教授の戯言

手品のお話とかね。

新沼研レクチャー 2012

11/18、訳者さんがこっそり参加、感想をくれたので、週末にちょいと手を入れ転記。私はヱヴァの映画で手品どころではござらぬ週末でありました。ていうか毎度毎度あの世界のオトナのディスコミュニケーションぶりはひどいw ナディアマニアとしてはBGMのアレンジでニヤニヤしっぱなしの前半でした、いやその辺の話は後日勝手に書き散らかすのでここではいいか。

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11/18(日)日暮里サニーホールにて、20人くらいいたはず。入ってそうそう、おみやげとして謎のデックx1と飲み物を振舞われる。企業の会議イベントみたいです。物静かそうな男性が新沼さんでした。想像してたよりかはスポーティーというか、脳内でもっと線の細い感じの神経質そうな人を想像していました。その割に、ところどころで地味に自虐的な笑いを取るあたりがずるい。そういえば彼の作品は基本カードしか知らず、今日も全部カードなのかなと思いましたが、予感的中。なおノートは4トリックで、内1つが特殊なデック、もう1つにギャフカードを使うので、個人的理想は、普通にこのノートを3000円で売るなら、その2つは同梱して販売してくれればいいなと思いました。揃える手間があると、トリックそのものが読まれない・演じられない可能性が高まりますしね…。で、後で判明するんですが、その用意が一番めんどくさいデックが先の謎のデックでした。てっきりレギュラーデックをくださったのかと思ってました。普通にノート売るときも付属させるべきだと思いました。



1. Everything or Nothing
観客Aが好きな数nを決めメモ帳に記載、観客Bにデックから適当に持ち上げて密かに数えてもらい、その枚数をNとする。演者は残りのデックを1枚ずつ表向きにしていき、N枚目のカードを憶えてもらうようにお願いする。デックを揃え、n枚配っていくとそこに先ほどN枚目として観客Bが憶えたカードが移動している。

いい原理ですけど、ちょっと作業っぽいというか煩雑。リプレースメントの原理は好きですし、新沼さんの一工夫で加藤さんの元ネタをすっきりさせているのですが、やはり冷静に考えてマニア向けな気がしてなりません。あと、回避策は現場でご本人が仰っていましたが、原理上"52以下の好きな数字"では成立しない部分もあるので、これはノート等の現象説明ではせめて"適当な数を決めてもらい"くらいにぼかしておくべき。演技上、「どれでも好きな数字を」と言ったあとで「例えば15とか20とか35とかの間」みたいな感じでしたけど、それだったら最初からてきとーな理屈をつけておき、かつ具体的な枚数は演者の口からは出さないほうがいいような気がしました。(「あとで配っていくのですが、少なくてもつまらないし、多すぎても面倒ですので、その辺の 空 気 を 読 ん だ 上 で お願いします(笑)」あたりでしょうか…?)



2.No Palm Transpocket
AとKのトランスポ現象。Kを左右ポケット・胸ポケット・ケースに1枚ずつ入れるが、指を鳴らすとKとAが入れ替わり、手元パケットはKに、ポケットにAが入っている。

タイトル通りパーム不要。その代わり使う技法はあり(割と好きで、パームに自信が無かった頃よく使っていました)。都合上の不具合についてJoshua Jayに受けたという助言は実用的だと思いました。Hollingworthも変態的なやつをやっていますが、これはちょっとだけテクニックを使うという感じで、素材バランス的に良かったです。二川先生がよくやる、"ポケットの中のKがいつの間にかAになってて、置いておいたKがAになってて、終わったかと思いいきや今度はポケットの中のKが全部Aになってて手にはKが"、みたいなところまで行くやつを見ていたせいか、大変あっさりした印象に思えました。「あれ、そこで終わるんですか!?」……悪影響ですね……w



Talk.
創作に関して。「作るトリックのユニークバリューとは何か」「そのトリックを他人が作ったとして考えたら自分はどう思えるか」「良いと思っても冷却期間をおけ」、乱暴に要約するとそういうことなのですが、意外にやろうと思って出来ないんですよね、この辺…。耳が痛いお話でした。



3.Final Destination
カードを覚えてもらった後、デックを8つの山に配っていく。観客山を1つずつ指定してもらって取り除いていき、最終的に1山を残す。残ったカードを1列に並べ、適当に言ってもらった数の分、指を移動させていってたどり着いたカード、それが観客が最初に覚えたカード。

今回のレクチャーでは一番好きだった。元ネタのAstorの"The Last Card"は超傑作だと思うのです。最後のエルムズレイの検めのためのセッティングは、私は不要だと思いました。まあ、枚数の不揃いなんか気にする人はいないというか、そういうのを気にする人は気にしちゃいけないとは思うのですが。……だって私が「あれ、足りてなくない?」と思っちゃったんだもの……。なお、ちょっと特殊なデックが必要になるのですが、それが入り口でもらった謎のデックでした。こういうのはすぐ練習できるというか遊べるようにするのは凄くいいご配慮です。大変ありがたい。



4.Nepenthes
観客に青裏デックから1枚選ばせサインをしてもらう。デックに混ぜ込んだ後、赤裏ジョーカー2枚をデックの中ほどに入れ、むにむにすると赤裏ジョーカーの間に観客の選んだカードが挟まる。更にそのカードにおまじないをかけると、裏の色が赤へと変化している。

モンキーインザミドルみたいなトリックだと思ったら着想がそれだそうで苦笑い。しかし確かに別の色というかバックの2枚を使った方が綺麗に見えると思いました。Jでやるより良い感じ。技法との組み合わせもこなれていて現実的な手順かと。ただ、作者さんのやりたかったこととは逆行しちゃうのですが、最後選んだカードの裏の色が変わります、というのは個人的には不要。一般のお客様はそこでまたびっくりするのかしら。挟まってるところからの追加ビックリになるのかが、心が汚れてしまった私には判断できません。赤いのに挟まれると色まで赤に変わっちゃうんだよ、っていう理屈かな。なんかそこだけ唐突感があったのですよ。ラーメン食べてて替え玉頼んだら素麺玉が出てきたみたいな。……敢えて喩えない方が良かった……。

5.演技のみ。
諸々の手続きのあと、メイトで一致。

現象は不思議。何で一致するんだろう(小学生っぽい感想)。そうスタックが組まれているからとしか思えないんですが(荒んだマニア的感想)。なお個人的に、メイトでの一致現象があまり好きではなくて。勿論1デックでやる以上、メイトを使うのは正しいし使わざるをえないのは分かるのですが、問題ないなら違うデック出して同一カードで一致して欲しかった。どうやってんだろうなあ。



6.演技のみ。
予言の封筒を出しておく。観客にカードを1枚覚えてもらう。6つの山に分け、最後に残した山を3x3にくばり、適当に指差してもらったカードが、予言の封筒から出てくる。

昔ゆうきさんのmMLで不思議だった、最後適当に指さしたカードが予言されている(その他のカードは全部違う)というトリックを思い出しました。今回のこれが単にベストケースで一発オッケーだったのか、はたまたどのカード指されても対応できたものかだけが気になる。これと上記のトリックは、なんでも来月出る5980円くらいするやつで発表されるらしいです。タイトル書いてあったんですけど値段聞いたら忘れました。なんだっけ……。



しかし書き物弁慶というのもあるので即断出来ませんが(ex:きょうじゅさん)、新沼さんのあの喋りと、メルマガのトーン乖離が凄い。確かメルマガは舞那氏が書かれてると思うのだけど、実物の新沼さんを拝見するとなんかもう少し物静かなトーンで控えめに書くべきな気がする。……いや、ギャップ萌えってやつを狙ってるのかもしれないです。ごめんなさい。

以上。

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だそうで。

私自身は発想背景とか、どこをどう改善したかというのが記載されているのは好きなのですが、まあそこが嬉しいかは人によりけりですね。メルマガの「天才の発想、脳内の一端を垣間見てください」トーンはちょっと凄いと思いますけどw

創作上、"これは凄いの思いついた!"というのはよくあるけど、そこから「数週間か数ヶ月おいてから見ると、9割9分駄作ということに気付きますよね(なので、どんなに良いものを作ったと思っても、しばらく冷却期間をおいて冷静になるべき)」というところに訳者氏はなるほどねえ、と思ったらしいのですが、A Study in Secretsメルマガ大好きのワタクシからいたしますと「え、去年の"Any"は1ヶ月でリリースしてたんじゃ…」とかツッコミかけましたが、そこは敢えて言うまい。言っている事自体には同意出来るし、Anyも半年以上寝かせた作品かもしれないですしね(遺憾ながら私は買えなかったのでコメントしようがないです。どこかにレビューあるのかな?)。今度機会があったら私も直接見てみたい。シークェンスのにおいを一切隠さないところがなあ、というのが今までの作品を読んだ率直な感想なので、実演見ると気にならないのか、見てもそうなのかは気になるところ。色々演者側にも都合があるし、難しいですね。