教授の戯言

手品のお話とかね。

『strawberry』&『ASIS』

先日のマジックマーケット2017にて頒布されました、悪ふざけ同人誌『ASIS』の通販を開始しました。悪ふざけを見たい方、軽い気持ちのおふざけによる印刷費&ダンボールの塔を見て暗澹たる顔をしているきょうじゅに憐憫の情を抱いた方、字ばっかりの手品地獄を見たい方、表紙の南の海の綺麗さを綺麗な印刷で見たい方などはぜひ。


教授の戯言『ASIS』
http://magic.theshop.jp/items/7957867



また、園内五果さんの『strawberry』も数冊だけお預かりいたしましたので、瞬殺とは思いますがこちらに委託販売をお受けしていますショップにアップして、寝て起きたら完売しておりました(2017.0828)

園内五果『strawberry』
http://magic.theshop.jp/items/8047607

カードマジック作品集『ASIS』

ツイッター上でもたびたび出る、新商品の説明文章を見ては「こうやるんじゃないかな」「いやこうだろう」のような議論。「いっそ、商品説明文だけを所与条件として、みんなで作品集作ったらいいんじゃないですかね」というような阿呆な発言をしたのが確か2016年末だか2017初頭。阿呆な真面目な人たちがバカ正直に寄稿して逃げられなくなったのが4月。以降、締切をブッチしてひとりで6作品寄せた人までいるのが本書『A Study In Summer』通称『ASIS』です。訳すとなつやすみの自由研究ってやつです。あ、いっこだけカード使わずブレスミントを使うやつがあったことに気づきましたが、もう入稿したので直せません。やっちまったZE!



作成条件は「ネットで商品紹介文章を読んだ」「演技映像は見たことがない」「商品そのものを買ってない(実際のやり方を知らない)」ことが前提です。なお、取り上げた作品の数々を、偶然にも大体購入済みであるこっぺさんという方に判定を依頼。商品と完全一致してしまった場合は掲載を見送る、というルールとしました(さすがに偶然とはいえ、完全に一致してしまったものを出すのは、……別に何も悪くはないと思わなくもなくもなくもなくもないですが、なんか寝覚めが悪いですし)。「まあ、いうても完全一致はないでしょ」と思っていたらありました。しかも複数。凄いですね。マジックマーケット、Beeさんの「日本奇術文化研究所」にて委託頒布予定。Tくんはあそびに行くそうです。


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全作者入場!


特に理由はないッ シゲオがうまいのは当たりまえ!!
協会にはないしょだ!!! マジックハウス店主!
二川滋夫がきてくれた―――!!!(※)
(※)マジである。しかも複数作品。


パリの女子高生は生きていた!! 更なる研鑚を積み理系手品解読師が甦った!!!
長身痩躯に熊のお面!! ゆうゆうだァ――――!!!


ASISの本場は今や北の大地にある!! オレを驚かせる奴はいないのか!!
izumiだ!!!


ファンの前でなら私はいつでも全盛期だ!!(※)
燃える訳書(焚書) とみやまたつや だいたい本名で登場だ!!!
(※)中学2年頃


手品したいからここまできたッ キャリア一切不明!!!!
千葉の大豆(国産)ファイター トウフだ!!!


総字数320万文字超(※)のブロガーが今ベールを脱ぐ!! 
東京から きょうじゅだ!!!
(※)本当


テジナ暗黒地域こと「ながのちほー」で磨いた実戦テジナ!!
シナクラ会のデンジャラス・ライオンのフレンズ 園内五果だ!!!


ギミックでの殴り合いなら我々の歴史がものを言う!!
封筒とマジックワゴンLOVE! 元祖ギミック厨房 Bee男爵!!!(※)
(※)爵位本当


ルールの無いテジナがしたいからバーマジシャン(バーで手品をする人)になったのだ!!
プロのテジナを見せてやる!!ヤマギシ・ルイ




若き王者が帰ってきたッ
どこへ行っていたンだッ ASISチャンピオンッッ
俺達は君を待っていたッッッ こっぺの登場だ――――――――ッ



加えて負傷者発生に備え超豪華なリザーバー(イタコ芸)を4名御用意致しました!
もやもや皇帝 こざわまさゆき!!
伝統派テジナ エド・マーロー!!
東洋の巨人!高木重朗!

……ッッ  どーやらもう一名は到着が遅れている様ですが、到着次第ッ皆様にご紹介致しますッッ!




『ASIS -A Study In Summer-』
収録内容
 「Counter Punch」っぽい 二川滋夫
 「OMEN」っぽい 二川滋夫
 「Vivaldi」っぽい ゆうゆう
 「Daydream」っぽい ゆうゆう
 「Gemini Fates」っぽい ゆうゆう
 「Palette」っぽい izumi
 Catalog izumi
 「Masterpiece」っぽい 富山達也
 「Pairs」っぽい 園内五果
 「Love Bites」っぽい izumi
 「Dual」っぽい トウフ
 「T2」っぽい きょうじゅ
 「Lazy Prediction」っぽい Bee男爵
 MMMMMM ヤマギシルイ
 Diffused Numero ヤマギシルイ
 Self-Counterpunch ヤマギシルイ
 Imagination Double Cross ヤマギシルイ
 Silent Daydream ヤマギシルイ
 Daydream Everytime ヤマギシルイ

B5サイズ表紙カラー本文モノクロ80ページ。挿絵図表殆ど無し(手抜き)。マジケ後、多分物販ページでも売ると思います。値段はちょいと上げますが。

園内五果『strawberry』


先日、春に一度お会いしたアマチュアマジシャンの園内さんが近くにこられたので、けもふれがーでんに行って「すごーい!」「おさけー!」などとやっておりまして(阿呆2名)。その場でデザートとして出されたのが本書、『strawberry』だったのです(流れでインチキストーン的な話にいきそうですがいきません)。

同日その後、厚さで、もとい、暑さで溶けかけているこざわさんを新宿に呼び出し、こっちでもビールにドイツ料理で「すごーい!」「おーいしー!」とかやっていたわけですが(阿呆3名)、その場で園内さんにやっていただいたのが本書のBonus、"The Old-maid Trick"でした。こざわさんも私も「ふっしぎー」となりまして。原理ものは本当にいいなあと思った次第です。

後日これを私より伝授された訳担当のTくんは、サークルでこれをやって、マニアを引っ掛けてニヤニヤしていたそうです。「え?なんであたるの?」「えへへへ」「ちょっと待って、もう一回やってもらっていい?今度は枚数を変えてやるから」「どーぞどーぞ、やらせていただきましょう。あ、ご自由に混ぜちゃってくださっても結構ですよ(ニヤニヤ)」 ……最低だなw

で。

本書はA5で50ページくらいのコンセプト作品集です。マッチング・カードというジャンルがありまして、ってそれを伺ったとき、私の頭の中にはメイトカードがバンバン揃っていくニック・トロスト的なあれしか浮かばなかったのですが、そっちじゃなくて、こんな感じのです。
1. 最初にカードが裏向きで1 枚選ばれます。このカードはそのまま伏せて置かれ、カードが何であるかは誰も知らない状態です。
2. 演者は「このカードと同じ数字のカードをあと3 枚見つけてフォー・オブ・ア・カインドを揃える」と言ってデックをカットし、3 枚の8を取り出してみせます。
3. ここで観客がテーブルに伏せられているカードをひっくり返してみるとK で、失敗したかのように見えます。
4. 演者は「こちらのカードを全部変えてしまいましょう」と言い、先ほどの3 枚をもう1度見せるとそれらはK に変化しており、フォー・オブ・ア・カインドが揃います。(本ノートより引用抜粋)
というやつです。常識ですよね。……すいません、私ここ数年、そのジャンル名すら忘れていました。


先述のとおり、基本的にはマッチング・ザ・カード作品集であり、現象の流れとしては似たようなかたちですが、舞台だてや手法が全て違っております。私は"Fault and Faint"と"Snowcap"が好みです。



で、"The Old-maid Trick"なんですが、名前のとおりババ抜きのようなテイストの流れで、様々なやり取りを経た状態で、一体誰の山にババがあったのかを演者がずばり当てるという、あまり見たことがないたぐいのトリックです。
観客にシャッフルしてもらったデックをテーブルに置いて、適当な枚数を取り上げてもらい、そこにジョーカーを1枚入れてまたシャッフルし、それを適当な人数分の山に配り分けてもらいます。ババ抜きのルールを説明し(ここでは1枚ずつでなくてもいいこと、組が揃っても別に捨てなくてもいいこと)、一通り終わったら最後にジョーカーを抜き出してもらってから演者が向き直り(驚くべきことに、観客の操作の間演者はずっと後ろを向いている)、最後にどの山にジョーカーがあったのかをずばり言い当てる、という現象です。

いい点は不思議なところ。最初見せて頂いたとき、どうやって当てているのかまったく検討もつきませんでした。悪いところはババ抜きと分かってはいても操作が長いところ、それから山がせいぜい7つとかなので、山が大体4つとかですと当てずっぽうでも4分の1くらいで当たってしまうと思われること。場所とること。悪いところ多いじゃねーかという向きもございましょうが、でも不思議なんですよ。ひとり相手にガチクロースアップを見せるぜ、という御仁には向かないと思いますが、パーティーなどの一画で、ワイワイしながらやるには絶対いいトリックなんですよ。シナノクラフトの鹿化人さんや、訳担当のTくんはハンドリングやステージングを色々いじっているとのことで、そういういじりがいがあるのも良い手品の特徴ですね。



もうひとつのボーナストリック"Strawberry on the Shortcake"、こちらは原理というより"Homing Card"や"Ambitious card"のパーツを上手く組み合わせた趣のトリックです。3枚のカードをイチゴになぞらえ、ショートケーキを食べるときのイチゴの扱いをベースに作られたもの。お話マジックが苦手な私でもできそうな、そこまでストーリーストーリしていない感じです。手法自体はある程度マジックをやってきた人ならすぐに演じられるものかと思います。

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『strawberry』

  • Contents-

Matching the Cards
 Shingleback Skinks
 Collecting the Cards
 Fixed Match
 Last Match
 Flash Match
 Fault and Faint
 Snowcap

Bonus
 a The Old-maid Trick
 b Strawberry on the Shortcake


サークル『果無園』マジケ参加&頒布予定とのことでした。私もちょっと数冊買わせてもらって、友人に布教したいと思います。

こざわまさゆき『ten little tricks』

こざわ「『Incomplete Works 2』出すのは当分先になりそうなので……」ということで、コミケでいう準備号のような感じで、こざわまさゆき氏の新刊が出ました。夏コミとマジックマーケットで紙ものを頒布のご予定だそうですが、電子版のかたちでの販売は開始されています。tenと称して13トリック解説されていますがtenとは何なのか。tenには10点満点ということで「最高の」という意味がありますので、珠玉トリック集、という意味かもしれません。また、Tentative(「仮」「暫定」)の略かもしれません。賢人の深謀遠慮は、私のような小人には推し量れません。

指が攣る変態テクや構成的な無理はほぼないという印象でした。安心のこざわクオリティ。ナックルブレイカーやフラリッシャーの方には物足りないかもしれませんが、それはもう好みというか、読む本を替えるべきです。通常、トリックのみに偏りがちな手品本(同人誌)ではありますが、本書は著者の好みや性格からでしょう、来歴や周辺情報など、読み物としての面白さもあり、これは個人的にですが、「Incomplete Works」より好きというか、実用に資する感があります。

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1. Counterfeit
古典的な論理パズルである贋金あて(天秤で最低何回計れば贋金を当てられるか)に、ウェイト・ゲスや赤黒の重さの違いという要素を練り込んだカード当て。

マジックとしてそんなに不思議ではないと思うのですが、演出が面白いです。最後に「こっちが重いようですね」と、お客さんの手を押し下げるフェイズが凄く好きです。
なお、これは面白いなと思って某所で演じたのですが、次にお会いしたときに二川さんにラッピングだかパスまで駆使された改案を見せられました。「だってお客さんにシャッフルさせたかったんです」というコメントでw それはそれで不思議さは増しているのですが、正直この手品で「そこまでせんでも」感はあります。
作中でももう少し複雑なかたちで触れてはいらっしゃいましたが、観客にフリーチョイスさえさせなければ話は簡単です。裏面の右上左下にペンシルドットを打ったカードを1枚だけ用意してそれを贋物とすれば、観客がどう混ぜようが関係ありませんから。自分で演じるならそのくらいにしてしまってもいいかなと思いました。古典パズルを、どう見ても嘘な理屈で煙に巻きながら、それっぽく演じるというところに本作の面白さはあるものだと思います。


2. Ambitious Royals
指定してもらった絵札2枚を真ん中に差し入れるが、いつの間にか2枚ともトップへと上がってくる。もう一度行うがやはりトップへと上がってきてしまう。

みんな一度は見たことがあるであろう古典の小品。私はサークルで教わって以降忘れていたのですが、その昔テレビ番組でルセロが「皆さんにも手品をひとつお教えしましょう」というような流れでやっていた記憶があります。なお無事引っかかった模様。



3. Magician vs. Gambler vs. Mathematician
マジシャンとギャンブラーに数学者が加わり、それぞれがモンテをするとどう違うのかを順に演じていく。

これは実にうまい具合の構成になっていると思いました。1人目の"数学者"の段で、かなり強いミスディレクションの元でお仕事がほぼ完了するため、2段目の"ギャンブラー"、3段目の"マジシャン"のところでは、ほぼ演出というか演技に集中できます。私がその昔憧れたJamie Badmanの『Underground Change』アンダーグラウンド・チェンジや、それを使った”misdirection monte”(Jamie Badman and Colin Miller, 『Welcome to the Firm』)なんかがこういう、最初と最後で、「はずれカードが消え、あたりカードだけになっている/あたりカードとはずれカードの枚数が逆転している」系の現象であり、これはこれでそれはもう大変美しいのですが、特殊なチェンジ技法が綺麗にできるように結構練習が必要です。こざわさんのこれは、先述の通り無理なく、ミスディレクションの利用のお手本みたいな感じで組まれているので、きっと最後には観客の予想だにしていなかった状況になって、拍手が頂けること請け合い。平面的なトリックなので、大人数に見せるには少し工夫したほうがいいかもしれませんが些末なことです。
そして最後まで読んだら本作の演技の流れの着想は桂川新平さんから得たこと、桂川さんご自身は上記のジェイミーの手順から着想ということで、思い至ったのが桂川さんと同じものだったことにちょっと嬉しさを憶えましたw



4. Hide a Leaf
カードを隠すという話をして選ばれたカードを隠して見せます。続いて「葉っぱを隠すなら森の中」のたとえ通り、選ばれたカードを4枚のクイーンの中に入れますがまたもや見えなくなります。では森がないときはどうすればいいかご存知ですか、と言うや否や、先ほどまで1枚しかなかったカードが大量のカードになる。

最後の、わらわらとカードが出てくるところが綺麗にできるかどうかが成否を握るなと思いました。作中で触れている通り、若干マジックの(隠すべき)考え方の根幹を晒している気もするので、台詞回しや進め方には少し注意が要るように感じました。でもまあ、最後にばさばさ出てくれば解決ですよねw



5. Process of Elimination
いわゆるビドルトリックです。(原文ママ

いいですよね、ビドルトリック。基本はコントロールと当て方の部分に作者の色が出るわけですが、わたくしは出身奇術部で受け継がれている方法に慣れ親しんでいることと、数百回やって演出も受けるタイミングも体得した(ように思う)ものがありますので、これはビドルトリックをこざわタッチでやるとこうなるのね、くらいにとどめておこうかと思いました。綺麗にまとまっていると思いますが、自分の手順を変えるには至らず、という感じですね。あと消去法で当てるなら、残り4枚のほうが消えて観客のカードだけが残るべきではないでしょうか(インネン)。
そういえば大学の奇術部で習ったあとで、元となった"Devilish Miracle"を知りましたが、「カードを2枚選ばせるまではさておき、Bのカードとして出してきたと思ったらさっき置いといたはずのAのカードになってて、置いたはずのカードAのほうがBになってる、というのを見て(そして練習して、演じ)『とっちらかったマニア向けの手品だな』」と思ってしまいました。シンプルなのが好きです。



6. Six Card Brainwave
ニック・トロストの“Eight Card Brainwave” から2枚減らし、見えないサイコロと絡めた作品。

直近で、トム・ストーンが似たようなのやってたなあ、と思いましたが、似ているのは単に6枚使うのと見えないダイスを使うあたりで、基本はヴァーノンの手順にもあった気がする、どっちから数えるかというあれはストーンのでも変わっていなかったのですよね。本作では別の手法を使って、選ばれたもの以外が違う裏の色、という見せ方をしています。どっちから数えるとかはありませんので、まあ違うよねと(あとでこざわさんに聞いたら、あの数え方はやめたかったのです、とのことでした)。本作で使われている手法、最近あまり使っていなかったのですが、やはり物凄く説得力のあるディスプレイだなあとあらためて感心した次第です。




7. Subliminal Effect
サブリミナル効果により、演者の選ばせたいカードを観客が選んでしまいます。

これはどちらかというと演出のみな感じですね。ご本人言及の通り、怪しいことを奇術を使って再現という試みですが、手品人としては「不思議さは物足りない」けど「実演はしやすそう」という。ストップ・トリックの演出法のひとつとしてありそうです。



8. Following
フォロー・ザ・リーダー。

手順として無理なくまとまっていると思いました。こざわさんの実演を拝見したわけではないので実際に拝見したら違うかもしれませんが、ただ、FtLはごく一部の例外を除いて、正直なところ「一番上しか置いてない」「一番下しか見ていなかったしなあ」と思ってしまうことが多く、あまり幻惑された記憶がありません。もちろん、観客側からの見た目の理想として、「置く/交換される直前に、本当にそのパケットが全部赤なのか見せてよ」と言いたいけれど、手品の都合上そういうわけにもいかない、というのは重々分かってはおります。途中途中ではそういう限定的なディスプレイしかしていなくても、そこに至る準備段階まででは色々な手法を駆使、「こっち側は全部赤で、あっち側は黒」を頑張ってフェアにディスプレイしている、というところにマジシャンが知恵を絞っているのもわかるのですが。こればかりは好みの問題でしょうか。FtLはOWと似たような手法が使われることが多いとは思うのですが、OWほどには完全に引っかけてもらった記憶がなく。難しい演目な気がします。



9. Red Ocean & Blue Ocean
こじらせてしまった人向けのCard Across。

こじらせている感がひしひしと伝わってきますw 私はこざわさんの書く「みなさん」には入らないのですが、カードアクロスはとてもいい手品ですし好きです。余録部にもありますが、結局色々な要素(「テーブルなしで立って演じられる」「パームを使わない」「観客が選んだカードを飛ばす」「できれば心の中で自由に選ばせたい」「色違いのパケットからパケットへカードを飛ばしたい」など)はマジシャンの自己満足含めてありまして、それはそれで興味深いのですが、どこまでが不思議さがリニアに上がり、どこ以降は大して効果が変わらないのかは、手品をされない方に一度聞いてみたいものです。"Red Sea Passover"は私も好きとはいえ、あれはあれでめんどくさい感があるんですよね。David Solomonの"Thoughts Across"なんかも面白いのですが、最近はパームに抵抗がないからなあ。こざわさんのこのトリックは、赤と青のデックを使うことで移動が視覚的かつ不可能感が出ていいのですが、移動が一回なのがちょっと寂しいところです。ヨーキムさんのやっていた作品などは2回カードが移ることもあり(あと、彼が演じることもあり)ゴージャスな感じがして好きです。



10. A Tale of Ten Travelers
10人の旅人を9部屋に入れる、例のパラドックス(?)の手品化。

これは実演を先に見せて頂くのでした。理屈では答えを知っているものも、こういった素材で見せられると納得感と錯誤感がいや増す感じです。あと、フォールスカウントによる調整時でも十分な気もしますが、絵札をアップジョグするときにはフェイスを見せながら口に出しつつ1枚ずつつまんでは最終的に確かに10枚あるように数えてからのほうが、あの技法を行う事前準備として説得力があるのではないかと思いました。Notes部にもあるように、確かにこれは物体でやると「10枚あったのがいつの間にか9枚しかない」というちょいと違う現象にとらえられかねないというのは確かに。原案(?)は言葉によるものなので、脳内での整理がしきれなくて納得してしまう、という側面もあると思うので、そこは確かに諸刃の剣かもしれません。
なお読み物としても本作のパートは極めてよくできています。石田隆信さんのコラムのようです。いや、好きな人にはたまりませんし、興味ない人にとっては早く次のトリックにいってよ、かもではありますがw



A. Ideal & Reality Deck
結婚式余興におけるインビジブル・デックの演出。

とてもよく構成されており、ヤマギシルイさんのアイディアも面白い。アディショナルに会った、式の前に引いてもらうのはさすがにどうかなと思いましたが(忙しいし)、その場でのスイッチのほうがスマートだと思いました。まあスイッチ云々やるくらいなら、元の手順のほうが綺麗で完成している感じがしますけれども。そしてやはりインビジブル・デックは最高です。



B. Two-person Zero-sum Game
5枚のカードの順序を乱し、それを2人の観客(先手・後手)が2枚ずつ位置を交換していき、元の順序にしたほうが勝ち、というゲームをさせるが、その結果が正確に予言されている。2回目は第三者がその勝敗を予想するがそれでも当たる。

2カ所の入れ替えを何度やれば(最短で)戻せるのか、というのは凄くいいですね。ゲームというかパズル感あふれる。あとこれ、大体の場合はうまくいく(経済学用語でいう合理的な人間で、かつ思考が明晰な人なら)と思うんですが、片方のプレイヤーが最善手を選ばなかった場合には失敗してしまったりしないのかしら。あ、その偶奇性を解消するのにもう1手加わるだけなので、必勝側でない限りは絶対に勝利できない、という感じなのかな。Paul Curryの"シークエンスの謎"(正式タイトル知らない)と結びつけても面白そうです。



C. The Gift of the Magician
こざわまさゆきが伴侶を得た手品。

「告白やプロポーズの場で奇術をするのは人としてどうかと思います。」 いやいや、Effect is everythingですよ。勝てばよかろうなのだ!ってジョジョでも読みました。

John Guastaferro 『en route』

みんな大好き、ていうかわたしが大好き、ジョン・ガスタフェロー。彼の2017年2月のブラックプール大会でのレクチャーノート『en route』がもう日本語完訳版で読めるとか。Tくん暇なんでしょうか。「本気出せばもう1ヶ月早く出せましたね」 ……なんだと。ちなみに、アン・ルートと読みます。
90ページくらいで、10トリック2エッセイの構成。これの読後、訳者くんも校正マンも揃って「イイ……」とか言ってたのですが、かなりいい冊子でした(私調べ3人中3人が絶賛。母数が少ないため有意な統計とはいえない)。ガスタフェローなので、そんなに極端に難しいことは無く、ちょっとした原理も使い、あと準備もそんなにつらくない。物によっては事前に工作しておくものもあるのですが、それも一回工作したらもうそれで終わりです。現象も多岐にわたって、正直私もかなりお気に入りです。彼の著作では『Discoveries & Deceptions』が特に好きなのですが、記録更新した気がします。


教授の戯言の物販:John Guastaferro『en route』

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Chapter 1 Ready For Take Off
1 Virus
“デック・サポート”に連絡しなくては。ウイルスのせいで、デックは全部裏面になってしまい、さらには全部真っ白に。そして最後には表が印刷された状態になります。

初期ガスタフェロー作品の"Troubleshooter"のセルフバリエーション。エキストラのカードが、お話の中で理由付けがされているので、隠す必要がなくなっているのが強み。オールバック→オールブランク→ノーマルデック という変化は、導入として極めてキャッチーです。


2 Upper Hand Triumph
選ばれたカードがデックに戻され、さらに表向き裏向きに混ぜられます。しかしマジシャンは選ばれたカードが何かを言い当て、それが表向きなのか裏向きなのかも当て、まさにその位置でカットもしてしまいます。そしてさらには、ごちゃ混ぜ状態の並びも戻してしまうのです―――デックは観客が持っているにもかかわらず。

ガスタフェローがトライアンフ大好きなのはよくわかりました。これはカードを当てるところも面白いのですが、混ざっているディスプレイのあと、観客にデックを持たせ、その手の中で揃うというのがパンチ力あります。もちろん渡す前に揃ってはいますが(盛大なネタバレ)、その直前に混ざっている状態で見せられるのは説得力高いです。あ、レギュラーで出来ます。



3 Mini-Mental
4 枚のカードが選ばれたあと、マジシャンはカードを選んだ4 人の観客の心を読み、そしてそれぞれのカードを見つけ出します。

『Discoveries & Deceptions』の“Multi-Mental”のストリームライン版、というか要するに簡略版に近いです。元のが7人のカードを当てるもので、彼もよくショーでやっていて大盛り上がりではありますが、こっちは4人な上に、手順自体もかなりスッキリしている という。いうなれば普通に演じやすくなった感じですね。元々コロンビーニなどが始まりなのかもしれませんが、ガスタフェローもよく使う、「1人目のカードを示すときに2人目のカードを見ている」みたいなワンアヘッドが実に美しいです。憶えることが少ない、それは正義。


✿ Essay: Your Brand Voice
自分を表す言葉やイメージは何か、それをもってお客様をどう認識していただくか、というお話。


Chapter 2 Unpacked
4 Boxing Day
カードが1 枚選ばれたあとデックに返されます。マジシャンは、これからそのカードを、デックの中から自分のポケットに入っているカードの箱の中へと飛行させてみせると宣言します。デックが宙に放り投げられますが、それは一瞬でカードの箱へと変わってしまうのです。演者のポケットには全部のカードが入っています―――選ばれたカードを除いて。選ばれたカードは演者が持っている箱から出てくるのです。

Gは箱が大好きらしいのですが、奇遇です、私も箱が大好き。これは実に視覚的というか、いままでバラけたカードもあったはずなのに、空中に放り投げた途端に箱になってますからね。2014年のSAMで、マニア相手にやってどよめかれたのも頷けます。これはちょっとだけ事前工作が必要です。ただ、一回作ってしまえばあとはそのまま普段の演技でも使い続けられます。



5 The BoxWhisperer
カードが1 枚選ばれたあと、デックの中のどこに行ったか分からなくなります。観客が自分の選んだカードの名前を空の箱の中に囁き、フタを閉めて囁きを閉じこめてしまいます。マジシャンはその箱を取り上げて耳に当て、選ばれたカードが何だったかを言い当てます。そして思わぬ展開として、選ばれたカードが先ほど空だったカードの箱の中から出てくるのです!

カラであることを確認したはずの箱、そこに閉じ込めたことになっている"観客の囁き"を聞き取って当て、そして最後にそのカードが箱の中に実体化する、という、私の好きそうなプロット。余談ですが本書の中で私の一番好きな写真は、このトリックに出てくる、箱の中の囁きを聞くガスタフェローの図(写真6)ですw



6 Think Tank
参加者の1 人が、4 枚のエースのうちの1 枚を心に思います。2 枚のジョーカーが、彼らの“シンクタンク”で議論するために箱の中に入れられます。マジシャンはそこから聴き取りを行うことにより、選ばれたエースが何かを明らかにするのです。最後に、箱の中にあった2 枚のジョーカーはいつのまにか外に出てきており、4 枚のエースが箱の中から出てきます。さらに、選ばれたエースだけは他の3 枚とは逆向きにひっくり返った状態なのです。

これ大好き。元々ホテルミステリーのような、1枚ずつの変化よりも枚数ごと変わってしまう現象が好きな者なのですが、これは箱も使っていて難度もそこまで高くないですし。現象盛り沢山なのですが、混乱要素はあまりなく、個人的には本書の中でこれがいちばん好きです。



✿ Essay: Sharing Your S.E.C.R.E.T.
最も効果的なパフォーマンスを導く6項目を、それぞれSECRETSの頭文字をもとに紹介。



Chapter 3 Entourage
7 All In Your Hands
2 人の観客が、デックを徹底的にカットしてシャッフルしますが、その2 人が一緒に4 枚のエースを見つけ出してきます。

Ultimate Selfworlking Card Trickだったかにも寄稿していましたが、これは極めて簡単。いわゆるおしごとが、これから何やるんだろう、と観客に思われている中で完結しているので、最後にエースが出てきたときの、特に手品をされない方の驚きようは凄かったです。あ、マニア相手にも好評でした。簡単だからでしょうかw



8 Chip Off The Old Daley
赤いポーカー・チップと黒いポーカー・チップの位置が入れ替わります。これを繰り返すにあたってマジシャンは、赤いチップを赤いエースで、黒いチップを黒いエースでカバーした、より困難な状態でやってみようと言います。ですが今回チップの位置は替わりませんでした。そうではなく、エースのほうの位置が替わってしまったのです。

若干サカートリック風味。ラスト・トリックの演出は様々ありますが、これはちょっとトリッキーな感じです。カードが入れ替わると思いきや、チップが入れ替わってしまうという。若干演技力というか、そのへんが要求されるイメージです。技術的にはそんなに難しくないですが、コインマジックうまい人はより自然にできそう。



9 Double Agent
トップ・シークレット・カードが1 枚選ばれてデックに戻されます。シークレット・エージェントとして知られる4 枚のエースがその英知を結集してデックに潜入、それぞれ危険なやり方で脱出します。そしてマジシャンが4枚のエースに向かってデックをリフルすると、選ばれたカードはその中から出てきます。そう、彼はずっと、ダブル・エージェント<2重スパイ>だったのです。

これは通せると大変カッコイイんですよ。主題通り、推奨BGMは"Mission Impossible"(¢99)でした。ここでも結構いいコントロールや面白いピークを使います。トリ前くらいに適していると思います。



10 Flash Pocket
マジシャンは4 枚のジャックを別々のポケットに入れ、観客には4 枚のエースを持っていてもらいます。しかしそのエースは瞬間的にジャックに変わってしまい、エースはそれぞれ別のポケットから出てくるのです。

2枚にちょいとした加工が必要ですが、そのおかげで変化の瞬間がものすごくフェアになります。技術的な難度としては本書の中で一番高いように思いますが、そこまで困難、というものではありません。なお当方、二川滋夫のポケットインターチェンジに慣れてしまったせいか、交換が1回だと物足りない体になってしまいましたw(『カードマジック 10』, "Pocket Interchange")


教授の戯言の物販:John Guastaferro『en route』

ポール・ガートナー レクチャー

T「P・GP・GP・G!ガートナーを称えよ!」(例のポーズ)
き「ど、どうしたの…?」
T「今日はなんてラブリーな日だ!うおおおお!」
いつもぽやーっとしている訳のT君がハイテンションすぎて引く。誰だきみは。

ということで3月29日、掲題ポール・ガートナーのレクチャーに参加してまいりました。ガートナーは、アメリカはピッツバーグ出身のマジシャンで、FISMでもIBMでも優勝、世界マジック大会78年 in TOKYOでは惜しくも2位ですが、まあ諸々折り紙付きにうまいです。主戦場はトレードショーで、企業ブースでマジックを行うと聞いたことがあります。IBM(マジック関係ない、会社のほう)でのトレードショーでは、代表作"Unshuffled"の最後がその企業名とスローガンになる、みたいなものもやっていたそうで。まあとにかく腕があるうえに、個人的な印象ですが、品もあるんですよね。アレなギャグを言ったりするわけでもなく、騒いだりもしない、でも盛り上がる、みたいな感じで。テンションとかで偽装しない、真の強キャラ感。あ、でも気さくでホント、とっつきやすい方です。故郷ピッツバーグの鉄鋼業にも絡む、鉄球でやるカップ&ボールがトレード・マークとして有名ですね。昨年は、Penn and Teller の番組『Fool Us』に、自身の古典トリック"Unshuffled"、それにひと工夫加えたもので挑み、見事2人をひっかけたという熱い展開もございました。これは必読です。ともあれ、終わったあとの「任務を終えてほっとしているガートナー」と「ひっかけられたのにめっちゃ嬉しそうなペンアンドテラー」というのが、実にハートウォーミングでした。凄くいい関係だなあと。

ポール・ガートナーがペン&テラーを騙すまで 第1回
ポール・ガートナーがペン&テラーを騙すまで 第2回
ポール・ガートナーがペン&テラーを騙すまで 第3回

                                        • -

1.Photocopy
演者は、「見えないパーム」を見せる、と言う。自分の手のひらがコピーされた紙を見せ、折り畳んで財布の中に入れてテーブルに置く。観客にデックから1枚のカードを選んでもらい、そのカードを演者は「"見えないパーム"を使って財布の中に移動させてみせます」と言って"パーム"すると観客のカードがデックの中から消失。財布を開き、手形の紙を広げると中から観客のカードが出てくる。さらに、さっきは手のひらしか写っていなかったところにも観客のカードがコピーされている。

ゼロックス社のトレードショーのために作った手順だそうです。「見えないパーム」というキャッチーなイントロから、追加の落ちもカッコイイ。「なんで白黒なんですか!」「ボーイ、私がこれを作ったときは、カラーコピーなんかなかったからね」 



2.クラシックフォース
クラシックフォースの方法を、リカバリ方法も含めて解説。

彼のクラシックフォースのDVD持っていますが、ほんと生で見ても破綻なくうまい。「理屈は同じです」とか言いながら表向きのデックでもやるんですが、まあうまい具合に引かせちゃうんですよね。DVD見ててもうへえってなりましたが、生で見ると笑うしかないんですよね、これw 挑戦的な観客には引かせてあげないいじわるも交えたりと。



3.Bluff Aces
マジシャンは4枚のエースを取り出して裏向きにテーブル上に置くが、以降何度もあからさまに怪しい動作をし、観客が「何かしたのではないか」と思うたびに、ちゃんとエースであることを見せて何もしていないことを確認させる。最後は公明正大に4枚を裏向きにして片手で卓上に配り、その上に観客の手を置いてもらう。デックからエースではないカードを取り出すが、このカードがエースに変化。残り3枚のエースもデックの中から次々と出てくる。最後に観客の手の下の4枚を表向きにすると、エースではないカードになっている。

ややこしそうな感じですが、実際は流れるようなやり取りです。うまい具合に構成がなされていて、スイッチや確認のタイミングが非常にうまい。あとすっとぼけたキャラの人にはとてもフィットしている演技な気がします。



4.Snapping the Halves
マジシャンは1枚の銅貨を取出して弾くと、分裂するように銀貨が出現。その銀貨を弾くともう1枚の銀貨が出現。同様にして、いま出現した銀貨をこすりあわせてもう1枚の銀貨を出現させる。銅貨を片手に握ると、残りの3枚の銀貨が1枚ずつ銅貨のほうへ移動する。「実は余分なコインを使っていたのです」と言ってコインをはじいていくと、コインは次々に分裂してゆき、最終的には8枚になってしまう。

二川さんが昔の来日時の準備で笑っていたシリーズ。このひとのこういう手品は本当に好きです。問答無用感が漂う。若いときに作ったせいもあるんでしょうけど、いっちゃえ感がたまりません。



5.コインバニッシュ
複数枚のコインのラッピングについてさらっと解説。落とした時の「音」の問題をうまいこと解決する手法。



6.That's Ridiculous
テーブルに伏せたカードの下にコインが1枚ずつ移動するよくあるマジック…と思いきや、クライマックスには怒濤のようにコインが出てきて、最後には…!

もうタイトルまんま、「あほだ!このひとあほなんだ!www」と素直に思える作品。やはりコインマジックは澤さんのプッシュマンしかり、数が重要な気がします。手順構成自体はそんなに難しくはない気がするのですが、最初が一番きつい気がします。なお「いちどきにパーム出来る最高枚数は何枚なんでしょうか」という質問が挙がり結局「10枚は行けますね」という結論になっておりました。そんなにパームが必要になる手品は普通ないですけどw


7.Cups and Steel Balls
故郷ピッツバーグの特徴から、金属のボールを使ったカップ&ボール。

重みが違います!(物理) あー、幸せです。映像で見ていても良かったですが、生で見るともっと良いです。カップは強めの磁石入りで(別にチョップカップ的な使い方はしない)、鉄球が上で転がるけど落ちないくらいになっていて、ちょっとした気遣いを感じました。



8.パームについて
ワンハンドトップパームと、複数枚のパームの方法について解説。



9.Unshuffled(Fool Usバージョン)
カードを一枚選ばせる。デックの側面にUnshuffledの文字があるが、シャッフルを重ねていくと観客の選んだカードの名前になる。そして最後には…!

通常販売しているUnshuffledは観客のカードの名前になって終わりですが、上述のペンアンドテラーをFool Usで引っ掛けたときにはもう一段のクライマックスが加わっていました。それを。最前列で目を皿のようにして見ていたTくんは「わかったかもしれないです…!」とか言っていましたが、ガートナーもなんか今年商品として?売るとかなんとか仰っていたので、販売時の答え合わせを楽しみにしておきます。しかし、パーフェクトファローを連発しなきゃいけないとか、過酷な手品です。緊張等で手が震えるのはガートナーといえどあるそうなのですが、震えを強制的に止める手法なども説明されていました。割と無意識にやっている方も多そうですけれど、参考になりました。

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T君は最前列かぶりつきで見ており、私は彼の右後方にいたのですが、うしろからでも分かる頬の緩みっぷりで、ホントに会いたかったんだなあと。イベント前の彼曰く、「我が手品神は三柱おられる。Johnny Thompson、Tommy Wonder、そしてPaul Gertnerである(*Kapsは殿堂入りなのでさらに上にあるらしい)。Wonderは不幸にも病魔に斃れ、Thompsonも健康状態が思わしくなく、臣でありその祝福の子たる我は極めて心を痛めておる。そしてその最後の希望こそGertner様なのだ。分かったら入信しろコノヤロー!」とのことで、まあ「俺ベストスリーマジシャンの最後の1人にやっと会えたのでとても嬉しい」と訳しておきました。心の中で。マイ・ベストのトム・マリカは還らぬ人になってしまいましたよ……。