教授の戯言

手品のお話とかね。

『Greater Magic 邦訳補遺集 巻之弐』

この2ヶ月、ジャンカルロ・スカリア、ジョシュア・ジェイ、マルティン・ブラエッサスと、3人のレクチャーに参加してまいりました。上手い人の手品はやはりいいですね。スクリプト・マヌーヴァさんにおかれましては、ジョシュア・ジェイが実演もしていた『The Particle System』の日本語版を出してほしいです。Hurry!

 

そんな中、『Greater Magic 邦訳補遺集巻之弐』もちゃんと作っていたのです。偉い。なおいま最終巻である巻之参も半分ほど終わっております。市場のニーズガン無視で進めております。「いまさら止められないとなった」とか、政治家みたいなことを言うようになるとは思いませんでした。

 

今回はマインド・リーディング、魔方陣、ナゾの手品道具の3本柱でお送りします。

マインド・リーディングはアネマンがイケイケだった当時の作品で、マジック界的にもかなり洗練されてきた時代の手法といった趣です。電子デバイスを使わないのであれば手法自体はそんなに発展させようもない領域だとも思うので、現代でも演じられそうです。ひとつ、「吸取紙」という用具を使うトリックがあるのですが(万年筆で書いた質問文章に吸取紙を当てると、吸い取ったインクが勝手に質問の応えの文章・単語へと変化する)、吸取紙って最近見ないですね。吸取紙というのはその名の通り、万年筆で書いたあと、余分なインクを吸い取るためのもので、昔の紳士は必ず携帯しているようなものだそうですが、最近のインクは速乾性が高いので、吸取紙を使うことはまずないんですよね。売っているのだろうか。ググったらいっぱい売っていました。湿気もよく吸うので、書類の保管に重宝されているようです。なんてことだ。

カードの記憶術、は当時の記憶術の大家、スミスによる連想法による暗記です。これを活用して当時演じられていたのが、「観客たちに好き勝手に数字と物を言ってもらい、それを黒板に記入していくが、最終的にそれを見ずに全部言うことで拍手喝采」な芸などです。シャッフルされたデックの並びをガチで憶えて全部順序通りに言っていくやーつとかも解説されています。英語ベースというのもありますが、私はできる気がしません(正直)。誰かマスターして見せてください。

方陣。魔方陣はプロでやっている人を見たことがほとんどないのですが、日本人でやっている人(アマチュア)は、それはもうドッカンドッカン受けていたので、正直羨ましいというか、やってみたいとは思っていました。基本となる3x3方陣のみならず、4x4、5x5、6x6、7x7、8x8、それ以上、と変態暗算マンになれる構成になっています。これはデックのガチ記憶に比べて、数日みっちり練習すれば実演にかけられる、現実的な難度のものばかりだと思います。ただ、ヒース先生も仰っていますが、「同一の観客に魔方陣トリック見せるなら多くて2つまでにしておきなさい。観客たちが魔方陣狂いでもない限りそれ以上は不要です」が真実だと思いました。魔方陣に限りませんが。

最後が当時のパーラーやステージで使われていた手品道具の数々の絵図。女性の体を透過して向こう側の本を読む道具がマイ・フェイバリット・トンチキ手品グッズでした。状況を想像するだけで笑ってしまう。

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次、最終巻は基本的にステージの心得とトリックです。フー・マンチュー(デイヴィッド・バンバーグ)による「奇術を演じるとはこういうことだ」と、心得だけ語られるのかと思いきや、かなり実践的なアドバイスがモリモリの章と、数々のステージ・マジックの解説の章ですが、まあそれはまたのお楽しみということで。

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邦訳補遺集巻之弐:

目次
第28章 マインド・リーディング 
悪魔の紙片リーディング(セオドア・アネマン) 
ワン・アヘッド・システム 
現代的なマインド・リーディング(ウィリアム・ヒューイット)
電話帳のブック・テスト(ジョン・マルホランド
ディクショナリー・トリック(J・N・ヒリアード)
封印されしメッセージ(シド・ロレイン)
魔法の吸取紙(シド・ロレイン)
ジオマンシー(ウィリアム・H・マカフリー)
ビー玉の当て物(C・W・ジョーンズ)
3 枚の紙片(セオドア・アネマン)
魔法の足し算(ウィリアム・H・マカフリー)
距離を隔てたマインド・リーディング(フランク・レーン)
最高の即席マインド・リーディング・トリック
指先のマインド・リーディング(バート・グスタフソン)
カードの記憶術(H・エイドリアン・スミス)
システムの概要
固定観念の表(文字)
固定観念の表(単語)
カードの表
連想法
シャッフルされたデックの記憶法
ユニークなメンタル・プロブレム(H・エイドリアン・スミス)
物のリストを記憶する
セットしたデックのための方法

第29章 魔方陣(ロイヤル・V・ヒース)
方陣についての基本
3x3方陣
5x5 魔方陣
奇数マス魔方陣と偶数マス魔方陣
8x8 魔方陣
6x6 魔方陣
方陣の楽しみ方
方陣の転置
誕生日魔方陣
歴史的な魔方陣
奇数と偶数の分離手順
数理的魔方陣
興味深い珍品

第30章 新旧の奇術道具
チャールズ・H・ラーソン・コレクション
消える砲弾
魔法の潜望鏡
魔法のやかん
シルク・スタンド
ミステリアスな円盤
ミステリアスなケース
無尽樽
紐と本
象牙のカード・ブロック
マダガスカルの小屋
アンブレラ・テーブル
デックがシルクに変化する
最新のブロックと紐
シルク・プロダクション・ボール
シルク・プロダクション
カード・テーブル
最新のミラー・グラス
シガレット・キャンドル
物質の貫通
その他のコレクション

訳者あとがき

 

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