タマリッツ・スタックの並び、組みかた、ダジャレによる暗記法、Move a Card に使える簡易ダジャレチェック法、メモライズド・デックを効果的に使うための安全策、オマケとしてピット・ハートリングとデニス・ベアによるカルテット(ベアはプロップ、と呼称しています)のダジャレ暗記法まで網羅した、手品そのものは一切載っていないB5サイズ34ページの薄い本だ!(ちゃんとオフセット仕様です) お祭りであるマジック・マーケット2019では500円で頒布予定!Baseのショップでも扱いますが、手数料&送料もかかるので、そっちの値付けは1000円とか1200円とかにしようかなと(ぶっちゃけ作者の実際の実入りはあんまり変わりません)。マジケで170冊売ると損益分岐を超えるぞ!荷物になるから40冊くらいしか送らないけど(作者は別用のため今年のマジケは不参加)。販売担当に「えー、小銭出るじゃん。面倒。1000円にすればいいじゃん」と言われましたが、ねえ。お祭りですし。いや、自分で書いたので、「この作者、バカだけどほんと最高に話が通じるな」というくらい全ページわかりみが深い上に、交友関係にクレジッターが多いことに怯え、さほど興味もないのに3ページ分くらいクレジット情報も入れてるしで、そこそこちゃんとした内容にはなっています。「ネモニカ憶えてみようかな」という人のとっかかりとしては十二分な内容は入っているはず。(※私調べ)
「ネモニカを憶える前の私は、何をしてもうまくいかない、典型的な“持っとらん子“でした。春先のある日、だまされたと思って、ということで暗記用リストを渡されました。仕事で100分ほど飛行機移動することがあったので、その際に、前日買って鞄に入れっぱなしだった『異世界おじさん 第2巻』を読んでから暗記に着手しました。降りる頃には憶えていたのですが、その日の夜に行ったスーパー銭湯の露天風呂で10周ほどしたところもうばっちりです。実質2時間だと思います。するとどうでしょう、驚くべきことに、ネモニカをマスターしてから物ごとが180°転換し始めたのです。ニコラス・ローレンス、桂川新平、碓氷貴光、MH、シェーン・コバルト、ピット・ハートリング、カーティス・カムなどそうそうたるマジシャンが来日(一部もともと日本)、ピットの『In Order To Amaze』日本語版の自分校正が進んでいないことなど、さしたる問題ではないようにすら思えてきたのです!あとガルパン最終章第2話も上映されたのです!これというのもネモニカを暗記できたおかげです。ありがとうネモニカ学習帳。この功績を引っさげて、今度アメリカ大統領選に打って出る所存です」(東京都在住:手品ブロガー、手品本の訳者)
マークト・デック嫌いとか、メモライズド・デックなんか使えないとか言う人もいますが、たぶん食わず嫌いというか、本当に良いのを見たことがないだけだと思います。私はEffect is Everything派なので、使えるものは何でも使えばいいし、変に枷を設けること自体がナンセンス、という思考。ともあれ、どのメソッドであろうと、その道の第一人者レベルのはどれも魔法です。
解説冒頭、ピットが「これは『In Order To Amaze』という私の本に載っている1つ目の作品です。これらはじきに日本語で読めるはずです」と言ってこっちを見たので、当然集まる視線。みんなの視線が痛い。「がんばります」としか言えないです。「がんばります。がんばります。もっともっとがんばります……!」(CV:島村卯月) こざわさんに査読をお願いしたら断られたので(こざわ「ええ?メモライズド・デックの現象チェックとか面倒」)、誰か探さねばならないです。誰か。
フォールス・シャッフルについて。休憩中に私も質問したのですが、ハートリングは注目を集めていないときはリフト・シャッフル(バノン先生の影響で私もよく使う)を使っております。これは表向きで行うことで色々なフェイスが見えて混ざっているのをさり気なく見せつつ、どのカードがどの位置になるかを把握可能、というメリットがあります。逆に混ぜている様子を強調したいときは、ゴードン・ブルース、もしくはパーシー・ダイアコニスどっちかの考案したオーバーハンド・シャッフルを用いているとのことで。この後者のシャッフルがまた本当に混ぜているとしか思えず。とても詳しく知りたいのですが、それが載っているという『Five times Five Scotland』が手元にない悲しみ。まあいずれ入手してくれようぞというところで。(2019.0616追記:入手。練習し始めました。)
予約時に特に発番がなかったので、着席が入場先着順だったらどうしよう、と思い、開場の40分前に行く。訳本を出している身としては意地でもいい席に座りたかったのです。大人げないのは理解しています。1人並んでおられたが、私は少し離れたところで会場前を監視しながら『In Order To Amaze(以下IOTA)』の自分の訳文を読み返しながら時間を潰していました。分かってます、自分でも思います。キモい。その後並びましたが、開場予定時刻の10分~15分前に入ったところで入れてもらえました。予約順で1列目2列目3列目とだけ分かれていたようで、私は1列目でOKでした。そして席の配置を見てまずびっくりする。演者のテーブルの若干うしろまで、240度くらいの円弧を描いて席が配置されているのです。「え、マジで?」みたいな顔を見られたのか、受付をされていたポン太さんが「どこに座ってもオーケーです。ノー・アングルだそうです」と。なんだそれは。そんなカード・マジックがあるか?とりあえず最前列の中央を外した位置に座る。
元はちょうど100年前、1919年のチャールズ・ジョーダンの手紙越しマジックを、手紙なし、現場で行えるようにしたもの。さっそく来ましたぞ、クソ不思議なやつが。ひとりしか引いたカードを知らない、別の人がカードを複数回シャッフルする、これで見つけるわけですよ。シャーロック・ホームズの有名な台詞、「ありえないことをすべて取り除いていけば、あとに残ったものがいかにありえそうもないことであっても、それこそが真実にほかならない」('Once you eliminate the impossible, whatever remains, no matter how improbable, must be the truth.)とか言いながら、「選ばれたことのないカードを捨てます」「ときどき選ばれるけど、あなたは選ばなそうなカードも捨てます」「残ったのがあなたが選ぶ可能性があるものですが、日曜には選ばれないやつはどけましょう」「残った、あなたが日曜に選びそうなカード、それもこのトリックで選びそうなのは……」と、どんどんカードを捨てていって、最後に当てちゃうのです。原書ではクライマックス、「『初歩的なことだよ、ワトソン君』("Elementary, my dear Watson")と言いたくなる誘惑に抗おうね」と書いてあるのに、ピット、言ってましたねw「Elementary, Watson」と。キメ台詞を言う誘惑に抗いきれなかったとみえますw
なお解説前に「皆さん、やり方は知っていますか?」ときたので、おずおず手を挙げたら「そりゃキミは知ってるだろwww」と笑われました。参加されていたこざわまさゆきさんが挙手して「I am proofreader(査読者です)」と言ったので、同じく参加されていた齋藤さんを「He's the editor and the designer(おまわりさん、この人、組版/デザインマンです)」と通報紹介しておきました。同じ部屋に『CF』の訳者、査読者、組版/デザインマンが居るという変な空間。「きみらが説明しなよw」とか言われてしまいました。説明は可能っちゃ可能ですが、実演自体そんなふうにはできないですw
休み時間中にMajilさんと立ち話。「私、Master of the Messはリクエストしようと思うんですよ」「あれは見たいですね。あとはあれです、カルテット、あれ実演見たくないですか?」「見たい、めっちゃ見たいです。ていうか正直あれは机上の空論というか、『まあね、実際にやったらそうなっちゃうのは、しょうがないよね』くらいにはなるんじゃないかとは思ってるんですが」「ええ。僕もそう思います。絶対無理ですよね」「……Identity、見たいな……」「The Illusionist!フェイクムーブどうやるのか具体的に見たい」「あああ、本のやつ全部見たい」などと、好き勝手なリクエスト案を話していたら、唐突に野島さんが参入、「ぼくは……エピトム・ロケーションが見たいです」とか言い出すw 「Triathlonですね」「あ、いや、なんならエピトムのとこだけでいいです」なんじゃそらw Majilさんの「いやあ、見てて思いましたけど、アタマいいだけですよピット」には笑うw
観客というか場のコントロールについて、「あなたが場をコントロールする、仕切っていい」(You're in charge.)という、このあともちょいちょい出てくる言葉がありました。思うに一般的なマジシャンは観客のイレギュラーなどを気にしすぎなのかも知れません。名高いマジシャンはだいたい場のコントロールが絶妙に上手いですよね。