教授の戯言

手品のお話とかね。

岡野将太「PUZZLE」

割と素で、「ノートとかDVD出してくれないかなーこのひと」って思っていた数少ない方のうちの1人がこの岡野さんで、今回DVD「PUZZLE」を出されました。おめでとうございます私(やっと見られて嬉しい)。

2〜3年前、某所での発表会の打ち上げでだったと思いますが、知人に初めて岡野さんを紹介され、その場&2次会の銀座のとあるカフェにて色々見せて頂いたのが思い出されます。その時にこのDVDにも収録されている「Midtown Jacks」を見せてもらって「やだもーなにこの人すっごいキモい」とか思った記憶(注:褒めています)。BannonのNew Jack Cityの現象だけ見て、それから作ったということでしたが、中々に見事なもので。録画もさせて頂きました。知人より「彼の作品集を出そうと思ってるんですよ」とは結構前から伺ってて、「ちっ、早く出しやがれよ」などと思っていたのですが、ノートかと思ってたらDVDでした。岡野さんうまいのでDVDで正解だと思います。

ちなみに昨冬シカゴに行ったとき、バノン先生に遊んで貰える機会があったので、以前に撮らせてもらった岡野さんの演技動画を見せたら「おお。スッキリしててわかりやすいね!」「ん、ちょっと、もう一回最初から見せてくれよ」とか言われた思い出。『ぐヘヘ、この手順を解析するのに、私も10回は見ましたぜ……まあ、素直に言えば教えて差し上げてもよくってよ?にしし(※他人の手品です)』とか思って見せていたら「ここで、こうで、こうして、こうなるわけだな、そうか」とかごにょごにょ言って、その場で即座にトリックを再現され、なんか去年のハートリングのときのC3といい、もうみんな嫌いです。私は極端に不器用じゃないと信じたいのに!信じざるを得ない!私以外みんな手品マスター出来なきゃいいのに。(錯乱)


さておき。


実にいい作品集だったとです。世の作品集がみんなこういうクオリティ、こういう価格帯で出てくれればいいのに、と願って已みません。次作も楽しみにお待ちしております、岡野さん。

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■1・Afternoon Ace Assembly
それぞれのエースを4箇所のパケットに振り分けますが、次の瞬間一箇所に集まっています。
エースアセンブリーの改案ですが非常に合理的に組み合わさっています。
実演するのにストレス無く出来るように工夫してあります。

「ここでこうアディションしてこうかー」って追いながら見てて、解説聞いて「1枚かよ!」と自分の間違いにに絶望するパティーン。結構安全な感じのアセンブリ



■2・Air
リボンスプレッドの状態からカードを返すとターゲットカードが空中から舞い降りて来る現象です。
非常にビジュアルでユニークなカード当てです。現象とアイディアに感服です。

ウィル・ツァイとか台湾の若い手品師が似たようなことをやっていた気がしますが、記憶が……。作品2個めにして「え、今どっから出てきた!?上!?」とかなりました。3回も見れば分かりはしますが、リアルでは3回も見ることはないでしょうし、いきなりやられたら唖然でしょうね、これ。



■3・Blind
フェイスアップで観客が置いていくにもかかわらずターゲットカードでストップしてしまいます???
今回、一押しの作品です。
トッププロが目を丸くするシーンを何度も垣間見ました。出来れば、知る前に試されたい作品ですね!不可能な現象を可能にする演出と方法論を堪能ください。

この作品集で一番好きw 私の中の岡野さんって割と寡黙なタイプで「あ、なんか馬鹿なこと言ったら怒られそう」みたいなイメージだったんですが、まさかこういう柔らかい手品を作る人とは思いませんでした。この系統の手品は好き嫌いが結構分かれますが、私は物凄く好きです。



■4・Fan Peek
演者がフェイス面を見ずにズバリ言い当てます。
ピークの新しい方法です。
ピークとは、相手のカードを密かに盗み見る方法を言いますが、
ファンに開いた状態で気がついたときにはピークが終わっています。
まさに使える技法!

実に使える技法!っていうか現在進行形で使っておりました。これは何だろ、自分が使ってるせいもあるけどそんなに革新的なのかな?紀良さんのピークを見たときに結構難しくて、何とかならないのかなーと思い、「あ、そういや私よくファン開くし、そこでピークしたほうが早い」ってことでこの岡野さんのパターンと、同じカードの逆側見るパターンの両方試して、カードの傷みが少ないということでこちらをよくやってました。



■5・Foresight Prediction
任意に選んだ2枚のカードの数字によって1枚のカードが決定します。
そのカードがもう1組のカードで予言されているのです。
しかも、予言のカードのある位置まで当たっているのです。
この不思議を数理で解決しています。いわゆるセルフワーキングマジックです。しかも憶えやすく、セットしやすく工夫されています。

これは不思議ではあるけど、なんか範囲の狭め方からなんとなく手法が想像ついてしまいそうな感じ。私の予想は半分程度までしか終えていませんでしたけど、この枚数の示し方は実に賢いなと思った次第。



■6・Fork
観客の2枚のカードが一瞬で、赤&黒それぞれ2枚のキングに瞬時に挟まれます。
ジョンバノン氏の【ニュー・ジャック・シティー】を基にしていますがその方法論だけでも必見です。クリスチャン・イングブルムも気がつかなかった見事な解決策があります。

ここまで見てきて、「まあAirはちょっとあれだけど、何とか出来るな〜」って感じだったのですが、ここで心が折れましたw まあご覧になればわかると思いますが、久々に「ここで○○をしてください」の「○○なんか出来ねーよ!www」って、モニタの前で憤慨する夜でしたw クリップシフトより難しいんじゃないのかあれ。なお私は出来ません。この技法練習は10分で挫折していますw 諦めるの早い子!



■7・Midtown Jacks
観客の2枚のカードが一瞬で、赤&黒それぞれ2枚のキングに瞬時に挟まれます。
こちらも、プロット的にはジョンバノン氏の【ニュー・ジャック・シティー】と一緒ですが、方法論を知る前にプロットから独自に構成したものです。
岡野氏の才能の一端を垣間見られるはずです。

久々に何度も自分で撮った演技動画見て手順をさらった思い出深い作品。この作品見たあとで久々にBannonのNew Jack City見たけど、あれはあれであの当時としてはかなりビジュアルだったことに驚きました。言ってしまえば岡野さんの作品はほぼ別物で、よりモダンな感じになった印象。知人は原案より本作の方が良いという評でした。私としてはどっちもいいところあるよ、って感じです。いやホントに。



■8・Penny's Braid
相手が残したカードの枚数目からターゲットカードが出てきます。
非常に巧妙に出来ていて皆目見当がつかないカード当てに仕上がっています。
これもセルフワーキングなのですが、カジュアルに見えて現象成立までの操作の窮屈さを感じさせません。

これの原理は確かマーローの本にありますよね(まあ大抵の原理は「マーローの本で見た」でいいんですけど。これ、手品で知ったかするコツね。「クラスのみんなには、内緒だよっ!」(CV:悠木碧))。
バノン先生に教えてもらったとあるトリックがこれと同様の原理を使っていました。ていうかバノン先生にそれ習ったときに「これの原理はマーローの(何だったか名前忘れた)っていうプリンシプルなのだぜ」って言われたから覚えてただけなんですが。ちなみに本作は取った枚数分の枚数目から出てきますが、バノンのは探偵カード的なのを2枚デックにぶっこんでから配っていくと、いつの間にかその間に観客のカードが挟まれているというやつで、最近ちょくちょくやっております。



■9・Pocket Interlaced Vanish
4枚のキングとエースのマジック。
1枚キングをポケットにしまい、残りエース4枚の間に交互に挟んだキングが一瞬で3枚とも消えてなくなります。
消えたキングが4枚集まってポケットから出てきます。
ハイテックニックを駆使しているかのような現象を比較的楽に演じられるように工夫されています。細部までこだわった作品のクオリティーと大胆な解決策は岡野氏らしい作品になっています。

これも良かった。思わず練習してしまいました。「出来る!私にも出来るわ!」でした。もちろん映像だからってのもあるんですが、岡野さん上手いので、レギュラーでエキストラもないと知った時はちょっと悔しかったです。……何で悔しいんだろうw



■10・Two For Two
予言として最初に2枚のカードを取り出しておきます。
次に演者と観客でお互い1枚ずつカードをセレクトします。
その4枚はなんとすべて同じ数字のカードです。
Four of a kindでありますがノーセットで行える大胆な方法論を使用しています。
疑わしいほうに仕掛けが無く、フェアーな方でテクニックを使用するなど
マジックのセオリーどおりですが、よく考えぬかれています。


これはやられた。見終わって、え、なんでこれが揃うんだろう、と結構本気で悩んで、解説聞いて「な、なんだと!?」って感じでした。本当に難しいことはしていないのに、よくも騙した……騙してくれたなあああああああああ〜〜〜〜〜っ!って思いました。こういうさらっとしたタッチで私もお客さんを欺瞞したいです。