教授の戯言

手品のお話とかね。

ダロー・レクチャー

4月10日、茅場町のマジックランドで行われた、ダロー(Daryl)のレクチャーに参加してまいりました。何をやらせても超うまいのはもとより、テンション高くて凄く楽しかったです。正直、ダローのビデオだのDVDだのギミックだのはほとんどコンプリートしているマンではあるのですが(マスターしているとは言ってない)、念のため、って感じで行きました。想像以上に"いつも映像で見るあの朗らかなテンション"の方で、レクチャーはいずれも実践的な手順ばかりだしでとても楽しいひと時を過ごせました(ギミック使うのが多いので、ややディーラーショーの趣はありました。なんというか、レクチャーノートに載ってるものが、商品使うものもあり、ノートだけ買っても出来ないものも。ていうかダローが演じれば大体のものは面白くなる気もしますが)。以下備忘。まあほとんどレクチャーノートの中身・流れ通りです。その一致ぶりに逆にびっくりですよw

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01. Bennett's Boner
破ったティッシュペーパーを元に戻す手品のタネを説明すると見せて、復活しない方の紙玉も復活させるサカートリック。

これなんかも絶対ベタですし、マニアは1度は必ず見たことあるはずですが、ダローがやると面白いんですよねえ。ダロー空間ずるい。これは適当なティッシュと適当な不透明コップだけで演じられます。



02. Odd Quad
4枚のエースを取り出し、観客に1枚選ばせるが、マジシャンは最初から分かっていたと言って、裏の色がそれだけ違うことを示す。さらに、他のが選ばれても大丈夫だったことを言い、4枚それぞれバックの色が違っていることを示す。

フラシュトレーション・カウントは検めには使わない、というのはさもありなん、という気はしました。手品しない人からしても怪しいというか、納得しないものね。ギャフというギャフではないけど、まあ道具を揃えるには4つデック要りますね。



03. Rope Decapitation
ロープの首抜き。

石田天海の手法。昔やっていましたが、すっかり忘れてしまっておりました。いまやったら多分普通に締まっちゃう。



04. Rope through Body
ロープが演者の体を通り抜ける。

ハロルド・ライスの手法。以前私がロープマジックの本で見たのはしつけ糸を使うものだったのですが、これはまったくそういうのがなく、手順の中で持ち替えをするのですが無駄の無い構成で凄いなあと思いました。何よりダローって、長年扱い慣れてるせいもあるんでしょうが、ロープの扱いが流れるように自然。ああいうロープの扱い方ができると綺麗で見やすいと思いました。



05. Hyper Bent-Elation
観客にサインしてもらった2枚のカードを重ねて切って折り曲げると、表と裏にそれぞれサインのある状態の1枚の不可能物体になる。

これはおみやげにも渡せて素敵。アニバーサリー・ワルツ的な使い方が出来ます。ギャフカードといえばギャフカードを使いますが、入手にはさして困らないと思います。



06. Four Dice "Chink-a-Chink"
4つのダイスで行うチンカ・チンク。

ダイスの目をそれぞれ1・2・3・4としてから番号通りに移していく手順なのですが分かりやすい上に不思議。あまりアイデンティティのない通常のものより好きです。ただし1クッション入っているので、角砂糖とかでやるよりちょっとだけ難しいですが。



07. Dai Vernon’s Climax to a Dice Routine
ワン・イン・ザ・ハンド ツー・イン・ザ・ポケット的なダイスルーティーンだが、途中から観客の想定外の変化が起こる。

久々に生で見ましたが、やはりいい手品。これはギャフではないですがサイズの違うダイスを用意せねばなりませんね(微妙なネタバレ)。



08. Three Ropes To One
3本のロープを結び合わせて、結び目に息を吹きかけると結び目が(演者の意図しないほうが)落ち、微妙な不条理感を抱かせつつ、1本の長いロープになる。

こういう息を吹きかけて結び目が落ちる、というのは私個人はなんかネタばらしっぽさがあって嫌なのですが、ダローがやると面白い(大体これ)。Rainbow Ropeとはまた別なんでしたっけこれ。結び目の強さを変えることで、同じ動作で落ちる落ちないを調整できるというのは感心しました。言われてみれば当たり前なのですが。



09. Cup and Ball
カップ・アンド・ボールのダローの手順。

やはりもうやり慣れてるというか流れるような手順。囲まれててもファイナルロードは出来ますというのはさすがぼくらのダロー先生、という気はしますw



10. Rising Card from Envelope
封筒にデックを入れ、両脇を貫通させるように鉛筆を入れてくるくる回すと、観客のカードが上がってくる。ライジング・カード。

これ昔どこかで見た気がします。アマーがやってたんだっけかな…?ともあれ間違ったカードも出せる、というのがこの手法の素敵なところですよね。



11. Audio Transposition
ガラガラと、キューキュー音の鳴るおもちゃの音が入れ替わる。

その昔スクイーカーを買ったときに類似マジックがありましたが、その音がするはず、という思い込みをうまいこと利用しています。マジックって大体視覚に頼る現象がほとんどですが、こういう視覚と聴覚の結びつきがねじれる現象はとても好きです。



12. Double Crossed
10枚ずつ計20枚のカードのうち、観客Aが憶えたカードと観客Bが憶えたカードがそれぞれのパケットから消え失せ、相手のパケットへと移る。

5枚ずつでやるのがノートにも載っているThought Card Acrossなのですが、そのダブル版。どちらも単売商品としてあります。やはりカードアクロスはこういうギャフ使うのがいい気がします。怪しさというか変にテクニック使わずに済みますしね。。。



13. The Acrobatic Knot
赤と白のロープを出し、白ロープに結び目を作って赤ロープと絡ませると赤ロープに白い結び目が飛び移る。赤ロープの結び目を解くと、赤ロープのその部分だけ白いロープに変わってしまっていることが示される。

まあ名作手品です。サロンの鉄板ネタのひとつですね。さておき昔もう少し安かった気がするんですが、6000円もしましたっけ……?そもそも染め分けってそんなに難しいのかな…?ジャック・ミラーの結び目の移動のアイデアというかムーブは説得力があります。

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私は一時期彼のトリックであるカードボード・カメレオンをやっていたことがあるのですが、「もうダロー並に出来るようになっただろー(ダジャレ)」→(本人の映像を見る)→「何だこの異次元の手品……」って何度も何度も挫折した思い出。とはいえダローも今回のレクチャーの別のトリックの中で、「まあこういうテクニックを使ってブレイクを取ることもできるけど、めんどくさいし難しいのは嫌だよね」って言いながら、普通に2枚数えとってその下にブレイク取ったりしていてちょっと安心しました。いや、まあ彼は変態テクも美しく出来るんですが。出来るけどやらない、ってのがいいですね。あと他にもそういうポリシーの人がいた気がしますが誰だったかな。チャーリー・ミラーとかでしたっけ……?