教授の戯言

手品のお話とかね。

ポール・ガートナー レクチャー

T「P・GP・GP・G!ガートナーを称えよ!」(例のポーズ)
き「ど、どうしたの…?」
T「今日はなんてラブリーな日だ!うおおおお!」
いつもぽやーっとしている訳のT君がハイテンションすぎて引く。誰だきみは。

ということで3月29日、掲題ポール・ガートナーのレクチャーに参加してまいりました。ガートナーは、アメリカはピッツバーグ出身のマジシャンで、FISMでもIBMでも優勝、世界マジック大会78年 in TOKYOでは惜しくも2位ですが、まあ諸々折り紙付きにうまいです。主戦場はトレードショーで、企業ブースでマジックを行うと聞いたことがあります。IBM(マジック関係ない、会社のほう)でのトレードショーでは、代表作"Unshuffled"の最後がその企業名とスローガンになる、みたいなものもやっていたそうで。まあとにかく腕があるうえに、個人的な印象ですが、品もあるんですよね。アレなギャグを言ったりするわけでもなく、騒いだりもしない、でも盛り上がる、みたいな感じで。テンションとかで偽装しない、真の強キャラ感。あ、でも気さくでホント、とっつきやすい方です。故郷ピッツバーグの鉄鋼業にも絡む、鉄球でやるカップ&ボールがトレード・マークとして有名ですね。昨年は、Penn and Teller の番組『Fool Us』に、自身の古典トリック"Unshuffled"、それにひと工夫加えたもので挑み、見事2人をひっかけたという熱い展開もございました。これは必読です。ともあれ、終わったあとの「任務を終えてほっとしているガートナー」と「ひっかけられたのにめっちゃ嬉しそうなペンアンドテラー」というのが、実にハートウォーミングでした。凄くいい関係だなあと。

ポール・ガートナーがペン&テラーを騙すまで 第1回
ポール・ガートナーがペン&テラーを騙すまで 第2回
ポール・ガートナーがペン&テラーを騙すまで 第3回

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1.Photocopy
演者は、「見えないパーム」を見せる、と言う。自分の手のひらがコピーされた紙を見せ、折り畳んで財布の中に入れてテーブルに置く。観客にデックから1枚のカードを選んでもらい、そのカードを演者は「"見えないパーム"を使って財布の中に移動させてみせます」と言って"パーム"すると観客のカードがデックの中から消失。財布を開き、手形の紙を広げると中から観客のカードが出てくる。さらに、さっきは手のひらしか写っていなかったところにも観客のカードがコピーされている。

ゼロックス社のトレードショーのために作った手順だそうです。「見えないパーム」というキャッチーなイントロから、追加の落ちもカッコイイ。「なんで白黒なんですか!」「ボーイ、私がこれを作ったときは、カラーコピーなんかなかったからね」 



2.クラシックフォース
クラシックフォースの方法を、リカバリ方法も含めて解説。

彼のクラシックフォースのDVD持っていますが、ほんと生で見ても破綻なくうまい。「理屈は同じです」とか言いながら表向きのデックでもやるんですが、まあうまい具合に引かせちゃうんですよね。DVD見ててもうへえってなりましたが、生で見ると笑うしかないんですよね、これw 挑戦的な観客には引かせてあげないいじわるも交えたりと。



3.Bluff Aces
マジシャンは4枚のエースを取り出して裏向きにテーブル上に置くが、以降何度もあからさまに怪しい動作をし、観客が「何かしたのではないか」と思うたびに、ちゃんとエースであることを見せて何もしていないことを確認させる。最後は公明正大に4枚を裏向きにして片手で卓上に配り、その上に観客の手を置いてもらう。デックからエースではないカードを取り出すが、このカードがエースに変化。残り3枚のエースもデックの中から次々と出てくる。最後に観客の手の下の4枚を表向きにすると、エースではないカードになっている。

ややこしそうな感じですが、実際は流れるようなやり取りです。うまい具合に構成がなされていて、スイッチや確認のタイミングが非常にうまい。あとすっとぼけたキャラの人にはとてもフィットしている演技な気がします。



4.Snapping the Halves
マジシャンは1枚の銅貨を取出して弾くと、分裂するように銀貨が出現。その銀貨を弾くともう1枚の銀貨が出現。同様にして、いま出現した銀貨をこすりあわせてもう1枚の銀貨を出現させる。銅貨を片手に握ると、残りの3枚の銀貨が1枚ずつ銅貨のほうへ移動する。「実は余分なコインを使っていたのです」と言ってコインをはじいていくと、コインは次々に分裂してゆき、最終的には8枚になってしまう。

二川さんが昔の来日時の準備で笑っていたシリーズ。このひとのこういう手品は本当に好きです。問答無用感が漂う。若いときに作ったせいもあるんでしょうけど、いっちゃえ感がたまりません。



5.コインバニッシュ
複数枚のコインのラッピングについてさらっと解説。落とした時の「音」の問題をうまいこと解決する手法。



6.That's Ridiculous
テーブルに伏せたカードの下にコインが1枚ずつ移動するよくあるマジック…と思いきや、クライマックスには怒濤のようにコインが出てきて、最後には…!

もうタイトルまんま、「あほだ!このひとあほなんだ!www」と素直に思える作品。やはりコインマジックは澤さんのプッシュマンしかり、数が重要な気がします。手順構成自体はそんなに難しくはない気がするのですが、最初が一番きつい気がします。なお「いちどきにパーム出来る最高枚数は何枚なんでしょうか」という質問が挙がり結局「10枚は行けますね」という結論になっておりました。そんなにパームが必要になる手品は普通ないですけどw


7.Cups and Steel Balls
故郷ピッツバーグの特徴から、金属のボールを使ったカップ&ボール。

重みが違います!(物理) あー、幸せです。映像で見ていても良かったですが、生で見るともっと良いです。カップは強めの磁石入りで(別にチョップカップ的な使い方はしない)、鉄球が上で転がるけど落ちないくらいになっていて、ちょっとした気遣いを感じました。



8.パームについて
ワンハンドトップパームと、複数枚のパームの方法について解説。



9.Unshuffled(Fool Usバージョン)
カードを一枚選ばせる。デックの側面にUnshuffledの文字があるが、シャッフルを重ねていくと観客の選んだカードの名前になる。そして最後には…!

通常販売しているUnshuffledは観客のカードの名前になって終わりですが、上述のペンアンドテラーをFool Usで引っ掛けたときにはもう一段のクライマックスが加わっていました。それを。最前列で目を皿のようにして見ていたTくんは「わかったかもしれないです…!」とか言っていましたが、ガートナーもなんか今年商品として?売るとかなんとか仰っていたので、販売時の答え合わせを楽しみにしておきます。しかし、パーフェクトファローを連発しなきゃいけないとか、過酷な手品です。緊張等で手が震えるのはガートナーといえどあるそうなのですが、震えを強制的に止める手法なども説明されていました。割と無意識にやっている方も多そうですけれど、参考になりました。

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T君は最前列かぶりつきで見ており、私は彼の右後方にいたのですが、うしろからでも分かる頬の緩みっぷりで、ホントに会いたかったんだなあと。イベント前の彼曰く、「我が手品神は三柱おられる。Johnny Thompson、Tommy Wonder、そしてPaul Gertnerである(*Kapsは殿堂入りなのでさらに上にあるらしい)。Wonderは不幸にも病魔に斃れ、Thompsonも健康状態が思わしくなく、臣でありその祝福の子たる我は極めて心を痛めておる。そしてその最後の希望こそGertner様なのだ。分かったら入信しろコノヤロー!」とのことで、まあ「俺ベストスリーマジシャンの最後の1人にやっと会えたのでとても嬉しい」と訳しておきました。心の中で。マイ・ベストのトム・マリカは還らぬ人になってしまいましたよ……。