教授の戯言

手品のお話とかね。

キラスタイル2


知人のご厚意でキラスタイルを2本拝見いたしました。私がネットで見た本作のレビューは、「紀良さんもっと肉食った方がいいと思うな」など、内容というより紀良氏の体調その他を慮ったものでしたので、その演技の実態は謎に包まれていたのでしたw

良かった点は不思議なところ。いや当たり前といえば当たり前なのですが、結構な頻度で「え、なんでなんで?」というものがありました。セットものがかなり多いのですが、プロセス中で完全に証拠隠滅されてしまい、残ったものを見てもまずセットは分かりません。現象から、"セット以外ありえない"というのは分かっても、どんなセットなのかなと、空想するのが結構楽しかったです。数日おいてから解説見ましたが、セットの手間としては妥当かというレベルでした。

あまり良くなかった点は、ありがちではあるんですが構成がアトラクティブでないこと。設計書っぽいというか、淡々としすぎていて寂しいなあと。折角不思議なことをしているのだから、撮影用のお客さんの配置とかしたらいいのに、と思うくらいで、ちょっと勿体無い気がしました。
特に「キラスタイルII」の岸本さんとゆうきさんに見せているシーンって、完全に"手品マニアの会合で見られる光景"の再現みたいです。「おー。不思議ですね」「うん、不思議」ってw 「おまじないをかけると…カードがあがってきます」(あがる) 岸「うん」ゆ「うん」はひどいw もういい、デイブ呼べ、デイブを。ビビる大木氏辺りでも可。


※ベタパターン・手品マニア編 「手品を見たあとの反応」
一般人→「え、何で?何で?」「ちょ、マジでやべえ!すげー不思議じゃね?」「どゆこと!?」 
逸般人→「なるほど…」「あー、賢いねー」「いいルーティーンだね」「オリジナル?あ、いやマルローの改案?」 

手品やってる人同士だと「なるほど」とか「きれいだね、それ」って言う評価が多い気がする。本音かヨイショかはともかくね。「そこのxxの使い方がうまいね」などやたらピンポイントのときは、演技全体としてはそんなに面白くない・不思議ではないという意思表示なことが多い。…気がする。


「キラスタイルII」の売上が「WISE WORKS 6」を越えた、とかいう話を岸本氏がしていたのですが、脳内ではゆうきさんの手を片羽で捩じ上げながら「やめてよね -中略-かなうわけないだろ」とかいう紀良氏が浮かびました。キラだけに。あんまり似合わなかったですが。

なお、見終わった時点での紀良氏の印象は「ソバージュのトヨエツ」「ラ行の発音が気になる人」といったところでした。なんか凄いいい人そう。

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■ 紀良京佑 「キラスタイルII」

以下現象その他はフレンチドロップより拝借いたしました。今度何か注文しないとなあ…。


【収録内容】

・アンビシャス・ルーティン
観客のサイン入りカードをデックの中程に入れても、一番上にきます。これを何度も繰り返します。最後は、観客のカードを表向きにデックへ挿した状態で、デックを振ると少しずつ上がってきます。 良く考えられた手順です。

最後以外はよく見るタイプで、DLやティルトを活用です。徐々に上がってくるラストステップは好き。ただ、海外のマジシャンでも斜めに挿してやる人は知っているのですが、私は二川さんのおやりになるまっすぐ挿しての方が好きです。"息を吹きかける"というマジカルジェスチャーの意味あいが自然に感じられるからというくらいですけれども。二川さんの手法は左側の観客からの目線に弱いのですが、紀良さんのほうはどうなのだろうか(右側には注意が必要とは解説しておられましたけど)。一度生で見てみたいものです。



・封筒の中のパスケース
観客のサイン入りカードが封筒の中にあるパスケースから出てきます。ここで用いる、アクション・パーム”キラ・パーム”にK氏、Y氏ともに絶賛。不自然さがなく、重宝しそうです。また、ギミックのシステムも大胆かつ巧妙。

財布→封筒→カード はよく見るのですが、若干発想の転換(紀良氏談)のあるトリック。封筒→財布(パスケース)→カード と、順序が変わっているだけですがw 
リフルシャッフルからのパームは初めて見ました。完全に幻惑されたわけではないのですがかなり綺麗だと思います。ただ、パームのポジションチェンジがあるので、私が"封筒に通うカード"をする場合は、普通にトップパームを使ってワンステップ省略ですね。…基本はトップパームしかできないのですが、やはりボトムの方が気づかれにくいのでしょうか…。
封筒に封はしていなかったのが一瞬気になったのですが、"封筒に封"はつまるところ"密封されているアピール" なので、そこは敢えて強調しなかったんでしょうかね。
効果としては大差ないので、ルポールワレットやらカップスワレットを持っていないのであればこちらにチャレンジしてみるのも良さそうです。何より100円ショップで材料が揃うのが嬉しいところw



・カラーチェンジ
1枚のカードを指先でクルクル回すと、色が変わります。

変わるには変わるのですが、普通の感性を持った人なら、何かが手の陰で行われていることは、何となく想像できる気がします。カードの表面だけ見ていると不思議ですが、演技全体を見ると手品ムーブ臭が強いです。



・スプレッド・バランス
カードを広げていきますが、右手を離してもカードは不自然な状態で空中に浮いています。ギミックを使っているかと思いきや、なんとレギュラーカードのみで出来ちゃいます。カードマジックのルーティンにどこでも入れられる便利なマジックです。

同じ現象を「Done by Misdirection」だったか「The Movie」でギミックを使うものは見ていたのですが、これはノンギミックというところに興味が湧きました。DVDの演技では「ほら、不思議不思議」という感じでじっくり見せていました。
私の場合は、キャラ的に(コメディマジックの常ですが)スプレッドして「ここから一枚さわって頂けますか。えーと(ここで左手を離して観客の一人を指差す)そこのかた。ええ、おねがいします。この中から(左手の指でスプレッドしたカードの上を指差す)。一枚」的にしたいですね。演技内の一瞬に混ぜた方が、笑いか不思議か微妙ですが面白そうだと思いました。「ちょ、今トランプ浮いてた!」「え?何のことですか?」



・シマウマ
マニアもひっかかるセルフワーキングマジックの傑作。
演者はデックを2つのパケットに分け、観客に好きなパケットを選んでもらいます。数回カットして、一番上にあるカードを覚えてもらいます。その覚えたカードを好きなパケットの方の間に入れてもらいます。さらに2つのパケットをリフルシャッフルでよく混ぜます。カードを広げ表を見ると、ぐちゃぐちゃです。この不可能な状況で観客の選んだカードを当てます! これは賢すぎる。早く演じた者勝ちですよ。

これは同じような現象で、"お客さんに2回リフルシャッフルをさせてなお当てる"というのを以前サークルの方に教わりました。こういうお客さんの手を借りつつ、不可能性をどんどん高めていくものはショーとしては盛り上がりそうだと思います。これはあくまでレクチャーDVDなので途中に入る形になっているんだと思いますけども。

なお私見ですが、これはやはり手品マニア向きだと思います。"カードを選んでもらって、混ぜて当てる"、という現象を考慮した場合、やはり若干手が込んでいますので。やるにしてもやはりトリネタではないでしょうか…。



・トラトライアンフ
観客に1枚選んでもらい、デックに戻します。次にデックを2つに分け、裏と表で混ぜます。デックを広げ、観客にバラバラに混ざっていることを確認してもらいます。おまじないをかけると、 一瞬で観客のカード以外が裏向きに揃います。

やはり数枚は実際に混ざっている方が説得力があるなあと思った次第。ただトライアンフ改案全般として、オリジナルないしそれに準ずる方法のほうが、テンポがよく演者負担も軽い気がします(除:ジョン・バノンの「Play it Straight」)。
ザローシャッフル解説のときの妙に宇宙っぽい音楽がちょっとツボでしたw

なお、大学時代の先輩がやっていた、ティルトを駆使して延々と1枚の裏向きカードを多数の裏向きカードに見せる手法を思い出しました。通常より1枚深いティルトにして表裏が交互には来ないようにしていたりと芸が細かく、愛着を込めて"バカトライアンフ"とか呼んでいた気が。



・リセット
格好いいA4枚とJ4枚のプロダクションから始まります。テーブルに置いたJと、手に持ったAが一枚ずつ入れ替わり、おまじないをかけると一瞬で元通りになります。とても鮮やか! また、3分割のフォールス・カットも丁寧に解説してくれています。

プロダクションは特筆すべきものではありません(フラリッシュマニアの演技を参照したほうがいいと思います)。

リセットの方は良かった。少しずつ技量を要求される感じで、練習しがいがありそう。ラインナップムーブっぽい変化はリセットでは初めて見ました。ていうか自分が普段ペイントブラシチェンジなんかやってるからだと思いますけど。なおダブルカードの扱いは、映像で見ても何とも言えないんですけれどね。生で見ると2枚のカードというのは意外に目立ちますし。
AだったものがJになり、その後一瞬でAに戻るシーンが非常に綺麗だった。分かっているはずなのに一瞬はっとしてしまいましたよ。その後のAとJをラストのディスプレイにするのにするワンステップが若干「あ、今なんかやったよな」と思ってしまう瞬間はあった気がしますが。



・カード・スルー・サム
タイトル通り、親指がカードを貫通します。貫通した指を抜き、カードを見ると穴は空いていません。さらに、そのカードがテーブルの上で・・・・。 普段クールな彼の意外(お茶目)な一面を見ることができます。失笑となる可能性は高いですが、それもご愛嬌。

「お客さんの反応は?」「あーまあ…失笑…ですかね」という演技後のやり取りが全てを表しているといいますか。確実に「あーあ」「はいはい…」って言う反応は得られそうです。
個人的には、サムチップこそ、東急ハンズなど一般のお店で売ってるのが残念きわまりないというか、ああいう想像の埒外みたいなものは不特定の衆目に晒さないで欲しいですね。うまい人のサムチップの応用は本当に異常です。サルバノとかサルバノとかサルバノとか。ネタバレ前提で使っていいようなギミックとは思えません。プロはサムチップをこういう程度の道具と見ているのかなあ。ちょっと残念です。

なんてまじめっぽい事言いつつ、実はこれ見てTVの前で笑ってましたけどねw