教授の戯言

手品のお話とかね。

Ryan Schlutz 「Miracles Without Moves」

本当は同じBig Blind MediaのUltimate Selfworking Card Tricksの2枚を取り上げようと思っていたのですが、微妙に時機を逸し、続編ちっくな感じの(別に本当に続編だとか、前出の2枚見てないと話が通じないとかはないのですが)、Ryan Schlutz「Miracles Without Moves」をご紹介。日本語での現象を書いてくださっているのでリンク貼らせて頂いていますが、私はiMagicでは買っていないので(スミマセン)補講の内容は存じません。昨今の為替を鑑みるに、これ単体を海外で買う必要はないと思いますけれども。一応。……っていまPenguinmagic見ましたら、日本への発送もタダで30ドルでした。ワーオ。でもまあ同額なんですね。感慨深い。なおSchlutz含めて、このDVDに登場する人、みんなナチュラルに早口気味なので(グレゴリー・ウィルソンとどっこいな気がする)、リスニングに自信がなければ補講というかアウトライン付きのを日本国内で買った方がいいかもしれません。などと偉そうに書いておりますが、補講付きを知る前にゲットしてしまって、見て、英語の速さに愕然とし、あとで「iMagic、作品ガイドライン補講でつけてるんじゃん!おせーですよ!」と涙しつつの提案。メルマガに色々書く暇があったらこっち早く出してくださいよ。なんて言わないよ絶対(某氏に「マッキーを見習って、最後に"なんて言わないよ絶対"と言えば、何を言っても何をやっても、もう何事もなかったかのように芸能界復帰も夢じゃないのじゃぜ−?」とかそそのかされた態。問題は私は芸能人ではなかったところ)。


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収録内容
KNOCED SUBCONSCIOUS
シャフルしたデックから1枚のカードを選んでもらい、覚えてもらいます。 残りのカードをドリブルして観客にストップをかけてもらったところ (フォースではない)から数枚を、最初に選んでもらったカードに加えて良く混ぜてもらいます。 そのパケットを観客の手の上に観客の目を見つめながら 裏向きで配っていきます。術者は突然、1枚のカードで手を止めます。 そう、そのカードが観客の選んだカードなのです。 もの凄く不思議です。
これは知り合いにDVD見る前に見せて頂いていたのですが、私のちょっとした奇癖のせいで、中身聞く前におおよその手法を推測出来てしまっていたのが残念。ただ、それは本当に私のせいですし、映像で見る限りは全く破綻がなく不思議です。これは借りたデックでは無理なのですが、観客に加えてもらうカードが大変いい味を出しており(本当に観客が適当に掴んだものを加えて出来る)、そこはグーです。



FOUR SHADOWED
デックをリボンスプレッドして、そこから2枚のカードが決められます。 1枚を観客がポケットに入れるか、胸元で押さえてもらいます。 もう1枚は、ケースの中にしまいます。 残りのデックを観客の意思で2つに分けます。 分けた場所のカードをダイヤの4としましょう。 残りのパックの4枚目を見ると、ハートの4です。 ケースの中のカードはスペードの4であり、観客のポケットの中の カードはクラブの4です。 古くからある原理ですが、 巧妙なサトリティと細部へのこだわりが、 一般の方はもちろん、マジシャンでさえ首をかしげる作品に昇華しています。

これ、選ばせ方が究極的にかっこいいというか図々しいというか、そこに感激しました。いや冷静に考えると他の手法で十分ラク出来るんですけどw



DECONSTRUCTED CONSTRUCTION
デックをスプレッドして、観客に適当な枚数のカードを取ってもらいます。 その枚数をマジシャンにわからないように、密かに数えてもらいます。 その数字のトランプを1枚だけ心に決めてもらいます。 マジシャンはそのカードを言い当ててしまいます。 演技映像は実に正確にこのトリックの素晴らしさを伝えています。
これは見事だった。いや、全編にわたって見事だったんですけど、まずカードのバリューの指定が極めてランダムというか、適当に決めさせてるように見えてそれをとある工夫で知るわけですが、これが良かった。そのあと、絞った物を当てる手法が初めて見たというか、個人的に大ヒットでした。観客が見つけるまで演者にはどれか分からないというのがたまりません。いや、カッコ良かったです。



DEGREES OF BOARD-DOM
デックから複数枚のカードを抜き出し、観客に渡してシャフルしてもらいます。 そのパックを裏表を適当に混ぜて、更に観客の意思によって裏表を混ぜていきます。 かなり入念に混ぜたあと、デックケースに名刺が刺さっているのを示します。 そこにはパックの状況が完璧な予言として書かれているのです。 予言の仕方がとても巧妙で、観客の自由意思による選択に見えるように 考えられています。
「Bannon + Aronson = AWESOME! 」とか各所各所で笑い(個人的にツボ)を入れてくるのがずるい解説w BannonのDegrees Of Freedomと、AronsonのShuffleboredのイイトコどりをしてみた!というので、個人的にDoF大好きな身としては「どれどれ、みてやるかい」という感じだったのですが、実にいい感じのバリエーションになっていました。尺の都合上あまり細かく語られていませんでしたが、この極めてディセプティブなシャッフル・ディスプレイについては、Bannonの著書『Dear Mr. Fantasy』で物凄く詳細に解説されているので、そちらも併せて読まれるとかなり分かりやすいと思います。日本語版『Dear Mr. Fantasy』が、多分絶賛来月くらいに絶賛東京堂から絶賛発売予定なので、極めてタイムリーです(なお全くの偶然です)。あと訳したのもまた拙サークルのHartlingのときの彼なので、近い内に提灯記事を書きます(先般、「(DMF)ようやくだっこうしたよ!」と聞いて、「割と大変な病状で何をそんなはしゃいでるの?」と聞き返しましたが、よく聞くと脱肛ではなく脱稿でした)。あ、で、この作品に戻りますと、12枚という少枚数ですが、極めてよくまとまっています。惜しむらくは、枚数少ないのでどうしても対称的な構成になってしまっているところくらいで。でも実に良い作品でした。



IT CUTS DEEP
観客にデックをシャフルしてもらいます。 そこから3枚のカードを裏向きの状態で選んでもらいます。 その3枚を言い当ててしまいます。 借りたデックでできる実用的な手順。 タイトルどおりデイープカットフォースを使いますが、 知っておいて損のない手順です。

これは見ていて手法が類推できるというか、ちょっとDaOrtizのあれを思い出しました。割と図々しいあれです。しかしアイマジックさんが書かれているように、こういうのひとつきっちり出来ると出来るマジシャンという感じがします。



METHODICAL
観客がシャフルしたデックをスプレッドして、 その状態から数枚を抜き出してもらいます。 そのパックから1枚を選んで覚えてもらい、戻してシャフルして それを当てますが、3回くり返します。 その度に不可能度が上がっていく手順になっています。

要するにテイクワンカードトリックが3つ連続であるわけで、これは最初見てて「うは、簡単極まりないwwっうぇwっうぇ」とか思っていたのですが、確かに2段目から「あれ?なんで分かるの?」みたいな感じで、最後にいたっては「なんでや!」と慣れない関西弁で突っ込む羽目になりました。そういえば第3段、この人、前のアルティメットセルフワーキングでも同じような手法を使っていたけど、私には思いつかないタイプの工夫でちょっとソンケー。しかもこれ、観客がシャッフルした上、適当にざばっと掴んでもらったやつでやれるというのがかっこ良すぎる(要するに枚数関係ないのです)。是非こういうのを即席で、しかも他人のデックでやれるように精進したいです。



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シャフルしたデックを相手に渡します。 1つの数字を決めてもらい、その枚数目のカードを覚えてもらいます。 その間、術者は後ろを向いています。 カット、シャフルが2度ほど行われます。 この状態で、裏向きのままカードを当ててしまいます。 不可能状況に見えるカード当てです。

映像で見ると極めて破綻がなく、理屈聞いても納得はできるのですが、私はちょっと怖くて渡せないかなあと思いました。2種のギミックと私の大好きなシャッフルの特性を用いているのもポイント高いのですが。難しい。とはいえ、演者はほとんど操作らしい操作しないし、観客が公明正大にシャッフルできるのでそこは凄いのは間違いないんですけどね。




そんなこんなで、私のようなガッカリスニングっ子(いま作りました)には厳しいDVD(英語が)でございましたが、内容は極めて良いものでした。このBBMのメンツ、いい作品揃えてくるよなあ……。あと見ないで当てるって、私のように心が濁った身には「X列か枚XかX感かだろ」的なやさぐれ姿勢で見ちゃうのですが、プリティでキュアキュアだった頃に戻りたいです。


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