教授の戯言

手品のお話とかね。

Christian Engblomレクチャー


「ダオルティスがやられたか……」「だがヤツは我らファットブラザーズ三傑衆の中でも一番の小兵」「デブ兄弟の面汚しよ……」でお馴染み(でもない)、例の三兄弟で一番でかい、フィンランドのでかい人、こと、クリスチャン・イングブルムのレクチャーがあったので参加してまいりました。去年のファットブラザーズ来襲レクチャーでも大変面白かったですが、今回は個人的に最も合理的に物事を進めるイメージがより強化されました。ミスディレクションが極めて巧み。ダニはいうなれば手品基地外みたいな感じで、もう何でもあのテンションでありあり、ミゲルは演技中はハイテンションだけど素は超寡黙な感じですが、クリスチャンはなんだろう、基本頭いいな−、あと騙すためなら手段選ばないな−、って感じで大好きです。そんなわけで以下備忘。

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1.Oil Over Troubled Water
3枚3枚のOWx2→フルデックOW。
フィンランドのKim Wist(?)の作品が原案とのことで、それのハンドリングを整えて、最後にデックが分かれるエンディングを加えたもの。なお、昨年の会で買っていたのですが、すっかり忘れてて(手品を見るのに非常に良いスキル)超キモかったです。私もやりたい。あと、今年持ってきていた商品はケース入りのDVD付きで、去年買った私涙目。デックそのものをひっくり返す手法やタイミングについては、解説聞いて「そこでやってたのか……」と気づく有り様。



2.False Shuffle (w/Anti Faro)
クリスチャンのフォールスシャッフル。
っていうか"リフルで"、"本当に混ぜてはいる"んですが、"順番は変わらない"というw アンタイ・ファロという、カードをスプリングさせて1枚ずつ交互に前後させるという変態テクがあり、数年前にかなり有名になった気がしますが、それを用いたもの。これを作るに至った経緯などもあわせて説明。日本でも岡野氏のDVDでしれっと「ここでアンチ・ファロします」とか言ってたわけですが、彼からしても、パーフェクトな、完全に交互にするのは少しカードのコンディションによるそうです。友人のアレックス・ペンドリアとかは、どんなカードでもほぼ100%、完璧にやれるらしいですが、世の中変態ばっかりです。

余談ですが、日本語でAntiは「アンチ」ですが、英語発音は「アンタイ」です。英会話にしれっと「アンチ」って混ぜたら、アメリカ人に「え?なんだって?アンチ?おまん、なにゆうた?」みたいな反応をされた手品ブロガーがいたらしいですよ!



3.The Near Perfect Circle
カードの表に描かれた円に、観客の選んだカードが浮かび上がる。
以前も見て不思議でしたが、今回はまず最初に円が描かれた瞬間を完全に見逃していたり、後でそれについての質問を受けて、めちゃめちゃ細かく解説してくださったのですが、視線も、意識も実に綺麗に誘導されていたんだなあと感心しました。もともとポール・カリーが原作だそうですが、スイッチが微妙だったとかなんとか。でもギャフの使い方がクリスチャンのバージョンでは極めて巧妙になっていたなと。その他デックの方向をマネージするための事前チェックとか、色々細かな工夫が実に綺麗でした。なおフォーシングカードのアイディアはミゲルのものだそうです。デックの中唯一のシンメトリーカード。確かに。



4.About Crimp
クリンプに関して。
フィンランドのもう亡くなったマジシャンで、クリンプマスターだったレイオ・サロシネ(?)という人がいたそうで。ピークフォースだの抜いたカードを戻すときなど、色々なクリンプについての解説。ジョニー・トンプソンの手法という、ボトムディールを併用したやつは正直音がするのでどうかと思ったりはしました。かっこいいけど。なお、たまたま、先般頼まれていたとある本の校正をしておりましたが、クリンプが出てくるトリックがやたらにあり、いま私の机の上のカードはデックの中に何枚かカドのよれたカードがあって、意図しないところでカットされるという謎デックが量産されていますw



5.Triumph (w/cooler)
と、トライアンフ現象……!(お約束)
分かってたんです、テーブル上にクーラーが置いてあったってことは。にも関わらずまた引っかかる体たらく。なんなんだよもう!(八つ当たり) The Near Perfect Circleの時もそうでしたが、観客の注意点の誘導が極めて巧み。あと太ってないと出来ないテクとかもあって笑えます。(ただし、場所によってはお腹が邪魔でラッピングが出来ないという弱点もあるらしい両刃の剣w)
なお解説の時に「これはギミックデックではないんですよ」に対して、隣にいたおじいさまが「ちがうの?」とか言って、会場が爆笑でした。ちょっとキュートでしたw



6.Triple Intuition (Dani DaOrtiz)
それぞれの観客が、自分自身がストップしたところで自分のカードを見つけてくる。
いや、最初のダニのレクチャーでもやってたし、ファットブラザーズのDVDでも見てはいるんですが、やはり不思議。演じ方もあるんだろうけど、本当に普通のデックに感じられたというか。今回会場ではノート+デックで売ってたのですが、タイトルがTriple Intuition Version Plusってなっており、何がプラスなのかはよくわかりません。エニエニっぽいのも含めて他にもトリックが載っている、ってことでのプラスなのかな?Triple Intuition自体に変わりがあったようには思えないのですが。なにはともあれ不思議。キモい。

なお、イングブルムって、「花々に囲まれたところ」みたいな意味だそうで、「何その風体とのギャップ」と思いました。いや、ご本人は巨大なだけで、明るくて頭いい人ですがw 

あと去年の会で見せてくれたクソキモい超不思議トライアンフをやってくれないかと期待していたのですが、ありませんでした。お願いしてぱっとはやってくれないとこをみると、レギュラーではないのかなあ。「ファットブラザーズ3の製作が進まないのは、コンベンションの際に、毎回ダニがビデオカメラを忘れてくるから」というのは去年も聞いたエクスキューズであり、もうしばらくまたないと、あれの秘密は明かされないのだなーとちょっと残念。まあのんびり待とう。



なお会場の近くにPaulという名前のCurry屋を発見し大笑いw 「さっきポール・カリーの話したばっかりじゃねえか!www」みたいな。クリスチャンも写真撮っていました。そりゃ撮りますよね、この組み合わせはw