教授の戯言

手品のお話とかね。

野島さんレクチャーノート

ネットサーフィンしていたところ、某手品ショップにてロザンダーの「チェーンブレイカー」という商品を久々に見ました。以前見たときに面白そうと思っていたのですが、その9,000円前後という値段に「まあ、サムタイに9,000円は無いだろ」と思ってスルーしておりました(「チェーンブレイカー」は俗にサムタイと呼ばれる貫通トリックの一種なのです)。

サムタイ(Thumb-Tie)とは、

・両手の親指を紙縒りなどで結束する事で腕で輪を作り
・その状況で柱やらバッグの取っ手部分やらにその輪が貫通してしまう

というそんな手品です。などと訳知り顔で言っていますが、実は演じた事は勿論、手法すら存じません。以前に先輩が演じるのを見て「地味に不思議だ…」(100%誉め言葉)と思っていたくらいでして。ちなみに必要な道具としては紙縒り(ないし固めの紐)のみなので、材料費としては多分100円しないくらいでしょうか。ロザンダーのものはビニールテープでそれを代用しつつ、OKサインのような形で結束した親指人差し指で作った円に物体がぬるりと貫通するものだそうで、鎖も使ったりと色々オプションがあるとのこと。ともかく、このような"道具はコンパクトなのに大人数に見せられるもの"が最近のお気に入りです。エッグバッグですとか。先人の知恵は偉大だ。



が。



自宅にある資料をひっくり返したのですが、残念ながらサムタイを解説したものがありませんでした(ターベルコースを持ってないことがばれる発言)。それではとネットで検索してみた所、トリックスで野島伸幸さんのレクチャーノートが売っており、その中に一つ、「輪ゴムを用いたサムタイ」というのがあったので、散歩がてら八重洲に赴き買ってまいりました。



□ 輪ゴムサムタイ















□ のじまきのカードマジック〜オイル&ウォーター編〜
□ のじまきのワンゴムマジック
□ 最近ののじま
http://catalog.trix-co.com/?cid=22676:title=


…ああああサムタイだけのはずだったのに!本当に私は自制心が弱い。


しかし帰って開いてみてびっくり、以前彼が出していたレクチャーノートのシリーズは"ご本人が持ってきた原稿そのまま印刷"、と聞いたことはあったのですが、まさか中身まで手書きだったとはw 手書きなのは表紙だけかと思ってました…。それはおいといて、折角なので寝る前に一通りやってみようと思い、買った当夜に上記4冊の手順を一通り追ってみることに。結局3冊が限度でしたけど。




□ 輪ゴムサムタイ
原理に納得。よく考えるものだなあと。ただ書いてもあるのですが、いわゆる輪ゴムというより髪留めゴムでないと厳しそう(普通の輪ゴムだと径が小さい&摩擦が強い)。そしてうっかりちょっと短めに作ってしまったが故に締め付けがきつくなり、30分練習しただけで右親指の鬱血が戻らないw 普通のサムタイとは原理が結構違うらしいのですが、ノーマルサムタイの原理の方もゆくゆくはマスターする所存。どこで学べばいいのか知りませんが、知ろうと思っていさえすればその内分かると思います。ただ、縄抜けっぽいコンセプトからして私好みではあるのですが、まだまだまだまだまだまだまだ実演には程遠そうです。なお表紙キャラクターの"ワゴミちゃん"の中途半端な表情が凄くいい。



□ のじまきのワンゴムマジック
ちなみに私は輪ゴムマジック大好きな割に見る専門でして、…精進したいです。本書の内容としては使用グッズが輪ゴム一本のため必然的に綾取り要素が強い印象。3段のルーティーンになっていて、実演のコストパフォーマンスに優れていそうな構成っぽいなと思いました。3段目の「一本で色々な星を作ってみましょう」は、先述の通りマジックというより綾取りに近いのですが、輪ゴム一本でこういうのをさらっと見せられるようになるのがある意味理想的かもしれません。「なんかやって」といわれて、一本の輪ゴムで本書のような1分程度の不思議世界をぱっぱっぱっと見せられるのは淡すぎず、濃すぎずでの実にいい塩梅の対応だと思っています。実際問題、不思議の合間に綾取りっぽい"種も何も無いけどちょっと面白いもの"を入れるのは、お客さんの意識を弛緩させるという観点からも、流れの中でいい(ゆるい)アクセントになります(経験談)。



私もその昔、一本できちんと五芒星を描ける手品をやっておったのですが、もはや記憶にございません(一本で綾取りっぽくやった後「二本でも出来るんですよ」とスターゲイザーに繋げていました)。輪ゴムは実演・練習しないとすっぱり忘れますね。しかし久々にクレイジーマンズハンドカフをやってみたのですが、あまりの自分の腕のふがいなさにがっかり。下手糞過ぎる。在りし日には演技の後半、一本は手首にさりげなく戻してしまいつつ、残る一本でCMHの井桁のような形を作って見せて、もう一回貫通をやるかと思わせつつ最後には一本になってしまって終わる、というのがお決まりのパターンでした。…一本でやる方法すら忘れてました。もうグダグダw



CMHといえばその昔、サークルのOBと一緒にふじいあきらさんによるバーでのショーを見にいったのですが、ショーのあとの談笑中にふじいさんが手遊びでやっていたCMHが物凄くキレイで印象的でした。店を出たあとでOBと「今日見られて最も良かったのは」という話題になりました。ショーでのマジックも相当不思議だったのですが、(失礼ながら)期せずして二人とも「雑談の時の輪ゴム!あれすごかったですね!」ということに。たしかにうまい方のやられるCMHは本当に魔法のようです。視覚を疑います。信じられねーかもしれないが今起こった(以下略)。




□ のじまきのカードマジック〜オイル&ウォーター編〜
表紙絵の脱力っぷりにこっちも脱力していたのですが、中身はちょっと興味深かった。勿論小ネタの中には「・・・それは不思議というか、見たまんま選り分けていませんか」というのもあったのですが。

同系統のものを10個くらいまとめたものは、季刊雑誌の「○○特集」などにはよくありそうですが、単一の冊子体としてはあまりみたことがありません(そもそもそんなニッチ狙いのノートなど需要が無い気がしますが)。そういう意味での面白さプラス、各ステップごとに状態の図解があるため、同じような形式である自分用備忘ノートを見ている感覚で読め、非常に入りやすかったです。ちなみに交互になっている「分離」を示す際の、2枚→3枚で見せる部分はちょっと感心しました。なるほどねえと。持ってないと何のことだか意味がさっぱり分かりませんね。すみません。



上記は一通り出来るようにはしてみたいなとは思っておりますが、レギュラーではタマリッツのカルを使うのと、ホリングワースのロンコレにあったもの、二川さんに習った誰の作品だかよく分からないもの、ギミックものではハーランの「ロイヤルオイル」やボグニアの「ソーテッド・アフェア」辺りで、私は今のところはいいかというところ。

ESPカードに全く興味が沸かない私としては、そっちは置いといてゆうきさんがO&W冊子を出してくれたらなあと思ったりもしました。




□ 最近ののじま
挿絵のレベルが突如別次元にパワーアップしており、絵師としての進化に驚愕していたのですが、読んでみると「ドラマジック」の松田さんが描いてらっしゃったのですね。手品業界のイラストレーターはそのうち、小野坂さん→カズカタヤマさん→松田さん という系譜になるのかなあと、ぼんやり考えておりました。徐々にデフォルメ化傾向。その一方でまんがも大好きな私としてはレクチャーノートの挿絵をプロのまんが家さんが描いてたりすると面白そうだなと思いました。レクチャラーとは関係ない部分の原稿料が高くつきそうですけど。



うたたねひろゆき 画:指先まで凄くキレイそう、演者モデルは黒髪ストレートの美女。…そういえばセラフィックフェザーってどうなったんですか
宮下あきら 画:凄いマジシャンをモデルにした時はデックが大人4人で担ぐほどのでかさ、出典が毎回「民明書房
青山剛昌:小○館が出す子供向け手品本の挿絵として十分にありそう。怪盗キッドとか描いてるし・・・
荒木飛呂彦 画:彼が描くマジシャンは凄く濃そう
板垣恵介 画:柳とか独歩の手のむにむに具合が、何となく二川さんを思い浮かべる感じでしたので、二川さんのレクチャーノートで。・・・なんか凄いことになりそう
山口貴由 画:シグルイっぽい描写は勿論ないですw 指の位置とか正確に描いてくれる気がする。あと指先までなんか苦労人の指っぽい感じに描いてくれそう
沙村広明 画:無意味にあらゆるコマが躍動。セカンドディールの擬音が「射ッ…!」とか
漫☆画太郎 画:驚く観客の絵が、例の汗と鼻水まみれの「えーーーーーっ!!」顔、演者が裸ないしはパンイチに蝶タイ



・・・段々レクチャーノートじゃなくて、手品を題材にしたまんがを描いてくれたら、みたいになってきていることに気づいたので終了。ちなみにO&W部分しか読んでいないので、全体を通してなにかあれば別途ご紹介したいと思います。