教授の戯言

手品のお話とかね。

ゆうきとも MML Vol.7

「エルムズレイ・カウントでマジックの幅を広げる!」

【収録内容】
 ◆エルムズレイ・カウントを極める
  ・ジャズ・エーセス(ワンアヘッドの原理)
  ・カム・トゥギャザー(オイル&クイーンタイプのパケットトリック)
 ◆即興で演じられる強力マジック
  ・ノーエクストラの紙玉の手順(フェイクパス/ユーティリティ・ムーブ)

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Vol.7です。近頃ゆうきさんのMML以外のDVD感想を書いてないという、バラエティに乏しいコラムであります。反省。ホントはもっと沢山無駄遣いして見ているんですが。Vol.8もありますけど、次の感想は違うのにしましょうかね。それはそれとして。

さあ、諸君、いよいよ手品っ子必携技法、"エルムズレイカウント"の時間だ!


しっかしティルトと並んで、手品臭の薫り立つ技法ですよね・・・。
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・ジャズ・エーセス
一枚ずつAが消失してはマスターパケットに移る、というものなのですが、同じテンポで淡々と進み、個人的には今ひとつぱっとしない感じでした。レギュラーパケットとギャフ入りパケットとで単純に比較できるものではないとは思いますが、やはりマクドナルド4エーセスは偉大だなあと言う感想を抱きましたね。M4Aとの決定的な現象差は、Aが消失するたびに、その移動した結果を見せるか見せないかという点に尽きるかもしれません。M4Aは「消える・消える・消える・揃う」なのですが、こちらは「消える出る・消える出る・消える出る」と一々の反復がくどい印象です。同じ現象が続けば3回目くらいにはお客さんも「ああ、消えて移るのね」と、これから起こる事を容易に予想出来てしまいます。これでは不思議なのかなあと言うのが率直な感想でした。手品というより作業みたいというか・・・(失礼)。



・カム・トゥギャザー
上記タイトル解説にもある通り、オイル&クイーン系のトリックです。今更ながらオイル&ウォーターをご存じない方のためにちょっとだけ説明しますと、OWとは「一枚ずつ交互に混ぜたはずの赤いカードと黒いカードが一瞬で赤グループと黒グループに分離するというトリック」です。「振ると混ざるんですよ」などというギャグと共に、また一瞬で交互に混ざるような手順もあります。で、オイル&クイーンはその類型トリックです。・・・説明になってないですね。通常のOWは最後、赤赤赤赤と表向きに出して黒黒黒黒、ハイ分離したね、で終わるのですが、赤赤赤赤と出して当然黒黒黒黒と来るかと思ったお客さんの予想を裏切り、別の何かが出てくるというもの、それがOQです。何が出てくるかはタイトルからばればれな気がしますが、Aが一揃い出てくる事もありますし、ストレートフラッシュの4枚が出てきて、演者を見ると構成要素のラスト1枚を咥えている、なんていうものもあります。・・・二番目に出した例は私が以前テキトーにやっていたものなのですが、最近準備が要るトリックをやらなくなってしまったので、必然的にお蔵入りになっておりました。結構ウケは良かったんですけどね・・・。

それはそうと"オイル&クイーン"って全身油まみれの女性が油の海からざばーっと出てきそうといいますか、エレガンテの対極にあるようなイメージのタイトルですよね。イメージ画像はゴルゴ13 第112巻「死臭の聖書」で、コールタール槽から出てきて司祭を絞め殺すゴルゴw 誰か爆天「太田光の4コマ劇場」のゴルゴを全部下さい。

ゆうきさんの演技を眺めていた時には、てっきり「OWなんだけどもエルムズレイを使った手順の紹介なのかな(っていうかこのDVDシリーズ、OW好きだなー)」などと思っていたのですけれど、最後にOQ現象になったときには嬉しい不意打ちを味わいました。騙されて喜ぶというあたり、自分でもおかしな人種だなあと思うのですが、常識や予想の陥穽に落ち込む瞬間のあの感覚はたまらないものがありますね。"信じられねーかも知れねーが、今おこった事をありのまま話すぜ!"(ポルナレフ氏 談)的な。
ゆうきさんの手順に関しては、ところどころ絶妙な箇所でちらりちらりと見えるべきカードが覗くようなハンドリングなのですが、その辺がニクイところです。これをゆうきとものチラリティと名づけました、本人無許諾で。



・ノーエクストラの紙玉の手順
即席系というと必ず出る紙玉手順。サカートリック・小品トリックとしてはいいと思うのですが、これを用意して演じられるような状況であれば、もっと他のトリックがありそうな気がします。またこれをやるにしても、最後に何か別の"目を引くもの"をロードして出すほうが何かと受けると思いますが・・・。ケータイとか珍妙なアクセサリとか身近なものをロードして、視覚にアピールするチョイスをしたいですね。とまあ個人的趣味からの文句はあるんですが、最後に全てが無くなってしまうという締め方が非常に美しいトリックです。3ボールトリックのような小さなスーパーボールを使う手順を見せていただいた時は消失エンディングがとても鮮やかでしたので、どちらかというと逆に即席性を排し、ばっちりマジックとして見せられる類のトリックである気がしました。