教授の戯言

手品のお話とかね。

Shawn Farquhar レクチャー

13日、カナダはメイプルリッジ在住(多分)のFISMチャンピオン、ショーン・ファーカーのレクチャーに参加してまいりました。以前日本にも来られていて(ツアーはともかく、コーポレートマジックとかでも何度となくいらしているそうな)、そのときレクチャーツアーに参加された方もいらっしゃるかもしれませんね。私は前回(2005年)は参加できなかったので、9年越しということになりますね。事前にPenguin MagicのLive Lectureを見てから行きましたので、結構内容かぶってはいたのですが、生で見るとやはりより不思議、何より面白い。私の中のいいマジシャンって(みんなそうなのかもしれないのですが)、不思議なのはもちろん、やってる最中、みんなから笑顔とか笑い声とかが絶えない感じなんですよね。ファーカーもたいへん笑わせてくれました。こちらをニヤリと見ての「チョー、カンタンデス!」は、何か癖になりますw なんでも簡単そうな気がしてきます。気のせいなんですがw 

追記:ちなみにこのファーカーの似顔絵、ファーカー本人がフェイスブックで使っているもので、Hey prestoのAmanoさんタッチな似顔絵だなーと思っていたのですが、ホントにAmanoさんご本人のお手によるものだそうです。使用の許可は頂きました(事後承諾でしたが)。ありがとうございます。いつもながら特徴をよくとらえて、それでいて嫌味のない、"描かれた人が嬉しくなる"絵ですね。私もいつかAmanoさんに似顔絵描かれるようなマジシャンに……なる日は来ないか。

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1.Sheer Luck
シャーロック・ホームズの本を使って行うブックテスト。

何故か購入したものの、英語だしブックテストだしということで敬遠していたのですが、当日も演技を見逃す始末(遅刻)。よほど縁がないのでしょうか。ですが、演技自体も後ほど見て、これは大変面白いアプローチだと思いました。演者と観客が背中合わせになって、観客が適当に開いたページについてを演者が言い当てていくのですが、他の観客には演者がもう1冊同じ本を取り出して密かに見ているのが丸見えです。助手役の反応を面白がる手品かと思いきや、最後に演者の本を開くと、なんと全部白紙のページ、という。

まずイカサマというか、それ以前のずるをしている感じで観客席は確実に盛り上がりますし、それを知ってなあんだ、ってなるオフビート、そして実は…という、実に私好みの展開でした。ちなみに英語の本(ペーパーバック)とはいえ、べつに英語を全部読めたり、意味がわかったりする必要はなく、「最初に出てくる単語はxxxじゃないですかね。それからこんな文章があって、最後はこんな」という感じでそれを確認してもらうだけですので、助手役の人も英単語がちょいと読める程度で大丈夫です。なお2015年の1月に日本語版も出るそうなので、サロンレベルで鉄板ネタをお探しの方はマストバイな気がします。あと日本は本の開きの構造上、英語版よりエンドクリーンになります。詳細は買ったら分かりますw ちなみにSheer Luckは「全くの偶然」「純然たる幸運」という、シャーロック・ホームズとの駄洒落。
http://www.penguinmagic.com/p/S18119



2.Oil and Water(正式名称未詳)
3段からなる3x3オイルアンドウォーター。

1段目はデヴィット・アカーので、2段目がその変形、最後はセパレート・スロップ・シャッフルを使った、デック全体、スートごとに分かれる、というパターン。序盤はスピーディーでコンパクトな手順ですが、最後のは割とマニアックな印象でした。



3.メイトの一致(正式名称未詳)
Do AS I Do的なかたちで、演者と観客双方が裏向きに差し込んだカードがメイトで一致する。

アメリカのジェラルド・コム(?)の手順が元になっているとのことで、このトリックにおける観客の心理状態の操作っぷりが惚れ惚れする感じでした。「そのカードなんだった?」って聞くのですが、実際観客はそのカードの表を見ていないので「あ、まずい、見とかなきゃいけなかったのか」みたいな感じでオタオタしだすところを「いや、僕も見てなかったんだけど、ま、いいよ!もっと不思議になるよね!」みたいな感じで引き戻すわけですが、これは見事だなあと。また、手順も、彼の想定通りに私の印象は操作されておりました。「いや、あそこでも混ぜたし、なんでだろうなあ」と、まんまと術中にハマっておりました次第。レギュラーデックで行えますし、サロン・ステージ映えしそうです。



4.デックスイッチ
ファーカーのデックスイッチの手法。

ライブレクチャーで一番感心したのはこれでした。デックスイッチというのは極めて有効な手法で、思っている以上に簡単なのですが、ファーカーのは極めてディセプティブで隙のない手法でした。物理的にもほぼ100%見えないし、あのくらいの滑らかさ・タイミングでやられたらまあ追えません。ジャケット着てるときは今後これやろうと思いました。なお、ここでも使われていた彼のオムニデック、ライブレクチャーでも見て欲しくなっていたのですが、実際に生で見たら本当にデック持ってるとしか思えませんでした。彼のオムニデックは"通常は柔らかいプラスチックで成型されているが、防弾ガラスと同じ素材で作られている(故に傷がつかない)"、"サイド面が透けておらず、横に細い髪の毛状の線が沢山入っている"という特徴があります。「銃で狙われてもこれ持ってれば大丈夫さ!」とか、手で持って色んな所に移動させてドヤ顔をされていましたが、割とリアルに「胸ポケにこのオムニデック入れてなかったら死んでるところだったぜ!」が出来るレベルの頑丈さみたいです。
それはさておき。
サイド面が透けていないので、横や前から見ると、本当にデックを持ってるとしか思えなくて、私はライブレクチャーで解説まで受けていたにも関わらず、「アレ、オムニ使ったトリックっぽいけど、あれ本物だよなあ」などと思ってしまっている始末。デックスイッチも相まって、極めて素敵なトリックだと思いました。あと私はオムニデックの演技はしたことはないのですけれど、自分の参加した時のもそうだし、映像で見る観客の反応もそうなんですが、めちゃめちゃ驚くんですね。それこそデイリーのラスト・トリックとか、マジシャンが見れば「ああ、DLでしょ?」で終わってしまうのに、非手品人にやると「うわぉぉぉぉぉ!」とかなるのに似ています。観客の手の中で起こる現象が全てにおいていい、などとは思いませんが、感覚としては差異のない塊が、いつの間にか紙束からアクリルブロックに変わってたらそりゃ驚きますわね。今度やってみる所存。



5.The Jealous King
絵札のキャラが消えていって、1枚に揃うが…というパケットトリック。

以前の彼はジョーカーがひとりずつ消えていって、最後に1台の自転車にみんな乗っているという、マジックハウスのパケットをやっていた気がします。たしかそれのバリエーションだったような。前方の観客に見せるなら、彼のやっている縦に展開するアッシャー・ツイストはかなり有効なのだなと思いました。
http://www.penguinmagic.co/p/S18137



6.I Hate Kids(Sthephen Bargatze)
小さな財布3つを使った当てもの。演者のテンションに反して、観客があたりの入った財布を当ててしまい、演者は中に入っていたコインを失ってしまうのですが…。

これは面白かったw 途中「これホントにお客さん当てちゃったし失敗か」とかどきどきしたのですが、その後に来るどんでん返しがまたw 6000円か、ちょい高いな、と思ったけどついつい買ってしまいました。サロンで笑いが取れるタイプのネタへの金銭感覚がおかしい昨今。
http://www.palmermagic.com/shop/bargatze-comedy-purse-routine/



7.C2W: Card 2 Wallet
観客の選んだカードが財布に予言されている。

その昔日本に来た際に、東急ハンズで(海外マジシャンの発想の泉、ことハンズw)見つけた財布がちょっと面白い構造で、それを改造して使ってらっしゃったそうですが、それをきちんと作成、ちょっと製品化して、実際に普段使いもしているとのこと。これを思いついたもうひとつが紙を折りたたんだり開いたりして封筒みたいに見せるが、なにもないように見えて実は1面隠しているというのがあって、そういったエッセンスも組み込まれているようです。私としては分厚い財布は好きではないので、紙で演じていた、何もない1枚の紙の封筒を組み直すと中からカードが出てくる、とかの方が好きでした。
http://www.penguinmagic.com/p/3150



8.Extended Stay
ホテルのカードタイプのルームキーが3枚あって、それが突然伸びたり(Extend)する。また、他のカードもその印刷された写真からカードの予言なども出来たりする。

カードが伸びるやつは面白い。予言の方はかなり近くないのとその実際が見えづらい&どうしてもフォースしたんじゃないかなという疑いが消しづらいのですけれども。普段使いの財布に1枚だけギミックのカード入れておけば活用もできそうなもんですが、このギミックを普段使いのカードでつくろうと思うとなんでしょう、Tポイントカードくらいですかね、作りやすさ的に。
http://www.penguinmagic.com/p/S14116


9.iPhoneのカルキュレーター使ったやつ(正式名称未詳)
観客に好きな様に電卓で計算していってもらうが、最終的にその結果が予言されている。

今年バノンに二川滋夫の"フォアテル"を見せたときに、「こういうのは知ってるよ」ということで教えて頂いたものと同じでした。流行っているのですかね。私は残念ながらあいぽん非所持なのですが、Andoroidの場合はREALCALCというフリーソフトで同じようなことが出来るとのことで、早速DLする所存。古参マニアの方に聞いたら、昔は配線からいじった電卓ギミックが結構なお値段で売られていたらしい。(普段使わないようなボタンが、特定の数を出すように設定/配線されているという、中々素敵なギミックらしいです。メモリー機能使えよ、と思ってしまいますがw)



10.Torn 2 Pieces
1枚の写真を見せて4つに折り、サインをしてもらったら破っていく。四片の紙片(駄洒落)にしたら、それを一瞬で復活させる。が、先程までとはつなげた辺が違っていたらしく、ごちゃごちゃな絵になっている。サインはそのまま観客のものが残っている。

これはT&Rでもちょっと変わり種な現象およびギミック。実は物と構造は前から知っていたのですが(なぜ知っているかは忘れました)、画像テンプレも入っているということで、お布施的に購入。
ファーカー「これ100ドル札版を作って演じたことあるんだけど、最後間違ったくっつき方した100ドル札を(冗談で)返したらそのお客さん『これ記念に持って帰っていいのか』って。『いや、使えないですよ、それは。さすがに』って言ったら『いいからいいから。あとチップね』って20ドルもらったこともあってね。120ドル儲けたわけですよ」とか言っててワロタ。私もそういうプレイをしたいのですが、まず両面が、あの質感色感の万札を再現すると、微妙におロープ頂戴&スメルライスの憂き目に遭いそうな気がしてなりません。
http://www.penguinmagic.com/p/3723


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