教授の戯言

手品のお話とかね。

US #1 LA

■11/18(木)■ 前日にふと思い立ち、雨天の下、秋葉ドンキで90リットルのスーツケースを買う。重い。あと旅行準備の途中で「きららの仕事」を久々に読み返していたら止まらなくなり、気づいたら午前4時。ほぼ徹夜。16時日本出発予定で、朝に仕事用PCつけたら部長から幾つか質問を受けたり、別の方から指摘され、うっかり出し忘れていた資料(私がいない間に開催される会議用)があるのに気づき、昼過ぎまで家でずっと資料作りと、全然旅行らしくない。通勤経路とほぼ同じ行程をたどって14時前位に成田着。チェックインした時点で2時間の遅延が発表される。思い返すと航空機については人生初遅延かも。お詫びに600円分のチケットをもらうがSUBWAYなどではそれが使えず、結局マックという残念ぶり。出がけに最近興味のあるスマートフォン関係が特集されている雑誌と、前日買って半分くらいしか読んでいなかった絶望先生の23巻をまた買って搭乗。登場時にオーストラリア人のおば様(大学教授らしい)が「ヨーロッパとかと比べてアメリカ行きはこれだから嫌になっちゃうのよね」とぼやいておられた。日付変更線トリックにより同日11時頃ロサンゼルス到着。
今日の"一矢、報いてやりましたよ!":「去年に続き、入国時の指紋検査をクラシックパームしたままで通過してやりましたよ!」

事前にチラッと見て存在を確認していたSuperShuttleでダウンタウンシェラトンホテルへ。入り口がちょっと豪華でかっこよかった。「部屋、キングベッドだぜ!」とサムアップしてくれる謎のフロント。部屋に行ってみると確かに広い。ベッドもでかい。なんか寝不足のせいか頭が痛かったのでちょっと寝る。

夜。マジックキャッスル。そう、ちゃんとこの日のためにトンさんから、ゲストカードを貰っておいたのさ!(例のスパイダー"マ"のBGM)。頭痛は治っていなかったが押して参る。だってドレスコードがあるからスーツと靴・タイにシャツまで持っていったので、それが無駄になったらやりきれないじゃないですか。 渋滞に巻き込まれて時間も金もかかったが到着。「あ、ネットでこの建物見た!」ってのが第一印象でした。内部は撮影一切禁止なので外観すらこの日は撮ってないですけど、まずダウンタウンからは遠いです。タクシーで30ドル超えた。ついでに出た時間が最悪、なのでみんな、午後5時とかはやめておいたほうがいいです。「鉄道ないからみんな車でねー。このザマだよ。この間鉄道の建設始まったんだけどね」と運転手さん。ちなみにマジックキャッスルホテルに泊まろうとはしたんです。したんだけど満室だったのです。しくしく。
受付のおねーさん「はい、じゃあそこで合言葉言ってねー」 本棚に向かって「お、オープンセサミー?」で入るのは様式美とは言え中々楽しい(あとちょっと恥ずかしい)。中では素敵な雰囲気のバーでしたが、英会話力の無さを痛感する。特バーでは、カクテルの中にチョイス可能な素材があって「どれ入れる?」とかいわれるんですが、そもそも知識が無いのでコメントできなくて恥をかく。

バーの席にて痩せて若くなったブルース・ウィリスみたいなマイケルという名のおじさん(客)に、本当に追えないカード当てをされてどんぴき。「あの、プロなんですか?」「いや、仕事は他にあるけど手品もやるね」「相当キモいんですが」「あ、でも先週ここ(マジックキャッスル)でも演技してたよ」 一体何者なんだマイケルw ちなみに「ビジネスカード持ってたらくれるかい」というので1枚お渡ししたら「ありがとう。それはそれとして名刺ケースの中の名刺を全部出してごらん」「え?あ、はい(ごそっと)」「んー」 先に受け取った1枚を横から見、私が渡した束と交互に見るマイケル。 「12枚」「は?」「数えてごらん」「はあ」 →はい12枚でしたー。本当にありがとうございましたー。どんなエスティメーション能力だよ。世の中変態ばかりだ。アッシャーツイストはいまいちだったけど! 
ネクタイの辺りに手を添えて「タイとシャツが似合ってるね」と仰るので「ありがとうございます。なんかドレスコードがあるということで、セミフォーマルにて」と返しつつ、もしや「アッー!」な感じの方かと思って無駄にどきどきした。その直後に、待ち合わせていたらしきエキゾチックなおねーさんが到着、恋人なんだか奥様なんだか分からないけど無駄に濃厚にはぐ&ちゅーしててそれはそれでどきどきした。「この人の手品見たの?」とか仰るので「見ました、もう何が起きてんだかサッパリです」と言ったら「って、この子言ってるわよ」「おうよ、見せてやったさー!」的な目線の応酬があってちょいと面白かった。かっこよすぎ。

で。

マジックキャッスルは週代わりで演者が組まれるのですが(知った風な口をきいている割に、私は11月に初めて知りました)、今週の構成はクロースアップ2名、パーラー2名、ステージ1組なのですが、パーラー1人以外は全部見ました。行く前にママさんに伺っていた「時間割の都合上、一回じゃ全部は見られないからね」は、体調が万全なら余裕でした多分。しかしまあ翌日もありますし、見知らぬバーでしかも周り英語、割とぼっちになりがちだった&無駄に冷房が寒かったので頭痛が悪化、という状況下で、まあ敢えて全部見なくてもいいだろうということで余白を残しました。ほら、私マジックマニアとかじゃないじゃない?(説得力がない) いや、本当に頭痛はひどかった…。激しい頭痛と戦いながら見るマジックはなんか修行みたいですらありました。

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#1 HARRY MONTI(CU)
ラバーペンシルギャグ/取れる結び目/Dual Comtrol(?)/リング&ストリングス&ウォンド/3ボールトリック(音楽に合わせてサイレントアクト)/コインマジック

中肉中背だけれど、手が大きなおじいさんというイメージ。40年くらいキャッスルでやってらっしゃるとか何とか、拙いリスニング力でそんな風に聞こえた。上品な感じのマジックで、どれをとっても落ち着いて見られる感じ。手のひらにスティックが吸い付く例のギャグの後、手を離してもOKになり、更にもう1本スティックをつけて振り回しても大丈夫というのはかなり不思議だった。どうなってるのだろう。3ボールトリック愛好家としてはちょっとあのアクトは物足りなかった気がする。コインマジックは観客に端を握らせたハンカチ袋の中に、銅貨が飛び込む例の名作マジックで、私も好きなのですがタイトル覚えてません。




#2 KALIN & JINGER(Stage)
「昔はこういうスタイルのショー、霊魂とでも言いましょうか。交霊会といった類のものが行われていました。それをご覧に入れましょう」 ランプをささげ持ったジンジャーが語りステージに上がる。腕も足も柱に縛られて椅子に座らされるジンジャー。観客をあげて容易に外れないこと、動けないことを確認させたあと、カリンの催眠術で深い眠りに。サイドテーブルにハンドベルが乗っているのを皆に確認させカーテンを閉じる。閉めてしばらくするとちりんとベルの音。カーテンを開けるがジンジャーが動いた形跡はない。2・3度繰り返すがやはりベルの音。続いて観客を一人ステージに上げ、ジンジャーの横の椅子に座らせ目隠しをする。カーテンが閉じられしばらくするとまたベルの音。更にはおいてあった小道具がばんばんカーテンの裏から投げ出され、落ち着いたところでカーテンを開けると何と…。会場大爆笑。最後にはスーツも抜けてた。/でかいゴジンダボックス。人間の頭よりでかいくらいの奴でやっていました。最終的には全然違う柄のボックスを出してきていて見栄えがするなあと。/説明しづらいのですが、ジグザクボックスのような。5つの区切りがあってジンジャーが中に入り、それぞれカリンがふたを閉めていく。そのあと開けていくが、中の人的にどんどん不可能な状況になっていく。最終的にその箱をぐるりと回すが、どこにも隠れられそうな場所がない。その後で再度ふたを閉め、頭の部分のふたを開けるとジンジャーの頭が見え、その他のふたをはずして再登場。ニヤニヤ笑いながら見ていたが(ジンジャーさんがキュート極まりないので)不思議すぎる。どうなってんですか。/カリンのビリヤードボール。かなりでかい物でやっていたが非常にうまい。カラーチェンジも含めて、ディスプレイが巧みでシェルの存在を感じない。/リングの連結/胴体切り。首と脚に革バンドをつけてそれぞれ別の観客がその端の紐を持ったまま行われ、どうなっているのやら。/ミルクタンクを出してきて、フーディニの逸話を交えつつ、カリンとジンジャーの脱出&瞬間入れ替わり。原理は多分私も知っているあれなんだろうけど、それを全く感じなかった。



「ステージかあ、どうしようかなあ」と思っていたのですが、これがもう本当にどれもこれも不思議で面白くて。向こうのお客さんって、結構合間合間に突っ込みを入れるんですけど、これで凄く会場全体が盛り上がるんですね。私の持論として、「本当に面白いショーと言うのは演者だけでは完成しない」と思っているのですが、こういういい空気の会場だとそれを再認識する。とにかく演者も観客も黙って難しい顔してちゃ駄目ですね。演技の間に前の席のおっさんが「ジンジャーはもう出ないのー?」に、カリンさんの「大丈夫、すぐに出ますよ、安心してください(ニヤリ)」で会場の空気が凄く緩んだ気がする。ああいうの、いいな。笑いというかFunという空気は伝染すると思っていて、トリックそのものは拙劣でも場がそうであればあらゆることは盛り上がり、かつ観客も演者も凄くいい心持になれると思うのですよね。理想であります。カリン&ジンジャーに至ってはマジック自体もどれも不思議で、かつ客席の不思議と笑いがこういう絶妙な盛り上がりという、「ああ、行って良かったなあ」と思える内容でした。全然関係無いけど、カリンとジンジャーって…、なんか健康に良さそうですよね、名前的に。




#3 CHRIS CAPEHART(Parlor)
予言されたカードの変化/ストップトリック(全部印刷されたギャグカードを使いつつ、最後には…)/コインズアクロス、これがまたかなり不思議だった。独特の動きをするのだけれどどうやって移っているのかよく分からない。いや、マジックだからそれでいいのか。しかし何回やってもコインが出てくるというシルベスターピッチみたいな奴から最後ざらざら出てくるのは凄かった。/ジェリー・アンドラスのあの渦巻き模様を見続ける→その後演者の顔を見るとにゅーっと迫ってくるというあれ。会場爆笑。しかし私はその錯覚になぜかならなかった。頭痛のせいか?/チャイナリング。これがまたものすごく速い。客席を回って目の前で見せてくれるのだが「絶対切れ目がある」んだけれど、もう何と言うか全くその辺が分からない。あの速さで抜き差しが行えると、もうそれだけで不思議。

今週のフィーチャーマジシャン、通称Master of Magicianという、短髪で太ったオジサマ登場。「私はね、普通のマジシャンがやる…こういうの、こういうのもできるよ?でもやらない」といいながら、普通のマジックをぞんざいに見せるというのは斬新だったw この人はトークが本当に速くて、現象は分かるんだけれどジョークについていけなかったのが悔しい。割といんちきマジシャンぽいことをするのですが、要所要所でテクニシャンぶりを披露するスタイルはちょっとかっこいい。




#4 GEOFF WILLIAMS(CU)
THE "I HATE DAVID COPPERFIELD" TRICK バックの色が違う1枚だけがとけるようにボトムからミドルへきたりする、スタンダップのモンテみたいなもの。不思議。/IS IT HOT IN HERE OR IS IT JUST ME?  「なんか熱くね?」と、いって火のついたタバコがポケットから出てくる/HAIRBALLS スポンジボールルーティーン /EVERYTHING'S A RADIO 観客が紙に描いたラジオが鳴る。


あと、目玉がおっこったりしていた気が。なお前列が珍しく日本人の女性二人(多分留学生っぽい)で、きっとぺらぺらなんだろうなあ、いいなあと思っていたが、その女性二人とも「このペッツ、マックスメイビンの顔のやつなんだよ」という演者のギャグに「え…?」「誰…?」みたいな反応でついていけてないのを見てちょっとだけ溜飲を下げる、不毛なお仕事w 私は笑えましたよ、ちゃんと。

(xx ERIC BUSS)  未見。

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もう一つ見れば全制覇だったけれど、さすがに体調悪いし、翌日あるしで、日を跨ぎたくなかったので断念。タクシーを呼んでもらって、待っている間デックやキーホルダーを買ってみた。あと受け付けのおねーさんに「かわいい」とか言われた(日本語で)。「かわいいって、女の子に使う日本語ですよw」「え、じゃあこの場合なんていうの?」と言われて即答できなかった。「…いや、"かわいい"でいいのか…?」「ほら、でしょー?」 釈然としない。 「ジゴロ、ですよ、ハッハ」とか言っておけば良かったのか(日本語ですらない)。しかしマイケルさんの応対といい、なんだろう、東洋人は幼く見えるのかしら…。知ってる日本語を言ってみただけだと信じたい。それはそれとして"ストロベリーキュート"レベルを狙うか、松来親方のレニー・ハートさんの故事を見習って。