教授の戯言

手品のお話とかね。

Nathan Kranzo『The Peek Book』

Nathan Kranzo『The Peek Book』
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2013年(たぶん)に出た、ネイサン・クランゾによるピークに関する小冊子、その日本語完訳版です。序文にも訳者あとがきにも書いてありますが、ピークの百科事典というような大著ではなく、クランゾの視点で有用と判断したものを中心にまとめられた、『俺セレクト!"使える"ピーク集』という趣の小冊子です。マジックマーケット2021春の3日間を頒布開始として、そのあとにいつものBaseで扱うようです。Theが付くのが正式タイトルなのかどうかがいまだにわかりません。
 
2021.0502追記:マジックマーケットへお送りした分は初日で売り切れてしまったので(ありがとうございます)、早々にBaseでも扱いを開始しました。
 
 
クランゾと言えば、私のような方には『Visual Voodoo』でおなじみ(カードがぴょこぴょこ逃げるアレ"The Card cannot be palmed"とか、ライターであぶると溶けるようにコインが消えるアレ"Melting Coin"とか)、もう少し年代下ると大阪のショップGINが日本に招いた際(招いたのは別の団体でしたっけ?)に話題になった"Stone Purse"などが有名でしょうか。いくつか最近の映像商品も買っておるのですが、個人的には上記DVDの頃の、いまより体重が20kgくらい重そうなときのほうのハンドリングが好きです(※個人の感想です)。
 
私も個人的にグリンプスは好きで、その昔ジェイソン・イングランドに「何か聞きたいことはあるか」と言われて、テーブルに座った状態でのピークについてとか聞いたこともあるんですよ。めんどくさかったのか、私の英語がアレだったのか、「何でも聞けとは言ったけど、よりにもよってグリンプス(なぜか都都逸風)……それはヒミツだ」的な感じで終わりましたが。私自身は以前ふじいあきらさんに教えていただいた方法をよく使うのですが(その超劣化バージョンであることは告白しておきます)、本書には似たやつも収録されておりました。また、ドラウン・グリンプスは『Dear Mr. Fantasy』でバノンが使っていたやつなのですが(日本語版同書p. 44の"Line Of Sight (Control)")でもちゃんとリファレンスしている)、私、できないんですよね、プレッシャー・ファンが……。めっちゃ不思議なのは間違いないのに。練習再開しちゃうか……。なお本書でも解説されているライアン・シュルツのピヴォタル・ピーク、これはとても好きです。私は最初シュルツのDVDで見たと思うのですが本当に不思議でした。いったいいつどこでピークしているのだ……、という。以前は「できない……技を超えた純粋な力、それがパワー、的なものが足りないのか……?」と涙を呑んでおりましたが、マッスルではなくちょっとコツがわかってきた気がします。気のせいである可能性も高い。
 
きっちり構成しなおし、原書で漏れていた図(著者からもらった作中図フォルダに混入していたドラフトファイルには入っていたので、たぶん最終稿で入れ忘れていたように思います)も入れ、そしてクレジット大好き・組版マンの偏執的努力によりクレジットも充実、たぶん原書よりもグレードアップしているはずです。とはいえ先述の通り、割とさらっといろいろなピークを学べるお手軽冊子なので、「ピークマニアに俺はなる!」みたいな気負いは一切不要です。あと相変わらず商売センスがしょぼしょぼの訳者により、なぜか原書より25%くらい安い価格設定がされているらしいです。……いや、なんていうかさ、キミ本当に経済学部を卒業しているのか?手間かけて価格は下がっているとか、労働は価値を生まないの……?教えて、マルクス先生!マルクス・アウレリウス・アントニヌス先生!(聞く相手を間違えていくスタイル) 
 

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【2021.0506追記】
誤植というか誤記です。p. 28の下から3行目、『左手の親指でカードを下から上に素早くリフルし始め~』は"左手の"ではなく"右手の"親指が正しいです。大変失礼しました。
この段階ではすでにピークは済ませており、あとはもうそれっぽい動作をするだけなのでホントに本書(&原書)通りに左手親指で頑張れなくもないのですが、左手親指で、しかもインデックスを見る体のリフルをするとなるとかなりアクロバティックな動きにならざるを得ません。ここではクランゾも単純に左右の記載を間違えただけと思われます(訳者の私はそう訳しておきながら自分では右手親指でリフルしておりました)。
演者は右手親指でカードを下から上に弾いていき、中のカードを見ていく(ふりをする)、が正しい(偽りの)動きです。申し訳ございません。
 
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目次
グリンプスことはじめ 
グリム、シャイナー、ライト オーマイ!
 ウォッチ・ピーク 
 iPhone 
 アルペンのグリンプス
 見えないカード・シャイナー
グリンプスにおける黄金律
ブレイクを取っておき、それからピークする
アードネス・グリンプス
ビハインド・ザ・バック・グリンプス
ギャンブラーズ・ピークとボブ・ホワイト・ゲット・レディ
パケット・カット・グリンプス
アイ・レベル・ピーク
 プレッシャー・ファンを使った『カードを 1 枚触ってください』
クラシックのピークのいくつか それからレアなやつも
 グランマのピーク 
 ジョセフ・オベッテのピーク
 引かれたカードのインデックスを見る
グリンプスできる動作
 パーム
 リバーサル 
 パス 
ギャンブルの場でのグリンプス 
 “ザ・ギャンブラー”
 巧妙なトップ・カード・グリンプス
キー・カードのグリンプス
 シンプルなピックポケットの試み
現代のピーク
 ピヴォタル・ピーク
 スティーヴ・ドラウンのファン・グリンプス
 シン・リムのスプリング・グリンプス
 トップ・カード・ファン・グリンプス
 スペクテーター・ピークからのハーフ・パス・グリンプス
 ビドル・グリンプス,サイド・グライド・グリンプス
 アードネス・ブレイクからのリフル・シャッフル・ピーク
 ドリブル・グリンプス 
 ボクシング・グリンプス
 バックリー/エンドフィールド・ピーク