教授の戯言

手品のお話とかね。

こざわまさゆきショウ

▼去る7/10(土)、こざわまさゆきさんのレクチャーというかショー…というか、よく分からないけれど、とにかく慶應大学での手品イベントに参加。
こざわさんといえば、昨今では「奇術探求」シリーズへの寄稿や、最高学府での公演歴もあり、そのショーにおいてはやんやの大喝采という、実演に加えて該博な知識も兼ね備えた若手アマチュアマジシャンの雄です。それから浦沢直樹MASTERキートン」のチャーリーのモデルはジャン・レノではなく彼という説も一部で(画像)。

けいおん」では和が一番という、まあなんというか、「出来ておる喃」という感じの方です(まあ律なんですけどね、至高は)。あとは二川さんの傑作「ミルクとクルミ」を魔改造して、クルミのかわりに長門を出してくるタイプの、いわゆる"変態奇術師"です。



こざわ氏「ガハハハ、TVA「けいおう!」はやはり和のようなメガネ女子高生から十重二十重に取り囲まれてちやほやされる、そんな甘っちょろいお話じゃろかー? わしの"恋のブラフパス"が火を噴くかもですよ?さあ、共に楽園へゴー、メガネスキー!」 きょうじゅ「相変わらず何を言ってるのか分からんが、とにかく女子高生はいないと思うぞ…。行くのは「大学」だからな。…一応付いて行くが。」

という感じでお誘い頂いたので恥を忍んで同道させていただきました(一部脚色)。なおこざわさんいわく、自身はこざわ・F(Funky)・まさゆきで、私はこざわまさゆきA(Anarchistic)らしい。サンドリヨンズに続くユニット名だったのか…。休憩を挟んで、前半後半それぞれ約40分、いたいけな大学生を相手に老獪な老害のリサイタル(本人談)が繰り広げられました。



▼前半: 「Notorious Three Coin Trick」 (こざわまさゆき) / 「Shameless Open Prediction」 (Alex McLittle) / 「I dream of mind reading」 (John Lovick) / 「Quintet of the Rings(五本リング)」 (こざわまさゆき) / 「Coin-cidense」 (こざわまさゆき) / 「Cylinder and Coins」 (John Ramsay) / 「Digital Feedback Extraordinaire」 (Richard Osterlind) / 「All Screwed Up」 (Doc Eason) / 「Easiest Psycho」 (厚川昌男松田道弘・ゆうきとも・こざわまさゆき) / 「The Loaded Dice Cup」(こざわまさゆき)ダイスカップ

<休憩>

▼後半: 「\150 Trick」 (こざわまさゆき) / 「Billbound」 (こざわまさゆき) / 「Coins-a-glass」(こざわまさゆき) / 「Cervon's Revelation」 (Larry Jennings, Bruce Cervon) / 「Elastica」(こざわまさゆき) / 「USD-Matrix Monoral」 (こざわまさゆき) / 「Octrix」 (こざわまさゆき) / 「Name My Card 」 (Kirk Charles) / 「Cups and Balls」 (こざわまさゆき)リサイタルここまで。

<休憩>

▼番外編: 「Transparent Wild Coin」 (こざわまさゆき)/ 「Digital Feedback Extraordinaire」について / 「Lazy man's ACAAN」 (こざわまさゆき) / 「Silver and Cupper Transpo」 (HPC-CPH (Jay Sankey)ベース・こざわまさゆき) / 「\150 Trick 解説」 うおお、"こざわまさゆき"がゲシュタルト崩壊



「Digital Feedback Extraordinaire」が観客とのやり取りがある分かなり盛り上がったのではないでしょうか(電卓で様々な数字入力・計算をさせて、そこで生成された番号にイタ電をかける手品)。ていうかやっぱりあれは受けるんですねえ。なお私の中で注目すべきは現象より、「俺が、この世界の、倫理を、捻じ曲げるッ!」(意図的な意訳)というこざわさんの台詞でした。大事なことなので2回以上言っておられましたし。
「Billbound」 だったと思うのですが、鮮やかに2ドル札がコイン4枚に変わった瞬間、紅一点の方が息を呑むのが聞こえたのにはこちらも驚きました。いい反応だなあ。

なおメイン観客である慶大奇術部の皆さんは殆どが1年生2年生だったこともあり、伺ったところ"オーバーハンドシャッフルが覚束ない"とか"キーカードロケーションもよく知らない"らしいのですが(本当かどうかは知りません)、結構な人数が"クリップシフトがうまい" という、とても素晴らしい部でした。最早クリップシフト部。そのうちのお一方は、私とどっこいという手の小ささなのに無音で出来ていたので、あれも練習次第でマスターできるものなのだなと思った。てっきり「非実在手品技法」だとばかり。

ギミック大好きな高校生も来ており、彼の実演を見てネストライザー作ってみようかなと思った。デモ動画のライジング用としては「…フーン」と思っていたのですが、彼のやっていたチェンジ用として使うギミックとしては秀逸だと思う。自分の想像していたのとまるで違わぬ構造だったのはちょっと残念でしたが、あの使い方は面白い(裏向きデックスプレッドから4枚触ってもらってそれぞれ突き出していき、右手でまとめてくるっと抜き出すと全部4Aになっている感じの)。



▼終わった後、演者と二人で暮れなずむ日吉の並木道を歩きつつ、「これ、私いなかったら彼一人でとぼとぼ帰る予定だったのかしら」と思ったら切なくなった。「ステージを降りた手品師はね、とても孤独なものなのよ」と、美女が物悲しく語る台詞を思い出した。うん、その台詞はいま考えましたけど。

渋谷のハンズを経由し、二人して3時間ほど痛飲、反省会もどきをしてみたり。ハートマン軍曹風に。
「私が反省会担当のきょうじゅである。話しかけられたとき以外は口を開くな。口でクソたれる前と後に“サー”と言え。分かったか、ウジ虫!」「Sir,Yes Sir」「ふざけるな!大声だせ!タマ落としたか!」「Sir,Yes Sir!!」のような内容(演者・読者全員、一切真に受けないように)。
なおこざわさんの手品は、本人の変態性とは関係なくまともだったので、突っ込み所もまじめになっていけない。「ちくしょー。さいころなんかいいんだよー。もー。長門だせよ長門をよー…ひっく」とかクダを巻く酔っ払いがひとり。なんだろう、手品がまともであるがゆえに、"クリップシフターが多いという異世界"だった事を鑑みれば、敢えて長門を出すような変態方向に行った方が大きく受けたような気はする。しかしあれです、人の事をとやかく言うのは楽ですが、私にはあんなに安定した演技は無理そう。私はどちらかというと口八丁なタイプなので、声の通りっぷりについてはいい感じにいけそうな気はしますけどね。あんなスライハンドは覚束ねー。

▼なおたまたま持参していたので、日吉でHAWK2.0をやり「うーん、…ないわー」と皆様方に言われてしょんぼりだったのですが、飲み屋でこざわさんと一通りいじってみて、「デモはどういうマジックを使っているのか分からないが、あれと違って"生で注視されると変化軌道が認識できるレベル"のため、ガン見されたら無理」 「ただし、変化そのものは一瞬なので、指を鳴らすなどのミスディレクション(というか視線誘導)をきかせれば成立する」という結論に至りました。しばらくは実演する機会はありませんけど。こざわさんの指摘にあった「そもそもデモと販売物はギミックのパワーが違うんじゃないの」は、言われてみればそんな気はする。私のはコマ送りにしなくても軌道が見えるけれど、デモのはコマ送りにしても1/60コマで変わってるし。そんなこんなで、てれんてれんに酔っ払って帰りました。こざわさんお疲れ様でした。撮影物は鋭意適当に編集中です多分。MMLのパロディ動画にしようかと思ってたんですが、ちょっと古めのL&L方向で頑張ってみるか。というか手品以前に部屋の模様替えが大変なう。