John Guasterferro「Discoveries and Deceptions」。彼のレクチャーノートの2番めに新しいやつ。発見と旅というテーマでまとめられた作品集です。いわゆるブックレット形式なのですが、デザインもおしゃれでちょっとお気に入りです。無駄に全訳などもしてみました。内容も良かったです。
こんてんつ:
01. BLACKJACK TRANSPO
カードケースと観客の袖の中の、2枚のカードの入れ替わり。
イカサマの方法を説明するという体で本当に観客の袖にカードを入れるというあたりが面白い。会話が楽しめそう。
02. M.I.T. ACES
観客のカードを当てようとするがなぜかエースプロダクションになってしまい、肝心の観客のカードはいつの間にかデックの中でひっくり返って現れる。
M.I.T.は”magician in trouble”(マジシャン大ピンチなう)の略。マジシャンの思惑と違ったことが起きるのは私の大好物です。
03. BOOK OF CLUES
フォー・オブ・ア・カインドのプロダクションだが、全く違った趣の手順になっている。3人の観客が即席の探偵というかサクラになり、残る一人のカードを当てる。
いいですね、最終的には観客にやってもらう手品。
04. HERE, THERE & IN MY POCKET
選ばれたカードが色々な場所から同時に現れ、4枚のエースへと変化し、奇想天外なかたちでポケットに入れていたカードと位置が入れ替わる。
今年に入ってからミステリー・カードのプロットが大変好きになりました。最初によけておいたカードが実は観客のサインしたカードだった、みたいなやつです。これはポケットを使いますが、枚数そのものが変化してしまうとかもポイント高いです。技法レベル的にはちょっと難しそうですが。
05. X-FACTOR
カードをデックの中に埋もれさせ、更に箱のなかに入れたにもかかわらず、演者は観客のカードを透視する。
本書に記載通りだけでも、極めて胡散臭いプレゼンテーションが楽しめそうですw 手品としても普通に不思議です。(褒めてんのか褒めてないんだかですが、褒めてます)
06. STOCK EXCHANGE
2人の観客がデックを表裏ごちゃ混ぜにし、彼ら自身の選んだカードがどこに行ったか分からなくしたにもかかわらず、それを見つけ出してくる。しかもデックの並びを戻し、その上赤と黒が分離した状態で!
これはUltimate Selfworking Card TricksのDVDに寄稿されていましたが、理屈はともかく自分では思いつかないなあ、という感じの素敵セルフワーキング。全体的に漂う、絶対これ凄くグチャグチャ、というイメージと、ラストの綺麗に分かれる感じのインパクトがいい。観客もまさか自分たちであれだけ双方のパケットを交換して混ぜたにも関わらず分離するとは思わないでしょうしねえ。実によく出来ている作品だと思います。
07. MATCH GAME
古典であるマッチング・ゲームっぽく、演者と観客がエースを見つけ出してくる。
STOCK EXCHANGEと同様、彼のカット・ディーパー・エクスチェンジを活用するもの。こちらのほうが小品手品という感じでお手軽な感じですね。
08. DALEY PREWUEL
カードを揺らすと、2枚の黒のエースが入れ替わる。
DaleyのLast Trickにちょっとした続きを加える事が出来る作品。お手軽。彼のLast Trickの演出方法は、奇抜ではないけど実践的だと思います。
09. MULTI-MENTAL
複数枚のカード当てトリックに関してのユニークな試み。マジシャンは7人の観客の心を読み取り、それぞれを違った方法で取り出してくる。
他枚数のカード当てってやったこと無いのですが、サロンレベル用にマスターしておいても良さそうだなと思いました。特に前半はこういうのに詳しくない私にも「これは賢いなあ」と思うような展開で、中々に驚きです。
10. iCONTACT
マジシャンと観客が、他の観客のiPhoneのコンタクト・リストから、ともに同じ人を思い浮かべる。
私自身はiPhoneを持っておりませんが、仕組みとしては理解できます。しかしカード扱うより精密な動作が必要な気がしてならないw
11. ZEN BEND
指先に持ったストローが半分に折れる。
これ、本人は最初クソネタだと思っていたけど、冗談で友人のマジシャンにやったら相手が椅子ごとコケた、というw ペンギンのライブでも見て、読んで訳してなお「面白いかな、これ」と思ったのですが、自分でやってみて思いました。超面白いwww 「く」の字どころか「V」の字くらいまで曲がる上、スピードの調整も可能で、これはいいネタを憶えたとひとりニヤニヤする午前2時。準備も簡単。
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ちなみにバノン先生の計らいでガスタフェローとメールをやりとりする機会があり、軽く話を振ってみたらあれよあれよという間に日本語への翻訳&出版の許可を得ることが出来ました。正直言って本当にOKくれるとは思っておらず(オイオイ)、作業も計画も何も準備してないのですが、先日ご紹介した「SEVEN WONDERS」、これ「Discoveries and Decepcions」、あと多分近々紹介する「Ready, Set, GuastaferrO!」、この3冊を合本にして出せることになろうかと思います(2014年後半を目指したい)。英語版をバラで買うよりお得くらいにはしたいです。……とか書いて、何故翻訳等の手間をかけた上でオリジナルより安く売るのかがよく分からなくなってきました。どうも、経済学士です(ゲーム理論専攻、ゼミでの評価「可」)。
「あなたの『One Degree』、あれも訳したりしたらダメですか?」 「あれは僕は著者ではあるんだけど、出版とかの権利はVanising Incなんだ。だから訳して君が楽しんでくれる分にはいいけど、出版については僕はOKとかNOとか言えないんだ、ごめんね」 「にょろーん」という感じだったのですが、翌日、「Vanishing Incに話してみたんだけどOKっぽいよ」とかきて、なんかそれも出すかもです。
ちなみに日本での知名度は決して高くないガスタフェロー先生ですが、ワールドワイドで見れば結構有名です。特にその著書『One Degree』については、出版されてから様々な書評においても大絶賛されたものでした。「この数年に出た書籍の中でも桁外れに素晴らしい!」とか。(ここだけ抜き出すとボジョレー・ヌーボーの毎年の品評台詞みたいですがw) 本業は広告業界の人らしく、手品をどうプレゼンテーションするかとか、演出面や売り込み方にも学ぶことが大きいな、というのが読んでみた印象です。
数年前に二川さんがこれに載っている手品を見せてくださり、その時に「面白い手品考える人だな〜」と感じてガスタフェローDVDを買い込んだ思ひで。あのときはまさかレクチャーノートを買ったりとか、著作をちゃんと全部読むことになろうとは思ってもおりませんでした。人生どう転がるか分からないものです。