教授の戯言

手品のお話とかね。

齋藤修三郎『The trick that cannot be named』

<【Warning!】本項は多分に提灯記事要素を含んでいます。>

 

齋藤修三郎『The trick that cannot be named』

【現象】「これからマジックをお見せしますが、皆さんはそのタイトルを当ててください」と言って始めます。演者はひらがなの書かれたカードをシャッフルしたあと、それを4人の観客に数枚ずつ渡し、できるだけ長い単語を作ってもらいます。それらの単語すべてが予言されています。そして観客にマジックのタイトルを答えてもらいますが、当たりません。観客の予想だにしなかった結末が待っています。

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第1段(これ)では、ひらがなカードから観客によって作られる単語を当てつつ、作品タイトルを観客に当ててもらう(当たらない)もので、同じカードを使った第2段『辻占』では選ばれたトランプも当てちゃう、という構成。不思議であるという要素の他に、観客とのやり取りがあること、ビジュアル的に現象が理解しやすいこと、ある程度の時間をもたせることができる、というのが本作の特長です。別にご紹介する"Triceratops"がどちらかというと「不思議」にステータスが振られているとすると、こちらは「楽しさ」「笑い」寄りにステータスが振られているという印象。どちらも、昨今流行りのCGみたいなクイック&ビジュアル、というものではありませんが、観客とのやり取りと笑いがあるのが個人的には一番の推しポイントです。私は手品を演じるときは観客と(に)よく喋るスタイルなのですが、そういったコミュニケーションの材料として本当によくできているのですよ。

 

齋藤修三郎さんのセールスアイテムに共通するのは、「演じる難度的には実はそこまで高くないのに、どう見ても不思議」という土台に、「つい笑ってしまう要素」が乗っかっている、というポイントだと思っているのですが、これも例に漏れず、大変実演に向いた作品だなと思った次第です。「ストイックなまでに緻密なコイン技法でレイマンをあっと言わせる手品」も否定はしませんが、私はどちらかというと面白さが前面に立っている、それでいて「なんで当たったんだろう、なんでこうなったんだろう」という不思議がうっすら香る手品、というのが好きで、本作はまさにそのイメージ。


私ももちろん、観客の方には「不思議だったなー」と思ってはいただきたいのですが、それよりも「楽しかった、めっちゃ笑った」という感想を持ってもらいたいので、そういうスタンスの方にはジャストフィットの作品だと思います。

 

また、本作はひらがなカード以外にも予言用の絵の数々があり、観客へ示すときもそういったものがあるおかげで、「トランプをいっぱい使っていた」「グネグネやってなんかカードが当たった」といった印象から逃れやすい、「ナードっぽい手品」ではなく、「エンターテイナーとしてのマジシャン/エンターテインメントとしてのショーを見た」のように思ってもらえるはず(※個人の感想です)。

 

唯一、無理に欠点というか「ここはなあ」、というのを挙げるとすると、ひらがなと日本語の単語を使うものなので、「日本語が分からない人には演じられない」というところでしょうか("Triceratops"も同様ですが)。私は「英語で演じるときはどう言うかなー」ということを考えながら手品の練習をすることが多いのですが(実際に英語で演じる機会はそうそうないのですけど)、本作はちょっとその方針からは外れざるを得ません。ただ、上述の通り敢えて欠点を挙げるとすれば、なので、日本国内で、ちょっとしたパーティーなどで演じるということからいえば、何も問題ありません。中学生からお年寄りまで対応可能でしょう。解説書も、齋藤さんの実演の経験・反応からフィードバック済みの演出や台詞まできちんと記述されているので、その通り演じるだけでも充分な反応を得られます(私も実演のみを見たことがあり、かなり笑わせていただきました)。サロン規模でのレパートリーを探している方(クロースアップでももちろんOK)、ある程度の時間を、笑いも織り交ぜつつマジックを披露したい、という方たち向きのトリックです。マジックマーケット2019ではD-7 メチャ凄サイトー にて、3000円ポッキリのお値打ち価格!「安ゥい!」「安いわね!」 これを見逃してあとから買うと税金が乗るよ!10月以降は10%になっちゃうよ!それはもう、マジケに行ったらその場で買うしかないじゃないですか!(取り置き予約もできるそうですが、詳細を知りませんので、分かったら追記しようかと思います)

 

実際に拝見した演技や、自分で練習してみた結果からいうと、クロースアップからサロンのスタイルで10~15分程度はもたせることができます。これは私のように、「サロンマジック頼まれたけど、演じるトリックどうしよう」と毎回迷う人間には福音になります。あと、最後になりますが、不思議偏重ではないトリックだからということもあるのですけど、基本的には失敗のしようがないように構成されているのが演じる側としてはポイント高いです。毎回、観客へ示す前にちゃんと並んでいるかなども堂々と確認できますし、しかも別にそれは不思議さを減じはしない、というのがいいですね。

 

日本人向けに、それなりの時間をもたせつつ、不思議と笑いをお届けしたい方、マストバイ!「なのだぜ?」(CV:牧瀬紅莉栖)

 

www.magiclesson.biz

 

 

取り置きOKだそうです。