教授の戯言

手品のお話とかね。

Sébastien Calbry『manivelle』

 
ライジングカードは見た目にも面白いので好きなのですが、ギミックでやるタイプはデバノ式含め、大体、買う→家でやってみる→すごーい!おもしろーい!→手品箱にしまう という経路をたどっております。そんなある日、こざわまさゆきさんが「マニベル届いた。機構見て爆笑」とか仰っていて、気になったので買ってみました。爆笑でした。
 
バニ・ボッシのライジングカードでも、手回しクランクを吸盤でデックに付けるという、見た目と面白さが似ているものもあるのですが、あれはそれっぽく見せているだけで、本作とは違う機構でカードを上げます。
 
商品紹介ページにもあるように、本作はこのクランクを回す動作がそのままギミックの動作に連動というか直結しております。何を意味しているかというと、「回すのはお客様自身にやってもらうことが可能である」ということです。「まあ箱の垂直面にくっつくんだからテープか磁石だろうし、クランク自体が金属っぽいから磁石入ってるんだろうな」というのは誰しもが予測する感じだと思うのです。実際入っていますし。ただ、とある日本の方が演じていたときはなんのカバーもなく、箱に近づけて「たくっ」って感じでくっつけていて、「YES磁石でゴザイマス」感があったのですが、ご本人の演技だと深めにクランク持ち、箱に「ぐっ」と押し付ける感じで触れたあと、手を離すとくっついたまま、のような見せ方でした(伝われ……!)。そのほうが「なんか知らんけどもクランクが落ちない」になって好きです。クランクに両面テープが貼ってあったのかも、という感じで。
 
また、お客様のカードが上がって、それを渡して「こいつがテメエのカードだ!」と明かしたあと、箱を逆さにして中のデックをざばっと出して、クランクも外して、それらを全部検めさせることができます。というか私がもともと貧弱な手品眼しか持っていないためすぐ引っかかるというだけですが、箱から出たデックを観客が触り始めたのを見たとき、「あれ、いつギミック部を処理したんだろう」と素直に思っていました。「きょうじゅさんは裏表のない素敵な人です」 もしくはぽんこつ
 
クランクをデックに付けた瞬間、該当カードがぴょこっと出てしまうことがあるのですが、一応デックをみんなに見えるように持ち直すときに、トップ部分に左手人差し指を当てておくことで回避可能ということがわかりました。他の人はそもそもぴょこってなったりしないのかな。(「うん、しないね」こざわまさゆき・談)
 
そんなこんなで、やはりお値段としては高めですが、面白い、基本的に失敗しない、持ち運び簡単、現象がわかりやすい、ギミックの挙動を見て笑う、など、久々にギミックギミックした素敵ギミックでした。DVD系はしばらくもういいので、こういう、「ちゃんとした手品にもなっているが、妙で笑えるギミック」がいっぱい出てくれるといいのですが。