教授の戯言

手品のお話とかね。

佐藤総レクチャー

▼作品集のいちファンとしては参加せざるを得ない、ということで7/19(月)の掲題イベントに参加。「トランプと悪知恵」 「card magic designs」の作者として、昨今の日本手品界で"知らなきゃモグリ"みたいなお方でございます多分。開始前は観客と対面するような形で一人で演者席に座られていて、さぞや居心地悪かろうなあと思っていたのですが、レクチャー中のコメントで、やはり居心地悪かったらしいです。そりゃそうですよね。 

1.「(タイトル不詳)」(4Aオープナー)
2.「(タイトル不詳)」(4箇所のAの消失と集合)
3.「アムニージア」(4Aと適当なカードを交互に重ねていくが、Aだけまとまって出てくる。素晴らしい)
4.「(タイトル不詳)」(ダレイ風の赤と黒の入れ替え モンテ的手法)
5.「マジック・スラップ」(観客の選んだカードが、何も無いことを示したあと、演者が手のひらを打ち合わせると出現する)
6.「ブッシュファイア・トライアンフ (Ver 1.5?)」(テーブルディスプレイのトライアンフ。混ざっている様子が視覚的に分かる。なんというすばらしいカード奇術でしょう)
7.「アクロバット・リーダー」(公明正大で説得力のあるフォローザリーダー)
<まるで休んだ気のしない休憩(佐藤さん談)>
8.「ゼン・ダービー」(4Aを馬に見立てたダービーゲーム。着順が最初から予言されている。何故だろうかとしか言いようがない)
9.「アナザ・オールバック」(デックが故障し全て裏面になってしまう。奇妙で面白い)
10.「リヴァース・ハイライト」(観客の選んだカードだけが裏向きになって現れる)
おまけ「(タイトル不詳)」(雑巾絞り)

…ミスターマジシャン風に書いてみましたが、私にはまだあの味は出ないですね…。



演目記載の通り、基本的にはご本人の著作中のものを実演・解説してくださるという形態で、「生で見られて良かったー」というのが第一印象。大阪の方だと伺っていましたが、ごく一瞬を除いてずっと標準語で話しておられ、ちょっと意外でした(私の偏見:関西圏、特に大阪の方は東京に来ても頑なにお国言葉)。

佐藤さんの手品はちょっと変わっていると思います。一般的なクリエーターと一線を画すというか、あまりこね回したような感覚が薄く、見ていていい意味でシンプルな作品が多いと思いました。何がいいって、エルムズレイカウントが出なかったですよ。凄く新鮮。変なカウントがでてこないのが、そのシンプルさというかさっぱりさに繋がっているのかしら。

ご本人が「パックマンシフト」という名前で使っていた技法は中々にディセプティブ。私もこの手の手法が大好きで、演技を見ながら「面白いコントロールをするんだなあ」と思っていたのですが、そのあとの「マジック・スラップ」に見事に引っかかりました。本読んでるんだったら普通「そっちが分かったけど〜」ってなるはずなんですが。見方がおかしいのか。

以前も書いた通り、佐藤さんのマジックは他に実演している人をあまり見ません。詳細な解説を読むと"頑張ればやれそうな気がしてくる(←ここ重要)"という構成なのですが、やってみるとこれがまた意想外に難しく、他人の工夫したフォールスカットをやってみる感覚というか、中々手になじまない気がします。"佐藤さんのような見せ方"で、"佐藤さんのような工夫をしてきた人"でないと、中々自家薬籠中のものに見えないといいますか。「ブッシュファイアトライアンフ」等はその分かりやすい例かと思うのですが、佐藤さんの演技を拝見すると、ぐしゃぐしゃディスプレイ(特にあの独立した2枚が利いている)は実に説得力があります。が、あれは他の方(私を含め)の演技を見ると、"なんか意図的にぐちゃぐちゃに見せようとして配置を頑張っちゃってる"感がひしひしと出てしまうのですね。難しいところです。

FtL嫌いの私をして不思議ですね、佐藤さんのアクロバット・リーダーは。FtL自体の理屈立ての弱さはあるのですが、それをしてなお、視覚的・聴覚的に不思議を実現できるのは凄い。…あと今更なんですけど、Acrobat Leaderって、AdobeAcrobat Readerのもじりなのかな…?

「ゼン・ダービー」は「DVDに実演が無かったから、読み飛ばしてる人も結構いると思うんですけど」という佐藤さんのコメントに一瞬ドキッとするが、読んでいた事を思い出して安心。で、「演者が、残り物で勝つ」 「しかも全着順予言つき」 というのは確かに面白い。手品をばんばーんと見せて〜という形態は向いていませんが、ちょっとした一画で行う"少し時間がとれる状態"であればかなり素敵だと思いました。正直、私はあまり時間のかかる手品が好きではないし、やらないのですが(長時間かかる手品を見てもらう環境を作るのがまず面倒という理由)、これはきちんと10分もらえたらやってみたい。基本セルフワーキングというのも演出に力を入れられるので素敵。
やはりトリックは実際に見ると良さを再認識できるなあという感じでした。また佐藤さんの演技を見られたら嬉しいですね。



▼たまたま大原さんがいらしていたので、終了後失礼承知で「パラダイムシフト」をリクエストして見せて頂く。ちょっと想像と違っていました。私の中ではリフルしつつも"デックの異なる場所に差し込んでいく"ようなイメージだったのですが、やや"何回かに分けて、大体真ん中あたりに挿していく"感じでした。いずれにせよカジュアルな応対の中での処理を想定しているそうなので、そもそも持たせようとしている意味が違っておりました。
相沢先生が「M.O.S.P.」をリクエストされてて横から拝見。やはり考案者は凄いものだなあ。ワンステップ目の傾けて左手一本で保持、までは私でも何とかなっているとは思うのですが、そのあとの"揃え"がままならねー事この上ねー。まるでサイレントにならない感じがたまりません。「こうやると延々と出来るんですよー」と、腰から上の動きだけで"左右に振り向く度にフェイスが変わっていく"のは笑えましたw そういう使い方はしないとは思いますがw



▼まあそんなこんなで楽しかったです。が、立ってるだけで死にそうに暑かったのでKFCで軽く本を読んでから帰宅いたしました。帰り際、「カーネルおじさんを正面から写真撮影して、あとで手の真ん中あたりに"スピンしたコインの写真"とか合成したら、マッスルパスのように見えるんじゃないかな、これ」とか馬鹿なことを考えていたのも暑さのせいです、きっと。