教授の戯言

手品のお話とかね。

PETER KENE 「GYPSY CURSE」

現象としてはいわゆるワイルドカードで、モンテゲームの一種のようなイメージです。昔のトランプのような、縦方向に細長いカードを取り出し、
"全部で7枚のカードがあること"
"うち一枚は絵柄のカードであり、これが当たりのカードであること"
"残りの6枚のスポットカードは外れであること"
を示して説明します。演者は「観客には通常とは逆に本来ハズレである黒いのを当たりということにするので、それを見つけてほしい」とお願いするが、観客は当てることが出来ず、最終的には全てが絵柄のカードに変わってしまう。



実は解説を読んだ時、パターが微妙に自分の趣味やスタイルには合わなかったのですが、マジェイアさんのページにありましたカップスの演技時のパターを参考にさせていただいたところ、かなりしっくり行きました。



いわく、「自分のひい(*n)じいさんはイカサマ師で、「普段外れの6枚を当たりにしてやるぞ」、といってカモを呼び寄せ、「さすがにあまりにも分が悪いんで、いつも使っている外れ(今回の当たりカード)を半分の3枚にさせてもらう」といってわきにどける。1:6よりかは勝率が落ちるが、1:3でも十分だろうと判断したカモは大金をかける。しかしうちの爺さんは悪い奴で、実はどれを指されても良いように、カードを全部、いつの間にか絵札に摩り替えていたんだ。勿論卓上にどけて置いたスポットカードもね」という感じで、非常にすっきりとしています。まあタイトルの"呪い"とか出てきませんけどw 



使う技法もHCとエルムスレイ、マルチプルリフトなどですが、概ね難度は高くないと思います。マジェイアさんも書いてらっしゃいましたが、ラストにカードをファンに広げ、7枚とも絵札になってしまったことを表も裏も(!)しっかりお客さんに見せることができるのが素晴らしい。手渡し不要なくらいの説得力あるあらためです。また以前購入した時にも書きましたが、使う技法や考え方はカードマジックのそれなのですが、ものがタロットカードのような感じなので、かなり違った印象を与えることが出来ます。私は原則お話のある手品は苦手なのですが、これは現象も分かりやすいですし、人々に食いつきのいい"イカサマ"に関するトリックのため愛用しております。安いのでどこかで買い物をした際にもう一品買っておこうかなという時にいいのではないでしょうか。先日のClub Sandwichと同様、非常にコストパフォーマンスの高い・・・というか実演しやすいトリックだと思います。マジェイアさんの記事にあった「カップスのは完全に手渡しができた」というのが個人的には物凄い気になりますが、通常の改めでもかなり説得力があるので、一方でちょっとマニア向けの発想かもしれないなとは思います。



ちなみに、昔に聞いたストーリーとしては、タイトル通りジプシーのかける呪いの再現でした。「あるイカサマ師が、ジプシーたちをカモにカードモンテで金品を巻き上げていた。容赦無くカモを引っ掛けていた彼は、騙したあるジプシーから立ち去り際に"人生の最も重要な局面で失敗するように呪ってやる"と言われる。気にも留めず過ごしていたがそれから数年後、とある場所で彼は大勝負をすることになっていた。相手の男はイカサマ師に対して「今回は本来外れである6枚のスポットカードを当たりとしよう。外れは絵札1枚だけだ。しかもキミが指定していい」という。ディーラーが「さすがに1:6では勝負にならないでしょう。せめてスポットカードを3枚よけておいて、1:3ではいかがですか」という提案をする。男とイカサマ師はそれに同意し勝負を始める。1:6では勿論だが、1:3であれば、イカサマなど使わずとも絶対に勝てるとほくそえむイカサマ師。しかし運の悪いときというのはあるものでこの有利な選択を外してしまう。この勝負には大金がかかっていて、持ち合わせが無い身としては負けたら命で払うしかない。幸い相手の男は命までは取らなかったが、イカサマ師にとって命の次に大切な手の指を残らず叩き折ってしまう。くぐもった悲鳴をあげてイカサマ師がよろよろと立ち去ったあと、卓上のカードを表に返して見たディーラーは驚愕する。なんと、スポットカードは全て絵札に変わっており、どれを引いてもイカサマ師が負けるようになっていたのだった。男は言う。「昔あの男のしてきたことの報いが来たのさ」」的な。もしかしたら手品の本ではなく、何かのお話で読んだことかもしれませんし、虚構と現実の狭間を旅しがちな私が、勝手に作り上げたお話かもしれませんけど。といいますか、タイトル通りの暗い話なんですよね・・・。



魔法都市が全然更新されなくなって久しいのですが、濃ゆい記事をまた読みたいものです・・・。