教授の戯言

手品のお話とかね。

ヤマギシルイレクチャー

そんなこんなで石川のヤマギシルイさんのレクチャー in 大手町が、2016年3月6日の日曜吉日に(注:仏滅)。

【ショー】
レクチャーするものも含めて40分くらい色々と。
言ったカードがデックの中になくて、箱のなかに1枚だけ入っているのは、解説聞くまでどのタイミングで入れているのか分からない程度のはぽんこつなわたくし。会場の半分くらいの人が追えていたらしくてマニア怖い。仕込みの都合も色々あるのだろうけれど、6人のカードを当てるやつはちょっと1つの演技としては長かった感じ。うしろに薄くBGMでもあればいいんですが、無音の中で、ひたすらヤマギシさんがカードをクンカクンカしているのはちと怖いです。



【Rouis C-Stack】
おそらく世界一簡単に覚えられる計算型メモライドデックです。5分程度で習得が可能で、小学校第二学年時の四則演算でカードと枚数目を対応させることができます。お客様の目前で堂々と計算や暗算を行える手順や、スートの配列の特性を活かした手順もあわせて公開します。
ヤ「すみません、5分は流石に盛りました」 それはそうでしょうw 個人的にMove a Cardフェイズがツライ、ハートリングの"Unforgettable"ですが(注:ハートリング本人は、ネモニカなら奇数偶数レベルの速さで見分けます)、別法ないかなと思ってましたが、その意味ではヤマギシ・システムは結構良いかもしれないです。法則の乱れを読み取りやすいので。あと、いままでスタック使ったことない人とかにもいいと思います。



【物販】We Have All Trouble
マッチングカードというかESPカード系。
エモーショナル・インテリジェンス https://www.frenchdrop.com/detail?id=3078
リアクション・マインド・カード https://www.frenchdrop.com/detail?id=3787
の類型トリック用のカード付き。
厚川さんのアレかと思ったら着想はそこからでした。ESPの言葉版という感じでしたがああいうのが途中に入るといいアクセントになりそうです。通販とかはするのかしら?あと、会場にこざわまさゆきさんがいらしてて、これの作成の元になったのはこざわさんの手順だったそうなのですけれど、唐突にこざわさんが「あ、それの僕の演じ方とか紹介してもいいですか」と、レクチャラー席に行って演技・説明、当のヤマギシさんは観客席にさがるというのが「今日一」笑ったところでした。前半のクライマックス。「おいおい、こざわさん!……さすがやでえ」と思ってしまいました。

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【Pendulum Switch】
ポケットリングにおける汎用性の高い技法です。
たしかにこんな流れでスイッチされたらまるで分からないよなあと思いました。というか何度かリングの演技は拝見しているのですが、そんなことしてたのですか、という感じで。ヤマギシさんは事前に「ハハッ、リングはスイッチ部分だけさらっと説明するつもりですから、時間もかかりませんよ」とか仰っていた時点で「絶対嘘だ……」と思っていたのですが、予想通りやはり嘘でした。会の終わりに「なんで時間足りなくなっちゃうのかなー」とかアンツィオのペパロニさんみたいなこと言ってるので脳内で、 き「リングはちゃんとスイッチ部分だけにおさめたんだろうな?」 ヤ「やりましたよー!手順ひととおり全部!」 き「はあー?全部やったら時間なんかいくらあっても足りなくなるに決まってるだろうが!」みたいなことを思っておりました(ヤマギシルイ CV:大地葉 きょうじゅ CV:吉岡麻耶)。リングなんて手順の説明始めたら間に合わないに決まっています。あと半数くらいの人がちゃんとリングを持ってきていて笑いました。みんなすごい。


【Fortune of Freedom / Foolproof Shuffleboard / Touch of Mind】
東京堂出版『ジョンバノンのカードマジック』収録作品の改案三作品です。原案も非常に優秀ですが、手続きをシンプルにしたり、失敗の可能性を排除したり、別の策略を導入したり、より演出に磨きをかけるなどの工夫が加えられています。
原案になったバノンの本は名著ですよ!(ダイレクト・マーケティング) 
"Foolproof Shuffleboard"が好きなんですよ、私。去年教えて頂いたときに、左右への切り分けが、絶対間違えるだろと思っていたのですけれど、今回別の方がそれについて質問してくださって、その回答により、「確かに間違えないでできるな」と思いました。やはりああいうのは演者が混ぜたほうが安全ですし。これはいい改案だと思いました。

"Fortune of Freedom"は、ヤマギシさんの仰るような「原案はロイヤルフラッシュとか出てくるのが意味がわからない」というのは、別に意味が分からなくはないけど日本人に馴染みが薄い、という観点はあるので一理あるなーと思いましたが、「紙を折りたたむようにしていくのが意味がわからない」については、私は面白いなーと思ってたので見解の相違。セットアップ的なところはより簡略化されているのでそこはベターだと思いました。

"Touch of Mind"。原案"Wait Until Dark"は読むとそうでもないかもですが、実演見ると本当にキモいんですよ。ヤマギシさんの改案はスイッチの前後がより説得力が増しています。原案とのメリデメですが、簡単なセットだけで観客に広い範囲で選ばせたような錯覚をより強く与えることが出来る点で、デメリットというほどではないですが、質問が2回は要る、というところですかね。
私はバノン本人の演技を見て、選んだカードを言ったらすぐに、突き出しておいたカードがそれだというのが明かされたときに本気でびっくりしましたので、あれに破綻があるとは思いませんし、元の選ばせ方も、好きなところをタッチしていって突き出す5枚なので、特定の5枚だけから選ばせた感はないと思っています。まあ一覧として見せているのは5枚しかない、のは間違いないので、そこが気になると考えたくなる話なのかもしれません。



【Unlosing Control】
注視された状況で行えるトップコントロールです。ただ単に選ばれたカードをデックの中に差し込んだだけに見え、余計な動作がありません。任意の枚数目へのコントロールや、特定のカードへのスイッチとしても使用できます。
去年見せて頂いておりましたが、これがかなり不思議というか、「頭では分かってても、視覚に説得されてしまう」タイプのコントロールで。リー・アッシャーのLosing Controlのヤマギシさんのハンドリング(というかすでに別物な気もする)。以前と比して、左右に見せる際に弱点をカバーするプロセスも付け加わっていました。一桁枚数くらいだったら、コントロールする場所まで任意に出来るのが強みですね。エニエニ系にも応用がききそう。



【Up Standing Coin through the Table】
スタンディングで行う四段階のコインスルーザテーブルです。ノーエキストラ、ノーギミック、ノーサーバント。服装の制限もありません。
いわゆる「裸でも出来ます」系の手品。履いているので大丈夫ですよ(うろ覚えギャグ)。素材の特性に逆らわない、というのは興味深かったですね。会場のテーブルがIKEA製だったのですが、ワンダラーをバンバン叩きつけたりするので、時事ネタ的に「壊しちゃったりしたら笑える」とか思いながら見ておりました(壊れませんでした)。



【質疑応答その他】
「自分の考えた手順や技法というのは自信に繋がるし、その自信をもって演じられる手品だったら素敵になるに決まっているのです」というのとか、「観客が楽しんでくれればそれがいい手品だし、それ以外はない」というのも爽快な回答でした(パフォーマンスとしての、という限定ですが)。「プロマジシャンとは」への「確定申告をしていることですね」には笑いました。会場の下見とか観客層の把握など、事前チェックをかなり細かくしてらっしゃるのはさすがプロだなという感じでした。



【Pseudo One-Handed Table-Top Switch】
卓上のカードを裏返す動作で行うスイッチです。複数枚のスイッチが可能で、デックの自由な枚数目に正確にすり替えたカードを埋没できます。技法の詳細解説にくわえ、上記の特徴を最大限に活かした手順の数々も公開します。
私、この技法が大好きでして。いや、この技法使った手品を見るのが好きなんですけど。ヤマギシさん、主催の方に促されるまでやるのを忘れてて笑いました。目玉のひとつだろうよとw バーでの実演が元になっているからか、確実性も高く大好きな技法です。家で練習したりしているのですが、親指の位置とか、確実に差し込むコツとか、もっと色々聞いておけばよかったです。ホント流れるようにスイッチされるんですよねえ、これ。同系の技法は桂川さんのがすごく綺麗で、そちらも大好きです。そちらはうろ覚えなのでコツ以前に手法をよくわかっていないのですが。



【Ancient Chinise Pickpocket】
穴あきコイン3枚に紐を通すが、1枚ずつ外れるトリック。
"Charming Chinese Challenge"のヤマギシさんのハンドリング。5回くらい観客にぐるぐるに通させたのに外れたときは変な声出ました。当日ちょうど別のところで、ベタなCCCルーティーンをやってきたところで、とても興味深く面白かったのですが、パフォーマンス・オンリーで(時間がなかったというか、観客のお一人のリクエストで演じたので)、「おい解説は!」とか思いました。感想を言ったら「え、そのレベルで分からなかったですか?そうかそうかー」で終わりました。コインについての知見の浅さに定評のあるわたくし。いや、手品全般知らないことだらけですけども。あ、で結局習ってない!w



そんなわけで実質4時間以上のレクチャーでございました。もちろんヤマギシさんも長丁場お疲れ様でしたが、本件を主催されたhasadaさんの熱意と行動力にも感謝いたします。素敵な会を開いてくださってありがとうございました。


なお訳者くんは何故か映像のメディア作成を命ぜられたらしく、「うえっ、うぇっ、わたし……わたし!Hartlingの新刊が読みたいのに…!」とか泣いておりました。お可哀想に。