教授の戯言

手品のお話とかね。

カイジ的トリック

今回は三田祭が近いので、お客さんと遊べるものを中心にチョイスしてみました。また、庄司さんとゆうきさんの「フォーサイト」を初めて利用させて頂きました。


【MONEY GAME】
「マジシャンは、お金が儲かるゲームへの参加を観客に持ちかけます。順調にゲームが進み、最後は観客の勝利と思いきや、 どんでん返しで儲けが夢と消えてしまいます。観客が自由にお金の位置を決め、マジシャンは何もしていないのにもかかわらず、マジシャンが損をすることは無いのです。」


髪型屋でゆうきさん本人に見せて頂いた事がある、お客さん相手のコンゲームです。参加費として100円出してもらうのですが、たまにお客さんに10円があたってしまう事があるのですね。そんなときにゆうきさんは「今回は特別に参加賞を差し上げましょう」と言って可愛い小袋入りの90円を出していました。小銭かかさばるので返された方は微妙と言えば微妙ですが、お客さんに損をさせないように、と言う当たり前と言えば当たり前の観点からは中々参考にさせて頂きたくなる演技例でした。


【JANKENマスター】
「マジシャンと観客は、グー、チョキ、パー、お互いに3枚のカードを使って勝負をします。計3回(1度のゲームで、3枚全てを使用するので全勝すれば9勝ということになります)行うのですが、最終的に全てのゲームがマジシャンによってコントロールされていたことが証明されるのです。」


マジシャン後攻の時のじゃんけんの勝ち方は、まあ大半の方が予想される通りなのですが、三回目のマジシャン先攻の時の結果によるエンディング分岐が素敵です。上の「MONEY GAME」もそうですが、少しの練習でお客さんと会話を楽しめる素敵なトリックだと思います。余談ですが、なんかじゃんけんとカードというのが結び付くと、カイジの限定じゃんけんを思い出してしまいます。ざわざわしつつパーを買占めたりしたくなりますね。ざわ・・・ざわ・・・


【トランプタイム】
「初めてトランプマジックをはじめる人のための教本がやっと出来上がりました。知ってる人もいるかもしれませんが、ヒューマンアカデミーから出したテキストの改訂版です。より多くの人にトランプマジックを楽しんでもらおうとゆうきとも・庄司タカヒトがタッグを組んで三年の歳月を費やし珠玉の作品を吟味した内容です。絶対の自信を持ってお勧めいたします。 私たちを信じてくださいとしか言いようがありません。しかもこの価格でお届けできるのもフォーサイトだからです。トランプマジックをはじめたい人お買い求め下さい。」


レクチャーノート。サイトの紹介文に嘘偽りは無いと思います。いや、あのお2人がこれひとつの出版のために3年かけた、というのはさすがに誇張だとは思いますがw  基本技法数種と、簡単な技法のみを用いたトランプマジックが5種類載っています。ひとつスロップシャッフルと言う技法があり、それが最難と言うことでしたが、この技法を絡めたマジックに関しては、ごちゃついて見えた方が"まぜちゃったよ説得力"が増すので逆に良いのではないでしょうか。

言うとすれば、今後も数冊出すご予定とのことですし、価格はもう少し勉強して頂いてももいいのではないかと言うこと(1冊5・600円で全巻合わせて3000円くらいが望ましい価格なのではないかと思います)、数冊発刊予定なら(これも含めて)収録内容を予めHPなどで提示しておいた方がユーザーフレンドリーなのではないかという点でしょうか。"これからトランプマジックを始めようとする方"向けなのだから、こういう現象の手品が入ってます、と言うのくらいはあって然るべきかと。トリックを微に入り細に入り描写してと言うわけではなく、せめて現象内容くらいはなあと。内容を見ずに買うのは初心者ではなく、お大尽か手品マニアくらいだと思います(笑)。あと欲を言えば演技例をもう少し指導してくれた方が。これらをそのまま演じると「ふしぎー。・・・で?」的な事態もありそうです。入門者に向けて、ならもう少しフォローがあったほうがいい気がします。と文句も書きましたけど、内容的にはとても入門向けで良質だと思いますので、中級者以上の方もこのトリックにいかに演出をつけるかなど良い訓練になりそうだと思いました。て言うか偉そうなこと言ってないで私も頑張りたいと思います。


【新・スパークルアイ】
「一組のデック(トランプ)を示し卓上に置いておきます。観客に1から50までの間の数字をひとつ思ってもらい、演者はプラスチックボードの表面に何かを書き付けます。 ボードの裏面には1から50までの数字が印刷してあり、観客が思っていた数字を丸で囲んでもらいます。 仮に思っていた数字が10だとしましょう。観客自身にトランプを配らせますが信じられないことに10枚目のカードとボードに書かれていた予言はピタリと一致してしまいます。
※トランプもボードもずっと卓上に置かれており、一瞬たりとも視野から外れることはありません。フォーサイトを世に知らしめた自信の商品です。」


マジェイアさんのページにもあるのですが、非常にクレバーです。「any number, any card」いわゆるエニエニと言うやつで、お客さんの言ったカードがお客さんの指定した枚数めから出てくると言うものの類型手品です。なお、この作品はお客さんには枚数の指定しかして頂きません。


以前買ったフォーサイトの冊子「モダクラ」のあとがきにて柳田氏(≠ウィザードイン主宰, ゆうき氏のレクチャー「WISE WORKS」シリーズにも出演している、笑い声が鼻につくほう)がお書きになっているように、お客さんの言ったカードと枚数め、と言う二つをマジシャンが予言していたと言う演出は、演出点が2点になるため現象がボケやすいという考え方があります。これはどちらがいいかというより、不可能性か演出点を際立たせるかの演者の好みの問題だと思っています。私は不可能性よりも演出としてすっきり目のを好むのでエニエニ物としては「マジシャンがカードを予言、お客さんが枚数を指定」くらいが丁度いいかなと言う気がします。お客さんにカードも枚数も指定させられたらそれはそれで凄いと思いますけど。これはその「マジシャンがカードを予言、お客さんが枚数を指定」です。


で。このマジックはお客さんへの枚数の指定のさせ方と、マジシャンが予言(何のカードか)を書き付けるタイミングが本当に素晴らしい。今までエニエニ物はエライ技法やスタックが必要だったりで敬遠していたのですが、本作に関しては初めて実行してみようかなと思った次第です。お客さんの指定した枚数め、それを書き付けたカードへ誘導するやり方、加えて言うなら予言を兼ねたカンペも含め、これは確かに傑作だと思いました。演技力や間の取り方は当然ですが、極力技法を排してなおこの現象、文句無くオススメかと思います。演技の仕方が一寸難しい気もしますけど。そこはトリックがかくも素晴らしいのだから、演者がきちんと考えないと失礼ですね。久々に工夫の複合を見て美しいなあと感じました。