教授の戯言

手品のお話とかね。

John Guastaferro 「Hands Off My Notes」

<宣伝のためちょっと未来日付です。元の投稿は2016年5月28日>


教授の戯言の物販:John Guastaferro 『Hands Off My Notes』

ジョン・ガスタフェローが2015年に出した、同名のレクチャーノートの日本語完訳版です。「おいおい、原書出版から1年内に訳本出すとか、メキシカンマフィアに家族でも人質に取られてたりするんですか、Tくん?」と聞いたところ「いえ、息災です。私がセルフワーキングが好きだからです」だそうで。
今回の作品集は、演者がほとんど手を触れない、観客の手の中で現象を起こすことを主題に作られ、全10トリックが解説されています。"Gemini Squared"のみ再録です。『Three of a Kind』(の中の『Seven Wonders』(2014))のときとは、少しだけ日本語は変わっていますが。

全体として、『ToK』のときの原理を発展させたものもありますが、コントロールや特定に関して、中々渋めの技法が散りばめられている印象。手を触れないとか、片手を使わないとか、陰腹した上で演じるとか、とかく縛りをつけるとピーキーな作品が出来たりする反面、手続きありきな感じに陥りがちなのですが(※個人の感想です)、そこはガスタフェロー、上手いバランスでまとめてくるな、という感じです。そもそもガスタフェローの作品は地味に原理を混ぜていることが結構多いので、多分そこまでの縛りプレイではなく、作品の中からそういうものをチョイスして(ものによっては触らずにいけるように多少手直しをして)まとめただけかもしれません。

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"Hands Off Aces"での観客2人がお互いシャッフルとかしてるのにもかかわらずAが出てくるのは、Ultimate Selfworking Card Magicとかそのへんで感銘を受けた記憶がありますが、やはりいいですね。

"Heads Will Roll"では、とある原理を使うのですが、これが昔自分で思いついたことのあるのと同じで(空想ダイスは使いませんでしたが)、ちょっと嬉しかったです。

"High Card"はカットディーパー的な感じで、ジョン・バノンの"Fifty-One Fat Chances"(大好き)のようなトリック。観客がすべてやっているように見えつつ(概ねその通りなのですが)、実はうまいことコントロールされている感じ。これ自体は不思議なんですが、私いつもこういう4枚のエースを出したあとに困るんですよね。ラストトリック以外あんまりやらないので。

"Time Will Tell"は実にいいです。わたし松浦天海のもそうですが、演者「ところでいま何時でしたっけ?」(場のカードがそれを示している) 観客「なっ、ナニイイイイッ!うろたえないッ!プロの観客はうろたえないッ!」が好きなのです。しかもこれはクロックトリック的なオチではあるのですが、使っている原理が極めて単純という。それでいて手法がその単純さを隠蔽している感がたまりません。

"Counterpoint"は『Seven Wonders』でも使われていた原理をブラッシュアップした感じです。よく考えつきますね、こういうの。

"Your Turn To Triumph"は『One Degree』のヤツのほうがいいんじゃないかなと思っていたのですが、何度か演じてみると、結構不思議感も強くいい作品な気がしてまいりました。

"Gemini Squared"は再録ですが、レクチャーでもショーでも演じる本人のお気に入りだけあって、フィナーレ感の強い作品。

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<収録内容>
1 All Three Kings
観客が適当なカードを1 枚抜き出したあと、グーグル検索のように単語をつづっていくことで、彼は自身でフォー・オブ・ア・カインドの残りの3 枚を見つけ出してくるのです。

2 Hands Off Aces
2 人の観客がデックを完全にカットし、シャッフルしますが、2 人が一緒に4 枚のエースを見つけ出します。

3 Twenty
演者は、観客が自分で、ブラックジャックではぴったり20 を、ポーカーではストレートのハンドを配るであろうということを予言します。

4 Heads Will Roll
想像上のダイスを振ってから、観客が4 枚のカードをシャッフルし、更に1枚をひっくり返します。彼のお金がかかっている状況で、演者は正確にカードを予言しているのです。

5 High Card
2 人の観客がハイ・カードのゲームを行います。ですが観客のどちらもエースで勝つことはありませんでした。なぜなら勝負の途中で捨てたカードが、実は4 枚のエースであったのですから。

6 Time Will Tell
薄気味悪くもカードが当たったあと、出してあった3 枚のランダムなカードが現在の時刻を示しているのです。

7 Maverick
観客が、自らよくシャッフルしたデックから、自分にブラックジャックを配ることに成功します……そしてロイヤルフラッシュも。


8 Counterpoint
観客がシークレット・ナンバーに従って4 枚のカードを混ぜたあと、演者は観客が思っただけのカードを見事当てるのです。

9 Your Turn To Triumph
観客がデックを表向き裏向きごちゃごちゃに混ぜます。しかし演者が介入することなしに、すべてのカードの向きは揃ってしまうのです。観客の選んだカード1 枚を除いて。

10 Gemini Squared
2 人の観客が、4 枚の名刺をデックのそれぞれランダムな位置に置いていきますが、幸運の女神は微笑まなかったようで、名刺の隣のカードはエースではありませんでした。ところが意外な展開が待ち受けています。名刺の裏には予言が書いてあり、それが隣接したランダムな4 枚のカードをことごとく予言しているのです。そしてフィナーレ、残りのデックがすべて真っ白だったことが明かされます!



教授の戯言の物販:John Guastaferro 『Hands Off My Notes』