教授の戯言

手品のお話とかね。

紀良京佑「SYSTEM」


その昔、二川さんに見せてもらった手品があって、「どういう原理なんですか」的な質問をしたところ、「紀良さんのシステムでして」というお返事をもらい、「世の中色々な賢い原理があるんだなあ」と思ったのが10年くらい前だった気がします。そのときは「未発表なんですよ」ということだったので、入手を考えることも、それ以上突っ込んで聞くのも失礼かなと思って忘れておりましたが、ついに出ました。 「SYSTEM」

大体カード手品に触れ始めてしばらくした人は、まずサイ・ステビンスのシステムに触れることになると思うのですけれど、大抵のシステムは使わなくなっていくことが多いと思います。一番の理由はおそらく、「組むのがめんどくさい」からだと思います。赤黒交互でバレやすいとか、そういうことを言う人もいらっしゃいますが、それは多分副次的な言い訳といいますか、「気づかねーよそんなもん」&「そういうのに気づくマニアなんか相手にしなければいいじゃないですか」という気がします(※個人の感想です)。タマリッツのネモニカみたいに、ある程度開封したところからファロー何回、ズラすの何枚、みたいな理屈っぽく感じで組めるのはまだしも、アロンソンとか超めんどくさいですからね(サイ・ステビンスは調整とファローでいけますが)。

さておき。

作られてから多分10年以上を経て、発表となりました、紀良さんのシステム。サイ・ステビンス的な理屈ではあるのですが、赤黒も交互ではなく、いくつか演じて、最後に全部のカードが順番に並んだクライマックスという、いわゆる一般のお客さんに一番受ける(※個人の感想です)流れに持っていける構成になっています。数理ではなくトリックを複数演じられるように組まれている、という点ではアロンソンみたいな感じかなと思いましたが、数理的な面も兼ね備えているように感じました。

M-DECKの研究系とか、それこそ海外で大量にある、ネモニカやアロンソンを使ったマジックの研究本などのように、今後キラシステムでもどなたかのそういった作品集が出てくることを願っております。めんどくさいからあんまり使う人がいない分、システムとかメモライズドのデックは、ひとたび使われると、全く追えない感じが出てたまりません。いや、私はうまく使えてないんですけどそれはさておき、です。アラゴンの不思議な手品を見て、サイ・ステビンスものだと知ったときに「こう使うのか!」みたいな驚きがあったのを思い出します。