教授の戯言

手品のお話とかね。

「MEGA 'WAVE」日本語版



拙ブログメンバー中心に、ペーパーバックを一冊完訳しました。ついにやっちまった感じです。Tさん本来業務の手を抜いて無駄に頑張ってました。私はあんまり頑張ってませんけど。以下提灯記事的宣伝をば。なお私もしくはTさんから直接ご購入頂いた場合、先着50名くらいには、作中で通常デック以外で使用されるカード(ブランク8枚、同一カード8枚、裏の色が違う同一カード4枚、計20枚)を差し上げます。「折角なら買ってすぐでけるようにおまけ付いてたらええねや」とかTさんは嘘関西弁で言っていましたが、20枚とか付けようと考える辺り、彼は間違い無く商売に向いていません。
ショップ経路ですと本日から二川先生の"マジックハウス"にて取り扱い開始なのだぜ。 →「MEGA 'WAVE」 

※ちょっと宣伝させて頂きたいので、一定期間日付を未来にしておきます


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こんにちは、本サークル「教授の戯言」メンバー03のTと申します。脳汁垂れ流しのきょうじゅさんと違ってたまにある"真面目なこと書いてる"担当です。以後、お見知りおかないでください。照れ屋なので。

皆様、John Bannonというマジシャンをご存知でしょうか。アメリカの著名アマチュアマジシャンであり弁護士。ある程度の年次以上の方にはトライアンフの改案傑作「Play it Straight」が、また、マニアの方にはカラーチェンジデックの名作「Strangers' Gallery」、サインの移動「Tatto You」などのイメージかも知れません。私がイメージする彼の作品の特徴としては"無理のない手順構成"と、"アイディアの複合的な連携"。派手さはないのですが、私の好み・スタイルには非常にマッチした方です。ちなみに今から20年ほど前に一度来日しており、その際にレクチャーツアーもされています。ちょうど到着されるタイミングで高木重朗さんが亡くなられたという、「日本側が非常に微妙な状況だった」とは伝え聞いております。



元々私は上記のような"地味だけど理にかなっている"という理由で彼・Bannonのトリックが好きだったのですが、「バノンって何ですか?ヨーグルトの会社でしたっけ?」などと言い出す後輩がいたため、その子をTamarizの『Mnemonica』でシバきつつ、「Bannonを知らんとはーっ、貴様それでも軍人か!歯ァ食いしばれぇいッ!…と見せかけてボディー!」 「っげふー!」 などと。で、うずくまって涙目でえぐえぐしている後輩を見下ろしながら、「これはやはり、私が啓蒙活動をせねばなるまい…」と思い、何故か『MEGA 'WAVE』の全訳を書き始めた次第です。なお後輩その他は実在の人物ではなく、訳者の妄想である場合があります。



2010年9月頃から始めて10月末に素訳は完成して、11月に粗く直しはしたのですが、諸々の確認・大幅な修正を完了したのが2011年2月20日。「あなたの『MEGA 'WAVE』、訳したいって子がいるんですけど」「え、日本語版を?ああ、うん、出していいよ」という二川さんとBannonの交渉(?)結果が出たのが2月12日。…なんか前後しているけど結果オーライ!ということで、当初「手順部分だけ各1pくらいに訳して、サークルメンバーで共有」程度を考えていたのですが、ちゃんと冊子体で、しかも著者本人のご承諾の上で"出版して良い"ということに相成りました。



原著はA5サイズ約70pで7トリックの冊子ではありますが、色々面白い要素が詰まっていると思います。自分が訳したから、というわけでもないのですが、正直色々勉強になりました。映像媒体が溢れているこのご時世、日本に限らず本国アメリカでも活字形式のものというのはやはりそんなに売れないそうなんですけれども、あえてそこに反逆するのが私のジャスティス! 単に全訳しただけでなく、かなり細かく補足情報を入れています。英語の本を要素だけさらっと日本語に訳せば大体50〜60%くらいのページ数になるのが一般的だそうですが、今回作成した日本語版、同版型だと普通にテキストだけで70p以上あったあたりに、私(&ご協力頂いたメンバーの皆様)の無駄な気合と情熱を感じ取って頂ければ幸いです(趣味でB5判にしましたが全部で68頁、本文のみでも58頁)。なお彼のスラッグというコンセプトはかなりディセプティブと思いました。そこまでやるかあ…、という感じで。なお出版前のチェックで、何点か二川さんに「この部分をこうやったらより簡単になるのでは」というコメントまで頂けたので、そういうポイントもコメントとして付記しています。繰り返します、「"あの"二川滋夫先生のTIPS付き」! ホーラなんかお得な感じw ちなみに3月に出せなかったのは、"タイトルが時期的に不謹慎だった"からとかじゃなくて、"読み直せば読み直すほど直したい部分とかが出てきてしまった"からです。ホントです。最終物に既に間抜けな誤植を発見していますが、内緒にしておいてください。見ないでー!



大手の流通に乗るものでもないので、少部数しか刷れないのですが、「へえ、あのBannonの最近の本なんだ」というシニアorマニアな方も、「誰それ?」という方も、ご興味持たれたら是非Bannonワールドに触れて頂ければと思います。何人かでも、本作でBannonを知ったですとか、興味を持ったよ、とかいう方が出てくださったら彼のいちファンとしてとても嬉しいです。しかし手品に触れた時分、先輩に「Play it Straight」を見せて頂いた頃などを思い返しますと、まさかこんなの作ることになるとは思わなかったなあ…。思えば遠くにきたもんです。



収録内容:
1. Mega 'Wave:演者は2つのパケットを取り出す。片方のパケットで観客が思ったスートのQだけが表向きになる。続いて先ほど使わなかった方のパケットを取り上げ広げると観客の選んだスートのQが表向きになっている。しかもそのQは唯一バックの色が違う。他のカードは表向きにするとQではなくJOKERである。1つ目のパケットを見直す。1枚だけ裏向きになっていたカードを表向きにすると…。
2. Fractal Re-Call:シャッフルされたデックの適当に分けたところから8枚のカードを抜き出し、演者とギャンブラーがどのようにイカサマハンド対決をやったかというお話の流れ。演者は自分の4枚をすべてASに変えてしまう。ギャンブラーは「4枚のAS?それはやりすぎだな」と言って、自分のハンドを見せるとスートもばらばらのいわゆる4A。さあマジシャンはどうするかと言う展開になるが、先ほどのは4ASではなくASを見せただけだと言い張る。演者がハンドを見せるとロイヤルフラッシュが完成している。
3. Short Attention Scam:9枚の赤裏ASを見せ、内4枚を脇によける。残ったAS5枚が瞬時にロイヤルフラッシュに変わっていて、脇によけておいた4枚もそれぞれバックが全く違うデザインに変わってしまう。
4. Mag-7:ブランクカードのパケットと1枚のQSを示す。パケットは7枚あるが、QSで触れるたびにQSに変わっていき、最後には全てQSになってしまう。
5. Poker Pairadox:デックから絵札12枚と4A、計16枚を取り出してきて使う。テキサスホールデンのルールに軽く触れ、これらはみなハイカードではあるがプレミアムハンドにはなっていないことを説明。しかし観客がおまじないをかけると、全てのペアがプレミアムハンドに変化している。
6. FRACTAL JACKS:8枚の裏向きカードを取り出し、ボトム4枚を卓上に置き、トップ4枚が4Jであることを示す。卓上の4枚の上に4Jを乗せて、演者と観客それぞれに4枚ずつ交互に配っていくが、何故か演者側に4枚ともJが集まる。再度行うが同様。3回目は動きは同じようだが観客側に4Jが配られる。演者の側を見ると…。
7. WICKED!:観客の選んだカードが『オズの魔法使い』のドロシーのように”悪い魔女”にさらわれてしまうが、”善い魔女”によって助け出される。続いて再度”悪い魔女”につかまってしまったかと思いきや、いつの間にか”善い魔女”に守られていたことが明かされる。
c John Bannon 『MEGA 'WAVE』2010
訳出:妄想手品愛好会「教授の戯言」メンバー 他



好評だったら彼の著作の中から映像化されていない(本でしか解説のない)トリックなんかも訳せたらなあ、とは思っておりますが…、…全訳って超・面倒なんですよねー。もう私みたいに留学経験も英語力も無い人間じゃなくて、英語に堪能なマジックマニアがもっと全訳本出して世に還元すべき。あとスクリプト・マヌーヴァさんは最近DVD専門というか、レクチャーノートを訳されてなくない!?w 本の類はあんまり売れないでしょうし、商売でやっていらっしゃる方たちには「つべこべ言わずに出しやがれー」などとはとてもいえないのですが。個人的にはTamarizの『Mnemonica』とか、Geobbiの『Card College Light / Lighter / Lightest』とか読みたいです。英語だと流し読めないので日本語で読みたいっす! ついでに松田本的な興味深いエピソードや訳注を希望します!誰か、誰ぞおらぬか!

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はいはい落ち着きなさい。 …だそうです。繰り返しになりますが、この本が上手くはけたら、ではありますが、二川さんやTさん、私・きょうじゅ、及びその知り合いなど(こざわさんとかbeeさんとか乗ってくださらないかなー。あとダメもとで気賀さんにお願いとかw)でTIPSや改案などを盛り込みまくった第2弾などできないかという企画はしています。いや、実際そっちが出版されるかはこれの売れ行きにかかっているのですがw それはさておき、既にもう40ページ分くらいは完訳したバノンの他のトリックもあるにはあるので、まあそれはそれで出せたら嬉しい(その中にある"Degrees of Freedom"というセルフワーキングトリックはとてもお勧めです。最近各所で困るとこれに頼っています)。一度やってみたかったんですよね、「オリジナルを載せつつ、色々な方の改案とかを併記する形式の本」を作るの。人の好みが反映されてちょっと面白いのです(※なお普通に翻訳等をする場合、"原文内容について添削不可"という条件が付くことが殆どなので、そういうことをやらせてくれる作者が珍しかったりするそうです)。ということで、よろしくおねがいいたします。