教授の戯言

手品のお話とかね。

メンタル・クリエイションズ

長谷和幸「メンタル・クリエイションズ」。前3作も大好きですが、やはり長谷さんは凄い。このDVDものっけから追えないものが多く、それだけでも凄いことだと思うのですが、更に解説聞いてびっくりするという、昨今あまりない素敵な経験をさせて頂きました。練りの甘い作品が横行する中、こういうのが見たかったんだよねえ、と感心することしきり(上から目線ぽくてすみません)。とてもいいDVDです。あ、なんかステマっぽいですけど、別に長谷さんやUGMとかフレンチから何も出てませんw 素直に素敵でした。

演技中は少年が観客にいることもあり大変優しいおじさまという感じで話されているのですが、解説に入った途端に来歴等の容赦無いマニアックさ全開でそこがまたw 「解説のために調べてみたのですが」とか仰るけど、素で憶えてらっしゃいそう。クレジットとしても大変真摯で、むしろこういう点も勉強になります。

本作に限らず、長谷さんのDVDは総じて手品を作るとはどういう発想から行われるか、どう結びつけるかといったことが解説されるのですが、創作家の方にはものすごく参考になるのではないでしょうか。ひらめきとかというのはどうしても他人から学ぶのは難しいですが、きちんと理屈を持って解いていく(結びつけていく)、その過程まで解説してくれるのは意外に少なく、そういう点でも希少価値アリなのです。と思いました(断定を避ける風潮)。

また、観客代表の聞き手としてゆみさんがいらっしゃるのだけど、これがまたピンポイントで聞きたい場所を聞いてくれるという有り難さ。さすがにツボを心得てらっしゃる。こういうデキル観客になりたいです。

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毎度ながらフレンチドロップさんのページの解説を剽窃拝借。

【収録作品】

アウト・トゥ・ルームサービス
マジシャンが思い浮かべた数字と観客の思い浮かべた数字を足し合わせると、ルームキーのナンバーになります。20年間封印してきた秘密が解禁されます。

そういう切り替えをしていたのかー、と解説聞いて初めて気づく。以前お会いした時も素材をよく調べてらっしゃるなあと思いましたが、赤ペンと黒ペンは見事でした。



ミステリー・ダイスボックス 木の箱にダイスを2つ入れて振ってもらいます。これらダイスの出る目を透視したり予言したりします。マジック道具の想定外の使い方。

ミステリーボックスの機構を利用した本当に想定外の使い方でした。ていうか普通、ギミックって買ったらそれ以外の使い方しようとか思わないと思うのですが、長谷さんの場合はそこから一歩進んで、カードマジックですら無いというところがまたすごい。しかも現象として不思議で。サイコロも使えるということでこのギミックの使い勝手が広がるなと思いました。これ用にダイス買ってこよう。



バーン・アフター・リーディング
折りたたまれた紙の中身を読み取る方法。コインマジックでおなじみのアイディアを応用します。

折り方はおなじみでしたが、その後の読み取り方はまるで予想外でした。



ヒドゥン
丸めた紙の中身を読み取る方法。芸術的に巧妙です。

こういうトポロジカルな奴は、もう脳がそういう方向に出来ていないので何で思いつくんだこんなの、としか言えなかったです。また長谷さんは物事/動作の理屈付けが自然なんですよね。



ア・ペニー・フォー・ユア・ソーツ
センターテアのプロセスでまさかのコインマジックのテクニック。

メンタルマジックメインの方なのによりによってコインマジックの技法であり、しかも大変ディセプティブ。そしてスチールしたものを見るところも処理するところも、極めて安全かつ自然で。解説聞いてから見てその違和感の無さに驚く。無論あの動作をする以上はそこであれをするのだな、というのは分かるのだけど、それは元の手品を知っているからに過ぎず。いい作品だと思います。



ポール・レビレーション
丸めた紙幣を指輪に通して回転させると、観客の選んだカードのところにピタッと止まります。これぞ長谷和幸という発見です。

説明通り、まさに発見というに相応しい感じでした。カードの絞込みについてはなんとなく想像がついたのですが(これだけでも応用法が色々有りそう)、最後のあれは凄い。日曜手品師さんの感想じゃないですけど、”おしっこちびりそう”ですよw


セレンディピティ
ドゥー・アズ・アイ・ドゥーをワンデックで行うための一工夫。ありそうでなかった地味にすごい発想。

発想があの「狼と羊とキャベツを全て無事に対岸に渡す論理クイズ」とか、もうねw しかしご本人も仰っているが、何でこれ気付かなかったんだろう。めちゃめちゃありそうというか、…いやほんとなんでだ。そういうものかもしれませんけれども。