教授の戯言

手品のお話とかね。

刷って解決とは…

□ Correctors Workshop 「All are white, excluding the prophecy」



あ る日、知り合いのマジックグッズ製作者の方から情報を頂き、内容と実物を見た瞬間の衝動買いでした。生まれて初めて380ユーロもする手品グッズを買ってしまいました…。日本円で5万円くらいですよ、ダンナ。卓上に置く小型の圧着式プリンタと無線式リモコン、専用インクのセット。

レ クチャー手順での現象ですと、「デックから1枚のカードを取り出し、予言としてギミックのボックスに挟み、観客にカードの名前を言ってもらう。ボックスを開けると観客の言ったカードがそこにある。そしてよけておいた他のカードを見ると全てブランク」というのが、本ギミックを使って実現できる概要。「All are white, excluding the prophecy」(予言以外は全て白)というタイトル通りです。ブランクカードは5枚くらいついてきましたが、ブランクデックはついてきません。別に要りませんけれど。

バ ラの要素(「小型のプリンタ」と「テキストと記号を送信できるギミック」)で考えれば、昨今の技術で出来る気はするんだけどなあ、でもマジックでそんなことやるやついないか、と諦めてはいたんですが、まさかホントに実現するとは。なお、ボックス(デックより一回りくらい大きな薄手の木製小箱風)にセットできるのが単色インクなので、赤ないし黒のスポットカード(JOKERも出来ますが)は予言可能ですが、絵札とASは出来ません。そのうち内部ソフトのバージョンアップとかで全種類のカードを印刷できるようになることを祈りたい。が、内部ソフトがパワーアップされることは永久にないと思いますが(USBなどで接続したりしないのでそういうファームウェアのバージョンアップみたいなやつは出来そうな気がしません)。改良版が出ればとは思いますが、まだ先でしょうね…。

ほ かに特筆すべきはやはりリモコン。ポーカーサイズのデックの半分くらいの大きさのものでボタン付のダイヤル式、そのダイヤル操作結果を液晶表示で見ることが出来ます。最初のダイヤルでスート指定、真ん中のダイヤルで数字を指定、脇のボタンで決定・送信。試してみたところ5mくらいは楽に電波を飛ばせるので、観客の中に一人サクラがいればもう完璧な気がします。慣れると、カードの名前を聞いてから2・3秒で送れるくらいの簡単操作。小型にも拘らず誤操作をしづらい構造だと思います。

し かして気になるのはその印刷クオリティについてと思いますが、これまたそれなりに良いのです。中の機構の詳細はよく分かりませんが、インクジェットというよりプリントゴッコのような仕組みのようです。音はある程度の人数がいればあまり気にならない程度ですが、一人の部屋ですと微妙に何かが動いている感(音)がするので、実演の際にはこの部分に何らかの対策があると良さそうな気がします。

印 刷自体も結構綺麗にムラなく出来ます。乾燥もかなり早く、ボックスから取り出してフェイスを自分の方に向けて揺らしながら10秒も喋ってればもうきっちり乾きます。解説書では、「信号送信、印刷開始してから60秒以上おけば取り出しても乾いている」ということなのですが、私はさっさと取り出して上記のようにしてしまう方が良いように思います。これは趣味の問題に加えて、「ボックスの中見せて」と言われて、不自然に板があるだけと言う状態を見せずにしまいたいから、なんですが。二重蓋の部分を印刷面につけて(たとえが難しいのですが、要はプリント機構の上に蓋が出来ると思ってください)しまうことが出来るので「何も仕掛けは無いよ」って見せられるんですが、そうすると、「そもそもこの箱ってトランプ1枚だけ入れておくためのモノなわけ?怪しくない?」と思われるに2000ペリカ。せめて、木製のデックボックスに見せられるくらい空間があればいいんですけどねえ…。数枚しか入りません。まあともかく、インクの乾燥はそこそこ早いよ、と言うことで。

だ からといって、完全にいつものカードの印刷と寸分違わぬかというとちょっとは違います。普段日常的にバイシクルを触っているというアレな人たち(含む私)の目からは、やはりある程度インクの具合(濃さとか照りとか)に違和感はあるんですが、例えるならギャフカードのアソートメントに入ってるやつのような感じの差異ですね。普段から触ってないような人には特に違和感無し、といえるレベルです。言うなれば"手渡し可能"なクオリティとは言えますよw(ホントにお土産として渡すことが出来ます)

け れども何と言ったら良いか、ハイテクギミック全般にいえますが、これはもう手品じゃないなという感じもします。面白いのは間違いないのでよくぞ発売してくれた、と言う感じですけれど、演じる機会はいつ来るのだろうか…。しかし予言マニア涙目w

ど んなマジックやギミックにもいえますが、演者の側で骨を折る部分が全く無いと、それはもはや手品というより、そういうアトラクションなりマシンなりをただ管理しているような感じですね。私は観客が喜んだり驚いたりしてくれればなんでも良い、というスタンスなのですが、ICチップの埋め込まれたバイシクルでカード当てをやるようなもので、その辺の心持は微妙っちゃ微妙ですかね…。

「ね がわくは、ギミックとスライハンドの調和を」というのは偽らざる本心なのですが、自分の考えている 「Any Card at Any Number」 の解法などは、こういうハイテクとまではいかないまでも、器械式ギミックボックスを使う想定だったりするあたり、ポリシーに一貫性がありませんね、私。てへ。しかしこれもこれで一人で遊んでいると何一つ不思議ではありませんね。ただトランプが印刷されるだけw