教授の戯言

手品のお話とかね。

ゆうきとも「オープニング・セレクション」

monthly Magic LessonのDVDには、毎回メインメニューに入る前に30秒くらいの手元のみ無言での演技映像があり、これがまたクイックかつビジュアルな現象が多くて好きだったのですが、基本的には本編で解説はありません。古今の他の人の作品だから解説できないとかそういう感じなのかなと思っていたのですが、必ずしもそうではなかったようで。半年に一度変えているとのことなので、150号を数えるいまや25種類ものクイック&ビジュアルな手順があったということになります。重ね重ね解説がないのは惜しいなと思っていたところ、出ましたね、「オープニング・セレクション」が。


DVDが届いた日、「演技だけ見たら寝よう。あの長さ6作品だし、まあ5分もあれば終わるでしょう」と思って見始めたところ、結局ついつい解説まで全部、50分ちょい見てしまう面白さ。どれも面白いのですが、個人的には"オイル&ウォーター8.5"と"ファイブ・キングズ・ロイヤル"、"フラップ・ジャックス"が特に好きでしたね、と書いて、6個のうち3個を「特に」といっても、「特に」感がゼロなことに気付きました、いま。ああ、"EZ ハイパーツイスト"も捨てがたい。

まずあれです、ゆうきさんはカウントがうますぎます。当然そうあるべき、というのはともかく、リバースカウント、エルムズレイカウント、ツーフォーカウントあたりが区別つきません。あと久々に見ましたが、フェンテスチェンジもクソうまいの。ふわっと変わる感じ。ゆうきともほど、『キャラ色はないので「あ、これはできそう」と思わせつつ、実際やってみるとああはならない(できない)』という演技を見せるマジシャンも珍しかろうという気もします。アクロバティックなことをしているわけではないのに、かつ自分もその技法はできるはずなのに、まとめてやってみると「なんか自分、全体的に雑」のような。ガビとかキコとかは見た瞬間「ハイ無理ー。ていうかこいつ本当に同じ人類なのか?」とか思うのですが、ゆうきともは『一見ラクにトレースできそうなのに、やってみると自分の"コレジャナイ感"が見える』というのが曲者です。大変けしからんです。あ、いや、全部が全部ゆうきともみたいなクオリティでできなきゃいけないわけでもないですし、トリックとして成立するレベルくらいには自分でもできるように作られているのですけれど。ともあれ、なんだかんだ短時間でインパクトある作品が揃っている印象でございました。

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■限りなく赤に近いブルー(ノースイッチバージョン)
「瞬発力」マックスのカラーチェンジングデックの手順。以前にDVD 「ワイズワークス」 で発表された手順をアレンジして、よりセルフ‐コンテインドな形にしました。シャレの利いた台詞回しによって、色が変わる「理由」を作り出している点も注目です。(mML Vol.13-18のオープニングで使用)

■EZ ハイパーツイスト
パケットトリックのクラシックである「ハイパーツイスト」をよりライトなカード構成にして演じやすくした作品。Aから4までの4枚でツイスト現象が起こり、4枚とも同一カードに変化して、さらにクライマックスの現象がある意外性抜群のトリック。(mML Vol.43-48のオープニングで使用)

■オイル&ウォーター8.5
複数段構成のオイル&ウォーターから、最後は瞬間的な入れ替わり現象となる
ボリューム感満点の手順。大変巧妙な手順構成となっていて、おそらく感心されることでしょう。一般的なあるギミックカード(ただしO&Wに使うのはさほど一般的ではない)をを使用することで、レギュラーではできないクリーンさを実現しています。(mML Vol.55-60のオープニングで使用)

■バックグラウンド・オープナー
オープナーとして4枚のエースを鮮やかに取り出し、見るとその4枚だけ裏の色が違っています。解説をご覧になるとわかりますが、応用が利く、使い勝手の良いきわめて実践的な手順です。(mML Vol.67-71のオープニングで使用)

■ファイブ・キングズ・ロイヤル
5枚の同一カードが、あっという間にロイヤルフラッシュに変化。 ちょっとテクニカルですが、秀逸なメカニズムを持つ佳作。ブラザー・ジョン・ハーマンの作品です。(mML Vol.73-78のオープニングで使用)

■フラップ・ジャックス
ポール・ハリスが有名にしたフォーカードのレべレーション。パタパタっと、瞬間的にフォアエースが開示される見事なカラクリ。発表当時大流行しただけあって、この楽しさは別格です。セルフワーキング・フラリッシュとでもいうべき唯一無二の怪作。(mML Vol.109-114のオープニングで使用)