教授の戯言

手品のお話とかね。

Chad Longレクチャー

掲題、2012年6月12日(火)そぼ降る雨の中、18:30よりマジックランドにて参加。結論から書きますが物凄く面白かったです。繰り返す、物凄く面白かったです(大事なことなので2回言いました)。



私はチャド・ロングといえば数年前に出たDVD Vol.1を見たことしか無く、印象としては「超うまい」「不思議」「でも本人は寡黙でとっつきにくそう」でした。なので、案内を頂いたときも行こうかどうかちょっと悩んでいたくらいです。結果、最初の2つはその通りでしたが、最後の1つは間違いでした。超面白いよロング氏。ファンキーすぎる。レクチャーであんなに笑ったのグレッグ・ウィルソン以来でした。ちなみに彼のOil and Waterでの技法は、分かっていても騙される素敵ぶりなのです(レクチャーではやりませんでしたけど)。



レクチャー開始前の彼はテンション低うございました。理由ははっきりしていて、なんとロスト・バゲージ、手荷物以外が全部届いてない、という有様とのことで納得。「ついさっきまで駆け回って、レクチャーに使えるような材料を買いまくってきました」という。「お前はマクガイバーか」、みたいな現地調達ぶり。しびれる。完全なロスト・バゲージではなく、別便で最終的には届くことになるのだけど、海外行く時にそれはへこむなあ(私は荷物をロストした経験が無い)。「ということで二日間着の身着のままなので汚い子なのです」的なことを仰って笑いを取ってはいましたがw


雨天なのに、いや、雨天だからか、集まりは大変早く、ほとんどの方は15分前には着席済みでした。あれ、やる側としては開演時間まで観客の目にずっとさらされるわけで結構ドキドキするんじゃなかろうか(プロだし関係ないかもですけど)。通訳は毎度おなじみ、iMagicの小林さんでした。なおロング氏はマシンガントークの人なので通訳は大変そうでしたw


前半開始。のっけからキモイ3コインルーティーン。「このコインはね」ときて、「ワンダラーだな」と思ったら「スクールクラフト製w(注)」とか言い出してずっこけました。(注:ラッセン等と同様、ギャフコインメーカーの名前) 若干落としてはいけないものが落ちたりして「おおっと、やっぱ調子悪いかも、ごめん」とか言ってたけど、だんだん顔は笑ってきておりちょっと安心する(私が)。
アルデンテは1本のパスタの復活なのだけどあれ生で見ても不思議でした。いや、「復活する」らしいとは知っていたのですが、手に何も持ってなかったし、口から真っ直ぐパスタが出てきたときはちょっとビビリました。「日本だとそうめんでやるといいよ」に笑う。あと海外ってパスタは箱入りなんだということを初めて知りました。
ワイルドカードは見事だった。ビリススイッチがまた綺麗に。
次のAce to QueenではSteve Bedwellのコントロールが知って見てても不思議で、やっぱこれいいよなあと思ったりしておりましたが、その実、私のここでの学びは普通のジョグ・コントロールの方でした。私、つい手元見ちゃうのですが、彼全く見ない上にものすごくカジュアルに扱うので、すみません、正直普通に手遊びしてるだけかと思っていました。恐ろしいことです。あとConvincing Tiltは実は憧れの技法なのですがサラリとやっててワロタwww やだ、やっぱ超素敵。練習しよう。そのティルトの後にちょっとしたあらため、というかより錯覚を強める1動作を加えているのだけど実にいやらしい(褒め言葉)。それを見た瞬間、「あれ?ほんとに真ん中に入れちゃうのか…?」とか惑ったのは秘密です。ここの他にも"ほんのちょっとした一工夫"が光るというか、「あっても無くても変わらないかもしれない、でもあった方がより自然に見える、といったものの積み重ねが好きなんだ」、ということは仰っていましたが、こういうのが積み重なると超不思議です。
<3coins Routine/親指の耳貫通ギャグ/Sticky Situation/Al Dente/Wild Card(Oh No You Didn't?)/Ace to Queens/Another Rumor>



休憩:休憩時間中は参加者の半数が、デックを出してジョグコントロールとか、ビリススイッチを練習してて笑う。いや、私もやってましたが、やっぱレクチャー会ってこうなりますよねw 私はサインを頂くためのAHのフォーシングデックしか持っていなかったので、スイッチが超不思議。なんたって、替えなくても替わってるから。…いや、替わってないですスミマセン。結局ずっと座っていたため後半戦でお尻が痛くなる。レーシングパンツを穿いておくんだった(超蒸れそう)。あとロングが文庫本をバリバリ破ってて、「なにしてるんだろう、この人」とか思った。答えは後半で判明。



後半戦。卓上に金属の箸っぽいものがあって、先っちょに黄色い糸、先に糸束(あのボール紙(?)にグルグル巻いてあるやつ)。「なんだこれ」とか思っていたが、編み物っぽい感じでロングがそれを持って先をカチャカチャさせている。何かのジョークかと思ったら、指の先から…!いや、そういうことか!とか思って、ちょっとびっくり。「カードマンばっかりのコンベンションに行った時にこれやったら物凄いウケたよ!」とか嬉々として語るロングさんまじキュート。場では林檎をくりぬいておいて、そこからサイン入りのシルクを取り出してくるマジックの話になったのですが、敬愛するCloutier先生はサインさせたやつをパプリカの中から出してたな、ということを唐突に思い出した。やはりプロがステージとかで使う"見栄えのいいトリック"は、実際不思議でもあるのだけど、自分がそういうものを練習していないのは、やはり何か感覚がマニア方向に行ってしまっているのだろうか。昨今、これ不思議なのかな?とか思っていたものが、一般の方にドッカンドッカンいくと逆に自分が驚いたりすることが多く、何かダメセンスになってきているかもしれません(知識をつけてしまった分、類推が利きやすいのは致し方なしですが)。
ナウルックヒア、これは「右を見ろ」→「後ろを見ろ」→「上を見ろ」→(天上に大きな鏡がある)『バカの顔』 みたいな感じの視線誘導型カードマジック(例えがイマイチ不適切)。大学生とかが、西海岸のビーチで呑んだくれている状況でも分かりやすいマジックを、ということで、騒がしくても大丈夫にする工夫からだそうで。ここで後述の素敵な訓戒「素人はそんなとこ見てない」が登場。実に男らしい。
スパインレス・ブックテスト。スパインというのは本の背の部分。先の文庫をビリビリ破っていたのはこのためでした。何人かに破った本を渡して表裏めちゃくちゃに混ぜてもらったやつを回収、適当な所に差し込んでもらった表紙のところのページを取り出し、そこの言葉を予言するというもので、たまたまプロフェシー・ムーブを知ってはいたものの、これも多人数が参加した感じになる参加型マジックな上に、今回彼が使っていたのが日本の文庫で、予言も漢字の意味を英語で記述していたのでかなり素敵だった。捨てる本とかブックオフで100円の文庫とかあれば、かなり即席っぽく出来るなあと思える手品でした。自炊後の文庫本とかを捨てる前にやったらいいかもしれない、と今思いつきました。
フラッシュはUSBメモリでやるカラーチェンジングナイフ、と書くと身も蓋もないのだけど、ナイフよりも角度に断然強いのです。まるで見えない。あとの話によれば、ちゃんとそういうように作ってあるとのことではあるのだけど、彼の腕自体が良いのも相まって、余計だと思う動きもなく、そして最後でまた驚かされましたw ナイフはさらっと収まるゆうきさんの手順とかが好きなのですが、これみたいにオチがあるのはやはり良いですね。David Williamsonのアイディアという言葉遊びのギャグで、Fileが"書類"とかそっちの意味以外に、"爪磨き"という意味があることを初めて知りました。とはいえリアル英語圏じゃないと無理なジョークでした。オウシット。
Scratch。これはもう完全に騙されました。お札に銀のシールが張ってあって、何だろこれとか思っていたのですが、まさかそのスクラッチ削った後にこれがアレに変わっているとは。美しくミスディレクションというか技法に騙されましたよ。この技法Tamarizの「ダブル・クロッシング・ゲイジング・スイッチ」というそうなのですが、…必殺技の名前か。「ダブル・クロッシング!」チャキーン「ゲイジーング、スイッチッ!」ドゴォ 的な何か。
最後は「4枚のカードを使います」とか言いつつ、明らかに10枚くらい抜き出してて、「それは幾らなんでも無理だろ(言い訳的に)」とか思っていたら「あ、この抜き出したやつから4枚ね、これから選ぶんだよ」とか言われて納得。4枚のカードを抜き出して置いたあとで、指を鳴らすとカードの下からそれぞれコインが!目茶目茶不思議でした。しかも解説が「4枚をパームするんだけど、こんな感じに」音が出ないように、別々の位置で4枚という「二川さんがやってるのしか見たことないわ」というような無理難題なパームをし、カードを置くときに差し入れたりしており「これは私は絶対無理」と思っていたのですが、ところが…。 ロング「というような感じでも出来ますが、大変なのでやりません」 一同「「「えっ?」」」」 ど、どういうことだ、と思ったら、これを実現する極めてディセプティブなギミックを使っていたのです。このギミックは賢い。コンパクト。ていうか実に直接的。もう何か無駄に4枚のコイン出したくなるギミックでした。…今度ホントに"4枚出してすぐ片付ける"とかやってみようかなw(4枚をさっさと消して終わる手順は1つ持っていますが、それと組み合わせてみたりとか) 「ポン太みたいなスゲーテクとか無理だからな!こっちは超楽!」的な意味合いの台詞が面白かった。たしかにこれ、スライハンドでやろうと思ったら結構な手間が掛かりそうよね…。
<Crochet/Now Look Here!/Spineless Book Test/Flash/Scratch/Coin Card(?)>



そんなこんなであっという間の2時間半くらい?でした。いやもう大変楽しかったし、今後ペット・トリックにしたいなと思えるようなものが複数あったりと、大変ためにもなりました。あと何より、ほんとロングおじさん面白い。すごく好きになりました。とっつきにくいおじさんから、レクチャー中に水割り飲んでテンションがおかしくなっちゃうファンキーなおじさんってことが分かったからかな!「これ、いわゆるギャップ萌えってやつですかね?」「違います」



なお、私が広まって欲しくないと思っている2大技法、「コックローチ・パス」と「ゴルフ・パス」が解説された時だけ「そいつは広めちゃいかんですよロングさーん」とか思った。あれはなあ、…本当に有用ですよねえw あ、いま「フィギュア・パス」というのを思いついた。同類の技法で。賢明なる諸兄諸氏のご想像通り、演者が回転。ちなみに会を通して私の中で最も心強かったアドバイスは「Layman don't look in to that detail」(素人はそんなところまで見てないよ)でした。マニア相手だと自然とハードルが高くなりがちなのですかね(このくらいじゃバレちゃう、的な無駄な怯え)。なお彼の経験上、過去20年間1人だけ「今3枚スプレッドしてブレイクとったよね」という指摘をしてきたレイマンがいたということですが、そいつ絶対レイマンじゃないw


(自分用)参考:Now Look Here! / DVDs / Flash

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なおマジックランドですが、入居しているビルが建て替えのため、あの場所のマジックランド・レクチャーはこれが最後だったとのことで、期せずしてちょっと記念的なタイミングだったのだなあと思い、帰り際ちょっと感慨深かったです。で、その翌日、昨日支払いは済ませていたけど届いてはいなかったチャド・ロングの来日時の販売セット(DVDとかギミックとかの詰め合わせ)を受け取りには行ったので、茅場町マジックランド訪問は最後でも何でもなかったというw しかし今でもちょっと緊張するけど、大学生の頃初めてマジックランド行ったときって、物凄く緊張したなあ。…ピュアだったんだなあ。今度写真でも撮らせてもらおうかな。90年代くらいまで、ネットが発達していなかった頃はあそこは本当にマニアたちの情報交換の場になってたんだろうなあ。まあ、移転といっても徒歩2分のところらしいので、今までどおり遊びに行きますけどね。