教授の戯言

手品のお話とかね。

David Regal 「Clarity Box」


みんなー箱好き−?私は大好き−!
たとえばSmall MagicianのBeeさんが"封筒"と名がつくものなら地雷覚悟でも買ってしまうがごとく!世界中の方が新作とくればすぐ買って震撼するように!ワタクシも紙製でもプラスティック製でも木製でも箱物が大好きなのです。そんなわけでデビッド・リーガルのクラリティ・ボックスです。


カード・フロム・ザ・ボックス系のマジックで、そこは商品紹介にもある通り現象としては何も変わったところはありません。が、今回のこのボックスのほぼ唯一にして最大の特徴は、従来のものがアンクリアな、いわゆる中身が見えない箱だったのに対して、アクリル製の、透過性抜群のスッケスケの箱で行われるというところです。「見えすぎちゃって……困る」(お前いくつだ)



Penguinmagicには店員さんとチャットできる機能がありまして、怪しい英語で「Slydini Silkだけがなんで品切れなんだよテメー」「Dean's Box2.0はいつ再入荷するのでありますかSir」とかの質問はさらっとスルーされましたが、クラリティボックスについては「サロンにいいよー」ということを言われました。「クロースアップだときついんですか?」「え?いや別にきつくないけど、箱、結構でかいから。350MLの缶くらいあるよ」「え、別にそのくらい良くね?」「まあそこは人によるっつーか、あんたがそれを邪魔だなーと思わないならクロースアップでも大丈夫さ、勿論ね!オススメ!」「お、おう…」的な流れで買いました(実話)。



端的に申し上げて、良い所はやはり視覚的な衝撃度合いが格段に増したところ。悪いところはまあ多少大きめなのと、値段がなーというところです。



まず最初に言っておくと、ぶっちゃけこの類型のマジックと比して、手法自体は大差ないというか、ほぼ同じであるということ。カードをどうやって消すのかとか、どうやって折りたたむのかとか、いつどこでチェンジするかという点で言えば今までのものとほぼ同じです。ギミック側の動作としてもミステリーボックス系というか、これまた同じといえば同じです。ブルーノ・ヘニングの単純な缶で行うカード・フロム・ザ・ボックスに端を発し(多分)、ジェイミー・イアン・スイスのArtoidsの缶使ったトリックなんかでお手軽な奴としてはほぼ完成を見た気がしますが、そこから今度は箱に別の仕掛けがあるもの、具体的には"終わったあとに箱の中を見せられるもの"が増えてきたわけです(オメガ・イクスチェンジとかミステリーボックスIIとかライトニングボックスのような)。



で。某掲示板で中身についてコメントもあり、それ読んでなるほどなと思いました。曰く”「改め可」を「どんなに調べても絶対に」にまでしたら、そんな商品はないのではなくて?”というのはまさにその通りで(実は大学時代に友人に見せてもらったテンヨーのゴーストハウスについては未だに仕掛けがわかっていないのはさておき)、そこを期待するのであれば多分クラリティ・ボックスでは裏切られると思います。一方で実演は無理なのかとか、実用には足らないか、というとそんなことはなくて、多分かなり堂々と演じられて、かつ不思議だと思います。一点、"終わったあと好きなだけ箱触らせられるのか"、という書き込みがありましたが、それは無理ではないがやめておいた方が無難だと思います。じっくり見られるだけだったら大丈夫と思いますが、スリスリゴソゴソナデナデまでされるとたぶん無理じゃないかなと。…まあこれについてはミステリーボックスIIですら止めた方がいいとは思うのですけど。どうしても触りたくなる観客の気持ちは十分に分かりますし、渡せるものは渡したほうがいいと思うのですけれど、手品知らない方がご覧になっても「その箱に何か仕掛けがあるんじゃね?どういう仕掛けなのかまでは分からんけど」というくらいの推測程度にとどまると思いますし、むざむざ渡していじられて「あーこういうことか」というのはなんかちょっと悲しい気がします。…主に8000円とか払って、しかも演じる側としては!
あとはまあ、リングとか絶対渡せないですけど不思議ですし(この場合、"途中ですり替えつつ手渡ししている"という程度なぞ、あんなのは手渡しとは言わない派)、それでイイんじゃないかな〜なんて。あれ、ということは、もう1個すり替え用のアクリルボックス買うなり作るなりすれば完璧じゃないのか!?高いけど!(お友達に借りるとかw)



で、最後に。私は今回、これは買って良かったとは思っているのですがそれは機構の新しさというより、自分の視覚の限界を感じられたからでした。というと大仰なんですが、要は「この理屈自体は知ってた」「解説を見て、その上で現象をまた見た」「でもやっぱりどう見てもただ箱から出しただけだよなあ、これ としか見えなかった」ということです。目の前で図々しく騙されるのが最高に好きなので、これのように「目を皿のようにして見ていても破綻がない」というのは実に私好みだったのです。

基本的に他人に物は薦めませんのであれですが、安くあげたいならそのへんの紙箱でも同じような現象は出来ますし、それはそれでかなり不思議です。ただ、これもまた違った方向で、特に中身が最初からスケスケですので、ペンギンの店員さんの言うような、「特にサロンタイプのイベントでやるときには、従来の透けてないものより観客からの視覚効果が抜群だ」で、鏡で見てても中々に不思議なものだなと思いました。やっぱ箱はいいです。すりすり。これ、フィドラーの偏光板みたいなの使って、本当に向こうが透けた状態に出来ないかなあ……。(思いつくだけ)