教授の戯言

手品のお話とかね。

A Stack to Remember

老舗マジックショップ、ミスターマジシャンのカタログといえば、店主の根本さんの特徴的フレーズにもファンが多いことで知られています。「女房を質に入れてでも」「素晴らしい奇術です。私は気に入りました」「氏の奇術の大半は駄作ですが」とか。その中で「三度の飯を二度にしても買って下さい」フレーズが冠されていたのが、アロンソンの「スタック・トゥ・リメンバー」です。


メモライズド・デックというカテゴリ…というかものがあり、存在自体は昔から知っていたのですが、生来の努力嫌いとしては手を出しておりませんでした。だって52枚の並びを全部記憶するとか頭おかしいというか、他に憶えるべきことはないのかどんだけ手品したい人なんだよと。この手のものとしてはヨーロッパにおいてはよくタマリッツのネモニカ・スタックが使われ、米国ではアロンソンのスタックが使われているとよく聞きます。計算可能なタイプとしてはオスタリンドのブレイクスルー・カードシステムとか日本ではKENJIさんのM-DECKとかでしょうか。


きっかけとしてはほぼ翻訳終わったのPit Hartlingの本「CARD FICTIONS」のとあるトリック、これはもう出来たら文句なく不思議な作品なのですが、そこである程度カードの並び順を覚えなければならないフェイズがあり、これをどうするかちょっと悩んだのですね。昨年販売された「The Psy Deck」を活用してワークを軽減しようとは思ったのですが、それはともかく憶えなければならないものはあるわけで。マークはともかく、13枚の数の配列についてはたまに使っている語呂合わせがあるのでそれ使ってもいいかなと思ったのですが、まあそれ以外にも活用範囲のあるものを憶えたほうがいいだろということで、日本語語呂合わせが普通に買えるアロンソン・スタックを憶えようと相成ったわけです。ネモニカ・スタックも日本語語呂合わせはあるらしいのですが、販売物で見つけられなかったので仕方ないじゃない。洋書購読会でMnemonicaのカード配列記憶法についてを教えて頂いたことはあったのですが、それも日本語ではないので仕方ないじゃない。あとちょうどいいタイミングで、オンラインマジック研究会にてマジメラーという語呂合わせが投稿されていて、これがまた憶えやすそうだったので一瞬そっちを憶えようかとも思ったのですが、スタックを使ったマジックが世界中に転がっているアロンソンかタマリッツの方がやっぱ良かろうということで見送りました。スタック憶えようと思ってからひどい揺れ揺れぶりです。そういや知り合いの方はアロンソンもタマリッツも憶えているという関西弁魔法少女の方(自称)なのですが、へんたいDANE!w 
ちなみに計算モノは忘れないというメリットがある反面、私は瞬間的には出せないので、複数枚をバシバシ言わなければならない時には不向きだと思いました。計算タイプの方を選ばなかったのは、要するに今回の私の目的にはそぐわなかったというだけです。計算モノの方がいいこともたくさんあると思います。



色々な憶え方があるのでしょうが、私の場合は順番の語呂→文章語呂合わせ→それぞれのカードの語呂→文章語呂合わせ というおさらいの仕方で、今1秒くらいあれば思い出せる感じですね。最近暇な会議の時に紙の裏に1から52の数字書いて、適当な順でその数字の横に何のカードか書いていくのと、ACからKDまでばーっと書いて、その横に順番をちまちま埋めていくことで記憶の定着を図っています。…仕事しろ。毎日でもないですが、適当に3週間くらいやってたら意外に覚えられるもんですね、これ。先日ベトナム旅行に行った際、マッサージをよく受けていたのですが、足のマッサージをされている最中暇なので、ずっと脳内で反芻していたら結構定着率が上がった気がします。ベトナムに行ってまで一体何をしているのかというツッコミは自分でもしました。出張で沖縄に行った時も行き帰りの飛行機でこれの記憶をしていたので、なんか飛行機とか長期外出の際にはこういう反芻記憶系の作業は相性良いかもですね。脳内で出来る暇潰しになりました。趣味と実益…というか、益は生まないんですがw



で、問題はせっかく買った冊子の、語呂合わせ部分は大変に活用させて頂いた割に、肝心の奇術編を何一つ読んでいないというところでw ちゃんとやろう。

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まずアロンソン・スタックを記憶しようと決めてからはイメージ修業だな。最初は実際のデックと配列の書かれた印刷物を一日中いじくってたな。とにかく四六時中だよ。目をつぶって触感を確認したり、何百回何千回とノートに写生したり、ずーっとただながめてみたり、なめてみたり、音を立てたり、嗅いでみたり。アロンソン・スタックで遊ぶ以外何もするなと師匠に言われたからな。しばらくしたら毎晩アロンソン・スタックの夢を見るようになって、その時点で実際のデックをとりあげられた。そうすると今度は幻覚でデックが見えてくるんだ。さらに日が経つと幻覚のデックがリアルに感じられるんだ。重さも冷たさもすれあう音も聞こえてくる。いつのまにか幻覚じゃなく自然と具現化したアロンソン・スタックが出来ていたんだ。  …概ね嘘です。