教授の戯言

手品のお話とかね。

わらしべ長者

今日会議を終えて道を歩いていたら、自販機前で眉間にシワを寄せて悩んでいるスーツ姿の男性が。「どうされたんですか?」と聞くと「いやね…小銭がないんだよ」と。「ハーフダラーが2枚足りないんだよ。ウォーキング・リバティがさ…」「あ、良かったら私の使ってください」「え、いいの!?ありがとう!ていうかキミよく持ってるねそんなの」「お守りに、って、祖母が」「へえ。お代と言っちゃ何だけどこれを」と二千円札をくださいました。

その方と別れて営団地下鉄丸ノ内線に乗ると、隣の席の女性が、手遊びなのかずっと千円札を折りたたんでいる。「確か8回だか9回折るのが限界だったっけ…」と思いながら見ていると、1/16サイズまで折りたたんでいました。そしてもう1枚千円札を取り出すと同じように折り始め重ねたりずらしたりしています。そのうち2枚を重ねたりフィンガーパームポジションに持ったりして首を傾げていたので、私もこれ見よがしに二千円札を折り始めました。するとこの女性がはっとしたように私を見て、「すみません、その二千円札、両替でいいんで下さいませんか?」と。「あ、別に構いませんけど」と、普通に両替をしてもらったのですが、「お礼にこれを」と、何か肌色のソフトビニールで出来た親指のようなものをくださいました。「これはなくてもいいんですか?」と聞いたところ「大丈夫です!」と元気なお返事。

大手町のカフェで新聞を読みながら軽食をとっていると、横の男性がタバコを。「ここ、禁煙ですよ」と言うと「いやはや失敬。つい、ね。でも灰皿もないし、床に捨てるわけにもいかないし、なにかこう、携帯灰皿の代わりになるような感じで、そう、例えるなら親指くらいの筒とかってないかなあ」というので「じゃあこれをお使いください」と先ほどの謎の親指を。「お、何だねこれは。リアルなおもちゃだね。まあいいや、ありがたく使わせてもらうよ。迷惑かけちゃったし、お詫びの意味を込めてこれを」「これは?」「プライヤーだよ」「よく分かんないですが頂いておきます」「いいよ、プライヤーは。便利だよ。愛があるよ」「はあ…」

サンドイッチを食べ終えて山手線に乗り、ノートPCを出してカチャカチャやっていたところ、横の老夫婦がこんな会話を。「いや、ほら、瓶の中に船とか、木の実とか、そう言うのが入ってる不思議な奴があるじゃないですか」「あるもんかい。手品じゃあるまいし。どうせあれだ、あとから口とか底を溶接し直したんだろ」「でもペットボトルでしたよ、こういう」「こんなんあれだ、頑張りゃ入るんじゃないか、んぎーーーー」「高血圧なのに、そんなに力こめちゃだめですよ」「おおっとそうじゃった」老夫婦を微笑ましく見ていると、突然近くにいた妊婦さんが苦しみだします。「誰か!誰かこの中にお医者様は!」のそりとキモイ感じの男性が立ち上がりかけましたが、続いての「お医者さんごっことかプレイじゃないタイプの、国家免許持ってらしゃる方」というのを聞いてしょんぼり座りなおしていました。で、そのあと偶然乗り合わせた産婦人科医と、山帰りの若者のクッカーと携帯コンロ、ドンキで水を買い占めてきたと思しき人が協力して湯を沸かし、赤ちゃんは無事生まれ、車内は幸せな空気に包まれました。「こんな時代に、この子は生きてゆくのね…」と独りごちるお母様に「生きてさえいれば、いずれ光も見えますよ」とキモイ男性がかっこ良くフォロー。「…そうね、私が思うよりも、子供はずっとたくましいんだと思うわ」というやりとり。というのをさておき、クッカーの中には沸騰したお湯が。ペットボトルの蓋が偶然落ちていて、先ほどの老夫婦のおじいさまのほうが「あれだよ、あんな感じで柔らかくすれば入るんじゃないかな、熱ッ!!」「だめですよ、そんな物素手でつかんだら。ああ、誰か間接的に物を持てて、かつぎゅっと力を込められる、ペンチのようなものを持ってる方は居らっしゃらないかしら」「馬鹿言うな、そんなの大工か電気工事士くらいしか持ち歩かんだろ」 おずおずと「あの、プライヤーで良ければ、私、持ってますけど…」「おお、ナイスじゃ若者」 <中略> 「ちょっと帰ってからも試したいからプライヤー、譲ってくれんか。代わりと言っちゃなんじゃがこれを」「ステッキですか」「黒檀の逸品じゃぞう。あとな、ここの突起を押しながら引くとだな」「うわ、なんですかこれ、銃刀法違反?」「固いこと抜かすな。備前長船の直刀入の仕込み杖じゃ」「こ、こんな業物を、そんなホームセンターで売ってそうなプライヤーと交換しちゃっていいんですか?」「もちろんじゃ、わしも戦うにはもう歳をとりすぎたでな…」「じゃあありがたく…いや、私は戦いませんけど…」「抜身には鞘が必要なんじゃよ」「じいさんそれセクハラなのか『無限の住人』の台詞のパロディなのかはっきりしとけよ」

目的の駅に着いてステッキを持て余しながら歩いていると、ホスト崩れっぽい風貌の、いかにもマジシャンですという感じの青年が。「困ったなあ、これからホッピングなのに…ダンケンの片方を転んだ拍子に折っちゃったよ…」「へえ、ダンシングケーン、やられるんですか。…って、ホッピングで!?そんなの絶対、おかしいよ!」「俺くらいになるとそのくらいはやれるんですって。何だあんた、マジックやるのか」「いや、どっちかというと手品は見て忘れるのが得意です」「本当の自分と向き合えよ。あれ…?あんた、箱根かどこかで会った、ような…」「気のせいでしょう。よくある顔ですしね。しかしあれです、もし困ってるなら、この杖でも代わりに使います?お役に立てるなら、それはとっても嬉しいなって」「まじか!何たる偶然。奇跡っつーか、魔法っつーか」「奇跡も、魔法も、あるんだよ。ちなみにそれ、仕込杖仕様です」「おお!すげえ!俺、もう何も怖くない!」「…銃刀法違反だから、警察とかは怖がったほうがいいと思うよ」「ありがとう、感謝する。これは後でアンタに返すが、借賃としてこれを受け取ってくれ」「…ジョニーくん人形ですか…実物初めて触った…」「さすが、詳しいね!友達いないのに買っちゃってさ。俺って、ほんとバカ」「ま、じゃあこれ連絡先の名刺です。急がないけど、使い終わって返してくれる時に連絡ください」「バックれたりしねーから安心してくれ。ていうかそんなの俺が、ゆるさない」「ほむほむ」『マジほむほむ』「あんたまどマギ厨かよ、だがほむほむ派は嫌いじゃないぜ」「私の戦場は、ここじゃない」「去り際までかよ!まあいいや、今宵は仕込杖ダンケン、華麗に決めるぜ!」「けが人出さないようにねー」

しばらく歩くと歩行者天国に人だかりが。なんだろうと思って見てみると、紙製の人形がひとりの女の子の指示に合わせて立ち上がったりお辞儀をしたり。しかしあるタイミングを境にうんともすんとも言わなくなって<略>



<略><略><略>



<略>なにやら大量の荷物を抱えていらっしゃるご老人が。「重そうですね、大丈夫ですか?」と尋ねると「いや、大丈夫。大丈夫なんですが、あとほんの少し、そう、100グラムくらい軽くなるととても嬉しいんだけど…」「これ、何ですか?」「本ですよ。いやはや、重い。罪の重さみたいです」「業も深そうですね。なるほど、おじいさん、じゃあ私が一冊買うってのはどうですか?」「え、それはありがたいけれど、価格もまだ決まってなくて」「なるほど。普通こういう本は幾らくらいするんですか?」「まあある程度専門書なんでちょっと高めなんだよ。今ならお値段据え置き6,000円くらい、金利手数料は当社が泣く泣く負担!」「そうなんですか、私もそんなにお金があるわけじゃなし…じゃあ、キリ良く5,380円って事でいいですよね。じゃ、一冊頂いていきますよ!」「おお…ありがとう…ありがとう若者よ!未来に幸あれ!」
と、帰宅するまでに述べ41回の物々交換/購買行動を経まして。日が変わった辺りの

というこざわさんのTweetを、100%のいい気持ちで「そうかあ、やっと出たんだ。でも当初の予定日通りで良かったですねえ、うんうん」という思いでリンクを開いたらこの有様だったので、チックショウ、まだだじゃねーよ、もうにしてやんよ!と、彼の嘘を本当にしてやりましたよ。










著作者より先にゲット!
納品から3時間の早業よ。フーハハハ!サインとか頂きに参っちゃおうかな今晩!どこからどこまでが嘘なのかは自分でもよく分からない!基本は全部嘘。だが有給ではない。繰り返す、今日は有給ではない!あといたずらには金と労力をつぎ込んでも全く気にならない!本は本物。

皆様の2011年度が壮健でありますように。あと今年は正直企画考えるのがめんどくさかった。来年は頑張りたい。あと久々に脳の赴くままに書いた。超楽しい(私が)。