教授の戯言

手品のお話とかね。

『ネモニカ学習帳』

『ネモニカ学習帳』

 

皆さんはメモライズド・デックというのをご存知でしょうか。1枚目がXXで2枚目がXXで、と全部記憶してしまう、マジックの中でも「理屈は分かるけれどもさ……」系の、ひとつの極致にあるタイプのあれです。存在自体、理屈自体はご存知の方も多いと思います。では見たことは?興味を持ったことは?ていうか憶えたことは?こうするといきなり減りますよね。手品をする人を1としますと、その中でカード・マジックをする人で、さらにメモライズド・デックを使える人、と絞っていけば、これはもう1%もいないのではないでしょうか。まあね、難しそうだしね。華々しさもないですからね。憶えようとも思わなかった、という方も多いでしょう。こんなん憶えるの、困難ですしね。

 

「淡い。淡いぞ田中。それをさほどの苦労なく憶えるための本が、

……これじゃあああい!」(CV:上野さん)

 

『ネモニカ学習帳』!!!!!!

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(あふれ出る出オチ感)

 

頭を抱えたくなるようなクソダジャレの数々が満載された、ある年代以上の人にはなんだか懐かしさを感じるアレなデザインの本書により、例のタマリッツ・スタックを、ものの数時間で記憶することが可能になるのである!読み終わったあとには鍋敷きにもなる!(NR:井上和彦

「最後のは要らんのでは……」(CV:田中)

 

 

タマリッツ・スタックの並び、組みかた、ダジャレによる暗記法、Move a Card に使える簡易ダジャレチェック法、メモライズド・デックを効果的に使うための安全策、オマケとしてピット・ハートリングとデニス・ベアによるカルテット(ベアはプロップ、と呼称しています)のダジャレ暗記法まで網羅した、手品そのものは一切載っていないB5サイズ34ページの薄い本だ!(ちゃんとオフセット仕様です) お祭りであるマジック・マーケット2019では500円で頒布予定!Baseのショップでも扱いますが、手数料&送料もかかるので、そっちの値付けは1000円とか1200円とかにしようかなと(ぶっちゃけ作者の実際の実入りはあんまり変わりません)。マジケで170冊売ると損益分岐を超えるぞ!荷物になるから40冊くらいしか送らないけど(作者は別用のため今年のマジケは不参加)。販売担当に「えー、小銭出るじゃん。面倒。1000円にすればいいじゃん」と言われましたが、ねえ。お祭りですし。いや、自分で書いたので、「この作者、バカだけどほんと最高に話が通じるな」というくらい全ページわかりみが深い上に、交友関係にクレジッターが多いことに怯え、さほど興味もないのに3ページ分くらいクレジット情報も入れてるしで、そこそこちゃんとした内容にはなっています。「ネモニカ憶えてみようかな」という人のとっかかりとしては十二分な内容は入っているはず。(※私調べ) 

 

 

ということで、無事届いていればメチャ凄サイトー(D-7)で頒布していると思いますので、興味なくてもお買い上げいただければ幸いです。厚みがないので「『ネモニカ学習帳』を入れておかなかったら即死だったぜ……!」みたいな用途には不向きですが、鍋敷きにどうぞ。Baseではこちらで扱っております。

magic.theshop.jp

 

 

 

 

 

 

■読者からのよろこびの声コーナー■

「ネモニカを憶える前の私は、何をしてもうまくいかない、典型的な“持っとらん子“でした。春先のある日、だまされたと思って、ということで暗記用リストを渡されました。仕事で100分ほど飛行機移動することがあったので、その際に、前日買って鞄に入れっぱなしだった『異世界おじさん 第2巻』を読んでから暗記に着手しました。降りる頃には憶えていたのですが、その日の夜に行ったスーパー銭湯の露天風呂で10周ほどしたところもうばっちりです。実質2時間だと思います。するとどうでしょう、驚くべきことに、ネモニカをマスターしてから物ごとが180°転換し始めたのです。ニコラス・ローレンス、桂川新平、碓氷貴光、MH、シェーン・コバルト、ピット・ハートリング、カーティス・カムなどそうそうたるマジシャンが来日(一部もともと日本)、ピットの『In Order To Amaze』日本語版の自分校正が進んでいないことなど、さしたる問題ではないようにすら思えてきたのです!あとガルパン最終章第2話も上映されたのです!これというのもネモニカを暗記できたおかげです。ありがとうネモニカ学習帳。この功績を引っさげて、今度アメリカ大統領選に打って出る所存です」(東京都在住:手品ブロガー、手品本の訳者)

 

 

齋藤修三郎『JIS X 0401「都道府県カード」』

齋藤修三郎『JIS X 0401「都道府県カード」』

【現象】演者は,日本の都道府県の書かれたカードを軽く混ぜ,4人の観客に大体均等になるように十数枚ずつ渡します.
第1段:1人目の観客からカードの束を受け取り,それらに書かれている都道府県を記憶すると言います.演者は1枚ずつカードを見ていき記憶したと言います.カードを観客に戻してよく混ぜて貰い,1枚抜き出しそれを記憶して貰います.覚えて貰ったカードを2人目の観客に渡し,自身のカードの束に加えて混ぜて貰います.演者は,2人目の観客からカードの束を受け取り,先ほど記憶した中に含まれている都道府県を見つけると言い,カードの束を見ていきます.演者は1枚のカードを抜き出しますが,それは1人目の観客の選んだカードです.
第2段:
カードの束を2人目の観客に返し,もう一度混ぜて貰い,1枚抜き出しそれを記憶して貰います.そして,選んだカードを3人目の観客に渡しカードの束に混ぜて貰います.さらに,1人目の観客からカードの束を受け取り3人目の観客に渡し,全てを一纏めにしてよく混ぜて貰います.演者はカードの束を受け取り,表を見ていき1枚のカードを抜き出します.それが,2人目の観客の選んだカードです.
第3段:
演者は,4人目の観客の持っている束に含まれている都道府県以外は全て見たので,見ていない都道府県を言えば,4人目の観客の持っている束を当てることが出来ると言います.演者は,4人目の観客が持っている束に入っている都道府県の名前を次々と言い当てていきます.

 

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とどうふけん

 

初めて本作の実演を見たのは5年ほど前の東大でだったでしょうか。それから何度か見ているのですが、どういう仕組みなのか全く分からず。抜かれる県(当てるカード)が毎回同じならなんとなく予想も付きそうなものですが、それも毎回違うしで。ピットの"Unforgettable"ではないですが、「いや、たしかに全部見て、その瞬間に憶えれば出来はするけどさ」という理屈は立つものの、果たしてそれが可能なのかというのがずっと引っかかっていたトリックです。アルスさんがやっているのが、手品なのかテクニックなのか私には判別がつかないことがあるのと同様、齋藤さんの手品はタネのある手品なのか、それとも本当に記憶や計算を駆使しているのかがまるでわからない、という、このへんの線引が難しいのが謎を一層深めておりました。齋藤さんは聞けば間違いなく教えてくださる方だとは思うのですが、私、自分がめっちゃ不思議だと思った手品は、自分が演じることにならない限りは謎のままにしておこうという奇癖があるため、あえて聞いたりもせず、「『Lightest』の齋藤さんパートはいつ上がるんですか!私もう3ヶ月前に終わってますよ!戦争が終わっちまうぞ!」みたいなことだけを言うようにしていたのです。

 

これ、裏側の話をいきなり言うのもナンですけど、まず作ると原価的に高いそうなんですよね。プラスティック製の全部違うカードだしさもありなんですが。あと、本と違って、注文ロット数量に関わらず、原価があんまり変わらない(10個作っても100個作っても1個あたり原価がほとんど低減しない)ということでしたので、齋藤さんがご自分で演じるのに作ったやつだけで、一般販売はしないんだろうなと思って半ば諦めていたのですが、今回「作りましたよ」と聞いて飛びついた次第。「卸値でお譲りしますよ?」とは仰っていただいたものの、憧れの作品だったこともあり「いや、普通に買います」で普通に買ってやりましたよ!その日の、まだ解説書も読んでいない帰り道の雑談で、齋藤さんが「ペグ(法)を使うことで各都道府県の配置を~」(※ペグ法:記憶術の手法の一つ)とか言い出したので、「(やばい、9000円払って、タネが”ガチ記憶”だったらちょっとへこむかも)」と内心怯えながら帰宅しまして。解説書を読むわけです。ネタバレですが、ガチ記憶術ではなかったです。良かった……。良かった、というか、ものすごくクレバーな原理で。私でもできそうなよくできた仕組み。

 

第1段の「記憶術初級編」では大体10分の1くらいの当てもので、第2段の「記憶術中級編」では35分の1くらいに、第3段の「記憶術上級編」では残りの県をすべて当てていくのですが、途中途中に挟まれるギャグで雰囲気は和やかに笑いも取りつつ、天地で判別しているのでは→上下バラバラに混ぜちゃってください 裏から見て分かるのでは→カードの裏が(当然表も)見えないようにしますね のように、手品っ子が思いつく解法を丁寧に潰していくところが本当にいやらしい。「エローい!エローい!」 あとこれもサイトートリックの他2つと同様ですが、想像していたよりも演者の負担が遥かに軽い、というのが素晴らしい。うん、私、齋藤さんの台詞、「頭の中で、さっき憶えた県は赤で、いま見た県は青で塗りつぶしていってまして」って、正直半分くらい本当にそうやってるんじゃないかと信じてましたからねw 齋藤さんならできそう、みたいな。

 

本品もマジックマーケット2019の「D-7:メチャ凄サイトー」で頒布されると伺っております。1セット9千円。値段だけ見れば決して安くはありません。ただ過去に実際に演技を何度も見て、笑いつつも解法の手がかりすらつかめなかった作品なので、私は脊髄反射で買うレベルでした。ちゃんと”使える”ネタです。クロースアップでもできなくはないですが(ネタバレがあるわけではなく、単純に狭っ苦しい、というだけ)、サロンレベル以上で、10分くらいかけてこそ映えるトリックだと思います。傑作。

 

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わりと大きめ

 

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取り置きOKだそうです。

 

齋藤修三郎『Triceratops』

<【Warning!】本項は多分に提灯記事要素を含みます。>

 

齋藤修三郎『Triceratops
【現象】演者は観客に数十の単語が書かれたリストを示し、その中から単語を1つ、心のなかで選んでもらいます。そして、ひらがなが複数書かれたカードを渡し、決めた単語を作ってもらいます。演者はそれを見て、観客の決めた単語を当ててしまいます。

 

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国際特許(?)取得済みの例のアレ

さあ、やって参りました、齋藤修三郎の真骨頂、キモい当てものです。「うおおおお!」「サイトー!」「キモーイ!キモーイ!」

齋藤さんって、その能力を手品に使ってくれてるからいいですけど、よくよく考えるとだいたいのサイトーテジナは、使い方変えたら絶対、悪い占い師とか霊感商法とかですぐ使えそうなものばっかりじゃないですかね。マジ危険。トライセラトップス!ダブルバイセップス!サイドチェスト!

 

まず簡易セット。簡易セットでも80以上の言葉から、どれが選ばれたのかを当てることができます。正直これで充分不思議です(解説書にも、ショーでもない限り、普段はこの簡易セットを演じている旨が書いてあります)。数的に、トランプ1枚当てる1.6倍くらい不思議ですしね。拡張パックに至ってはその3倍、250ワードくらいの中からその1つを当てます。もう意味が分かりませんね。5デック分(しかも全部異なったもの)の中から1枚探すみたいな感じですが、もうなにもそんなの当てなくてもいいじゃないですか。素直に聞こうよ、不思議とかどうでもいいから。ラポールがあればそのくらいは聞いても教えてくれるって。

 

あと現象解説に、「決めた単語をひらがなカードで作ってもらって当てる」ってありますね。第1段は全部のひらがなカードを表向きにしてもらった状態ですから、まあ百歩譲って、頑張ればできるかもしれない気もしますが、第2段はいったんぜんぶ裏向きで、それを1枚ずつ表向きにしてもらっていきながら、最後のカードが表向きにされた直後にもう当てられるんですよ。で、第3段ともなると250ワードくらいから当てるんですよ。もうこんなの不思議の過剰防衛じゃないですか。

 

色々書きたいのですが、これは現象がまずキモい(ほぼ心に思ったものを読み取られている感があります)のもそうなんですが、仕組みが本当に見事なのです。さすが正月早々、超高級イタリアンことサイゼリヤで泣きそうになりながら作った(作者談)だけのことはあります。マジックマーケットでは多分スペース的に実演を見ることは難しかろうとは思うのですが、可能であればリクエストされると良いと思います(齋藤さんを追い込んでいくスタイル)。簡易版でもキモいです。

 

日本人向けに、それなりの時間をもたせつつ、不思議要素で襲いかかりたい方、ぜひ買うのです。買わないとやられる側になってしまうのです。それはとっても恐ろしいことだなって。マジックマーケット2019ではD-7 メチャ凄サイトー にて4000円!「安ゥい!」「安いわね!」 マジケでうっかり迷って買わずに、後日やっぱり欲しくなってショップで買うと、それはもう致し方ないことに消費税というものが8%乗ってきます。10月以降はそれが10%!400円!デックが買えちゃうレベル!これはもう当日会場で買うしかない!(取り置き予約もできるそうですが、詳細を知りませんので、分かったら追記しようかと思います)

ていうかマジでキモい現象ですが、実演にこぎつけるまではそんなに難しくないので(超上流カフェことドトールで、齋藤さんに習った私はその場でちゃんとそこそこできるようになっていました。そこそこは)、”座って見せるのがメイン”、”めっちゃ不思議な作品をお求めの方”、そう、そこのあなた!あなたは買うしかない。というか私なら買います。これは本当に。原理を知ってしびれました。

 

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取り置きOKだそうです。

 

齋藤修三郎『The trick that cannot be named』

<【Warning!】本項は多分に提灯記事要素を含んでいます。>

 

齋藤修三郎『The trick that cannot be named』

【現象】「これからマジックをお見せしますが、皆さんはそのタイトルを当ててください」と言って始めます。演者はひらがなの書かれたカードをシャッフルしたあと、それを4人の観客に数枚ずつ渡し、できるだけ長い単語を作ってもらいます。それらの単語すべてが予言されています。そして観客にマジックのタイトルを答えてもらいますが、当たりません。観客の予想だにしなかった結末が待っています。

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第1段(これ)では、ひらがなカードから観客によって作られる単語を当てつつ、作品タイトルを観客に当ててもらう(当たらない)もので、同じカードを使った第2段『辻占』では選ばれたトランプも当てちゃう、という構成。不思議であるという要素の他に、観客とのやり取りがあること、ビジュアル的に現象が理解しやすいこと、ある程度の時間をもたせることができる、というのが本作の特長です。別にご紹介する"Triceratops"がどちらかというと「不思議」にステータスが振られているとすると、こちらは「楽しさ」「笑い」寄りにステータスが振られているという印象。どちらも、昨今流行りのCGみたいなクイック&ビジュアル、というものではありませんが、観客とのやり取りと笑いがあるのが個人的には一番の推しポイントです。私は手品を演じるときは観客と(に)よく喋るスタイルなのですが、そういったコミュニケーションの材料として本当によくできているのですよ。

 

齋藤修三郎さんのセールスアイテムに共通するのは、「演じる難度的には実はそこまで高くないのに、どう見ても不思議」という土台に、「つい笑ってしまう要素」が乗っかっている、というポイントだと思っているのですが、これも例に漏れず、大変実演に向いた作品だなと思った次第です。「ストイックなまでに緻密なコイン技法でレイマンをあっと言わせる手品」も否定はしませんが、私はどちらかというと面白さが前面に立っている、それでいて「なんで当たったんだろう、なんでこうなったんだろう」という不思議がうっすら香る手品、というのが好きで、本作はまさにそのイメージ。


私ももちろん、観客の方には「不思議だったなー」と思ってはいただきたいのですが、それよりも「楽しかった、めっちゃ笑った」という感想を持ってもらいたいので、そういうスタンスの方にはジャストフィットの作品だと思います。

 

また、本作はひらがなカード以外にも予言用の絵の数々があり、観客へ示すときもそういったものがあるおかげで、「トランプをいっぱい使っていた」「グネグネやってなんかカードが当たった」といった印象から逃れやすい、「ナードっぽい手品」ではなく、「エンターテイナーとしてのマジシャン/エンターテインメントとしてのショーを見た」のように思ってもらえるはず(※個人の感想です)。

 

唯一、無理に欠点というか「ここはなあ」、というのを挙げるとすると、ひらがなと日本語の単語を使うものなので、「日本語が分からない人には演じられない」というところでしょうか("Triceratops"も同様ですが)。私は「英語で演じるときはどう言うかなー」ということを考えながら手品の練習をすることが多いのですが(実際に英語で演じる機会はそうそうないのですけど)、本作はちょっとその方針からは外れざるを得ません。ただ、上述の通り敢えて欠点を挙げるとすれば、なので、日本国内で、ちょっとしたパーティーなどで演じるということからいえば、何も問題ありません。中学生からお年寄りまで対応可能でしょう。解説書も、齋藤さんの実演の経験・反応からフィードバック済みの演出や台詞まできちんと記述されているので、その通り演じるだけでも充分な反応を得られます(私も実演のみを見たことがあり、かなり笑わせていただきました)。サロン規模でのレパートリーを探している方(クロースアップでももちろんOK)、ある程度の時間を、笑いも織り交ぜつつマジックを披露したい、という方たち向きのトリックです。マジックマーケット2019ではD-7 メチャ凄サイトー にて、3000円ポッキリのお値打ち価格!「安ゥい!」「安いわね!」 これを見逃してあとから買うと税金が乗るよ!10月以降は10%になっちゃうよ!それはもう、マジケに行ったらその場で買うしかないじゃないですか!(取り置き予約もできるそうですが、詳細を知りませんので、分かったら追記しようかと思います)

 

実際に拝見した演技や、自分で練習してみた結果からいうと、クロースアップからサロンのスタイルで10~15分程度はもたせることができます。これは私のように、「サロンマジック頼まれたけど、演じるトリックどうしよう」と毎回迷う人間には福音になります。あと、最後になりますが、不思議偏重ではないトリックだからということもあるのですけど、基本的には失敗のしようがないように構成されているのが演じる側としてはポイント高いです。毎回、観客へ示す前にちゃんと並んでいるかなども堂々と確認できますし、しかも別にそれは不思議さを減じはしない、というのがいいですね。

 

日本人向けに、それなりの時間をもたせつつ、不思議と笑いをお届けしたい方、マストバイ!「なのだぜ?」(CV:牧瀬紅莉栖)

 

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取り置きOKだそうです。

 

カーティス・カム来日ツアー

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6月末から7月にかけて、カーティス・カム (Curtis Kam) 氏が来日レクチャーとのこと。以前主催者の方から今度お招きしますよ云々を伺っていた際、「えー、でもカーティスというとコインすごいおじさんでしょう?私コインとかそんなに詳しくもないのでよくわかんないですね」と言ったところ、「むしろコイン以外も全体的に強い」「マジで!」「分かったら来るのだ……」「ははっ」みたいな感じになっておりました。

私はコインで有名というイメージしかなかったのですが、実際には以下のような経歴で、コインはもちろん、クロースアップ以外にもめっぽう強いとのことで、これはもう凄いですね。コインマニアでない私にもいろいろと得るものがありそうで楽しみです。

ホノルルの4つ星ホテル「ハレ・コア・ホテル」のショー「Magician Paradise」の主役を13年務めたほか、有名レストランチェーンなどでスライハンドを駆使したクロースアップマジックをおこない、40年以上にわたり、ハワイの企業や個人を楽しませてきました。また、バレエハワイ、ハワイオペラシアターなどのためのイリュージョンもデザインしています。さらに長年にわたり、ハリウッドのマジックキャッスルやロンドンのマジックサークルなど世界各地でオリジナルのマジックのレクチャーをしています。

 

日本語レクチャーノートの翻訳および会場通訳は安心の二川滋夫さんです。

私「レクチャーノートは2~3冊出るのですか?」 二「いえ、1冊だけですね」 私「なーんだ、1冊ですか」 二「でも、50ページくらいあるんですよ……」 私「……多いですね……」 みたいな感じでした。「厚い!絶対に厚い!」(黄金バットナレーション風) ていうかほぼ2冊分じゃないですか。

 

日本ツアー2019日程:

6/30 東京(これ)

7/4 浜松(カーティス・カム氏浜松レクチャー: 日曜手品日記
7/5 名古屋
7/6 大阪
7/7 横浜(カーティス・カム 横浜(関内)レクチャー マジックハウス

7/7 横浜ワークショップ(カーティス・カム ワークショップ マジックハウス) 

 

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ハワイのKing of coin、カーティス・カム 来日!!

LosAngelesのMagic Castle、LondonのMagic Circleなど世界の第一線で演技すると同時に、世界中の有名コンベンションでマジック愛好家のために、その技術と理論を惜しげもなく披露してきた彼が、日本のマジック愛好家のためにレクチャーをおこないます。この機会にふるってご参加ください。


東京は基本30名限定となりますので、参加を希望される方は以下の連絡先にメールいただければ幸いです。
※人数を超えた場合には、会場の関係でお断りすることもございますので、なにとぞご了承ください。

 

■日時
2019年6月30日(日曜日)
18:00~20:00

■場所
新橋(TKP新橋汐留ビジネスセンター)B201

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カーティス・カムレクチャー地図

■内容
Magic castle でのアクトを15分 演技。
その他、彼の代名詞となっているDVD "Palms of Steel vol.1~5"の中からコインマジックを演技,解説。さらに、フルタイム プロとして活動していた中で、効果的でかつ簡単に演じられるカードマジックなど、時間が許す限り解説してもらいます。

■会費
5000円

■連絡先
inspiron2000@nifty.com

 

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ピット・ハートリング・レクチャー(2/2)

 

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■第3部:

08. Catch Me If You Can(『IOTA』)

マジシャンは、マジック界の鉄則を破って同じトリックを2回やってみようと思う、と持ち掛けます。1回目は指先の早業で、2回目はそれなしで。最初は、2枚の”探偵”カードがその手腕を発揮、観客に自由に言ってもらった”犯人”のカードを、シャッフルされたデックの中ほどから捕まえてきます。

そしてありえないことに、この探偵たちの同僚――開始時点からずっとよけてあって、パフォーマンスのあいだじゅう、誰も触れていなかったもう1つのデックの中にいる2枚――もまた、先ほど自由に言われたカードを捕まえているのです。

 ここからメモライズド・デックのマジックがバンバン来ます。私、そんなにメモライズド・デックを使った手品を見たことがないというか、メモライズド・デックを使いこなすマジシャンにあまり会ったことがないのですが(もちろん、映像なり本なりでは多少ありますが、テクニックやギミックと比べればやはり圧倒的に少ない気はします)、そのファースト・コンタクトがピットだったのは僥倖でした。

いや、ボリス・ワイルドといえばマークト・デック、みたいな感じで、"この人はメモライズド・デックを使う"と分かっていたらそんなに不思議に見えないのではないかな、と思っていたのです。杞憂でした。後述しますが、ピットは暇さえあればさくさくとオーバーハンドタイプのシャッフルをしており、常に混ぜているようにしか見えないのです(なんならフォールスではなく本当に混ぜていることもあるので始末におえません)。また、メモライズド・デックだとしたところで、一体どうやって実現しているのかさっぱりわからないマジックばかりで、これが上手い人が使うメモライズド・デックのやり方・演じ方なんだなあと感激した次第。

マークト・デック嫌いとか、メモライズド・デックなんか使えないとか言う人もいますが、たぶん食わず嫌いというか、本当に良いのを見たことがないだけだと思います。私はEffect is Everything派なので、使えるものは何でも使えばいいし、変に枷を設けること自体がナンセンス、という思考。ともあれ、どのメソッドであろうと、その道の第一人者レベルのはどれも魔法です。

解説冒頭、ピットが「これは『In Order To Amaze』という私の本に載っている1つ目の作品です。これらはじきに日本語で読めるはずです」と言ってこっちを見たので、当然集まる視線。みんなの視線が痛い。「がんばります」としか言えないです。「がんばります。がんばります。もっともっとがんばります……!」(CV:島村卯月) こざわさんに査読をお願いしたら断られたので(こざわ「ええ?メモライズド・デックの現象チェックとか面倒」)、誰か探さねばならないです。誰か。

片方のデックは借りたデックでいい、というのがやはりいいです。あと思ったより、2枚の探偵カードを戻すときに順序を選択させたりするフェイズは面白い。というか意味ありげに見えます。実際うまくいけば現象の完璧さが増しますしね。1回目の、スライハンドで見つけるくだりの変な動作すごく好き。のじま観察日記を思い出しました。

ホァン・エステバンなんちゃらさんという南米のマジシャンの理論だそうですが、「種は蒔いておいて、うまく育てば収穫すればいいし、そうでなければ何もしなくていい。いずれにせよマイナスはない」みたいなのが良かったですね。ヒットすればラッキー、みたいな姿勢で、リスクのないものをちょいちょい入れていくといい、というお話。ボリスさんも似たようなフックを張り巡らせていた印象。

作品を作るときのお話で、「最初にトリックを作った時点では、どれもだいたい最終形に比べて体感的に40~50%くらい台詞の量が多いので、徐々に減らしていく」というのが印象的でした。たしかにやり慣れてないトリックって余計な台詞や描写を入れたくなるのよね。しかしピット、よくあんな頭使わなきゃいけないトリックの最中も喋っていられるな。私はそこがツラいです。

この作品では使わないのですが、フォーシングについての話がありました。「選ぶ行為そのものに意味があるときにはじっくりと時間をかけて公明正大に選ばせるが、そうでないときは時間がもったいないので手早くする」というのは、やはり演じるプロだなと思った次第。演じるのがステージなのかパーラーなのかクロースアップなのかにもよる話なのですが、私はついどこでも同じようなことをしてしまうのでちょっと反省。

 

 

09. Master of the Mess(『CF』)

52 枚のカードを全部、テーブル上へと盛大にぶちまけたりあちこちに放り投げたりして、表向きのカードもあれば裏向きのカードもあるという、いかなる意図も介在できないレベルの完全なごちゃ混ぜ状態を作った上で、演者はこれで何か演じてみせようと言います。

観客は1 枚のカードに集中します。すると演者は何ひとつ質問することもなく、テーブル上の山から1 枚ずつカードを取り除いていきます。次第に山のカードが減っていき、やがて無くなります―――たった1 枚のカードを除いて。信じられないことに、演者は観客が選んだその1 枚だけを正確に指し示すことに成功するのです!

続いて新しいカードが選ばれ、そしてごちゃ混ぜの中、どこにいったか完全に分からなくなります。演者は指先でそっとデックを揃えます。すると彼の指先で、カオス混沌から秩序への変化が起こります―――すべてのカードが再び裏向きに揃うのです。そう、選ばれたカード、ただ1 枚を除いて!

以前フランクフルトでエリミネーション・フェイズ見せていただいて、その速さ、自然さに驚いたので、ぜひまた見たいと思っていたのです。こざわさんのリクエストで始まったのですが、「いや、なんかこんなふうに混ぜられちゃったんですよね」みたいなぐちゃぐちゃにしながらの小話が入りまして。なんというか、最初にステージングというか、背景説明みたいなのを入れたのか、へー、と思い、「で、いつ揃えにかかるのかな~」って見ていたんですよ。……突然揃いましてね。一瞬声を失いまして、不思議すぎてじわっと涙が。元の手順だと2段階なのですが、その2段目だけをやっていたので(そのせいだけではないのですが)、全く心の準備ができていませんでした。通訳のMajilさんが「いつやったの?」とか漏らしてて笑う。すみません、嘘です、笑いごとじゃねえ。私も全く分からず、他人を笑っているどころではありませんでした。文字通りマジックです。やばい、思い出しただけでも不思議だ。トライアンフというメジャーな現象で、場にいる20人だか25人はまあ基本マニアなわけですが、それが「え?あれ?」ってなるとかどんだけなのでありますか。過程をすっ飛ばして結末だけが来るとか、キング・クリムゾン的ななにかか。なんかほら、この人スタンド使いっぽい顔してるし。

なお本作はUpdated Handlingというより、第2段だけに、かつ混ぜ方もかなり違うかたちになっており、『CF』読んでTips書いていい気になっていてすみませんでした。また、ものすごくランダムに見えるのに、実際はすべてが1枚もずれずに進行していくそうで、「なんじゃそら、新手のパーティー・ジョークか?」とか思っていたら、最終的に全部メモライズド・オーダーに戻ることで証明されていて震えました。そんなシーケンシャルな構造なのか。

 

あとこのトリックの解説の前に「誰か、なんでもいいので好きなカードを1つ言ってください」と言われたので、言ったんですよ、クラブの6って。そのままデックに手をかざすピット。トップ・カードをめくるとクラブの6だったんですよ。もうなに言ってるかわからねーと思うが(略 息が止まるかと思いました。別の方が「ハートの4」とか仰ったかな。それも出てきたんですよ。それが。トップから。どうなっているんだこの世界は!気をつけろ!なんらかのスタンド攻撃を受けている可能性が高いッ!

 

 

10. Top of the Heaps(『IOTA』)

「なにか好きなフォー・オブ・ア・カインドを1つ言ってくれ」といわれ、どなたかが10と仰って。雑に山を作っていくピット。4つの山を作って両手で順繰りに覆っていきます。トップ・カードを表向きにすると全て10なのです!

 会場がどよめいたさ。だってずっとデック裏向きのままなんですよ。このあたりから、ピットとデニス・ベアによって作られた”カルテット”という概念というか手法を使ったマジックが来るのですが、Majilさんとアイコンタクトで会話してしまいました。「ちょっとMajilさん、これ、カルテットじゃないですか……!」「じ、実在の手法っていうか、こんな早さで使えるんですね……!」(0.2秒) もうそのあとは普通に口に出てましたね。私「訳した気がするんだけどな……」 Majilさん「僕も読んだはずなんですが……」 おかしい。読んだはず、知ってるはずなのにw 

 

 

The trick cannot be explainedというか説明できないトリック系のお話。ネモニコシスというか、タマリッツもよくやるのですけど、観客の名前を聞いたり、小さめの数を言ってもらうなどして調整していく話。あとでそのぶん綴るなどができるので、お客さんの名前は聞いて憶えておくべきという。

 

 

11. Echoes(『IOTA』)

マジシャンはデックから無作為に1枚のカードを取り出し、表を見ないでそれをテーブル上に置きます。観客の1人に「やまびこを返してください」と言って1枚抜き出させ、それを演者のカードと一緒にしてもらいます。この動きを演者と別の観客2人とでもう2度繰り返します。6枚のカードを見てみると、観客たちの選んだカードは、まさにマジシャンが選んだもののやまびこになっています。つまり、観客たちによって選ばれた3枚はすべて、演者が選んだカードのメイト・カードなのです!

今回のレクチャーでは上記のような演出は一切省き、3者の選択がすべてマジシャンの選んだものと一致するという現象の骨子のみを見せていましたが、それでも不思議で。本の通りにやると、もっとバカバカしくも笑える演出がついております。「このくらいのものを思いついたらそのまま発表しちゃいそうなものだけど、そこで出さないで工夫を加えるのがやっぱりプロなんだなあ」という声が会場から聞こえました。あの声はたぶんこざわさんですけど。

 

 

12.The Core(『IOTA』)

神学的で生物学的なカード・トリックの珍しい例として、観客が、演者の人格の投影たるエデンの園への幻想的な旅をする、というものがあります。デックというのはまさしく果実のようなものであること、観客はその想像上のデックの皮を剥いていき、デックの”芯”で何のカードを見つけたかを問われます。

誰も触れない状態で最初からテーブルに置いてあった普通のデックをゆっくりと取り上げどんどん”剥いて”いきます。どうやらこのデックは観客の空想の旅路から現れたもののようです︓中心にあるカード、つまりデックの芯は、まさに先ほど観客が口にしたカードなのです!

 みんな喜べ、セルフワーキング・マジックです!どのカードがどこにあるかさえわかっていれば、あらゆるカードを最後の1枚にできます。訳してても笑いましたが、ピットの"楽園"では、魅惑の木にたわわに実っているのは大量のデックという、なんだかデビット・リンチの世界みたいな感じだぞw

 

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■第4部:

フォールス・シャッフルについて。休憩中に私も質問したのですが、ハートリングは注目を集めていないときはリフト・シャッフル(バノン先生の影響で私もよく使う)を使っております。これは表向きで行うことで色々なフェイスが見えて混ざっているのをさり気なく見せつつ、どのカードがどの位置になるかを把握可能、というメリットがあります。逆に混ぜている様子を強調したいときは、ゴードン・ブルース、もしくはパーシー・ダイアコニスどっちかの考案したオーバーハンド・シャッフルを用いているとのことで。この後者のシャッフルがまた本当に混ぜているとしか思えず。とても詳しく知りたいのですが、それが載っているという『Five times Five Scotland』が手元にない悲しみ。まあいずれ入手してくれようぞというところで。(2019.0616追記:入手。練習し始めました。)

タマリッツは技法魔人として崇められてはいるわけではないが、attitude<姿勢・構え>による説得力が凄いこと、ロベルト・ジョビーがたまに「タマリッツのブレイクはlorry<トラック>が通れそうなくらいでかい」とか言うらしいのですが(ひどいw)、「上手い人がすごく小さなブレイクを取っていてもマジシャンには分かる。しかしローリーが通れそうなくらいのタマリッツのブレイクはattitudeに隠されてなぜか気づけない」「タマリッツはザロー・シャッフルもするんですが、これがまたひどい出来で。でも観客は、『汚い混ぜ方だけど、なんかこのひと混ぜたいんだな。きれいに混ざらなくても気にしないのかな』と勝手に理解し、そして『混ざった』という印象だけが届くのです」「逆にダーウィン・オーティスとか、凄く緻密なプッシュ・スルー・シャッフルをする人がいますが、それはとても上手いのに、なぜか観客に『なにかコントロールしているな』と思われ、『オレにも混ぜさせろ』という流れになってしまう」あたりは寓意を含んでいる感じがします。

ピットのダブル・カバー・ザローを2回やる、というのはとても良かったです。見栄えもよく(混ざったように見えるし、実際トップだけは順序も変わっている)、2回セットでやることで順序も戻る、という。ザロー自身もその方法を使っていたそうで、私は初めて知りました。そしていま理屈を若干思い出せない気がします。

こっそり明かしてくれたとあるフォールス・シャッフルが、「そんな方法あるのか」という感じで震えました。本当に頭いいなこの人。だってまずは本当にシャッフルしているのだもの。

デック・スイッチ。スイッチ手法の色々も参考になりました。タマリッツの手法とか、やはりじっくり見ていてもなお錯誤する。「気をつけないと、自分もどっち使っているかわからなくなるからね!」には笑いましたw 

 

 

13. Murphy’s Law(『IOTA』)

マジシャンは、トランプというものは『エンシェント・タロット』に由来を持つもので、今日のデックにも、その『不思議な形質』的なものは受け継がれているのだ、と言います。具体的には、デックを使うことで、人がいかにラッキーか、さもなくばアンラッキーなのかを判別することができる、と言うのです。

それをデモンストレーションするため、観客の1人にAからKまで、なんでもいいのでバリューを言わせたら、デックから1枚ずつ表向きにしながら配っていってもらいます。選んだバリューのカードが早く出れば出るほど、彼はラッキーというわけです。そして彼が悲劇的なアンラッキーだと分かる場合、それは、彼が自由に言ったバリューのカードが、最後に残った4枚であったときです。

見たかったの!すごく見たかったのです!いや、ぶっちゃけ本にあるものは全部見たかったのですが。ここからいくつか、カルテットを用いたトリックが続くのですが、私もMajilさんも、カルテットは「理屈は分かるけど多少はもたつくんだろうな」と思っていたんです。ぜんっぜんもたつかないの!おいおい瞬殺だよ。これ、ほんと単純な話なのですけど、自分が言ったフォー・オブ・ア・カインドだけが出てこないの、想像以上に面白いです。どんだけ運が無いんだ、みたいな。本にもありましたが、お互いが知り合いのグループでやると本当に盛り上がりそう。なお当会場も大変盛り上がりました。

 

 

 

14. Four-Way Stop(『IOTA』)

先ほどの不幸な観客に誕生月を聞きます。マジシャンはカードを1枚ずつ表向きで配っていき、観客は好きなところでストップをかけます。ストップをかけられたところのカードを公明正大に裏向きのまま置き、もう3人の観客に同じことを繰り返してもらいます。最終的に、ストップをかけられたカードは4枚になり、想像した通り、その4枚が誕生月のフォー・オブ・ア・カインドなのです。

 これとか公明正大すぎて、結論は確実にそこに向かっているとは分かるのだけど、それを信じられないといいますか。デュプリケートもないのに、いまその4箇所に裏向きになっているカードがまさしく言ったフォー・オブ・ア・カインドとか、「ええ……なんで……どういうことなんだ……」としか言えませんよ本当に。めっちゃ不思議です。ストップトリックの理想形に見えました。それなりに難しいですけど。

 

 

 

15. Identity(『IOTA』)

マジシャンは言われた数値のカード4枚を指先で触るだけで見つけ出す、と言い、デックのバラバラの位置のカードを1枚ずつ全部で4枚、表向きにひっくり返していきます。その4枚はランダムのバラバラのカードであるにもかかわらず、マジシャンは言われた数値のカードだと自信たっぷりに宣言します。

観客たちの視線が変わり、「このマジシャンはアタマ大丈夫か」と訝り始めますが、彼らは自身でそれを確かめることになります。デックがテーブル上にスプレッドされると、4枚の表向きのカードは、言われた数値のフォー・オブ・ア・カインドへとたちまち変わってしまうのです。誰かが「検眼士を呼んでくれ!」と言い出す前に、4枚のカードはまた先ほどのカードに戻り、そしてまた言われた4枚へ変わってしまうのです!

なにいってるか分からねーと思うが本当にこうなるんですしょうがないでしょう!私だって書いてて・読んでて意味がわからないです。訳しておいてナンですけど、「これ、はたして不思議に見えるのかな」と思っていたんです。すみませんでした、吐くほど不思議でした。なんだこれはwww

 

 

 

16. The Right King of Wrong(『IOTA』)

1から10の中のひとつの数字に集中しながら、観客がデックをシャッフルして、4つの山にカットします。それぞれの山のトップ・カードを表向きにしますが、意図していた数字のカードは出てこず、単なるランダムなカードです。

観客が間違ったデックを使っていたことにマジシャンが気づいたとき、すべてが明かされます。ずっとテーブルに置いてあった別のデックを、カットの結果出てきたカードのバリューぶん数え下ろしていくと、まさにそれぞれの箇所から思っていたフォー・オブ・ア・カインドが出てくるのです。

 失敗を観客のせいにするの大好きw この、どうやってもリカバリ不可能そうな事態から、そのマイナス分より大きな絶対値の現象を起こすのが本当にうまい。すごく変なトリックのはずなのですが、最後の現象自体はしっくりくるというか、とても手品的。

 

「パームなどの技法はフラッシュする可能性があるが、憶えたことはフラッシュしようがない」は名言ですね。体現してるところがかっこよすぎ。

 

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■第5部:

17.Triathlon(『The Little Green Lecture』レクチャーノート。壽里竜氏による邦訳版あり(マジックランドの箱根クロースアップ1998のノート))

演者はもっとも難しいマジックを見せようと言います。それは演者が他のマジシャン向けに、つまり「内輪向け」に特別に開発したルーティーンであると言います。演者がこれからやろうとしていることは、観客の興昧をそそります。3枚のカードを見つけるだけでなく、3枚のカード全てをかなり過酷な条件下で選んでもらうのです。最初の観客にはデックの中央あたりにある好きなカードを見てもらい、2番目の客は単に好きなカードを思い浮かべてもらい、3番目の客には表を見ないで1枚引いてその上に座ってもらい、最後の最後まで自分が選んだカードが何なのか分からないようにしてもらいます。

以上のことは、演者がそれまでにほとんど触っていない借りたデックを使って行います。それにも関わらず、演者は3枚のカードを正確に当てることが出来るのです!

リクエストされてやっておられた。めっちゃ不思議ですが、その裏にある悪魔的な工夫の数々たるや。これはノートを読んだときに思っていたよりもはるかに不思議です。何の手がかりもなさそうに思えますし、借りたデックで、シャッフルした状態で行うので。あと私も参加させてもらったのですが、タマリッツがよくやる、本当は聞いているんだけど、聞こえてない感じで観客の回答を遮るテクニックが見事でした。……すみません、偉そうに書いていて、このノートも読んでいて、その昔実演したことすらあるはずなのに、現場では全く追えませんでした。「ウソだ、ウソだ……ああああ……」とかうわ言のように繰り返すマンになっていました。おい不思議すぎではないですかこれ。

なお、何が驚きって、「いやー、久々にやりました。20年……はいってないかもしれませんが15年はやっていなかったです」でこのクオリティであるところです。多少複雑なトリックなど3日で記憶から消滅していく私としては、まずそこが震えるポイント。いくら自分が考えたトリックだからって、普段演じてなければ忘れませんかね、普通。そしてこれがリクエストされたまさにその理由の箇所についても、本当にスムーズで早い。

終わったあとで野島さんが、「何度やっても6にならない……」とかなっていて(分かる人には分かる数字)ちょっと笑ってしまいました。

 

 

 

18. The Illusionist(『IOTA』)

時に、最高のトリックというのは、決して実際には起こらないもののことを言うのだ、と。そんな『イリュージョン』をお見せしようと言うのです。「これは48枚のカードを使うもので、4枚は最初にどけておく」と言って実際にお尻のポケットにいれておきます。

まずは古典的な、スキルのデモンストレーションからです。観客のひとりに、どれでもひとつ、フォー・オブ・ア・カインドを言ってもらいます。マジシャンはデックを何度もカットしますが、その度に言われたうちの1枚を見つけ出してくるのです。

ところが信じられないことにマジシャンは、「これらは本当はすべて幻なのだ」と言います。そして実際、デックが表向きにスプレッドされると、先ほどカットしたところから出てきたカードはどこにも見当たりません。

マジシャンは、「トリックが始まる前から入れておいたものがありましたよね」と、自分のポケットの中から4枚のカードを取り出してきます――それらは言われたカルテットの4枚なのです! 

 リクエストしたったです!「あー、あんまり大人数相手にやるトリックでもないけど」「(「だめですか……?」という目)」「でもやってみるね」のあと、ちゃっかり通訳のMajilさんが、「特に最初のシークレット・アクションが具体的にどんな感じなのか、本からだとよくわからなくて」とか添えていて笑ってしまいました。手順の序盤なのですが、私も結構どういう感覚でやる動きなんだろうと思っていたので、大変嬉しいコメントではありました。ふたりは私物化!(プリキュアっぽく) 知りたかったムーブの瞬間にMajilさんと目が合って、「なるほど、こういう動作かあ」「いやーこれは意識に上らないわ―」という会話をしました、目で。Majiさんは通訳しながらなのに目でも会話できて器用だなーと思いました。いや、さっきまで見ていたはずのカードが、最終的に最初に尻ポケットに入れていた4枚なんですけど、読んでいて意味が分からんかも知れんですが本当にそうなのです。自分の見たものが信じられなくなります。

 

 

「例えばボリス・ワイルドが自分のデック使ってたらマークト・デックなんじゃないかな、と思われてしまうように、ハートリングさんも『IOTA』みたいな本を出すと、自分のデック使ってたらメモライズド・デック使ってるんじゃないかな、ってマジシャンの人には思われちゃうのではないですか?」という質問に、「そうだね。なので、コンベンションとかで手品するときは、フォーシング・デックとか、色々なギャフとかそういうのを使って煙に巻いています」という回答で笑ってしまったw 気を使ってるんですね、そこは。

「なにかありますか?気分が乗らなかったらデニスのトリックでもやろうかな」とか言い出してて、このふたりホント仲いいよなあ、と。

 

 

 

19. Exact Location(『Mnemonica』)

2人の観客が操作し、憶えたカードをマジシャンは言い当てます。さらにそれぞれの枚数目を宣言します。観客が配っていくとまさにその場所から観客のカードが出てきます。

 タマリッツのあれ。どう考えても当たりそうにないのに当たる上、枚数目まで当たっているという、不可能性のきわめて高い逸品。2つの原理の組み合わせで成立している。言われてみればそうだよね、という単純な理屈なんですけど、見ている最中は全く関連付けられませんでした。ショーの演目というより、「メモライズドデックはこんなロケーションもできるよ」という例でしたが、大変不思議じゃ。

 

 

 

20.Game of Chance(『IOTA』)

デックをシャッフルし、プレイヤーは赤か黒かの色を言います。カードが重ねられていき、3枚目ごとのカードを見ます。それがプレイヤーの指定した色であるたびに点が加算されます。

ゲームのまさに初っ端から、プレイヤーたちはまるでツイていない感じです︓色を選びますが、3枚目のカードはいつも選ばなかったほうの色なのです、それも最後まで︕

デックは繰り返しシャッフルされ、そして赤と黒はランダムに混ざっているのにもかかわらず、各ラウンドは毎回同じ結果に終わります︓どちらの色が選ばれても、出てくるのはソレジャナイ色なのです︕

何度かの公平でイラつく結果のあと、最後にマジシャンは、同時に2人のプレイヤーでやってはどうか、1人が赤を選んだら、もう1人は黒を選ぶのだ、と言うのです。これなら、1人は勝てるでしょう︕3人目の観客が審判役を務めます︓彼は演者のための色を自由に1つ言ってから、デックを3人の参加者へと配っていきます。

マジシャンは赤と黒のカードが混ざったカードを受け取り、スコアとしてもごく平凡なものでした。しかし、他の2人のプレイヤーはと確認してみると、1人は全部赤いカード、もう1人は全部黒いカード――お互いが『間違った』色を選んで0ポイントなのです︕

これはですねえ、訳していたときからめっちゃ面白そうだなあと思いまして。演者はいかにも何もしておりません、どうしてお客様はそんなに運が無いのですか?みたいな感じでw 実演見たらさらに面白くてしょうがなかったです。しかもこれ、厳密にはメモライズド・デックである必要もないのです。"Murphy’s Law"もそうですけど、演者は明らかになにかとんでもないイカサマをしているはずなのに、それが全くわからない、そして観客側はありえないツキのなさに翻弄されるという、この構図、シナリオ、本当に笑えました。名作。

 

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いやー、最後もすごく楽しく不思議で盛り上がりましてスタンディング・オベーションでした。自分の思い入れが強いマジシャン、ということもありましたが、見るものがどれもこれも不思議で、「ああ、マジシャンってこういう人をいうのだなあ」と感激しました。訳で関わることができていて本当にラッキーというか。知り合いの方たちの感想も、「しゅごかった。本で想像していたより遥かに上をいっていた」という感じで、訳者としては微妙な敗北感を抱きつつも、実際そうなので変に誇らしいというか。いや別に私はむしろ褒められてはいないんですが。「かばんちゃんはすっごいんだよ!」と、隙あらば嫁自慢をするサーバルさん状態でした。もっとも、「言わなくても見りゃ分かるよ、凄かったよ、マジで」みたいな感じでしょうけど。

実にいいものを見た6時間でした。しあわせ。手品うまくて、頭が冴えてて、そしてなによりエンターテイナーとして一級の人ってのは凄いものです。眼福でございました。

ピット・ハートリング・レクチャー(1/2)

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訳担当の富山です。2019年6月9日(日)、原宿 Casa Mozartにて開催されたピット・ハートリング(Pit Hartling)の6時間レクチャーに参加してまいりました。 私は彼の訳本『Card Fictions(以下CF)』を出したり作ったり直接会いにドイツに行ったりもしている、日本の全人口の上位0.01%に確実に入っているレベルの、割とピット愛に溢れている者だと自負しておるのですが、彼のまとまったショーやレクチャーを受けたことがなかったのです。今回来日ということで万難を排して行ってまいりました。

皆さまも色々とマジックショーをご覧になったり、レクチャーに行かれたこともあるでしょう。私もそれなりにあります。その中で今回のピットのレクチャーはどうだったか。端的に、そして控えめに言っても最高でした。魔法かと思いました。凄すぎて震える。あれこそ、エンターテインメントとしてのカード・マジックです。繰り返しになりますけど、本当に、本当に良かったです。終わったあとの帰り道、なんだかふわふわしておりました。

まあ今回の先、そうそう来日もされないとは思うのですが、これだけは申し上げておくと、「来日レクチャー決まったらとにかく参加しろ」これです。というか私も行きますし、むしろドイツにあそびにおいでと言われたのでそのうち行くことにします。

ピットのマジックの面白さ、賢さを伝えるべく頑張って訳しましたし、いまも訳しているつもりなのですが、はっきりいって完全に書き物を超えていました、リアル演技が。完敗です。以前ポン太・ザ・スミスさんが本の良さを説明する際、文章は著者の想定する理想を書ける、ということを仰っていました。確かにそうだなと思っていました。しかし今回参加された方は思ったことでしょう、「富山の書いた本より、断然不思議で楽しいじゃん」と。ぐぬぬ、しかし認めざるを得ない。でもですね、ひとつだけ申し上げたい。

 

 

「本の記述という理想形態を!

 実演が超えてくるほうが

 おかしいんじゃろがい!」

 

失礼、取り乱しました。己の備忘のために細かく記しますが、以下は読まなくていいです。むしろ読まないまま、いずれ機会が訪れた際にピットのショーなりレクチャーに行って生で見るのです。そして震えるがいいのです。

 

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 予約時に特に発番がなかったので、着席が入場先着順だったらどうしよう、と思い、開場の40分前に行く。訳本を出している身としては意地でもいい席に座りたかったのです。大人げないのは理解しています。1人並んでおられたが、私は少し離れたところで会場前を監視しながら『In Order To Amaze(以下IOTA)』の自分の訳文を読み返しながら時間を潰していました。分かってます、自分でも思います。キモい。その後並びましたが、開場予定時刻の10分~15分前に入ったところで入れてもらえました。予約順で1列目2列目3列目とだけ分かれていたようで、私は1列目でOKでした。そして席の配置を見てまずびっくりする。演者のテーブルの若干うしろまで、240度くらいの円弧を描いて席が配置されているのです。「え、マジで?」みたいな顔を見られたのか、受付をされていたポン太さんが「どこに座ってもオーケーです。ノー・アングルだそうです」と。なんだそれは。そんなカード・マジックがあるか?とりあえず最前列の中央を外した位置に座る。

メールのやり取りはちょくちょくしているとはいえ、ピットに直接会うのは6年ぶりくらいなので、憶えててくださるかなーと思っていたが、むしろ向こうから挨拶してくださってホッとする。「奥さんもレクチャーツアーに同行されるのだとばかり」「今日の便でドイツに帰ったよ―」ほほう。一応小ネタとして、オレンジ・ジュースを買ってきたことを告げ笑われる("Unforgettable"というトリックでは、オレンジ・ジュースが重要な役割を果たすのです)。おかしな話なのですが、こっちはレクチャーを受ける立場なのにめっちゃ緊張してくる。マジで胃が痛い。なぜなのか。

いよいよレクチャーが始まる。本人の真横のちょいうしろまで囲まれた、しかもカード・マジックのレクチャーという、個人的に前代未聞のイベント開始。通訳はスーパー・カード・テクニシャンのMajilさん。後述しますが、実質5時間くらいはレクチャーしていたと思いますが、最後まで的確でいい通訳をしてくださいました。本当にお見事でした。ピットの説明フレーズの切り方も良かったですが、Majilさんもそこへのかぶせ方が絶妙でした。

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 ■第1部:

01. Sherlock (『IOTA』)

部屋の一番隅で、観客がデックからカードを1枚引きます。彼はそれを憶えて、デックがシャッフルされる前にどこでも好きな位置に戻します。別の観客が複数回のシャッフルとカットを行い、ここでははじめてマジシャンがデックに触れます。マジシャンは説得力のあるカードの減らし方と、アーサー・コナン・ドイル顔負けの論理をもって、この選ばれたカードを追い詰め、そして見つけ出すのです。

 元はちょうど100年前、1919年のチャールズ・ジョーダンの手紙越しマジックを、手紙なし、現場で行えるようにしたもの。さっそく来ましたぞ、クソ不思議なやつが。ひとりしか引いたカードを知らない、別の人がカードを複数回シャッフルする、これで見つけるわけですよ。シャーロック・ホームズの有名な台詞、「ありえないことをすべて取り除いていけば、あとに残ったものがいかにありえそうもないことであっても、それこそが真実にほかならない」('Once you eliminate the impossible, whatever remains, no matter how improbable, must be the truth.)とか言いながら、「選ばれたことのないカードを捨てます」「ときどき選ばれるけど、あなたは選ばなそうなカードも捨てます」「残ったのがあなたが選ぶ可能性があるものですが、日曜には選ばれないやつはどけましょう」「残った、あなたが日曜に選びそうなカード、それもこのトリックで選びそうなのは……」と、どんどんカードを捨てていって、最後に当てちゃうのです。原書ではクライマックス、「『初歩的なことだよ、ワトソン君』("Elementary, my dear Watson")と言いたくなる誘惑に抗おうね」と書いてあるのに、ピット、言ってましたねw「Elementary, Watson」と。キメ台詞を言う誘惑に抗いきれなかったとみえますw

「お客さんに指示を出すときになにか注意点はありますか」という問いに、「簡単な指示だし、そんなに気をつけることはないです」と仰っていましたが、『IOTA』においては、指示を「1枚完全に抜き出してくれるように頼む」「それからそれを憶えて戻すように言う」と分割するといいよ、というTipsがあったことは、訳者っぽく付け加えておきます(その場では言いませんでしたけど)。

ジョーダンの原作?では3回のシャッフルをしていたそうですが、長いので2回+複数回のカットでいいだろうとのこと。

最後までわからない1枚選んでもらう系手品を練習するには、顔を背けて携帯電話のカメラで撮影してそれを伏せて始めるといいよ、的なTipsは即効性お役立ち感があります。

 

 

02. Colour Sense(『CF』)

観客がデックをシャッフルし、それからパケットを持ってテーブルの下で表向きにします。マジシャンはちょうど、見えていないパケットの真上あたりのテーブルの板面に手のひらで触れることで、その“色”を感じるのです。マジシャンはそれぞれのカードの色を、観客がカードを出してテーブル上に置くより前に言い当てていきます。さらにマジシャンは、絵札であるかどうかや、パケットが何枚あるか、さらにはスートや数まで感じることができてしまうのです。

 私のだいすきなやつです。透視の練習のモチベーションが「いま隣の家に凄く魅力的な人が~」とかいうのに笑ってしまったw 記憶する部分について、『CF』のパターン・プリンシプルではない、彼の方法が説明されました。実は私自身、齋藤修三郎さんに教わった別の方法でやっていたのですが、それがピットのやっている方法でもあります。Tipsに載せようか迷ったのですが、作者本人が本文に載せなかったのだからまあやめとくか、ということでいまに至ります。なお、記憶する必要もなくす、ということでのタマリッツのアイディアも紹介されました。

『CF』本文内のInducing Challengesの例としてこのトリックの終盤部分が使われていたのですが、そこについて会場から、「今日はやらなかったのですね」というマニアックな指摘が入り、私も「そういやそうだったな」と思いましたが、「なんというか、ショーのときも含めて世の中の人たちはどうもみんな優しい人たちのようで、ほとんど誰もそこで挑戦してこないので、結局挑戦を誘わなくなりました」にちょっと笑ってしまいました。正直かw

なお解説前に「皆さん、やり方は知っていますか?」ときたので、おずおず手を挙げたら「そりゃキミは知ってるだろwww」と笑われました。参加されていたこざわまさゆきさんが挙手して「I am proofreader(査読者です)」と言ったので、同じく参加されていた齋藤さんを「He's the editor and the designer(おまわりさん、この人、組版/デザインマンです)」と通報紹介しておきました。同じ部屋に『CF』の訳者、査読者、組版/デザインマンが居るという変な空間。「きみらが説明しなよw」とか言われてしまいました。説明は可能っちゃ可能ですが、実演自体そんなふうにはできないですw

どうでもいいけど、ピット本当に地アタマが良さそうで、これのバイナリとか、後で出てくるエピトム・ロケーションとかも本当に超速。「早くやる必要は本当にないです」と言いながら3秒くらいで憶えている。

該当の山を渡す方法は、先日出した新版のUpdated Handlingの通りでした。仕組みもいいけど、やはり全体を通した楽しませ方、見せ方が勉強になります。

また、「借りたデックでやるんだけど、そのときは'some stupid joke'を言うためにわざわざ青いデックを借りる」という変なTipsで笑ってしまいました。

 

 

03. The Poker Formulas(『IOTA』)

マジシャンはまるで暗号リストのような大量の数字の羅列で埋め尽くされた、よれよれの紙を何枚か取り出してきます。彼が言うにはこれは『ポーカー・フォーミュラ』なのです。この表の力を示すため、何でもいいのでポーカーのハンドをひとつ言わせ、同じようにプレイヤーの数も言ってもらいます。

紙をガサゴソやってマジシャンは該当する公式を見つけ、それをデックに『プログラム』します:デックを静かにリフルし、叩き、ひねりますが、あきらかにカードの位置は全く変わっていません。言われた通りの人数にカードが配られ、マジシャンのカードが示されます――それはまさに、観客がリクエストした通りのハンドなのです!

数年前のフランクフルト、私がピットに初めて会った際に見せてもらい、度肝を抜かれたやつです。「いつ!いつ出ると!?」「今度出す本に載せ寄る予定さ」「MADAKONEEEEEE!」そこから『IOTA』が出るまで2~3年待ちましたからね、私は。「今日の会に参加されてる方たちはみんな、すぐに知れていいなー」と一瞬思ったのですが、数年のあいだ魔法じゃないかと思えた私のほうが幸せだったのかも知れないと思い始めました。

現象は上記の通り。好き勝手に言われたハンド、その組み合わせ、プレイヤー数、それらを謎の公式集通りに操作すると、その通りのハンドが完成します。いや、なに言ってるか分からねーと思うが本当にそうなのです。しょうがないのです。箱の中にデックを入れて、そこから片手で配っていくノー・スライト・バージョンも紹介されていました。

Majilさんは桂川さんより頻度低いですが、通訳外で感想を漏らすことがあって面白い。こざわさんリクエストのストレートフラッシュが出た瞬間、私「す、SUGEEEEE!」とかなっていましたが、Majilさんも「いいなあ、これ……」とか漏らしてて笑いました。いや笑うしかないんですが、あんな状況。会場全体もどよめきました。

また、シャッフルしたカードの並びを撮影(動画1コマあればいい)することで、そのための公式を導き出す、マーティン・アイゼラ(Martin Eisele)のVisionというアプリが紹介されていましたが(それによって、適当にシャッフルされたデックからでもこれができるようになる)、いや、そんなそこまでせんでもいいだろ、とは思いました。会場で野島伸幸さんがさっそくインストールされていましたが、月額課金的な、結構高いアプリなんですよね、これ。まあ野島社長クラスなら余裕かもしれませんが。 

 

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休み時間中にMajilさんと立ち話。「私、Master of the Messはリクエストしようと思うんですよ」「あれは見たいですね。あとはあれです、カルテット、あれ実演見たくないですか?」「見たい、めっちゃ見たいです。ていうか正直あれは机上の空論というか、『まあね、実際にやったらそうなっちゃうのは、しょうがないよね』くらいにはなるんじゃないかとは思ってるんですが」「ええ。僕もそう思います。絶対無理ですよね」「……Identity、見たいな……」「The Illusionist!フェイクムーブどうやるのか具体的に見たい」「あああ、本のやつ全部見たい」などと、好き勝手なリクエスト案を話していたら、唐突に野島さんが参入、「ぼくは……エピトム・ロケーションが見たいです」とか言い出すw 「Triathlonですね」「あ、いや、なんならエピトムのとこだけでいいです」なんじゃそらw Majilさんの「いやあ、見てて思いましたけど、アタマいいだけですよピット」には笑うw

 

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■第2部:

04. Back to the future(『The Movie』DVD)

「観客がカードを選んで、マジシャンがそれを当てる。これが普通ですが、今日は逆をやってみたいと思います。つまり、選ばれる前に当てるのです」という意味不明なことを言い出すマジシャン。観客に1枚のカードを選んでもらい、しっかりと手で押さえてもらいます。別の観客にカードを選んでもらいますが、そのカードがデックの中からいつのまにか消え、どこにもありません。はじめの観客が押さえていたカードを表向きにすると……。

キモい!キモいよ!最初なに言ってんだコイツ的な空気を醸成しておいて、あの完全な消失ですよ。ついさっき、それを見て、憶えたはずなのに!パームもうまい。デックの順序が変わらない、便利なトリックです。

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05. Opposite Pockets Revisited(Steve Beam『Semi-Automatic Card Magic Vol. ?』に寄稿)

2枚を使った有名なトリック、というのをやるが、面倒なのでお客さんたちにやってもらう、とマジシャンが言います。観客に1枚カードを選ばせ、憶えたらお尻の下に入れておいてもらいます。別の観客に1枚対照的なカードを思いうかべてもらいます。デックからそのカードを抜き出して同じようにその上に座らせます。「私はこのトリックがすごく好きで。1枚を自由に選んでもらい、1枚を自由に思ってもらうわけですが、問題が1つあるんです。めったにうまくいかないのです、このトリック。本当ですよ。ダイヤの3とスペードのJの2枚のときだけしかうまくいかないんです」観客2人のお尻の下のカードを見ると、本当にその2枚なのです!「うまくいくと、いいトリックなんですよ!」

 もとがブラザー・ジョン・ハーマンの"Opposite Pockets"というトリックだそうで。自由度が増しています(※演者の負担は若干増えている気がする)。いやしかし、一度も演者がカードのフェイスを見てない状況でこれですからね。最初変な声が出ました。

 

 

06. Chaos(『The Little Green Lecture』レクチャーノート。壽里竜氏による邦訳版あり(マジックランドの箱根クロースアップ1998のノート))

最初は数学的な原理に基づいた、あの悪名高いカウンティング・トリックに見えますが、最後はめちゃくちゃになって終わります。「正確な数学的原理に従って……」と言いながらも、演者はデッククをテーブル上に荒々しくぶちまけ、完全に混ぜてしまうのです。

しかしカードをひとかたまりにまとめると、演者は即座に2枚の自由に選ばれたカードをその中から見つけ出してみせます。

最後の最後の瞬間まで、演者は1枚のカードの表も見ないのです!おまけに、この『カオス』、完全にセルフ・ワーキングだというナイス・ニュース。

「これは数学に基づいたトリックなので、厳密性が重要なのです」と宣言してからの、あらゆる類の厳密性を全部ぶち壊していくあのぐちゃぐちゃ感が最高です。最後の「ああ……ごめん失敗しちゃった。両方共違うカードだ。最初からやり直さなきゃ」あたりのギャグ、大好きなんですよね。

観客というか場のコントロールについて、「あなたが場をコントロールする、仕切っていい」(You're in charge.)という、このあともちょいちょい出てくる言葉がありました。思うに一般的なマジシャンは観客のイレギュラーなどを気にしすぎなのかも知れません。名高いマジシャンはだいたい場のコントロールが絶妙に上手いですよね。

www.lybrary.com

 

 

07. Odd Men Out(Selling Item)

2人の観客にそれぞれカードを1枚ずつ憶えてデックに戻してもらいます。1人目の観客のカードの色を聞き、それが赤。マジシャンはデックをファンにすると、すべてのカードが黒い中、1枚だけ赤いカードが。それが1人目の観客のカードなのです。続いて2人目の観客のカードの色を聞くと黒。演者は再度デックをファンに広げますが、すべてのカードが赤で、中に1枚だけ黒いカードがあり、もちろんそれが2人目の観客のカードです。デックを広げると赤黒はテキトーに混ざっています。

www.vanishingincmagic.com

 

解説フェイズ冒頭、ピットの「これは簡単です」に「ウソだ、絶対ウソだ」の声が漏れる会場w 「ギミックデックですから」そのデック、会場から借りたやつやないかいw にしてもフルデックの下準備を、デック借りて適当に喋りながらさっさと済ませてしまうのがやはり凄い。「借りたデックでしたが、どうセットしたのですか」という質問があって解説がなされましたが、ハートリングのホフツィンザー式カル、自然すぎじゃないですかね。そしてまた早い。「こんな感じで取っていくんですよ」とか言って実演するんですが、その解説を見た会場から笑いが漏れるくらい早いw 「ベストは家でセットしたデックを持ってくる、だと思いますけどね」なるほど。

「自分をMax Mavenだと思えばいいんですよ。Dani DaOrtizでもいい。とにかく、あなたがマジシャンであり、あなたが仕切っていいんです」

Alex Elmsleyの原理を、複数回できるようにしているのがピットの凄いところですね。原案のエルムズレイの、ノーマル・デックでブレインウェーブ・デックやるところも普通に凄かったですけどw

あとメモに「Majilさんの訳がナイス」とあったので、なんかうまいこと仰っていたのだと思います。実際問題全体的にうまかったですが、わざわざ書いたということはなんかうまいこと言っておられたはず。たぶんです。メイビーです。

 

つづく。