教授の戯言

手品のお話とかね。

Guy Hollingworth関係の近況

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DRD

富山です。Guy Hollingworthの『Drawing Room Deceptions』という本の粗訳1周目がようやく終わり、合わせて彼の映像資料を全見直しの行に入っておりまして、備忘がてら映像についてのメモを後日つらつらあげていこうかと。

 

ガイ・ホリングワースは英国のマジシャンで、まあなんと言いますか、いちいちジェントル感溢れる、英国紳士です。日本の一部手品界隈では通称ガイ様。かっこよすぎ。というか本当に上流階級の人らしいので仕方ありません。私のようにカネで爵位を買ったような人間とはワケが違います(当方伯爵位持ち(本当))。

大学生の頃、奇術愛好会で彼のビデオ『London Collection』を見て震えた思い出があります。中でも私に一番手品を教えてくれた先輩がガイ大好きマンで「ぼくもいつか、白黒で『Mita Collection』とか撮りたい」とか普段から言っている類の人だったので、必然私も好きになってしまいました。なおその先輩が本書の共訳者でもあります。当時、まさか二人してガイ様本を訳すことになるとは想像もしておりませんでした。人生何が起こるか分かりません。

ガイ様はめっちゃ手がでかいというか指が長いので、昔から「この人の手品は私のように手の小さい人間には基本的に無理だな」とか思っていたのですが、腰を据えてしっかり読んだり見直したりすると、そういうのはむしろ少なく(本人は、「指が長すぎて、このタイプのボトム・ディールは無理」みたいな悩みもあったようですが)、だいたいはかなり緻密に工夫された素晴らしい作品の数々でした。

トーン・アンド・レストアード・カードという、要は4片に破いたカードを1片ずつくっつけていって復元するトリックがありますが、その彼のバージョンがかなり有名です。亜種もかなり出ました。それがきちんとできるようになりたくて、2010年頃、こざわまさゆきさん主催の洋書購読会の中で、本書のエピローグ、"The Reformation"を訳の対象に選んだのを思い出します。訳自体は、いま見直してもそこまで間違いはなかったのですが、まあとにかく練習が足りていなかったので、当日の実演ではもはや手品になっておりませんでした、という苦い思い出。その場にいた齋藤修三郎さんに「そこはこういう動きですよ」と教えていただいたという有様で(なおそのとき彼が訳していたのが『Card College Light』のトリックだったはず)。

 

本自体はこの冬以降にはなりますが、鋭意製作中です。……ら、来年かな……?内容はいまでも全然古くない折り紙付きですので、ガイ様に恥じぬ、かっこいい本になるように頑張ります。本書、挿絵もアール・デコ調の素敵なものなのですが、全部本人の手による描画というところがまた。パーフェクト超人か。