教授の戯言

手品のお話とかね。

Roberto Giobbi『Card College Light』日本語版

<宣伝のため未来日付に。実際の掲載は2018年3月7日>

ロベルト・ジョビーの『カード・カレッジ・ライト』の日本語版が出ます。「ええっ?本当かい?」マジです。T君に大体の作品見せられましたが、どれひとつとっても手がかり皆無感がすごい。震撼。私が。

ジョビーの『Card College』シリーズといえば、世界中で翻訳されている、"カード・マジックやるマン"必携の5巻組です。日本でも4巻までは翻訳されたものが出版されておりますが、2007年の4巻で止まって絶版なうです。なぜ!なぜなのですかTKD!1・2巻は結構重版かかってた印象あるのに。ラスト1冊じゃないですか!ただまあ第5巻はジョビーの作品集に近い趣なので、既刊4冊とは若干毛色が違うんですが。大きめの図書館に行くと4巻まで揃いで入っていたりしますので、いまでもカード・マジックを体系的にきちんと学ぼうと思ったときの、入手できなくもないベスト教材シリーズのひとつであることは間違いありません。

で。

カード・カレッジの1巻が出る4年前、1988年にこの本の原書『Card College Light』が出ております。なんで『Card High School』ではないのかというのはおいておいて。きわめてすごい名著です。『College』シリーズは、作品を題材にしつつ、基礎からハイレベルまで、"原理や技法の説明"を主としていますが(※個人の感想です)、こちらの本はいわゆるセルフワーキング・カード・トリックの"作品"しか扱っていません。ダブルカットすら出てきません。リフル・シャッフルくらいです(それも観客にやってもらうとか)。"それでいて"か、"それゆえ"かはともかく、まるで怪しさのない手品が揃っております。おそらくこのシリーズほどコストパフォーマンスに優れ、実用的なトリックが揃ったカード・マジック作品集は他にないでしょう。本当に傑作しか載っていません。いやホントすごい。その……ほら、……やばい(驚いたときにありがちな語彙力低下現象)。

本書は全作品、ジョビーのタッチが入ってはいるものの、ジョビーの個人作品集ではありません。ジョビーが選んだ、古今のセルフワーキング・カード・マジックの傑作選なのです(先日ご紹介したシュルツの『SSSS』みたいな)。そもそもひとつ目のトリックである"T.N.T."はタマリッツの作品ですし、以降もすべて「これは元々誰それの作品であり超ふしぎ。やばくない?マジ震える。あ、私ジョビーの工夫はこことここ」みたいな流れになっております(※そんな雑な言い方はしていません)。『古今のカードトリックの名作・傑作の選り抜き版』のような本なので、それは不思議に決まっていますよね。ずるい。「ずるくない!」 時の試練に耐えて残った作品群の力強さを感じます。

3作品を1ルーティーン、想定実演時間は約7〜10分のパッケージにしたものが7ルーティーン載っています。つまり、全部で21トリック載っているということですね(掛け算ができるアピール)。ルーティーン中のトリックは、1つ目が2つ目3つ目の作品の下準備になっていたりしつつも、現象はそれぞれ違う感じの作品になるように組まれています。サンキュージョッビ。構成を考える手間が省けます。「それから、ルーティーン中の3作品は、現象がバリエーション豊かになるように、それぞれ異なったイメージのものにして、重複感が出ないよう、観客に飽きが来ないようにしておいた」ナイスプレー、ジョッビ。それ重要よね。

『本書は初学者に対して、カードマジックという素敵世界への扉を開く素敵本である。が、決して初学者のみを対象にしているわけではない。すでにカード・マジックがうまいという評価を得ている人で、観客に手元を凝視されている状況、または「いまカードをパームしてますよね」とか看破してくるような観客の前で手品をしなければならぬ状況でなお、全くの手がかりを残さず不思議を演じ切りたい!ていうか魔法使いになりたい!そういう人にも有用なはずだ。いや、むしろそういう人のほうが本書にハァハァできるように書いてある!』(意訳)というものです。いや、この内容は私が盛っているのではなく、著者本人がだいたいそう言っています。

いやあ、いいですよ、よくできたセルフワーキング手品は。技法に頼る手品の場合は、技法そのものが見えなくても、何かやった感などはすぐ出ますからね。自分では「今日もうまくできた。パームしてたけど右手首も掴まれたりしてないし」というふうには思っていても、実際には観客から「おそろしく速いパーム……!俺でなきゃ見逃しちゃうね♪」とか思われていますしね、たいていの場合(※個人の感想です)。一方、原理を知らないセルフワーキング手品は不思議です。そもそも技法的な怪しさがありませんしね。初見殺しというか、知らないと死ぬ、みたいな。殺したり死なせたりはしませんけど。

まあとにもかくにも、この1冊から2ルーティーンくらいマスターしておけば、相当な魔術師になれること請け合い(双頭と魔術師というワードが出てくるとランテマリオ会戦を思い出しますわね)。ジョビーも、「本書の内容をマスターするだけで、この惑星上でカードマジックやってる人種の90%よりもカードマジックうまいマンになれる!まじでな!」って言ってますしね。

原著よりクレジットに詳しく(クレジット厳しいメンが絡んでいるため)、トリック成立/不成立条件の確認などまで加筆されている(Tくんはこういうのホント好きですね……)、『カード・カレッジ・ライト』、発売間近です。多分この3月下旬くらいではないでしょうか。

追記 2018 3/14:「うそやで。4月上旬やで~」(CV:犬山さん) 新生活のおともにもぜひ!

再追記 2018 3/31:出ましたよ!なくならないうちに是非!そんなになくなるようなものでもないですけど!

再々追記 2018 4/18:「まだショップさんに卸す前なのですが、もう在庫が半分もないんですがこれは」と訳者氏が。割と無くなる可能性が出てきました。良かったですね。

magic.theshop.jp
印刷所の頑張りとT君の本業の忙しさに依存。さておき、名作がいかに名作かと、うまい構成ってこういうものだぜ、というのがばっちり学べます。おすすめです。1週間に1トリックずつ習得していけば2クール弱もちますよ!

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Routine 1
T.N.T. (ホァン・タマリッツ)
 全くもって不可能に思われる状況下で、マジシャンは選ばれた2 枚のカードを当てます。
Intuition (ポール・カリーをベースにジョン・ケネディ
 2 人の観客が、直感の力により、よく混ぜられたデックを赤と黒に分けることができるようになります。
The Telephone Trick (ハワード・サビッジをベースにウィリアム・マカフリー)
 よく混ぜられたデックから自由に1 枚カードが選ばれます。演者が霊媒に電話をかけると、その人はカードが何であるかを電話越しで当ててしまうのです。

Routine 2
Thot Echo (サム・シュワルツ)
 きわめてフェアな状況で観客が2 枚のカードを選びますが、マジシャンはそれらを見つけ出すことができます。
Royal Flush (ボブ・ハマーをベースにラリー・ジェニングス)
 観客によって10 枚のカードがランダムに選ばれ、よくシャッフルされ、そして2 つのポーカーの手札として配られます。にもかかわらず、マジシャンの手札がロイヤルフラッシュになっているのです!
The Waikiki Shuffle (ビル・ムラタ)
 無意識にコントロールされた振り子の揺れから、マジシャンは選ばれたカードが何かを当ててしまいます。

Routine 3
Fingertip Sensitivity (ボブ・ハマー)
 マジシャンは、観客がテーブルの下でカードのパケットをどのような並びにしたのか当てることができます。
Muscle Reading (ジャック・マクミラン
 観客にカードを選ばせ、デックの中に戻して完全にシャッフルしてもらいます。マジシャンは、他人の“無意識の筋肉インパルス”を読む能力により、選ばれたカードを見つけ出すことができるのです。
The Lie Detector (ロベルト・ジョビー)
 観客がカードを憶えて、デックに戻し、シャッフルします。次に、7 枚の無関係なカードを抜き出してもらいます。そうしたら表は見せずにマジシャンに向かってカードの名前を言っていってもらいます。しかし、どれか1 枚のカードのところで(そのカードの名前の代わりに)選んだカードの名前を言ってもらいます。信じられないかもしれませんが、マジシャンは人の嘘を見抜く鋭敏さを備えているので、彼女のカードを見つけ出してしまうのです!

Routine 4
The Circus Card Trick (ヒューガード&ブラウ)
 このマジシャンは選ばれたカードを探し出すことに失敗してしまったな、と観客が確信している状況で、マジシャンはびっくりするような愉快な方法で、事態をうまいこと収拾します。
The Fingerprint (ヒューガード&ブラウ)
 自由に選ばれたカードが、観客によって、きわめて厳正な状況の下、デックに戻されます。にもかかわらず、マジシャンは選ばれたカードに残された“指紋”を手がかりに、これを見つけ出してしまうのです!
Magical Match (ジョン・ヒリアード)
 マジシャンは、説明のつかないやり方で、観客がデックからカットしたカードの正確な枚数を2 度も当ててしまいます!

Routine 5
Cards Never Lie!(J.C.ワグナー)
 観客がカードを選び、デックの中に戻してシャッフルします。マジシャンは、これからカードについて3 つの質問をするが、回答については嘘を言ってもいいし、本当のことを言っても構わないと観客に伝えます。にもかかわらず、マジシャンは選ばれたカードが何か分かるだけでなく、すぐに同じ数字の他の3 枚のカードも取り出してくるのです!
Digital Dexterity (アル・ベーカー)
 観客がカードを1 枚選び、それをデックに戻してシャッフルします。そして、デックはマジシャンのポケットに入れられます。全くもって信じられないような器用さで、マジシャンはデックの中から選ばれたカードを探し出してくることができるのです。
Think Stop!(ブルース・サーヴォン)
 観客が自由にカードを選び、デックに戻し、シャッフルします。にもかかわらずマジシャンは、観客が何も言わずに心の中で思ったことを読み取り、カードを見つけ出してしまいます。

Routine 6
Card Caper (ロベルト・ジョビー)
 2 人の観客が自分自身がシャッフルしたデックから、それぞれカードを選びます。選んだカードをデックに戻し、再度シャッフルします。にもかかわらず、マジシャンは2 人の選んだカードを驚くべきやり方で見つけ出してしまいます。
In the Hands (フランク・ガルシアをベースにロベルト・ジョビー)
 観客がデックをシャッフルし、その内の2 枚を憶えます。そして憶えたカードをデックに戻してもらいます。この不可能な状況にもかかわらず、マジシャンは憶えたカードを両方とも見つけ出してしまいます。
Back to the Future (アル・リーチ)
 マジシャンは自分自身で未来に行き、そこで何が起こっているかを記憶し、過去に戻ってきて、そしてこれから起こることを予言する、という、現象は明快ですが、なんだかややこしいお話です。

Routine 7
Manto (ボブ・ハマーをベースにリシャール・ヴォルメル)
 マジシャンは予言を書きます。そして、それをカード・ケースの中にしまいます。ケースは観客に持っておいてもらいましょう。観客と演者がカードを表裏ごちゃ混ぜにします。デックはカオスな状態になります。それにもかかわらず予言には、何枚のカードが表向きになっているか、それらの内、何枚が赤で何枚が黒か、正確に書かれているのです!
Vernon’s Miracle (ダイ・ヴァーノン)
 マジシャンは考え得る限りのフェアな状況のもとで、選ばれたカードを見つけ出します。
That Is the Question (リシャール・ヴォルメル)
 マジシャンはなんの質問もすることなく、自由に思ってもらったカードが何かを当て、探し出してしまいます。



A5ソフトカバー 、本文176ページ、 7ルーティーン21トリック掲載です。

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校正をしてくださった岡田さんからは「本当に傑作揃いです。実に老害手品向きです。あ、老害手品というのはですね、卒業して結構経つのに!OBとして手品サークルに頻繁に顔を出す!そんな人が(…ど、どうしたのですか岡田さん…?)、一切の気配なく、若手に不思議テジナを叩き込むのに向いている、ということです」と。
「へ、へえ……。まあ『ミステリオーソ、つまり、全体的にSF(すごく・ふしぎ)!』ということですよね」(フラメンコポーズをキメながら)
「そう、『おだやかじゃない!』」
「……くっ、先に言われた」
とにかくすごいということです(※なお本編にアイカツ要素は特に出てきません)。

著者との契約上(&大手出版社でもないため)微々たる数しか刷れませんでしたとのことでした。2版の再契約ができるかどうかは皆さまの応援(というか物理的な売れ行き)次第でございます<(_ _)> まあ基本出ないとは思いますが。

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追記:2018.0416
とみやまです。きょうじゅさんのツイッター経由で、精読してくださった方たちより早速の誤植のご指摘を頂戴いたしました。あんなにいっぱいチェックしたはずなのに泣きそうです。ともあれ本当に申し訳ございません。


Cards Never Lie!
p.96, l.18,
誤:ハート → 正:ダイヤ
セットにハートのキングは入っていないのに。「原文だとこのカードの行き先書いてないから不親切やな、入れたろ!」→間違う なぜなのか。「良かれと思って、良かれと思って原文にない一文をわざわざ足したらこのザマですよ!」


Think Stop!
p. 103 『ステージングとハンドリング』, l. 2
p. 106 『忘れるといけないので……』, l. 2
いずれも 誤:24枚 → 正22枚
3人がかりでのべ10回以上読んでおきながら見逃した、意味不明の間違いでした。「貴様の英和辞書には、"Twenty-two"は"24"と載っているのか」という、言い訳無用の箇所でございます。それも2箇所。本当に申し訳ありません。