名人芸の一種ですね。あそこにいるほぼ全員、現象も種も知っているはずですが、いやあ、面白いなあ。現象として素晴らしいです。数学の世界でImmortality(不死/不滅)というと、"際立った功績で、永遠に歴史に名を残すこと"を意味するそうですが、ルイスも間違いなくこれだけでImmortalityを獲得していると思いますし、その他テクニカラープレディクション・サイドウオークシャッフルなど、もはや彼はマジックの世界における不滅の王なのだ!Immortal Kingなのだよ! …誰ですか私は。あと会場から質問も出ていましたが、すんなりあがってくる仕組みを始め、DVDで解説されていたような気もするのですが、30年間の実績・経験がぎっしり詰まった名作レクチャーでした。何も考えずにへらへら笑って画用紙破って渡していた自分を恥じました。すみませんルイス先生。
ビジネスカードでやるやつはイーソンの「Out to Dinner」を活用してらっしゃいました。
「Whispering Joker」はいわゆるセットアップデックを使ったワンアヘッドの予言で、助手(手品イベントでよく拝見するお兄さん)を壇上にあげて、黒い布の下で誰も見えないようにして取り出してもらったり、1枚方向を逆にして入れてもらったりしたものを当てていくもの。凄く不思議(ボキャ貧)。当てていく途中で、「これがスタックドデックで無かったら吐くわ」とか思っていたのですがそこは外れて無くて良かった。欲しかったのですが結局販売していたのかしら。翌日眠くて、朝のディーラーブースきちんと見ておらず。まあ、いざとなれば私にはインターネット通販という強い味方が。
サイドウォークシャッフル。もう言わずと知れた傑作。つーか傑作ばっかりじゃねーかこのおじさんは。どうなってるんだ。なお、これから日本語で学びたい人は、ゆうきさんのDVD付のやつでも見てみると良いかも。元が傑作なので現象的には大差無いですし、原作の持ち味もそのままかなと。
The Mcabee Ringは初めて見たような気がします。あれ、買おうかと思ったら既に無くなってました(後述しますが、イングランドと喋ってたら休み時間が終わってました)。3本のリングを結局3人にそれぞれ渡しているんですけど、なに、キーリングとか無いのですか?糸とか磁石とかなの!?w

あ、あとポケットカラープレディクションの後だった気がしますが、「Crystal Gazing」も。観客に選んでもらったカードが水晶の球に浮かんでくるという演出で、壇上の助手に当ててもらうもの。ハンズでアクリルボールを買って加工してもらえば作れるかなあ…。ああいう現象好きなのです。問題は、…球がそこそこ重いんですよね、あれw



▼休み時間
「カジノチーティングに関することなら何でも聞いてくれ」とか仰っていたことを思い出し、平木さんからデックを借りて、会場後ろに立っていたイングランドに「実際に行われるピーク(こっそりカードを覗くこと)について教えて欲しいのですが」とどきどきしながら言ってみたところ、色々教えては頂けました。が、どっちかというとご専門の「カジノにおけるディーラーとプレイヤーとのコンビネーションプレイ」についてを熱く実演してくださいまして、それはそれで滅茶苦茶楽しく興奮したのですが、私の目的とはちょーっと違ってしまったことに終わった後で気付くw 
最近の私は観客のカードを知りたくてしょうがないのですよ。どんな手法でも良いんですが、観客のカードを把握してると安心じゃないですか。あとでどうとでもできますし、精神衛生上よろしい。カル→パーム→おや、胸ポケットから…とかやり放題です。で、大学のサークルで先輩に習った手法や、イングランドの師匠であるSteve Forteの「G.P.S.」とかの手法(こっちはライターを鏡がわりにしてみたりとか、指テクだけでやりたい私の希望とはちょっと違うのが多い)とか色々練習はしているのですが、最適解が見つからず。イングランドがやってくださった方法で、"テーブル上のデックをカットする時に上半分のボトムをピークする手法"を教えて頂きましたが、彼も100%ではない技法らしいので…って言うか私がざっとやってみたところ、かなり力を込めないと撓まないので右手の緊張が凄い。難しいというか"出来る像"が浮かばない。
ちなみに彼のいたカジノでは1週間に10人くらい、年間500人くらいがチーティングで捕まるそうです。「それも実際にやっている人の3割弱だろうね」ということで、彼のようなイカサマGメンの目を掻い潜る方を合わせると、それはもう結構な数の人がチーティングしているようです。怖いなあ。目の前の妙技だけ見ていたのですが、ふとマニアーズに取り囲まれていることに気付いて「うあ、またへぼ英語力とか衆目に晒してしまった!」とか赤面。



▼22:45 ナイトレクチャー(イングランド)
基本的にはディーリングとコントロールのオンパレード。

"ブリーザークリンプ"を活用してそうというのは何となく思っていたのですが、その通りでした。正直に申し上げると、最初は分からなかったんですが、彼多分2年位前のTVに出てますよね。デック置いて、芸能人に「何枚か指定してみろ」「じゃあ15枚」「分かった、15枚だな」で、右手でデック弾いて前にばさーってなったやつが15枚、みたいな。多分あの人な気がしまして(その一月くらいあとにミスターマジシャンに行って、根本さんにやられて初めてあれが純粋テクニックではなくブリーザークリンプを活用した手法であることを知った)。いや、ぜんぜん違う人かもしれないですけどね。
Vernonの「Lost Inner Secrets」にも記載があるそうですが、ブリーザークリンプは非常に好きです。私はコインクリンプを使ったりしていますが、ブリーザーの方がなんか確実な感じ。
そのほか、表向きにスプレッドしたときにAとAの間の枚数をカウントし、それとザローシャッフルを組み合わせたもので、もう好きなようにディーリングするやつとか、解説と理屈は分かるけど、実演は無理w 20年練習しても出来るようになる気がしない。半年弱で出来るセカンドディールの練習法は中々参考になった。
もう後半はみんな、レクチャーというより変態テクを眺める会にw だって、出来ないもの、あれはw
なお余談ですが私、ディーリングポジションというものを数年来間違って覚えていたのです。専門用語で言うところのメカニカルグリップを常用していたのですね。これに落ち着いた理由もトップなりセカンドなりをストライクするときに都合が良いから&正面から見た時にカードの側面(厚み)をごまかせるからという理屈だったのですが、いつの日だったか松田さんの著作だかで「メカニカルグリップのやつとゲームで対峙したら勝負を降りろ、という格言もあるのです」的な文言読んで、「ああ、持ち方はとりあえずこれだし、実力もこう言われるレベルになりたい」とか思ったものです。あ、今でも直してませんし、レベルも向上していませんw



▼24:00以降
レクチャーノート買ったり、キムさんやイングランドさん、ルイス先生にサインもらったりしてニヤニヤしながら部屋に戻る。
木本さんと色々お話。最近あまりやっていなくて、といいつつ、異様に上手いんですけど、私はどうしたらw お互い二川さんと関わりがあるので何となく話しやすい(なお最初は手品の話ではなくお互い仕事の話をしていました。業界まで近かった)。
「やっぱり、さっきのセンターディールとかボトムディールとか、マジックにどう活用するとかそういうのは抜きにして、二川さんの言葉で言うとさ、まあ"漢のロマン"だよねえ」「ですよねえ」 何と言うか小ざかしさがないというか。いや、チート自体が小ざかしいんですけれど、あのレベルの技法はやはり…ロマンです。その後は演じられていたリングの手順についてやコイン、昔のお話、クロティエの話など色々伺う。頼れるお兄さんという感じで実にカッコイイ。ああいう方が近くにいたら今頃もう少し手品上手くなっていたのかな。謙遜されていたけれど、彼のリング、ありがちな"下品なガチガチ音"をさせない、すっと入ってすっと抜ける感じが本当に綺麗で素敵なのです。ああいうリングならやってみたい、が実は今に至るまで部室で弄んだ程度で全く出来ないのです。誰か私に教えてみないか!w 紀良さんのDVDでも見て勉強するか。

▼高校生さんたちの手品を見る。みんな上手い。追えなくは無いけれど、人前であんなに出来るのは凄いことです。「奇術探求」をまじめに読んで、しかも改案作るとか、将来が実に不安ですw 「あー(エルダー)ギマレスの手法っぽいですね」とか改案元ネタを突っ込むくらいが精一杯でしたよ(ひどく小物臭のするダメコメント)。

▼森山さんたちの部屋に行く。だんだんディープな話になっていき、私も付いていけなくなってきた辺りで高校生さんたちはポン太さんやら野島さんを求めていつの間にやらいなくなっておられた。
森山さんから聞いた"シナリオ作成"のお話は個人的にショックでした。まあ、別に手品知識なんかどうでもいいんですけどね。でもショックだったんですよう…。
最終的に4人になったところで「Visitor」「Twisting Aces」など、クラシックの名作話で盛り上がる。某氏の「それはなんか見え方が気に入らないなあ」と「いや、上手い人がやると気にならないんだよ」は個人的にツボりましたw 曖昧ですがとても重要なコメントです。

▼ここで、いよいよこの晩の「今日のその時」、きょうじゅ10年来の疑問の一端が氷解する出来事が起こります(声:松平定知)。
今まで数々の方にお見せしたけれど「誰の手品かは全然知らないって言うか、見たこと無いね」と言われていた、大学時代に先輩とやっていたカード手品があります。カードを付け加えるずうずうしいコンセプトが凄く好きで長年演じているのですが、久々に会ったその先輩に「こんなのあったじゃないですか」と言って実演したら「え、そんなのあったっけ…?」とか言われてましたけどw 
あ、そういえばこの人たちどマニアだし…、と思い出したので「こういうのなんですけれど…誰の手品かご存知ですか?」と実演してみると、対面のおじさまが「ああ、同じではないけど、おそらく赤沼さんのが原案だと思うな、それ」と事も無げに。…す、すげえ、さすがS級手品妖怪の集う魔界・箱根だぜ! 「原案って言ったほうはね、こうなんだ。ここで入れ替えるのは同じね。で、そのあとはこっちをバックルして…」なんだろう、長年の疑問が目の前で実演付きで紐解かれていく様。あの瞬間、私は間違いなく幸せでした。多分物凄いAHA体験状態。もうこれだけで今回来た甲斐がありました。言葉にしづらいくらい嬉しかったんですよ、これ本当に。仮に直結していなかったとしても、こういう概念のものがあって、ってところまで教えて頂けたのは重畳。後で知ったのですが、目の前にいた謎を解いてくださったおじさまこそが山口の重鎮・LILIPUTさんだそうで。さすがの一言。感謝感激です。

▼その後、たまたま以前半分冗談で言っていたことを覚えていてくださったようで、廊下で出会ったポン太さんが付き合ってくれ、個人的に妙技を見せて頂いたりしました。わがまま聞いて頂いて本当にありがとうございます。ポン太さんを独り占めというのは本当に贅沢なことです。 私も何かお見せ出来れば良かったんですけど、あの技の前にはなにをやっても邪魔な気がします。今後は木曜日を狙って大阪出張に参りますw あとクッキーとかコイン食べるの、練習しますw

で、まあお互いきつくなりまして6時過ぎに部屋に戻りました。木本さんが「お、終わりましたかw」とか布団の中から仰っており、結局彼もついさっき戻ってきた様子。「長年疑問だった手品の原案が分かって凄く嬉しかったんですよー」と報告、つかの間の睡眠…ていうかあと1時間もしないうちに朝食なんですけどw ぶっちゃけ、そのあと目は閉じていましたがちゃんと寝ていません。お肌に悪いわ。