教授の戯言

手品のお話とかね。

アマー レクチャー備忘 (2/2)

5.カップ&ボール
アマーはカードやコインなどの末梢スライハンドより、この手のジェネラルマジックの方が絶対輝いてる、と思っていたのですがその持論の通りでした。なんと言いますか、美しい。無駄が無い。演技のときより、解説のときのウォンドスピニングバニッシュの一段と凄まじいキレとコクときたら。いや、こういう時文章ってもどかしいのですが、本当に凄く綺麗なんです。まるで疑念を抱く余地も無く、至近距離でもパスは気配すらも見えず、ただただウォンドをくるんと回して左拳の前を通過するとしか見えません。しかも距離もちょっと離れているようにしか見えなかったのです。実際はミートポイントが存在するはずなので、どこかのタイミングで相当な接近をしているはずなのですが…。もうなんというか、あのバニッシュの美しさにため息しか出ません。感激です。


手順の爽やかさやクライマックスまでを含め、今の世の中でやる3カップバージョンのカップアンドボールとしては、多分バーノンのルーティーンより優れていると個人的には思いました(2カップは言うまでも無くトミワンのアレですね)。見せたいことは網羅していて、現象がわかりやすくて、そして演技終了時の状態が「終わりました!」という感じで。


「若かった頃はこうやってた」→「自分の演技VTR見たんだけど、ごめんやっぱりなんかちょっと間違ってたなと思った」→「このように直した」という、彼のカップアンドボールについての演技の変遷、その理由についても少し触れていたのですが得心がいきます。見ている側としても、今のバージョンのほうが安心して拍手できますね。



6.ビルフロムピーナッツ
二人のお客さんから借りたお札をそれぞれ半分に破り、それぞれ片方を領収書として返す。その後自由に選んでもらったピーナッツの殻を割ると中からお札の切れ端が2枚。嫌な予感どおりその切れ端は…。最後には切り離されたお札も元通りに!


もう、なんかこの時点で、目の前の福耳ヒゲおじさんは、実は新手のスタンド使いなんじゃないかと思いました。ポルナレフ「信じられねーかもしれないが、今起こったことをありのまま話すぜAA」が必要なくらいです。お札を借りた上に破りもしていたので、必然的に私の視線は彼の親指近辺に行ってしまいがちになるのですが、実際問題、今回全く関係ありませんでしたw それでいながらこのクライマックスが起こるんですよ。なんかやばい人を目の前にしているんじゃないかと不安に。魔法の国から来たんじゃないのか、この人…。


解説を聞くと、かなり手間(とお金w)のかかるものでしたが、そういう事を組み合わせると、その労力を補って余りある現象が起こせるのはよく分かりました。なおここで教えてくださった"ジプシースイッチ"は非常に興味深かったです。似たようなものは学生時代にステージマジックで使っていたような気がするのですが、かなり便利なスイッチだと思います。モダクラで読んだのも似ていた気がしますね…。



7.コインスルーシルク
シースルーのシルクに乗せたワンダラー銀貨が一枚ずつ、ぬるりと抜けてきます。最後にはお客さんの手の中に握ってもらったシルクをすぱっと引き抜くと、手の中に銀貨が抜け出ているというステキエンド。


現象が非常に分かりやすく、最後にお客さんの手の中で現象が起こるので私好み。"頭髪"・"メガネ"・"口ヒゲ"3点セットで微妙にキャラがかぶるジャーマンマジシャンこと、マニュエル・ムエルテの"カザノバコイン"でしたか、あれと同様の手法。素材としてアマーがストッキングを使わないのは、2児のパパとしての尊厳なのでしょうかw なお、生で見ていた限り全く追えませんでした。毎度毎度マジシャンに生でお会いする度にこんな感じなのですが、もう目の前で手品してもらってると年甲斐も無くうはうは楽しんでしまうので、種とか全然わからんです。つーかそんなのどうでもいいんですよ。飾りですよ。種を見破るのに脳を使うくらいなら、目の前でコインがシルクを貫通してぬるぅりと出てくるのをただただ呆然と見ているほうが断然有用。みんなで騙されましょう。これが段々気持ち良くなってくるんですよー!

                                                                              • -

番外編.飲み屋
こんな機会はめったに無いことですし、参加してまいりました、懇親会。レクチャー後に有志でアマーを囲んで、夕食を兼ねた飲み会だったのです。いやー参加して良かった。池袋のJinってお店だったかな?一日で色々な方とお知りあいになれたし(参加されていた一部の方と、私の通っていた学校の知り合いとが繋がっていたりして、世間の狭さを感じました)、アマーとカナダ人英語教師のNさんに挟まれて英語の勉強にもなりましたしw 私の拙い英語でアマーにきちんと通じたのか不安です。アマーがノリノリになってくると3割くらいはリスニングできていないのです。「よく分かっていないのにyesと言ったことがある」「あるある!」状態。ああ。恥ずかしい。語学はまじめに勉強すべきですね。誰か手品好きな英語圏出身かつ関東在住の方、お友達になってくださいw 独身美女とかだともうniceです。


ちなみにアマーに
「私、あなたのEtMシリーズにも凄くお世話になったんですけど、Classic Renditions シリーズ、あれが一番のお気に入りなんですよ」と言ったら
「お!嬉しいね、特にあのvol.3(スレッドの解説)なんかは、実は私の自信作なんだ」と。
「あ、そうなんですか。いや、私はvol.1(ビルチェンジ)が凄い好きで。ステップを2段に分けてる工夫にも感激したんですが、解説のときに真っ赤なTT使ってますよね、あなたが"ほら"って見せるまで私は全然気付かないで、解説のときにまたすんごく驚かされたんですよ」
「はっは!いい演出でしょ!」
と言う会話が出来ただけでひとまず満足です。流れで「サルバノかよ!」と突込みを入れられれば良かったと、今にして後悔。サルバノとアマー、どっちの初出が早いのかしら…。


余談ですが(私のブログは全部余談なのですが)、Classic Renditions シリーズは「まあとりあえずは見てみようかな」と思った程度の動機で見始めたのですが、個人的にはイチオシの作品集です。EtMのスレッドミラクルスではかなり詳細な解説をしていますが、エッセンスはこのClassic Renditions にかなり凝縮されているので、こちらで習得するのもいいかもしれません。ちなみにマニア的見所は、まだアマーが若くてふさふさなところです。お前は、さっきお会いして、凄く感激させて頂いた偉大な方に対して何たる失礼な!w

                                                                                • -

さて、こんな繋がりから、また別のイベントにも参加できるようになるといいなあと切に思いました。開催して下さったJCMAの方々や今日お会いすることが出来た皆様に大感謝です。勿論アマー先生の素晴らしさは言うまでも無く。ありがとうございました。おかげでステキな一日を過ごせました〜。

                                                                                • -

補記:
寝る前にレクチャーノートを読んだのですが、これはちょっとどうなのか。内容の話ではなく、誤字・脱字・割付ミスが多すぎます。言わんとしていることは理解できなくも無いですし、そこはさしたる問題ではありません。しかし、まがりなりにも製品として販売するのですから少しは校正作業をしていただきたい。ざっと見た30分でも30箇所以上は直せると思いました(表紙や目次・白紙などを除けば11Pの冊子でこの誤植量は、やはり尋常ではありません)。誤字や珍訳について、全編がミスターマジシャンの製品紹介と仮定すれば、ある意味それはそれで面白いと思えなくも無いのですけれど。あとがきの後にまたトリックが解説されていたり、こういうのは訳以前の問題というか、誰もチェックしなかったんでしょうか。今後のレクチャーノート作成の際には改善されている事を祈ります。