教授の戯言

手品のお話とかね。

ゆうきとものSWシャフル

□ 「ゆうきともの サイドウォーク・シャフル」
・サイドウォーク・シャフルをあきらめていたあなたに!
・モンテトリックの傑作をゆうき流にやさしくアレンジ!



「サイドウォーク・シャフルをあきらめていたあなたに!」ときましたか。おいおい、あの程度の手順すら覚えられないのは、練習と気合が足らない以外のナニモノでもありませんよ。私など2年ぶりに触ったって出来…出来…。…あれ…お?なんか怪しいカードがコンニチハなんだぜ?…?これはこれで不思議ですけど間違いなく間違ってる!ていうか手品じゃねーです、ネタばれです。…いやあ、忘れているものですね…(目を逸らしつつ)。

「キミ、原案というか従来の手順と比較したら一体何が良くなったのかね」については"カウントが統一された"のが一番のポイントと思います。私が持っているMartin Lewisの解説書ですと、カードを並び替える理屈付けはイカサマデモンストレーションの中で"ちょっと混ぜる"とか"スイッチという入れ替えを行なう"という意味合いなのに対し、本改案では全て"枚数をカウントしつつ広げる"という動作に一環しているというのがあります。ゆうきさんのバージョンではフォールスカウントの妙で、単に一枚ずつ広げてファンにしただけにしか見えないという強みがあります。
なお第一段の序盤、"卓上に置くカードを少しテーブル外にはみ出させておく"という、後で取りやすくする為の工夫もいいなあと思ったのですが、私が忘れていただけで、Lewisの解説書にもちゃんと書いてありました。…おかしいな。なおその昔私は、その部分はジャケットのポケットにカードを挿す方法で演じていたような記憶がありますが詳細は霧の彼方。

2段目に移る際も先述のLewis解説書ですとカードを180度回転させて、という動作があるのですが(要は怪しい動きをして、何らかの操作が行なわれたように思わせる、みたいなある種のジョーク的なものでしょうか)、このバージョンではディスプレイの流れで自然に向きが変わっています。

3段目になる時にはカップスのディスプレイを取り入れたことで説得力・クライマックス感が増したように思えました。

ざっくり申し上げてゆうきさんバージョンでは上記のような改案対応がされていますが、勿論原案(Joe Ridingの原作は存じ上げないので、Lewisの手順の方とお考え下さい)の通りにやる必要もありませんし、SWシャフルをレパートリーに入れてらっしゃる方の演技を見ても別に違和感はありません。実演する方であれば手順の気に入らない部分・覚えにくい部分には独自の工夫を凝らすものだとも思いますし。

つまるところ、このゆうきさんの改案というのは、"観客からの見た目を"というより"演者の演じやすさ・覚えやすさ"に力点の置かれた修正である、というのが私の受け取り方。勿論見せ方の工夫もあるとは思いますが、観客への効果としては原案でもほぼ同一だと思います。

同様の効果を得られる同時収録作品「ジェイウォーク・シャフル」もとても興味深かった。やはりモンテ系は楽しいですね。

内容には全然関係ありませんが、観客役の方がやたらと演者の台詞・動作毎に「はい」と相槌を打つ方で、同様の癖がある暫く会っていない知人を思い出しました。お元気だろうか。

そして今更ですが、Sidewalkって歩道・街頭って意味で良いのでしょうか。Lewisの解説書だと「ここでいわゆる"サイドウォークシャッフル"という特別な混ぜ方を〜」という部分があり1枚ずつ上から下へ、側面を通しながら回していくステップがあります。要は"街頭"イカサマの時にするシャッフル、と受け取れるのですが、ちょいと気になります。単語からだけだと分からないこういう独特の言い回しが理解できないのがもどかしいです…。

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個人的に今回の改案手順は久しぶりにSWシャフルに触れるいいきっかけになりました。しかし同時に「こういう販売手法っていいのかなあ」とも思いました。SWシャフルの原案といえばRidingですし、いま手品業界で最も普及しているのはLewisのパッケージだと思うのですが、それの更なる改案って商品として成立してしまうのですかね。いちユーザーの立場からすると、覚えやすい手順を用意してもらってありがたい話ですし、別にそこに金を払うことに何の躊躇も無いのですが、Lewisの権利とか大丈夫なのでしょうか。まあマジック、特にクロースアップのしかも手順改案の知的所有権部分などかなりグレーな部分ですし、誰も確認しないとも思うんですが、Lewisとかからするとある種の権利侵害になったりしないのかしらと思った次第。他人の褌で相撲とってんなよ、という感じで。
まあ私がリセットの改案を考えたところで間違いなく商品にはなりませんが、今回これで商品として成立するのは、偏にゆうきともというネームバリューの成せる業ということでしょうか。改案というものの商業展開について、ちょっと考えさせられる商品でした。考えるだけで別に何もしませんけれども。

これに限らず、著作権という意味ではぶっちゃけその辺に転がっている手品出版物や、いつものMMLもアウトな気がしなくも無いですし(改案したりクレジットしたりしてるとはいえ、原作者からの直接の許諾を貰っているとは思えませんし)、古くは「カードマジック事典」なども絶対1件1件の確認などはしていないと思うんですけどね。え?「奇術研究」ですか?またずいぶん古いものを。あれは考えるまでも無くドンアウトですよw 無許諾転載&出版・販売など、古き良き時代のみに許されるユルさです。いや、昔でも実はアウトだったんじゃないんでしょうか。今なら確実に高額訴訟沙汰と見ましたw